【らんま1/2の二次創作小説サイト】| INFORMATION | NOVELS |BOOKMARKS |CONTACTS | HOME |web拍手

永遠の記憶10

その時だった。

ゴオオオオ!

巨大な「光の渦」が、時計台の上にいる乱馬の姿をすっぽりと飲み込んでしまった。その瞬間、あたり一体に、そこかしこを全て照らし出すよう
閃光が走る。
「いやあああ!」
あかねは、訳も分からずその場にしゃがみこみ、叫び…そして泣いていた。
「光の渦」に巻き込まれた乱馬の姿は、まったく確認する事が出来なかった。
ジジジジ…ジジジジ…
「光の渦」は、乱馬が立っていたあたりで、その姿を消すことなく、浮遊しているような状態のままであった。
「ハハハハハ!私に無礼を働いた罰だ!いい気味だ!骨の髄まで砕け散るが良い!」
瑪瑙は、「光の渦」に飲み込まれてしまった乱馬に向って、ありとあらゆる暴言を吐き捨てていた。
「…!」
あかねは、そんな瑪瑙を、泣きながらもギロリと睨みつけた。
「どうした、あかね。その目は」
瑪瑙は、そんなあかねの下へと歩み寄り、あかねの体に触れようとしたが、
「触らないで!」
あかねはそんな瑪瑙の手を激しく振り切り、そして叫んだ。
「許せない…許せないわ!」
「ほう?何を許せないんだ?」
「私は、あのおさげの男の子について何一つ思い出してあげることが出来ないけれど…名前だって、呼んであげることも出来なかったけれど…でも!」
あかねは、瑪瑙をギロリと見据えたまま、勢い良く立ち上がった。
そして、瑪瑙に向って、はっきりとした口調で叫んだ。
「本当は、あのおさげの男の子の言うとおりにあたしの『記憶』があなたに全て奪われていたのだったとしても、
私はあの男の子の残像を…心の中で見ていたわ!
誰だか分からなくたって、あの男の子に出会えた瞬間に、あたしの心は、彼に…動いたのよ!」
「…」
「何度あたしのから本当の『記憶』を奪っても、どんな強い術であたしの『記憶』を奪っても…
…でも、あの男の子に対 してあたしが持っている、あたしの心の中にある『記憶』だけは、あなたには奪えない!
あたしの心の中にある、あたしたちの『永遠の記憶』だけは…」
「…」
あかねの言葉に、瑪瑙は何にも答えなかった。
が、その瞳からも、体からも、異常なほどに妖気、というか殺気が帯び始めていた。
「…殺すのなら、殺しなさい!」
あかねは、そんな瑪瑙の前で黙って目を閉じ…そして胸の前で手を組んで、俯いた。

 


そんなあかねの表情は、
この麝香城へ連れてこられたときのような弱弱しい表情や、婚礼の儀を無理やり上げさせられそうになったときの悲しそうな表情ではなく、誰にも曲げる事の出来ないような強い意志を持った、そんな凛とした表情であった。
このままここで殺されたところで。
このまま再び、今日の「記憶」を盗まれたところで、自分の中にある「心の記憶」は奪わせない。
あかねの表情、いや全身は、そう訴えかけているかのようだった。


 


「あかねえ!」
…瑪瑙は、そんなあかねを、すでに本物の魔物のような仰々しい表情で睨みつけていた。
「こうまでして、私のものにならぬと申すか!」
そして、まるで「魔獣」のように伸びきった牙のようなもので、あかねの首筋に噛み付こうと、あかねの肩に手をかけた、ちょうど…その時だった。
ゴゴゴゴゴ…
不意に、辺り一帯に地鳴りのような音がした。
それと同時に、あかね達が立っている時計台の下もグラグラと揺れ始めた。
「な、何だ!」
瑪瑙が、その突然の変異に驚きふと空を見上げると…
「!」
…先ほどの「光の渦」を自分の背後に背負い、そして、月にかざしていた「白い花」…あらため「透き通った青い花」を手に持った乱馬が、時計台の一番上から、猛スピードで落下してくるところだった。
「貴様!まだ生きて…!?」
瑪瑙がそう叫ぶと、
「あかねを取り戻すまで、俺は死んでなんかいられねえんだよ!くらえ!飛竜…降臨弾!」
乱馬はそういうが早いか、「光の渦」を自分の手の中に集め渦のすぐ上に体を回転させて持って来ると、スクリューパンチをくり出した。
その瞬間。「光の渦」は、さっきまで乱馬が月にかざしていた「青い花」を取り込み…まるで、「槍」のような形に姿を変えた。
槍のように鋭い刃物の形に姿を変えた「光の渦」は、激しく蛇行を繰り返しながら、瑪瑙に向って猛スピードで突進していく。
「あかね!」
…その「光の渦」が瑪瑙の元へ到達する直前に、乱馬はあかねだけ自分の方へと引っ張り、がばっと覆い被さる。
「う、うわあああ!」
その直後、瑪瑙の元に、「光の渦」が到達し…時計台の床と共に、彼の体を貫いた。
とたんに バチバチバチ!…再び目を覆うような閃光が走り、
瑪瑙の「体」と、瑪瑙の体の中にすくっていた、禍禍しい形をした黒い「烏」のような魔物が分離された。
瑪瑙の「体」は、ドサ…という音と共に、乱馬達の近くへと投げ出される。
一方の魔物は、槍と化した「光の渦」に貫かれたまま、床を突き破り、下の階へと落ちていく。
ゴゴゴゴゴ…
その瞬間、あたり一面の床や、レンガなども衝撃で舞い上がりだした。
「く…!」
乱馬は、あかねに怪我がないように必死で彼女の体をかばいながら、槍に突き刺さった魔物が落ちていった床の穴に向って叫んだ。


