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守人

一方その頃。
ラヴィの居城へと連れ去られたあかねは、幽閉されている部屋の窓辺で、わずかな隙間から見える外の世界を見つめては、ため息をついていた。
勿論、初めからそうしていたわけではない。
ラヴィや真之介にここへと連れ去られたあかねであったが、この部屋で目を覚ました当初は、監視の目を盗んで何度も部屋から逃げ出して脱走を試みていたのだ。
だがそのたびに見つかり、とうとう部屋の入り口に「魔法の鍵」を施され、どうにもこうにも外へ出ることは出来なくなってしまったのだった。
部屋に置いてある調度品で窓ガラスを割ろうと試みるも、物理的な力ではそのガラスは割ることが出来なかった。

あかねがこの部屋に来てから、まだラヴィとは改まった対面はしていない。その代り、三度の食事を真之介が運んでくる。
その真之介も、あかねが脱走するのを防ぐために、ドアは大きく開けず、ほんの少し開けた隙間から食事のパンを差し入れる程度だった。
ここへ連れてこられて二晩ほど経つが、あかねはそのパンには手を付けてはいない。食べる気にならないのだ。
ただ生身の人間故に、どんな状況でも空腹にはなる。
腹はすくが、食事はとらない…故に、抵抗はしているもののどんどん力は失っていくあかねである。
それゆえ、脱走もままならなくなった今は、こうして無理に部屋から出ようとせずに窓の外を眺めて、外の世界に想いを馳せていたのであった。

…記憶も戻り、ようやく再び乱馬とも出会えた。それなのに、また離れ離れになってしまった。
それに、自分はラヴィの手に落ちた。自分に光の魔法のあれこれを教えてくれた真之介も、実はラヴィの仲間だった。
あかねに触れることも出来ないラヴィはともかく、ラヴィに心を操作されていない状態の真之介であればあかねを逃がしてくれるのではないか。

『騙していてすまなかった、あかね』
『真之介、今はそれどころじゃ…』
『俺は俺で…本当は皆を騙したくもなかった!それに…アイツにだってお前を渡したくないのに…!』
『だから…アイツが来る前に、俺がお前をアイツに差し出す前に、森の中へと戻れ、あかね。仲間に事情を話し、守ってもらえ…ラヴィの狙いは、勿論最後の1枚のカードを手に入れることもある。が、一番の目的はお前を手に入れること。お前を確実に手に入れるために、結果的にはこうして俺を生み出し、そして監視させていたのだから…』

癒しの里での事を思い出し、そんな淡い期待もしたあかねであったが、それは叶わぬものであった。
真之介は必要以上の会話をあかねとはせず、それに食事時以外姿も見せない。
里にいた頃の真之介は、もういないのであろうか。

…真之介の事情も、もっと詳しく知りたい。
ラヴィはともかく、真之介は「敵」と定義するのにはどうしても抵抗があるあかねであった。

と、その時だった。
コン、コン。
食事の時間でもないのに、あかねの部屋のドアを叩く者がいた。
「…」
誰だろうか。ラヴィであればノックなどしないし、食事の時間でもないのに真之介が来るはずもない。
この城には真之介意外に人の姿をしたものはいないように思えるので…魔物?しかし魔物がノックなどするだろうか。
いずれにせよ、警戒する必要はあるようだ。
あかねは部屋の調度品の一つである燭台をゆっくり握りしめると、ドアのに向かって構えてたった。
すると。
「…随分物騒だな」
ガチャリ、とドアが開いた先に立っていたのは、真之介であった。
当然ながら食事の時間では無いので、いつものようにパンは手にしていないが、その代り何か…手錠と腰縄のようなものを手にしている。
「…それで私をどうするつもり?」
あかねは表情を強張らせて、燭台を構えたままそう呟く。
手錠に腰縄…明らかに拘束道具だ。そんなものを利用してあかねを連れて行く先など目に見えている。
やはり、真之介は敵なのか。先ほどまで考えていた真之介への考え方は間違っていたのか。
燭台を握りしめる手が汗ばんでいる。
あかねは、せめて最後まで抵抗をしてやろうと真之介の顔をじっと強い瞳で見つめた。
「…俺と一緒にくるんだ」
そんなあかねの気持ちを知ってか知らずか。真之介は多くは語らずとも言葉少なげにそう言って、まずはあかねが構えていた燭台を取り去った。
そして、一瞬だけその手を止めるも、思い直したのか素早くあかねの手に手錠をし腰縄をつけさせると、あかねを連れ立って部屋を出た。
ギイッ…ギイッ…
部屋のすぐわきに、二体の醜い魔物が立っていた。どうやらそれらが、あかねの部屋の守番のようで、
「…一時間ほどで戻る。奴には報告済みだ」
魔物と意思疎通できるらしい真之介は、守番にそう託をしあかねを連れ立って歩き出した。
その内の一匹が、真之介の後ろを歩き出したあかねに対し、「キシャー!」と鋭い牙を向けて威嚇をした。脅しのつもりだろうか。
「きゃ!!」
驚いたあかねは、そんな魔物に対し両手でその威嚇から身を守るよう掌を向ける。
途端に、
バシュッ…
「!?」
…あかねに威嚇をした魔物が、一瞬の内にその場から消え去った。いや正確には、あかねの掌から瞬時に発せられた光によって、消滅させられたのだ。
光と闇は相反する存在。弱い魔物など、あかねの光の強さでは一瞬で消滅してしまうのは必然であった。
ギイー!!
その様子を見たもう一匹の守番が、あかねに襲いかかろうとするが、
「…やめとけ。同じことになるぞ」
「ギ、ギイ…」
「これに懲りたら、下手な脅しや威嚇はしないことだ。俺たちが出ている間に、消えた分の守番を増やしておけ」
その守番に、真之介が素早く剣を突き出してそれを制す。守番は真之介には素直に従い、再び元の位置に戻った。
「…」
突然の出来事に、あかねが自分の手を握りしめて戸惑っていると、
「…この城では、光の魔法は脅威だ。だからこそ、監視も厳重になる。今回のことで、ラヴィは更に監視を強化するだろうな」
「そ、そんな…!あれは不可抗力よ!」
「ラヴィは準備が済み次第、あの部屋から移動させると思う…悪いことは言わない、それまでは静かにしていた方がいい」
「でも…!」
「それに、先程の件で、城の魔物たちも光の魔法の使い手への見方を変えるだろう。より警戒し、そして…中には力試しで立ち向かってくるものもいるだろう。自分の身を守りたければ、あの部屋でおとなしくしているんだ」
真之介は表情も変えずにあかねにそう呟くと、再び前を歩き出した。
先程の魔物に話していた内容からすると、このままラヴィの元へ行くわけではないようだ。だが、真之介はそれ以上はなにも語らず、ただあかねを拘束している縄を持ち、城の薄暗い廊下を右へ左へ歩いていく。
「…」
…魔物は一瞬で消滅しても、きっとラヴィや真之介は簡単に倒すことは出来ない。
拘束されていては、他の魔物に襲われても抵抗も出来やしない。
あかねはやりきれない思いを抱いたまま、真之介に連れられてただただ、歩き続けた。

