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永遠の記憶1

時は、中世。とある王国。
その平和で穏やかな国には、美しい三人の姫君がいた。
長女である第一皇女・かすみは穏やかでとても女らしく、彼女を妻に娶りたい男性は山ほどいた。しかしかすみは、この王国の王国医師である東風といい関係になっているようで、父である国王・早雲も二人を暖かく見守っていた。次女である第二皇女・なびきは頭が切れて非常に現実的。この国の商業面を牛耳っているといっても過言ではない。本人も経済学の勉強をしたいらしく、外国へ出たり町でこっそり商売したりとしているようだ。
そして、三女である第三皇女・あかね。
彼女の美しさは、国内にとどめず国外にもその噂を轟かすほどのもので、父・早雲が決めた許婚がいるにもかかわらず、彼女に求婚してくる男性は後を絶たなかった。
ところが彼女自体は「お姫様」という自覚が無いのか、誰に対しても平等な目線で相手と接する。そんな気さくさがまた、彼女の魅力でもあった。
それに加えて、このあかねの許婚…というのが問題だった。
彼は、早雲の旧友の息子で、旧友・玄馬と共にこの国の騎士団に所属している青年だった。
名は、乱馬。
武道の腕は立ち、容姿も決して悪くない。あかねとはしょっちゅう喧嘩したりしているが、お互い素直でないだけで、実は結構仲が良かったりした。
しかし、彼は、皇族の人間ではない。貴族でもない。いわゆる一般庶民なのだ。
その為、それを知っている貴族や外国の皇族などは、乱馬の存在を無視してあかねに求婚してくるのである。
お互いが好きあっていても、「身分の差」というものがいつまでも後をついてくる。それがこの時代。
早雲はそういった事をすべて承知した上で、あかねを乱馬へと託したいと考えているのだが、何せ意地っ張りな二人は、すぐに喧嘩してはいがみ合う。
乱馬が本当にあかねを幸せにしてくれると、約束してくれるのなら、この国を捨てさせて二人を外へ出しても構わない。早雲は、本気でそう思っていた。
…二人がこの切実な願いに全く気が付いてないことは非常に残念だが…。

 


「え?ドロボウ?」
…ある日の昼下がり。乱馬達王宮騎士団の控え室では、奇妙な噂がはびこっていた。
「そうじゃ。おらが聞いた話じゃと、最近城下ででるドロボウは、妙なものを盗むそうじゃ」
王宮騎士団第三隊団長のムースが、架けている分厚い眼鏡をキラリと光らせ、言った。
「フン、また適当なでまかせじゃねえのか?」
…こういって茶々を入れるのは、第二隊団長の良牙。極度の方向音痴の彼がこうして騎士団控え室にいるのは 大変稀な事だ。一年のうち三百日以上は道に迷う男…そういっても過言ではない。
「でまかせではねえだ!昨日の夜も、盗まれたっていう娘がいて、さっき被害届を出しにきてただ」
ムースは興奮した口調でそういうと、コホン、と咳払いをして、
「そのドロボウはな…人の記憶を盗むそうじゃ。なにやら妖かしの術を使って…」
「記憶?」
良牙も、横で腕立てふせをしてた乱馬も、信じられないといわんばかりの声をあげるが、
「おらだって初めは信じられなかっただ。だが、盗まれたと被害を出してきた被害者…二十人以上はいるみたいだが、二十人ともそういうんじゃ。その中には、おらの愛しのシャンプーもおる!」
「シャンプーも?」
「そうじゃ!おらとデートした日の記憶だけがすっかりそのまま盗まれておる!何てことじゃあ!」
ムースはそういって、ドカドカと備品の机を叩いている。
(それって、シャンプーがただその日のことを覚えてないってだけじゃ)
思わずそういってしまいそうな乱馬だったが、そこはぐっとこらえ、
「記憶を取られたっていったって、そーいうのって、何かのきっかけで思い出すんじゃねえの?」
「何を言っておる!記憶を盗まれるという事は、それまで自分が大切にしていた思い出も何もかも、根こそぎ奪われてしまうということじゃ。思い出すも何も、思い出す材料も全て奪われてしまうのじゃぞ!」
ムースは語気を荒げてそう叫ぶと、
「おらは、シャンプーの盗まれた記憶を取り戻すために旅に出るだ!」
と、そそくさと部屋を出ていった…つもりだったのだが、部屋の入り口に飾ってあった花瓶にけつまずき、あたり一面に水をばら撒いた後、ガーガー…と鳴きながら、去っていった。無論、アヒルの姿のままで。
「よう、良牙。お前はどう思うよ?」
ムースがばら撒いた水は、側にいた乱馬と、そして良牙にも迷惑を蒙っていた。おかげで一瞬にして女姿になってしまったらんまは、濡れてだぶだぶと大きくなってしまった服の水を絞りながら、やはりとばっちりで黒豚になった良牙に話し掛けるが、
人間の女に変身する乱馬とは違って、良牙の場合は黒豚である。
「ピーピー」と嘶きながら水をぷるぷると払う良牙に、らんまは軽くため息をついた。
そして、
「記憶を取られるか…俺が記憶を取られたら…どんな風になるのかな」
乱馬がボソッとそんなことを呟いてると、
「いいのだ!僕たち二人の間に、そんな記憶は必要ないのだ!」
どこからともなく、第四隊団長の九能がやってきて、女姿のらんまに抱きついてきた。
「寄るんじゃねえ!」
らんまは何の躊躇もなく九能を窓の外へとふっ飛ばすと、自分の部下に命じて部屋にお湯を運ばせた。
そして、そのお湯をとぽとぽと頭からかけ、また再び男の姿へと戻った。ついでに良牙にもかけてやる。
すると、
「…フン、どうせ奪ってくれるなら、思い出したくない記憶だけだとありがたいぜ。貴様のこととかな」
黒豚から人間へ戻るなり、良牙がそんな事をぼやき乱馬の顔をじろりと睨んだ。
「抜かせ!俺だって同じだっつーの」
悪態を付く良牙に、乱馬が反論すると、
「ま、でも…」
良牙は、変身する際に脱げてしまった服を再び着込みながら、急に真剣な口調になると、
「でも?でも、何だよ」
「貴様の事は忘れても一向に構わんが、…あかねさんやあかりちゃんの記憶を失うのは避けたいけどな」
「…」
「さ。俺は暇ではないんでな。時間があれば稽古をしなくては」
良牙は真剣な口調でそう呟いた後、部屋を出て行った。…もちろん、「稽古をしなくては」と稽古をするために城に併設された道場とは、全く違う方向へと歩きながら。
(ったく、良牙の野郎。最後に妙な事言い残してきやがって…)
自分が、あかねの記憶を無くす…そんな事はあるのだろうか。そんなの、自分だって御免だ。
じゃあ、逆は?あかねが自分の記憶を無くす事はあるのか?
もしそうなったのならば、その時自分はどうなるのだろうか…。