「良牙!ムース!今だ…消せー!」


 


…そう。
この時計台は、婚礼の儀が執り行われた塔の、最上階。
魔物が召喚された魔法陣は、婚礼の儀が執り行われた部屋の、真上。
下から上の魔法陣を破る訳にはいかないが、上から魔法陣に向って魔物をたたき起こすには、この時計台は絶好の場所なのだ。


婚礼の儀の場所から、ムースの隠れている「魔法陣のある部屋」へと移動していた良牙やその他の兵たちは、乱馬のそんな叫び声をきき、はっと魔法陣へと視線を移した。
魔法陣には、「光の槍」に貫かれた仰々しい魔物が体を貫かれたまま突き刺さっていた。


「け、消せー!」
良牙やムース達の合図と共に、コロンから出発前に譲り受けていた「不思議な魔法水」の水は、魔法陣へと大量にばら撒かれた。
そのとたんに、シュン…と、魔法陣も、魔物も…一瞬で消えてなくなってしまった。
まるで、聖なる水に浄化でもされてしまったかのように。
そして、その代りに…真っ白い小さな光が無数、四方八方に向って飛び散った。
それは、瑪瑙に取り付いていた魔物が奪っていた、人々の「記憶」だった。


 


「や、やったー!」


 


それを見届けた兵士たちが、活気づいて歓声をあげた。
「うんうん、これでシャンプーもおらとのデートの記憶を思い出してくれるだ。皆も元通りになってよかっただ」
ムースが、嬉しそうな顔でしきりにうなづいている。
「…あかねさんも、な」
良牙は、そんなムースの様子を呆れてみながらも、ふと、頭上の大きな穴をみあげた。
「今日は、乱馬の奴にあかねさんを任せるか…」
そして、ボソッとそう呟くと、嬉しいような困ったような…そんな表情でため息をついた。


 


「…」
…舞い上がるレンガや瓦礫を避けるように、二人は小さく丸まっていたが。
やがてそれらが収まったのが分かると、二人はゆっくりと体を起こした。
「あかね、大丈夫か?」
乱馬は、起き上がったあかねの髪についた土ぼこりを払いながらそう呟いた。
あかねは、そんな乱馬の手をゆっくりと止めると、
「ありがとう…」
そういって、その手を握ったまま…涙を一筋流した。
「あかね」
「ありがとう…乱馬」
あかねはそういって、また一筋、涙を流した。
乱馬は、そんなあかねを黙って抱き寄せた。
「記憶…戻ったのか?」
「…うん」
「俺の事、思い出したのか?」
「…うん」
乱馬の消え入ってしまいそうな小さな声に、あかねはしっかりとそう答える。
「お前は、俺の…」
「…許婚よ」
あかねはそういって、涙を流したまま、笑った。
その答えに乱馬も思わず顔が緩む。
ニ人は、ふと離れた。
目を合わせて…笑った。
そして…そして、また再び強く、抱き合った。


 


そんなニ人の姿を、先ほどから空に輝いている月が明るく、照らし出していた。
ニ人は柔らかい月の光の中、時間の許す限りいつまでも…抱き合っていた。


RUMIC'S NOVELS LINK

パラレル
糖度2
糖度3
糖度4
糖度5
企画

OTHER CONTENTS

■オリジナル作品(外部サイト)
お仕事情報

THANKS!

TOTAL: HITS(Y:)