 

 

それから、どれくらい歩いただろうか。
それまでは薄暗い室内の廊下を歩いていたあかね達であったが、今は、城の敷地内ではあるけれど…中庭のような、芝生が敷き詰められた空間に出た。
勿論屋根もなく、頭上には青空が広がっている。柔らかい風が辺りを吹き抜け、あかねが身に纏っている白いドレスの裾を軽やかに吹き抜けていく。
ここは、外。あかねが窓から眺めていた、恋い焦がれた空間だ。…まあ、ラヴィの手の中ではあるが。
「…」
二日ぶりの外の世界にあかねがぼんやりとしていると、真之介がちょいちょいっとあかねを拘束している縄を引っ張った。歩け、ということだろう。
あかねは再び歩き出した。
すると、そんなあかねの目に、小さな小屋が飛び込んできた。
中庭のようなスペースに建てられた、小さな小屋。ラヴィが統べる魔物の城には、何だか似つかわない存在だ。
大草原の小さな家、ではないが、魔物の城の中の、小人の家…のような、何ともミスマッチに思える。
あかねがそんなことを思っていると、
「…一時間たったら、迎えに来る。中に入って、過ごすと良い」
家の前にたどり着いたところで、真之介がそう言って、あかねの手錠と腰縄を外した。
「え…あ、貴方はどうするの?」
あかねは真之介にそう問うも、真之介は何も言わず、あかねを置いてどこかに行ってしまった。
どうやら本当に、一時間後にここに迎えに来るつもりであかねを離したようだ。
「…」
…一体、この家はなんなの?
真之介がここにあかねを連れてきた本意も、そしてこの家の正体もわからない。
あかねは何もわからぬまま、とりあえずその小屋の入り口を開けて中に入った。
すると、

「…おお、お主が例の。いや、これは驚いたな…」
「!?」
「安心せい、わしは魔物ではなく、れっきとした人間。それに、敵ではない」

半信半疑のままドアを開けて中に入ったあかねに、一人の老人が話しかけてきた。
癒しの里の神楽や、そう、セルラのコロンのような高齢ではあるものの、きちんとした身なりで、上品な物腰。そして、穏やかな口調。
「…あの、貴方は…。それに、敵ではないってどういうことですか?」
魔物の城に居るのに、敵ではない。
それに、敵ではないのに真之介と知り合い…?
あかねが率直な疑問をその老人にぶつけると、
「とりあえず、中に入って座りなさい。話はそれからだ」
老人は笑顔であかねを中に招き入れると、小屋のドアを閉めた。そして、ヒュヒュッ…と指で空間を十字に切り何かを唱えた。
その瞬間、
ヒュン…
「!空気が…」
「おお、よく気が付いたな。今ので、まあ一時間程度であれば、ラヴィの干渉なくお主と話せる」
「空間を、浄化したのですか…?もしかしてあなたも光の魔法を…!?」
聖水などを用いて魔物の気配を消すのは見たことあるが、辺りを浄化する魔法の使い手など、そうそう見たことはない。
もしや自分と同種?あかねがそんなことを思い老人に尋ねるも、
「いや、これは古代魔法の一つ。光の魔法とはちょっと違うのじゃ」
「古代、魔法…?」
「そう。わしは、四大魔法の使い手であるのと同時に、一部だけではあるが古代魔法も使える。古代魔法の研究者でもあり、守り人じゃ」
老人はそう言って、改めてあかねを見た。
そして、
「わしの名前は、ターム。本当はとある場所にいたのじゃがな、ラヴィの手によってここへ連れてこられた」
「ターム…さん」
「それよりも、真之介がせっかく作ってくれた一時間。時間がない、大事なことを話さねばならん」
老人・タームはそう言って、あかねに椅子に座るよう促した。


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