(…俺には関係ねえ。許婚って言ったって、親同士が決めた事だし。大体身分が違うんだから、俺がアイツとどうにかなるなんてありえねえし。俺の心配するような事じゃねえよ)
強引に自分にそう言い聞かせるように。そして、ごちゃごちゃと考える事は稽古の邪魔…乱馬は自分にそう言い聞かせ、自らの職務を遂行すべく城内の警邏へと出かけた。
…が、それから十分後。
警邏に出たはずの乱馬であったが、向かった先は不特定の城内各所ではなく、とある特定の場所にいた。
警邏には出たのだが、結局は先の良牙達との話が気になって、剃れど頃ではなくなってしまったのだ。
無性に、ある人物に逢いたくて仕方がなくなった。だから、予定を急遽変更して、乱馬は城内のとある場所へと向かっていた。
…城の最上部でもあり、この国全体が一望できる唯一の場所。
ここは、乱馬のお気に入りの場所でもあるのだが、それと同時にある人物のお気に入りの場所でもあった。
ここに来れば、その人物に逢える。それが分かっているから、乱馬もこうしてここへと来たのだ。
…下のフロアからの長い螺旋階段を昇りきり、木で出来た扉を開けると、まずはあたり一面に、手入れの行き届いた季節の花が咲き乱れていた。庭師によって、よく手入れをされているのが覗える。
その花畑の真ん中にある石の小道を少し歩くと、入り口からは見えないが、少し窪んだ、芝生を敷き詰めた空間がある。
乱馬は迷うことなくまっすぐとそこへ進む。
…と、いた。先客だ。
乱馬はその先客に声をかけることなく、黙ってその先客の隣へと腰をおろした。
「よお」
乱馬は、はやる気持ちとは裏腹にぶっきらぼうに声をかける。
「…珍しいね、こんな時間にここにくるの。どうかしたの?」
先客は、そんな乱馬の様子をちょっと不思議に思ったようだったが、すぐに笑顔で彼を迎えた。
そこにいたのは、あかね。国の第三皇女であり、身分差はあれども一応彼の、許婚である。
「どうしたの、って。そりゃ…」
…本当は、無性に逢いたくなって仕方がなくなったからここへとやって来た。乱馬の本音はそうであっても。勿論それを彼が素直に言えたのなら、二人の関係がこじれる事は何もない。
眩しい笑顔に思わず本音が口から出てしまいそうだった。が、そこはぐっとこらえ、
「訓練も仕事も意外に早く終わったから、ゆっくり休もうと思ってな」
やっぱり今日も、素直ではない。
乱馬は、あさっての方向を向きながら、あかねに口早にそう返した。
「ふーん」
「それより、お前はいいのか?こんな所にいて」
「…いいの。下にはいたくないんだもん。部屋にいても落ち着けないし…」
あかねはそういって、フウ、とため息をついた。
あかねのこの様子から察するに、恐らく今日も、懲りずに彼女に求婚する貴族共が、部屋や城内へと押しかけてきているのだろう。
実際のところ、乱馬とてそれはあまりいい気分ではない。中には強引な者もいて兵が見張っていないとあかねの身が危険な場合もあるのだ。
もちろん兵がつく、となればその間はあかねが一人になる事はないし、余計に気を使う。気が休まる時ガ内のである。
「物好きな奴が本当にいるもんだぜ。どこをどうしたら、こんな可愛くねえ女を嫁にしようと思うんだ?」
しかし。気になって仕方が無い心とは裏腹に、口から出るのは、相変わらずの憎まれ口。
ついつい乱馬が口を滑らすと、やはり意地っ張りなあかねは、すぐに言い返す。
「何よ!そんなの、どこをどうしたらあんたみたいな変態を、他の女の子達が夢中になって追っかけ回しているのかの方がずっとずっと分かんないわよ!」
「なっ…可愛くねえ女を好きになるよりも、全然単純明快な事じゃねえか!」
「可愛くなくて悪かったわね!変態!」
「うるせえ、この寸胴女!」
「何よ!」
「何だよ!」
