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永遠の記憶11

「…全ては、私の弱い意志が引き起こした事なのです」
あかねを無事に奪還し、そして皆の奪われた記憶が元通りになり、城の喧騒もようやく落ち着いてきた頃。
麝香城の瑪瑙の部屋に、乱馬・あかね・良牙・ムースそして地下牢からようやく脱出できた九能が集まって、瑪瑙の 話を大人しく聞いていた。

今、乱馬達の目の前にいるのは、先ほどまで恐ろしい位に殺気立っていた瑪瑙ではなく、
「魔物」から開放されてようやく本来の彼自身に戻った瑪瑙であった。
本来の瑪瑙と、初めて対峙する乱馬は、
今まで戦って来た相手と現実の彼とのギャップに少々驚いていた。
…今、乱馬の目の前にいる瑪瑙は。
青白い顔をし、やせ細った身体を豪華な服で必死にごまかそうとしているような、そんな印象を受けた。
威厳というものをあまり感じない、どちらかといえば頼りない感じの青年だった。

「あかね様の事を前々から憧れていたのですが、私には他の貴族達のように愛を告白する勇気などなく…いつも、 城の入り口まで行っては引き返しておりました。それがあの日…」


…瑪瑙がいつものように、すごすごと自分の城へと戻ってくると。
ちょうどそこに、城下町から行商人がきていた。
その行商人は、使用人たちに隣国から仕入れてきた珍しい品物を色々と売っていたが、
その中に、訳の分からない文字で書かれた分厚い本が紛れ込んでいた。
瑪瑙はその本をおもむろに手に取り、ぱらぱらとめくってみた。
元々、本を読むことも好きだし、「読めない文字」でかかれている本という事柄が余計に興味をそそったのか、
「コレは、私が買おう」
瑪瑙は、その本を購入し、自室へと引っ込んだ。
そして、色々な辞書を駆使してその本の一番初めのページを翻訳したところ…


「…その本の最初のページには、『魔物』を呼び出すための呪文が書かれていたのです」


突然、自分の目の前に現われた禍禍しい「物体」に、瑪瑙は腰を抜かしてしまいそうなほど驚いた。
慌ててその「物体」を元の世界へ戻そうとするが、どうやったらいいかも分からない。
瑪瑙が床にへたり込んでガタガタと身体を震わせていると…


『お前に、力をやろう…』


…「物体」は、瑪瑙の心の中に直接、語りかけてきた。
「ち、ち、力…!?」
『そうだ、力だ。何者にも負けないような力を、お前にやろう。そうすれば、お前は自分の欲しいものが全て…手に入る。』
「ほ、本当か!?」
瑪瑙は、心の中に語りかけてきたその「声」にすかさず反応してしまった。
するとその「物体」は、今度は心の中にではなく、直接、瑪瑙に話し掛けてきた。
『どうだ、取引をしないか?私がお前に、力をやる。そのかわりお前は私に…その肉体を貸す。』
「な!私の身体だと…!?」
『それによりお前は、何者にも負けない強い力を得ることが出来るのだぞ…。』
「物体」はそういって、急に強い「光」を放ち、瑪瑙の瞳をその光の中に捕らえた。
「うわ!」
瑪瑙は、眩しいにもかかわらず、その「光」から逃げる事が出来ない。
「物体」はそんな瑪瑙の瞳を捕らえたまま、再びまた心の中へと直接語りかけてきた。
『…見える、見えるぞ。私には見える。お前の心がな…。』
「や、やめろ…」
『お前が強い力を得ることが出来れば、その意中の女もお前のものになるのだぞ…。』
「!」
『良いのか?一生お前の存在さえも気づいてもらえぬままその女が別の者に奪われても。』
「そ、それは…」
『お前が今、私の力を得ることが出来れば…お前はすぐにでもその女を自分のものに出来るのだぞ。』
「あ、あかね様をか…?本当か!?」
『そうだ。今しか、無いのだぞ…』
「あかね様が…あかね様が私のものに…?」


…「物体」の甘い囁きに。
瑪瑙は一瞬我を失い、気を許してしまった。
と、その瞬間だった。


『ハハハハ!そうだ!それで、契約成立だ!』


「物体」の囁きに心を許した瑪瑙の全身に…そんな声が響いた。
そして、瑪瑙の身体の周りに、急に「黒い霧」が発生してきた。


「う、うわー!」


瑪瑙が慌ててその「黒い霧」を払おうとするが、「黒い霧」は瑪瑙の身体にまとわりついて、一向に離れない。
その内、その「黒い霧」は瑪瑙の「身体」だけではなく、「心」や「頭」の中にも入り込んできた。
「う…」
瑪瑙の意識が、徐々に朦朧としだした。
そのせいで「物体」が先ほどから語りかけてきているように、「力」を得ればあかねを自分の元へと奪えるような気になってくる。
「力」をえれば、全てが自分の思いのままになるのではないか?と思えるようになってきた。
…「黒い霧」は、長時間瑪瑙の身体を占拠し、そして…そして、消えた。
「黒い霧」が消えたと同時に、「物体」の姿もそこから消えていた。
だがそれは同時に、「物体」が瑪瑙の身体の中に完全に入り込んでしまったことを物語っていた。
瑪瑙の身体は…いや、「心」も「身体」も、完全に「物体」に奪われてしまった。


