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真之介

「あまり時間が無いから、必要なことを話そう」

学者・タームに小屋の中へと案内されたあかねは、緊張した面持ちでそこに腰掛けていた。
最初はこの得体の知れない老人に警戒心は持っていたが、部屋に漂っている空気が浄化されたこと、そして真之介と何かわけありのようなこと…それら故か、徐々に警戒を解いていく。
そして何より、

「これから起ころうとしていることを話す前に、まず今まで起こってきたことを話さねばならない」
「今まで起こってきたこと…?」
「そうじゃ。まず、何故クロノスが禁断の魔法なのか。そして光と闇の魔法の使い手が、何故、魂の転生から起こり得る天文学的な運命確率の元でしか生まれないのか」
「!」

それは、あかね自身も知りたかったこと。タームの言葉にあかねははっと息を呑む。
タームはそんなあかねを確認すると、あかねにも分かりやすく…そう、コロンがシャンプーにした話しと同じ内容をあかねに話して聞かせた。
無論あかねは、想像を絶する壮大な話に思わず言葉を失うが、

「…今の話を踏まえて、これから起ころうとしていることのほうが、今のおぬしには重要じゃぞ?」
「これから、起ころうとしていること…?ラヴィがクロノスソードを作ろうとしていること、ですか?」
「勿論それもそうじゃが…クロノスソードを『どうして作るのか』よりも『どうやって作るのか』の方が、今は重要なのじゃ」

タームはそう言って、あかねを真っ直ぐに見つめた。
「どうやって作るのか」が問題とはどういうことなのだろうか?あかねがタームの次の言葉を待っていると、
「…クロノスソードは、二十一枚のカードで「クロノス」というカードを作り、それを「勇者の剣」のスロットに挿す。そして光と闇の魔法を注ぎ込むことで完成する…それは知っておるな?」
タームは、あかねの基礎知識を確認するようにそうたずねた。
「ええ」
クロノスソードについての大雑把な知識はあかねも知っているので、あかねはその質問には素直に頷く。
が、
「カードを剣に挿すまでは良い。ではどうやって光と闇の魔法を剣に注ぎ込むのか…それは知っておるか?」
「え?ええと…剣に向かって、魔法をかける…のかしら?」

…そう。タームのその質問に対しては、あかねは答えに困った。
それもそのはず、その部分については今までだれも深く考えていなかったのだ。
強大な剣を作ろうとすればするほど、そこに注ぎ込まれる魔法の力も強くなるはずだ。
乱馬たちも以前、同じ疑問にぶつかっていた。

『…もしかしてラヴィは、自らの力を削ることなく剣を作り上げる切り札を、持っているのかもしれんな』
ムースが、ボソリとそう呟いた。それに対し、神楽も頷いている。
『例えば、光と闇の魔法を剣に注ぐ際に、光の魔法はともかくとして、闇の、自らの魔法をそがなくても剣に注ぎ込む事ができるフィルタのようなモノを持っているか…』
『フィルター…?』
『実態はよくわからんが、そのようなものを持っていてもおかしくない男なのじゃろ?どちらにせよ、注意が必要じゃな』

その時は、ムースと神楽が何となく予想はしていたのだが、結論には至らなかった。
その疑問に、今あかねもぶつかったのである。
だが乱馬達と違うのは、その答えをタームが知っていたこと。
タームは表情を改めたまま、あかねにその答えを伝えた。

「…光と闇のそれぞれの使い手を『時の棺』という装置に入れ…そこから強制的にその魔力をこそぎ取るのじゃよ。ラヴィは今、その装置を設置する作業を、手下の魔物たちに指示しておる」
「!」
「『時の棺』の力は強大じゃ。なんせ、わしが持っていた古代魔法の書物を強引に持ち去り、そしてそれらを踏まえて作り出したものなのだから。一度その棺に入れば、恐らくこそぎ取られるのは魔力だけでは済まぬ。死した身体からも魔力は吸い続けるじゃろうし…それほど強力な力ということじゃ」
「…」
「じゃがきっと…お主だけは、ラヴィが『クロノスソード』を用いて「お主の中の時間」のみを戻し、…救うはずじゃ」
死した者の「時間」を自由に戻し、簡単に、いわば歴史を変えてしまう。
それゆえに、「クロノス」は禁断の魔法とされていたのだ。術者に負担が無く魔法を発動できる「クロノスソード」が存在してしまっては、安易にそのようなことが起こりえ、世界は混乱してしまう。
タームは深いため息をつく。
そんなタームに、あかねは気になっていることをぶつけた。
「で、でも待って!おじいさん…。闇の魔法の使い手ってことは、ラヴィだってその棺に入るのでしょう!?」
「…」
「だったらラヴィだって、魔力をこそぎ取られて命も…あ!!」
あかねはそこまで言って、その次の言葉を失った。
…ああ、そうなのか。あかねは、ようやくそこで、すべての事情を理解したのだった。

そう。
自ら命を落とす危険があるという『時の棺』に、ラヴィ本人がみすみす入るわけが無いのだ。
だったら、どうやって闇の魔法を使うものをそこへ入れて力を抽出させるのか?
自分の身は削らずに、どのようにして「闇の魔法」のみを剣に注がせるにはどうするのか。

…その答えが、「真之介」だったのだ。

「真之介は…ラヴィは二人居るって…そう言っていた…」
あかねが震える声でそう呟くと、
「そうじゃ。ラヴィはそのつもりで、真之介という存在を作り出したのじゃよ。自分の代わりに『時の棺』に入らせ力を根こそぎ吸い取った後は始末する、いわば使い捨ての『身代わり』としてな」
「じゃあ…真之介は…」
「勿論、自分がその為に作り出された存在だと知っておる。それが逃れられぬ運命であることも。だからこそ…逃れられないけれど、最後の最後までは、たとえ作られた存在だとしても『自分は自分』という意思を持とうと、してあがいている。…可哀想な奴じゃ」タームはそう言って、深いため息をついた。
あかねはその話を聞きながら、真之介と出会って、そして正体がわかってからも何故かあかねを逃がそうとしたあの瞬間のことを思い出す。