…素直になれないことから、すぐに口喧嘩に発展。そして喧嘩が始まるともちろん止まらない。
お互いがお互いを、思ってもないような事でなじっては、機嫌を悪くする。
悲しいぐらいにこれが、いつもの、事だった。
でも、そうやって喧嘩をしたって、お互い相手が憎くて責め合っているわけではない。
いつものつまらない口喧嘩をして、その後は、どちらともなく自然に仲直りをするのも、二人の「いつも」でもある。なので、
「…それで?ホントはどうしてここに来たの?職務中でしょ?ホントは…。どうしたの?」
口喧嘩もあらかた収まり、落ち着いた頃。
やはり乱馬の事を良くわかっているあかねは、不意に話を戻した。
「別に…ホントに何もねえよ。ただ…」
先ほどは誤魔化そうとしていた乱馬であったがやはりあかねには隠せない。
それに、別に隠しておくほどのことでもないので、
「さっき、ムースから聞いたんだけど…」
乱馬は、あかねに騎士団控え室でムースから聞いた話を伝えた。
「人の…記憶?」
記憶ドロボウの話を、あかねはにわかに信じがたいようだ。
「まあ、ムースが言うことだから、どこまでが本当かわかんねえけど。お前も一応気をつけろよ」
「うん。まああたしは城にいるから大丈夫だとは思うけど…でも、そんなドロボウ、ちょっと嫌だな…」
が、少し考えた後、あかねはそう言って俯いた。
「あかね?」
乱馬があかねの顔を覗き込むと、
「だって、それってさ、あたしがこうして乱馬と二人で過ごしてるキオクも盗まれちゃうって事でしょう?」
「ああ。まあ、そういう事になるかな」
「でも、記憶を盗まれたあたしは、乱馬がその時の話をあたしに楽しそうにしてくれても、あたしはそれがわからないって事でしょう?そんなの嫌」
あかねはそういって、乱馬の顔をじっと見た。
大きくてパッチリとした瞳が、とても印象的だ。乱馬の胸が、ドキリ、と鼓動する。
「もしも、あたしが乱馬のキオクを盗まれちゃっても…」
「ん?」
「あたしが、乱馬の事を思い出せなくて、酷いことを言っても…乱馬はあたしのこと、嫌いにならない…?」
あかねが、小さな声で呟く。
(そんなの…当たり前じゃねーか)
心の中ではそう思っていても、素直に口に出せない乱馬は、ついついきつい口調が口をつく。
「そんなの、盗まれて見なきゃわかんねーだろ」
「乱馬…」
「でも、おめーは鈍いしトロイし。取り戻すのにはすげえ苦労するかもしれねえから、そうなったら、盗まれたキ
オクを取り戻す手伝いはしてやってもいいけどな」
…決して、素直で優しい言葉ではないけれど、絶対にあかねを嫌いになるなんてことはない。もしも沿うなった時、自分は一体どうするか、乱馬は分かっているつもりだった。
「思い出したくないって後で駄々こねたって、ダメなんだからな」
乱馬はそういって、シュンとしていたあかねの手をぎゅっと握った。
もちろん照れくさいので、顔はあさっての方を向いたままでだけれど。
「…うん、そだね」
あかねは、それが乱馬の精一杯の答えなのだと気がついたのか。
「乱馬がどうしてもって言うなら、思い出してあげる努力くらいはしてあげるわ」
「ちぇっ。何だよそれ」
「ふふ…」
クスリと笑うと、握られた手を、強く握り返した。
二人は無言のまま手をぎゅっと握り合うと、お互いの顔は見詰め合わなくとも、そのまま並んで、空を見上げていた。
(このまま時が止まってしまえばいいのに…)
…お互い、あからさまに「好きだ」とは口には出さないけれど、お互いがお互いの事を大切にしている気持ちだけは切に、伝わってくる。
この瞬間が、二人にとっての、一番幸せな時間。唯一の、安らぎの時間。
城内は常に忙しなく、ゆっくりと語らい合う時間など滅多にはないけれど、二人が一緒にいる時だけはなんだか別の時間が流れているような、特別な感覚が二人を今、包んでいた。