「恥ずかしながら、それ以降のことは、全く覚えていないのです。
魔法陣がかかれていた事も、白い花の庭園が作られていた事も…そして、本当にあかね様をさらいに行った事 も…」
瑪瑙は、乱馬達に向って、深深と頭を下げた。
そして、あかねの方を見て、もう一度頭を下げると、
「たとえ魔物に心を奪われていたとはいえ…今回の行動は…私の心の奥底にあった歪んだ願望が引 き起こした事なのです…。どんなに謝っても、許していただけないのは分かっております。申し訳…ありませんでした…」
瑪瑙は、そういって顔を挙げた。
そんな瑪瑙の姿は、小さいからだが更に小さく見えるような…直視できないような、物悲しいものだった。
「…」
あかねは、そんな瑪瑙の姿をしばらくじっと見ていたが、ふいに、
「…皆、ちょっと部屋から出ていてくれないかしら」
と、言った。
「え?あ、あかねさん…!?」
良牙が、あかねの突然の提案に驚きを隠せないでいると、
「…ちょっと、この方とお話をしたいのよ。五分で良いわ。皆、部屋の外に出て」
あかねは、落ち着いた口調で、驚いている良牙や、乱馬達に言った。
「…わ、分かりました」
「あかね君、何かあったらすぐ呼ぶのだぞ」
「今更、何を話すというだ?」
良牙・九能・ムースはぞろぞろと部屋を出て行く。
「…おい、あかね」
…乱馬もしぶしぶと入り口まで歩きながらあかねの方を振り返り、呼びかけたが。
「乱馬。お願い」
あかねは、そんな乱馬にも、しっかり特徴でそういいきった。
あかねの瞳は、真っ直ぐに乱馬のほうを見ていた。
「…五分だからな」
乱馬は、そんなあかねの瞳に諭されて、不本意ながらも部屋を出た。
「…」
あかねは、皆が部屋の外へ出たのを確認すると、ゆっくりと、瑪瑙と対峙した。
そして、
「…本来のあなたとこうしてお話するのは、初めてですね…」
と、肩を震わせて泣いている瑪瑙に向って、ゆっくりと左手を差し出した。
「あ、あかね様…」
「理由や、形はどうであれ、私のことを思ってくださって…ありがとうございます。まずはそのお礼」
そしてあかねは、驚いている瑪瑙の左手を取り、しっかりと握手をした。
「あ、あかね様…」
瑪瑙は、そんなあかねの凛とした態度に、再び涙を流した。
あかねは、そんな瑪瑙に涙を拭うように布を渡した。そして、
「瑪瑙様。私は…」
涙を拭っては、あかねの顔をちらちらと見ている瑪瑙に向って、ゆっくりと話し出した…。


 


「…で?結局あの野郎と何話してたんだよ?」
それから、数時間後。
麝香城を出て、自分達の城に戻ってきた乱馬達および騎士団の面々は、事件の報告と、そしてあかねと家族達を無 事に対面させてから、ようやく解散となった。
乱馬は、ようやく一安心だ、と城の屋上にあるお気に入りの庭園で寝っ転がっていたのだが。
「乱馬」
そこに、やはりいつものようにあかねがやってきて、寝転がっている乱馬の横に座った。
「おめー、休んでなくていいのかよ?」
乱馬が、ここ数日の事件のせいで疲れているはずのあかねを気遣ってそう声をかけると、
「もう、平気よ」
あかねは元気よくそう答えて、乱馬と同じように、そこへと身体を横たえた。


「…もうすぐ、夜が明けるわね」
「ああ」


空はまだ、漆黒の闇を引きずっている暗さだった。
しかし遥か東の方では、徐々に、徐々に、この少し後に昇ろうとしている太陽を出迎ええる準備をしているのか、空の端が白くにじみ始めていた。