 

…自分がいわば使い捨てのレプリカだということを知り、そして刻一刻と命の残り時間が忍び寄っていることも知っている。
だが、それを回避することは出来ずその運命から逃れることは出来ない。
一体、どんな気持ちなのだろう。ケースは違うも似たような状況に陥ったことがあるあかねは、真之介のことを思い胸を痛ませる。

『俺が俺でなければ…本当は巻き込みたくなどないのに…』

ラヴィに思考を操られる前に、真之介はそう言っていた。
確かにラヴィと真之介は元は一つの身体ではある。だが、きっと…
「ねえ、おじいさん!真之介は…真之介はきっとラヴィとは違うんでしょう!?私は両方と対峙しているわ。だからわかるの…顔は一緒でも、心はきっと違うのよ!真之介は…真之介は、ラヴィなんかと違って人の心を持っているのよ!
あかねは、タームにそう主張した。
確かに元々は、ラヴィが作り出したもの。だから、ラヴィのレプリカなのかもしれない。
だが…例え騙していたとはいえ、あかねやタクトに対して接していた態度や、あの時にあかねを逃がそうとした言動、仕草。
それまでもが偽りとは、どうしても思えないのだ。
そんなあかねに、タームは一度だけ頷いて見せた。
そして、
「…わしはな、お嬢さん。ラヴィの命によってここへ連れ去られた。だが本当は…ラヴィはわしを殺して書物だけここへ運べと命じていたんじゃよ」
「!」
「それを…真之介が『知識を利用しない手はない』とラヴィに進言してな。それで、命拾いしたんじゃよ。その代りここでこうして、ラヴィの計画のサポートをするための装置を手掛けておる…」
「…」
「この状況では真之介とは早々話も出来ぬ状況だが、わしにもわかっている。それに、真之介がここへお嬢さんを連れてきたのにはな、きっと…二つ意味があるんじゃろうと思っておる」
「二つ?」
タームの言葉にあかねが首を傾げると、
「一つは、お嬢さんにこれから起ころうとしていることを知らせたかった。真之介が、ラヴィに心を操られる寸前まで逃がしてやりたいと思っていたような相手じゃ。これから起こることに対しての恐怖心を、少しでも取り除いてやりたかったのだろう。それぐらいしか出来ないとわかっているからこそ」
「…」
「そしてもう一つは…連れ去られてから今まで、何度か脱走を試みたり食事もとらずにおるのじゃろう?そんなお嬢さんの、せめてもの気分転換に、わしを選んだのじゃろうな。魔導士ではあれど、わしは一応は人間じゃからな。わしと話をすることで、お嬢さんの気分が少しでも晴れればと思ったのじゃろう…」
タームはそう言って、あかねに向かって柔らかい視線を投げかけた。
あかねはそんなタームの言葉にそっと目を閉じる。
自分自身のどうにもならない運命にだってもがいているというのに、こんな時にもあかねの心配をするなんて。
ああ、やはり真之介はあかねが思った通りだ。「人」ではないかもしれない。でも、ラヴィなんかよりもずっとずっと人の心を持ち「人」らしい。
「…おじいさん。何とか、出来ないかしら…」
「…」
「これから起こることがわかっているのに、このまま誰も救えないだなんて。少しでも、ラヴィの計画を狂わす手立ては、何か出来ないのかしら…」
そして、真之介を救うことも。あかねは、タームに必死で訴えかける。
タームはラヴィの計画の一角を担っている。だとしたら、何か出来るのかもしれない。
「おじいさん…きっと、ラヴィ達の元に、ラヴィを倒すために乱馬達が来てくれるわ。だったら、そんな乱馬達に私たちもこちら側から力を貸せないかしら…ラヴィが消えれば、もしかしたら真之介も…!」
「…真之介は、ラヴィが消えると一緒に『消滅』するかもしれぬぞ?それでも良いか?」
「…でももしかしたら、考えようによっては、ラヴィと真之介を切り離すことも出来るかもしれないじゃない!お願い、おじいさん!力を貸して…このまま皆がラヴィに屈するなんてダメよ!」
あかねは、タームに更に訴える。
タームはそんなあかねの言葉を少しだけ頭の中で精査していたようだが、あかねを落ち着かせるようにぽん、とあかねの肩を叩くと、「…わしも同じことは考えておった。このままではそう日数かからずに、すべての準備が整うじゃろう。何とか、何か抵抗出来るすべがないか、ラヴィに気付かれぬ程度に策を講じよう。その為には、もしかしたらお嬢さんにも協力を仰ぐかもしれぬが…」
「私が出来ることは何でもするわ!」
「では、準備が出来たら真之介に頼み、お嬢さんを何とかここに連れてきてもらうか…何らかの手段で伝言を頼むことにする」
タームはそう言って、あかねに微笑みかけた。あかねはそんなタームに力強く頷くと、
「…ラヴィの思い通りにはさせない!」
…古からの魂の縁や、人を人とも思わぬ残虐な相手に屈してなるものか。
ここに連れ去られてから少し気落ちはしていたあかねであったが、再び強く気持ちを持ち直した。
そして、真之介が迎えに来るまでの残りの時間、タームに古代魔法のレクチャーを受け少しでもラヴィに抵抗できる手立てを持つようにとしていたのであった。


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