 


それから、一時間くらいして。
乱馬と別れて自室へと戻ってきたあかねを、呼び止めるものがいた。
「あかね殿」
…そう呼んだのは、身なりのきっちりとした、若い男だった。
「あなたは…どなた?」
毎日のようにあかねに求婚してくる貴族の中では、見たことの無い顔だった。
あかねが戸惑いながらその男に問うと、
「これは失礼いたしました。私は、麝香皇国の王子、瑪瑙と申します」
男・瑪瑙はそういってあかねの足元に跪き、右手に軽く口付けをする。他国の王だけあり、礼儀は心得ているようだ。
「め…のう様と仰るのですか。初めまして…あかねです」
あかねは、瑪瑙がキスした右手をぱっと振り解くと、その手を胸の前でぎゅっと握り締めながら、挨拶をした。
瑪瑙の唇が触れた部分から、何か強烈な匂いがする。胸の前で握り締めているがゆえに、一瞬、あかねは眩暈を覚えた。
それでも何とか気を持ち直し、
「それで…今日はわが国へどういった御用ですか?」
あかねが瑪瑙へそう尋ねると、
「今日は、あなたとの結婚を許していただきたく、国王の元へと参ったのですが、お留守だったようです」
「そうですか…」
何だ、この方も皆と一緒の求婚人か。あかねは、心の中でため息をついた。
ただ、早雲がいないのならば、もう諦めて帰ってもらうしかない。瑪瑙もきっと、諦めて帰るのだろう。あかねがそう思っていたのだが、
「…ですので、このままあなたを連れ去ってゆこうと思います。お許しください、あかね殿」
「なっ…!」
瑪瑙の言葉はあかねの予想を反する物だった。
あかねが驚いた表情を瑪瑙に向け、「一体どういうことか」と説明を求めようとした瞬間であった。
ドスっ…
何か衝撃のようなものが体を襲い、その場に崩れ落ちた。
瑪瑙が、あかねのミゾオチを殴り気絶させたのだ。
「あ!あかね様!」
もちろん、城内でそんなことをすれば誰も見ているものがいないわけがない。
初めは二人の要するを見ているだけだった兵士達が、慌ててあかねの元へと駆け寄ろうとした。
が、
「邪魔者をするな!」
駆け寄る兵士達に向かい、瑪瑙はそう叫ぶと、ゆっくりと自分の片手を兵士達へ翳した。
ドオオン!
…次の瞬間、目に見えない圧力が、兵士達の体を包んだ。
それと同時に、黒い「霧」のようなものが、モワモワと兵士達の上で発生する。
「くくく…」
瑪瑙は、兵士達を一瞥してにやりと笑うと、床に倒れているあかねを抱き上げた。そして、
「…これであなたは私のものです」
まるで風が通り抜けた跡のように、フワリと纏っていた漆黒のマントを翻しその場から消えてしまった。
「ん…?」
「あれ、俺達は何故こんなところで寝てるんだ…?」
そして。
瑪瑙が消えた後、すぐに倒された兵士達が起き上がった。
兵士達は口々にそう呟くと、まるで何事も無かったかのように、元の持ち場へと戻っていった。
先ほどまで彼らの頭上に滞っていた黒い霧は、跡形もなく消えている。
ただそこらには、一瞬頭がくらくらしてしまうような「匂い」が充満しているだけである。
…そう、彼らは、あかねが連れ去られるその一連の「記憶」を奪い取られてしまったのである。
ところが。
その倒れた兵士達の中で、たった一人、その「黒い霧」の効果が効かなかったものがいた。
その兵士は他の皆よりもワンテンポ遅れて目を覚ました。
そしてなぜ自分が倒れたのか、と、色々と考えているうちに、先程起こった事件を思い出した。そして、
「そうだ!あかね様が変な男に…!大変だ!皆に伝えなくては!」
兵士は、「あかね誘拐」の事実を皆に伝えるべく、城内を走っていった。
…しかし。
同じように「黒い霧」を体に浴びたのに、どうして一人だけその効果が現れなかったのか。
今の時点でそれは全くの謎であるが、
妖かしの術を使う皇子にあかねが誘拐された、という事実だけは紛れも無いものであった。


 