「星は、みえねえな」
「そうね」


二人は、夜明け前の、薄暗い空を見上げながら、ポツン、ポツン、と会話を交わしていた。


「あたしがあの時何を話してたか、気になる?」
「そりゃあ、な」
「ふふふ…」


あかねは、乱馬の質問には答えず、楽しそうに笑ってる。
乱馬は、そんなあかねの暢気な様子に少し呆れながら、
「お前なあ。人が心配して聞いてやってんのに。暢気な奴」
「だーって。乱馬があたしの事心配してくれるなんて、今まであんまりなかったじゃない」
あかねはそういって、寝転んだ姿勢のまま、横に寝転んでいる乱馬をみた。
乱馬は、「ケッ」と悪態をつきながら、ふてくされている。
あかねは、そんな乱馬の様子をまたおかしそうに笑って見ながら、
「…だからね。乱馬が助けにきてくれたあの瞬間、すごく嬉しかったわ」
「…」
「ありがと」
「れ、礼を言われるほどの事じゃねーよッ。お、おじさんやかすみさんやなびきにもあかねの事を頼まれてたしッ…」
乱馬は、そんなあかねの言葉がちょっと照れ臭くて、自分でもわかるほど焦って言い訳を始めた。
「じゃ、頼まれなかったら来てくれなかった訳?」
あかねは、そんな乱馬をからかってるのかそんなことを言っては突っかかってくる。
「さあな」
乱馬は、ぽりぽりと額を掻きながら、そういって体を起こした。
「さあなって何よ」
「さあな。それより、あの野郎と何話してたんだよ?」
そして、自分に振られた話題をごまかすのも含め、再びあかねにそう尋ねた。
「うん…?あのね…」
あかねは、寝転んだ姿勢のまま、そっと目を閉じて…そして、静かに話し始めた。
「私のことを好きになってくれていた事に対して御礼を言ったの。そして…その気持ちに答えられない事を、ちゃんと 話したの。理由と一緒に」
「理由…?」
「うん。
私には、心の中にどうやっても消す事が出来ない人がいます。きっとそれは、どんなに強い魔法をかけられても、ど んな強い術で記憶を消されても…その人の事は私の心の中からは消せない」
「…」
「そして、どんな状況になってもその人は、今回のように私を守ろうとしてくれます。今の私は、それだけで一番幸せ です。
だから…あなたの気持ちには答えられません」
「…」
「…」
…あかねは、そういったきり、口を閉ざしていた。
乱馬も、そんなあかねに対して、何にも言ってやる事が出来なかった。
「…以上です」
ニ人はしばらく黙ったままでいたが、その内あかねがぼそっと呟いた。
「…あかね、そいつの事好きなんだな」
乱馬は、目をつぶったまま寝転んで口をつぐんでいるあかねに向って、ポツン、といった。
そっと、寝ているあかねの頬に、自分の片手を添えた。
「…もしも、好きだと言ったらしたら…その人、ちょっとは喜ぶかしら?」
あかねは、目をゆっくりと開けて、自分を真っ直ぐに見ている乱馬の瞳を見つめ返す。
「…喜ぶかもしれないけど、複雑だと思う」
乱馬は、自分をしっかりと見つめ返すあかねに向って、静かな口調でそういった。
「…何で…?」
あかねは、帰ってきた答えに、さっと瞳を曇らせた。
大きな瞳が、キラリ、とまるで水面が光るかのような…動きで潤む。
「たぶん…」
乱馬は、自分の身体をひじで支えるようにゆっくりとあかねに近づけた。
そして、両肘を地面につけて自分の体を支えながら、あかねの両頬を手で挟んだ。
「たぶん、その人は、あかねが好きだという前に、あかね事を好きだと、伝えたいと思ってると思うから。
…不器用だし、照れ屋だし、素直じゃないから、中々言い出せないみたいだけど」
「…乱馬が言ってる”その人”ってさ、私が瑪瑙様に話して聞かせた”その人”と、きっと同じ人だよね?」
あかねは、自分の両頬に触れている乱馬の手にそっと自分の手を添えながら、嬉しそうに表情を明るくした。
「…そうかもな」
乱馬は、そんなあかねを見て、照れ臭そうに、笑った。
「きっと、そうよ」
あかねも、そんな乱馬を見て、照れ臭そうに、笑った。
ニ人はひとしきり笑った後、ふと目を合わせた。
あかねは、黙ったまま、ゆっくりと瞳を閉じた。
乱馬は、そんなあかねの唇に、ゆっくり自分の唇を重ねた。


 


そんな二人の姿を照らし出すように、あたりが段段と明るくなってきた。
漆黒の闇の中に、申し訳ないようにひっそりと顔を出していた白い陽の光が、
今度はその存在感をまるで誇示するかのように堂々と…その姿を見せ始めた。


ようやく、長い夜が明けた瞬間だった。


「…戻ろうか」
「うん」
ニ人はゆっくりと離れて、立ち上がった。
そして、
寄り添うように並びながら…城の中へと歩き出した。
寄り添う二人の手は、しっかりと握られていた。


 


…この長い夜がようやく朝を迎えたように。
ニ人の心の中にあった「何か」にも明るい光が差し込んだのかもしれない。
どんなに強い魔法でも、
どんなに強い呪術でも、
決して取り除く事が出来なかった、二人の心の中にある「記憶」。
決して全てを奪い去る事が出来なかった、二人の「永遠の記憶」。
その記憶がある限り、ニ人はこの先、どんな事があっても、乗り越えていけるだろう。
身分差も、ライバルも…ありとあらゆる障害を、全てを乗り越えて。
そしてその全てが、また新しい「記憶」として、ニ人の胸の中に刻まれてゆく。


 


ニ人だけの、「永遠の記憶」の中に。


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