一方。
まさか、城でそんな大事件が勃発しているなど夢にも思わない乱馬は、あかねと屋上で別れた後、毎日の日課の城下警邏へと出ていた。
元々平和なこの国を、今更警邏なんてしなくたって大丈夫だろう?と誰もが思っているが、そこはまあ「お役 所仕事」とでも言うのか、乱馬だけでなく、同じ兵役を課せられたもの達も、心とは裏腹に毎日のノルマをこなさなくてはならなかった。
(あー、だりィなあ)
乱馬が城下を歩いていると、
「あいやー、乱馬!」
チリリン、とベルを鳴らしながら人ごみの中を抜ける自転車。
その自転車は乱馬のすぐ近くで止まる。
そして、
「乱馬、仕事が終わったら私とデートするある!」
自転車の主・シャンプーがそういうが早いか、自転車を放り捨てて乱馬に抱きついてきた。
シャンプーは城下街の一角で、「猫飯店」という飲食店を開いているのだ。どうやら今は、店の使いで出前に出ていたようだ。
「抱きつくなって!それに、俺は用事が…!」
きっかけは色々とあるのだが、シャンプーに一方的に惚れられている乱馬は、事あるごとにこのシャンプーに追い掛け回されたり抱きつかれたりしていた。
元々、異国から移住してきたシャンプーは、結構あけすけな性格というか、人前で抱きつくことなど抵抗がないようだ。常に気持ちも口に出す。全く持って奥手の乱馬とあかねとは正反対だ。
人の目を気にしつつ、乱馬がシャンプーを引きはがすと、シャンプーは乱馬を離すまいとして更に抱きついてくる。
「何を今さら照れてるか!愛し合う二人が抱き合う、これ、当然のことね!」
「あ、愛し合ってねえ!とにかく離れろって!」
(こんな所ムースの奴に見られたら、俺が殺されるっつーの)
他人に誤解されるのも嫌だが、それ以上に、シャンプーに熱を上げているムースに見られると厄介だ。
乱馬がシャンプーを引き剥がそうとしていると、
「乱馬、きさま…おらのシャンプーに何してるだ!」
運がいいのか悪いのか。
やはり街を警邏中だったムースが、ちょうどこの場へと現れてしまった。
元々乱馬の話など良く聞かないムースが、この状況を自分から理解しようとは到底思えない。
当然のことながら、
「乱馬!きさまあかねというものがいながら、よくもおらのシャンプーを誘惑しおったな!」
ムースはそういって、乱馬…の足元で無残な姿で倒れている自転車を指差しながら叫んだ。
そう、再び説明するが彼はド近眼なのである。
「ムース、私がいつお前のものになったか?」
「何を言っておるだ、シャンプー!お前は昔からおらのもんじゃ!」
「私は乱馬の妻になる運命ね!強い男の嫁になるのが、女傑族の女の掟」
すると今度は、シャンプーとムースが、乱馬そっちのけで喧嘩を始めた。
(ラッキー!今のうちにっ…と)
ムース、しっかりシャンプーと喧嘩してくれ。俺はその間に逃げるから…乱馬は心の中でムースにエールを送りつつ、二人が喧嘩しているうちにその場をそっと抜け出した。
街に出るたびにこれでは、堪らない。
いい加減どうにかしなければ…乱馬はこっそりとため息をついた。
乱馬は、警邏を続けた。
猫飯店の脇を通り、わき道を巡回、大通りを横断して再び路地へと入り…順調に道を歩いていくと、
「さー、安いよ、お買い得だよ!今なら五枚一組二千円!特別にオリジナルハンカチも付けるよ!」
路地を抜けた、少し広めの道に出た辺りだろうか。
やけに人だかり…しかも若い男性ばかり…がある店舗があり、そこから、乱馬にも妙に聞き覚えのある声が、聞こえてきた。
乱馬がその店の看板を見上げると、「ニブンノイチショップ」と書いてある。
今いちそれだけではどんな店舗かわからないので、乱馬が更に人だかりを超えて店頭を見てみると…そこでは、あかねの姉である、なびきがおおよそ姫君とは思えない格好で品物の叩き売りをしていた。
なびきの手には、「五枚一組二千円」の写真入りパッケージ。写真見本、とかかれたボードをみた乱馬は、思わず 額にビキ…と血管が浮き出る。
「くぉら!てめーはまた性懲りもなく、俺の写真なんて売りやがって!」
「あら、乱馬君じゃない。何やってんの?」
「何やってんの?じゃねえ!
俺の写真で商売するなー!」
「仕方ないじゃない、売れるんだもん。市場のニーズにこたえるのが商売人としての仕事でしょ」
叫ぶ乱馬に、なびきは全く怯むことなく写真を売り続ける。
おかげで、五分もしないうちに写真は完売したよ うだった。
「ひい、ふう、みい…ざっと、五十セットは用意したから…十万は儲かったわね。まいど!」
げっそりとその様子を見ていた乱馬に、なびきはカラカラと笑いながらそういうと、ぽんと肩を叩いた。
「いっぱい儲かったし、たぶんこれからも乱馬君には貢献してもらえそうだから、特別にあたしがこれをあげるわ」
そして、一気に疲れている乱馬に、小さな飴玉の袋を手渡した。袋の中には、飴玉がニつ。
「なんだ、この飴玉は?」
「三袋しか店頭に出さなかったんだけど、それでも売れ残ったのよ。売れ残った物なんてあっても困るだけだし?今日の在庫はそれで一掃。さ、店じまい」
ご機嫌ななびきはそういって、乱馬を店頭から追っ払うと店じまいを始めた。
在庫一掃の為ならば、誰でも使う女、なびき。
(ったく、何て奴だ)
乱馬はぶつぶつ言いながら、それでも食べ物には弱い。その飴玉を口にほおり込んだ。が。
「苦い!なんだよ、この飴ッ」
「だから、売れ残りだって言ってるじゃない。でもねえそれ、一応は外国からの輸入もんの、珍しい飴なのよ!何でもなんかの花を練りこんで…」
売れ残りだけあり、思わず顔が歪んでしまうほど、まずい。乱馬がなびきをじろりと睨むも、なびきは逆に薀蓄を語り始めた。こうなるともう、なんだか面倒くさい事になりそうなので、
「だー、わかったわかった」
不服は多々あれども、残ったひとつの飴玉をポケットに突っ込み、なびきの薀蓄から逃れ乱馬はまた町を警邏し始めた。
…乱馬が町に出ると、大抵こんな感じでいろんな人間と出くわし、トラブルに巻き込まれる。
暇つぶしにはちょうど良いかもしれないが、かったるくて仕方ないと思うこともしばしばだ。
(さっさと警邏終わらして、城に帰ろ…)
乱馬はまたため息をついた。
…が。
「乱ちゃーん!」
城への道を急いでいた乱馬の前に、また一人。
お好み焼きやをやっている、右京だ。
「はは、うっちゃんか…」
「今から城に戻るん?あ、城に戻る前にうちの新作のお好み焼きたべてったって!乱ちゃんの為にスペシャルバージョンつくったんやで!」
シャンプーに負けず劣らずの強引さを持つ右京は、乱馬の返事を聞く前に、ずるずるとお店のほうに乱馬を引きずって行く。
「うっちゃん、俺まだ仕事が…」
それでも尚逃げようとする乱馬に、
「ええやん、ちょっとぐらい!可愛い許婚に会ってましたーって言えば、許してくれるって!」
全く説得力のない「説得」をし、右京は乱馬を拉致していった。
子供の頃の様々な事情によって、あかねの他のもう一人の乱馬の婚約者、となっている右京。
右京は乱馬の事を「許婚」「婚約者」と豪語して入るものの、乱馬にとっての右京は、「許婚」というよりも「幼馴染で友達」という感覚でしかない。
だから、「その言い訳はちょっと…」とは思うのだけれど、夕刻が近づくという事はその分腹もすくということだ。
やっぱり食欲には勝てない乱馬は、「幼馴染」の行為に甘える事にし、寄り道をする事にしたのだった。


 


その頃、城では。
「あかねー!あがねー!」
使いの兵から、「あかね誘拐」の知らせを受けて急いで城に戻ってきた早雲が、半狂乱に泣き叫びながらオロオロし ていた。
「早乙女君!乱馬君は!?乱馬君は何を!?」
「町に警邏に行っているのだよ。すまんな、天道くん。しかし、城に帰る予定時刻になってもまだ帰らぬとは…全く乱馬の奴、この一大事に…!」
早雲の横では、玄馬がそんなことを呟きながらやはりオロオロしていた。
あかねがさらわれた、という事実ははっきりしているのだが、その現場を見ていたのはたった一人で(しかも他の大 勢は記憶を盗まれているために全く覚えていない)、あかねを助けに行くにも、その「妙な術」の対策を考えなけれ ば、誰が助けにいってもまた同じ事の繰り返しになってしまう。
「その人たぶん、お父さんが出かけている時に訪ねてきた隣国の皇子だわ。確か、瑪瑙、と名乗って板と思うのだけれど…」
いつもはおっとりしている長女・かすみも心配そうに顔をゆがめて、震える声で呟く。
「まさか、町で最近多発している、記憶を盗むドロボウ…その皇子と何か関係があるかもしれんな…」
「うむ。早乙女君、城の騎士達に言って、その皇子のこととそのドロボウのこと、調べさせて」
「そうだね、天道くん」
玄馬はそういって、早雲の元を離れた。
「ああ、あかねー…」
「お父さん、しっかり。きっと、乱馬君が戻ってきたらすぐに助けに行ってくれるわ…」
かすみはうなだれる早雲の方に手を置くと、優しい口調で何度もそう語りかけた。


 


そして。
乱馬がようやく城へと戻ってくると、もちろんすでに城の雰囲気は騒然としている。乱馬も城に着くなり、妙なその城の雰囲気を感じ取った。
「なあ、なんかあったのか?」
乱馬は、城の門番に訪ねた。が、
「何かって…乱馬、お前まだ知らないのか?」
門番は、「おいおい、嘘だろ?」とでも言いたそうな顔をして、
「あかね様が、隣国の皇子に誘拐されたのだぞ?」
「え…?」
「妙な術使う皇子で、いま騎士団控え室でみんながそれについて話し…ってあれ?おい、乱馬!」
乱馬の為に状況を説明していたのだが、「あかねがさらわれた」と聞いた時点で、乱馬は騎士団控え室へと すっ飛んでいってしまった。
(あかねがさらわれた!?何で…城にいれば安全じゃなかったのかよ!?)
乱馬は、あかねと屋上庭園で別れた事を激しく後悔した。もしもあの時自分がきちんと部屋まで送っていれば!…もしかしたら、未然に防げたかもしれないと思うと、余計に悔やまれる。
入り口から騎士団控え室までそんなに距離は無いはずなのに、今は以上に遠く感じる。
乱馬は、まるで廊下を飛んでいくが如く騎士団控え室へと走っていった。
「親父!」
高価な絨毯が敷き詰められた廊下の途中、ものものしい剣と鎧のオブジェが飾られているドア。
そこを開けると、乱馬達がいつも入り浸っている騎士団控え室だ。
乱馬は、兵たちが慌しく出入りしているそのドアから勢いよく部屋の中へと飛び込んだ。すると、
「乱馬!きさま一体今までどこに…!」
「あかねは!?あかねを誘拐した野郎はどこのどいつだ!?」
乱馬が騎士団控え室に飛び込んでくるや否や、乱馬の帰りを待っていた玄馬に、乱馬はものすごい勢いで掴み掛った。
「落ち着かんか!」
玄馬はそういって乱馬を引き剥がし、とりあえずいすに座らせた。
そして、一人の人物を乱馬に紹介をした。
「彼は、あかねくんがさらわれるところを目撃した唯一の目撃者だ」
「あ、私は第五騎士団の朝凪といいます」
唯一の目撃者でもあり、唯一その皇子の「妖かしの術」の餌食にならなかった男・朝凪が乱馬に向かってペコリとお辞儀をした。
乱馬もはやる気持ちを抑えてお辞儀をする。
「実は、あかねさまがさらわれたときは、こんな状況だったのです…」
朝凪は、乱馬の気持ちを察してか、挨拶をするとすぐにあかねがさらわれたときの状況を話し始めた。


 


「…それじゃあ、黒い霧が体を包んだ瞬間に、みんなの記憶がなくったと言うんだな?」
しばらくして。
朝凪から一通り話を聞き終えた乱馬が、自分にも言い聞かせるが如く、確認するように呟いた。
「そうです。それでみんなが黒い霧に体を包まれている間に、気絶したあかねさまを…」
「そうか…。で?なんでお前は平気なんだ?」
「それなんですが…私自身も良く分からなくて。どうして私だけ黒い霧を浴びても平気だったのか…」
朝凪は、眉間に皺をよせてそう言った。
「君は何か魔術等の心得でもあるのかい?」
玄馬もいろいろと朝凪に聞いてみるが、心当たりが無いらしく、朝凪は首を左右に振るばかりだった。
「そうか…また何か思い出したり、気が付いたことがあったら、話を聞かせてくれ」
「はい!」
朝凪は、乱馬と玄馬に敬礼をしてから、部屋を後にした。
「…今のが目撃者の彼?」
その朝凪とすれ違うように、今度はなびきが騎士団控え室にやってきた。
「なびきくん」
「早乙女のおじ様、おじ様たちに言われたとおり、あかねを救出にいった第一班の人たちにはうちのお店の薬を持っていってもらったから。あ、薬の費用の請求は城の方にしておいたから、安心して」
なびきはそういって、玄馬に小さな袋を渡した。
「これは、おじ様の分」
「すまんな、なびきくん」
「乱馬君のは、隣の騎士団準備室に袋ごと置いておいたから」
「袋ごと?」
乱馬はなびきの言っている意味が良く分からなかったが、とりあえず「すまねえな」と御礼を言った。
「それよりも、あかねをちゃんと助けてよ?」
なびきはそういって、部屋を出て行こうとしたが、
「…」
入り口のところで、ふと足を止めていた。
「どうした?なびきくん」
玄馬がそんななびきに尋ねると、
「…さっきの目撃者の彼なんだけど、前にどっかで見かけたことがあるような気がするんだけど…」
なびきはそんな事を呟きながらちょっと考えていたが、
「…ま、思い出さないって事は、たいしたトコで会ってないってことね。それじゃ、あたしはお父さん達のところへ戻るわ」
なびきは、騎士団控え室をでていった。
「…乱馬よ。お前がいない間に、九能君のところの騎士団や、良牙君のところの連中はすでにあかね君奪回に向かったぞ。お前のところの連中も、わしの命令で既に隣国へと向かっておる」
なびきが出て行った直後。
玄馬が、表情を改めて乱馬に渇を入れた。
「兵は多く出したが、まだ誰一人としてあかね君を奪回したという連絡を持って帰ってこない。これがどういうことかわかるな?」
「親父…」
「どんなに兵を向けたところで、奴が使うという妖かしの術の正体や攻略方法を考えねば、あかね君は助けられぬという事だ」
玄馬はそこまで言うと、なびきから渡された薬袋を持って、騎士団控え室を出て行った。
(クッ…一体どうすれば!)
助けに行きたい気持ちは人一倍強いが、確かに玄馬の言う通り、闇雲に敵陣に突っ込んでいくだけでは返り討ちにあうのがオチだ。
(人の記憶を奪う、妖かしの術…)
乱馬はそんな事を考えながら、ある望みをかけ、とある場所へと足を運ぶことにした。
(人の記憶を奪う術なんて、そんな術…知ってるのなんてごくわずかな人間だけ。だとしたら…)
「おい!ばあさん、いるか!?」
…二十分くらいして、乱馬がやってきたのは、シャンプーの家でもある、城下のお店・猫飯店。
そこの主でもあり、「齢三百年の妖怪」と異名をとるシャンプーの曾祖母・コロンを訪ねた。
妖怪には妖怪を。もとい、モチはモチ屋である。
「おお、婿殿。こんな時間に珍しい。シャンプーなら、出前に言ってて留守じゃが…」
「今日は聞きたいことがあって来たんだ」
「ほほう、それは珍しい。ま、大方検討はついているがな…」
コロンは意味深な言葉を呟き、乱馬を店の奥へと通した。
「あかねがさらわれた件じゃろ?」
「知ってんのか!?」
「ムースが騎士団長に呼び出されて借り出されていったからな。それでシャンプーが出前に店番に、大忙しなんじゃよ」
「あ、そっか」
乱馬がようやく事情を納得すると、
「人の記憶を盗む術…おそらく、古の時代に封印された、『暗黒魔術』の一種じゃろうな…」
コロンはそういって、一回咳払いをした。
「暗黒魔術…?何なんだよ、それ」
拳法や武道に通じている乱馬でも、初めて聞くようなその名前に戸惑う。
「その術の強さや邪悪さから、古の時代に封印された術の流派じゃ。この時代には継承されることは無かったはずだが…」
「じゃあ、何で?」
「恐らくその隣国の皇子とやらが、中途半端な黒魔術や召喚術でもやって、下賎な古の魔物でも呼び出して契約でも交わしたんじゃろ」
コロンはそういって、乱馬に小さな香水瓶を差し出した。
「呼び出された下賎な悪魔を元の世界へ追い返すためには、呼び出すために使用した魔法陣を消せばよい。
この瓶の中に入っているのは、どんな魔法陣でも消すことが出来る不思議な力が宿っている水じゃ」
「サンキュー、ばあさん」
乱馬はありがたくその香水瓶を受け取り、ポケットに突っ込んだ。
「じゃが、婿殿。その魔法陣を消すためには、下賎な魔物と、そやつと契約をした人間とを一瞬でも切り離さなければならんぞ」
「切り離す…?」
「そうじゃ。もしも切り離さないまま魔法陣を消してしまえば、その魔物と契約者はおろか、今までその魔物によって消された記憶もすべて魔物の世界へと持ってかれてしまうぞ。そうなったら、その奪われた記憶は二度とは戻らない」
コロンは、香水瓶を貰ってそそくさと出て行こうとした乱馬へ、さらに忠告をしてきた。
その忠告を聞いて、乱馬の背筋に一瞬冷たい汗が流れる。
「んで?魔物と契約者を切り離す方法はあるのか?」
乱馬がコロンに尋ねると、コロンは、ちょっとため息をついて、
「残念じゃが…わしは良く知らん」
「そ、そんな!」
「じゃが…”魔物の世界の中で,一番美しいもの”を使え、という話は聞いたことがある…」
「…分かった。ありがとな、ばあさん」
…話を聞き終えた乱馬は、コロンに礼を言って猫飯店を出た。
(魔物の世界で一番美しいものって…なんだ?)
店から城に戻る途中、乱馬は色々と考えてみたが、それが一体どんなものなのか、全く想像もつかない。
(仕方ねえ、まずは敵陣に乗り込んで、偵察するしかねえな…)
そして城に戻ると、なびきが用意したという乱馬用の「袋」を背負い、急いであかねが連れ去られたという隣国へ出発していった。
あかねを守ってやれなかった自分への苛立ちも、ふがいなさもとりあえずは置いといて、
(待ってろよ、あかね。絶対に俺が助け出してやるからな!)
『ねえ、乱馬。もしもあたしの記憶が盗まれてしまったら…どうする?』
…あかねの問いの、その答え。あの時素直に伝えられなかった答えはもちろん、「取り戻す」。
あかねの記憶は、絶対に自分の、この手で取り戻す。
乱馬は、あかねが連れ去られた隣国の城へと続く夜明け前の道を、全速力で駆けていった。


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