【らんま1/2の二次創作小説サイト】| INFORMATION | NOVELS |BOOKMARKS |CONTACTS | HOME |web拍手

歴史3


亡きクロノスの魂の内、光を統べる能力を手に入れたエレーナは、その能力を活かし人々を癒しそして守る日々を送っていた。
光を統べる能力…それは、生命の光を統べるということ。つまり、今でいう治癒の魔法を手に入れたということ。
治癒の魔法の中でも、光を統べる…ということは最高位を得たということ。治癒魔法の最高位、つまり、蘇生魔法も行えるということである。
ただし、亡くなった者をそうそう生き返らせるというわけはいかない。
死ぬべきではない状況で亡くなった者を、エレーナの判断で術を施すような形であった。勿論稀に、であるが。
そのような能力を手に入れたエレーナは、普段は、居住区である宮殿から外へ出、森の奥にある建物で傷ついた人々の身体と心を癒していた。
一方で、闇を統べる能力を手に入れたゼロスは、その能力を活かし、自らに刃向うものを残らず排除していた。
だが、表向きは「謀反をおこし世界を貶めようとする者を排除した」、ということになってはいたが、実際は自分に逆らうものを排除していたのである。
とはいえ、当初は本当に謀反を起こすものを排除しているだけであったのだが、
闇を統べる能力は、人の精神を喰らい、人の心に闇を灯す。それは、強い精神力が無ければ、人の心などすぐに闇で覆われてしまうことが証明されたということであり、
本来は強い心を持っていると思われたゼロスであったが、欲を出した瞬間にすぐに闇で心を覆われ、その虜となってしまったのである。
ゼロスは、闇の能力を用いて、次々と手下となる魔物を生み出しては傍若無人にふるまった。
やがて世界は混乱に陥り、魔物の世界のようになってしまったのであった。

 

そんな時。
この世界の行く末を嘆いたエレーナは、ゼロスに立ち向かおうとした。
そんなエレーナに、ゼロスはある条件を出した。それは…エレーナがゼロスのものとなること。
闇に心を奪われたゼロスは、今は醜い欲望のみでそこに存在していた。
世界を強引に自分のものとして君臨したゼロスは、次に美しいエレーナを自らのものにしようというのである。

それには、訳があった。

勿論エレーナの美しさに邪な欲望を抱いているのもそうであるが、ゼロスはエレーナを手に入れて子をなすことを欲していたのだ。
エレーナとの間に生まれた子供は、光と闇の能力者の子供。
つまり、光と闇の能力を使える可能性が高い。
それに、二人が使える自然の魔法をも、引き継いで使える可能性も高いのだ。
それはつまり、生まれながらにして『クロノス』を使える可能性が高いと、ゼロスは考えたのだ。
勿論、ゼロスの浅はかな考えなど見抜いていたエレーナはそれを突っぱねるが、要求を飲まない自分に対して、更に傍若無人に世界を混乱させて見せるゼロスの姿を見る羽目になる。
やがてエレーナは、世界が荒れて魔物の世界になることを思うと、その条件を飲むしかないと考えるようになった。

そんな時。
いつものように森で傷ついた人々を救うべく、建物にやってきたエレーナに、一人の青年が提案をした。
青年の名は、ルキア。
彼は森に住む狩人で、この辺りでは有名な剣の名手でもあった。
ルキアは、身分差があるのは分かってはいたが、実はずっとエレーナに魅かれていた。
ルキアは、愛しい人が苦悩する姿を、見ていられなくなったのである。
ルキアは、自分がゼロスを倒してエレーナを救うと言った。そして、この荒れてしまった世界を救いたいとも言った。
当然、ことに巻き込みたくないエレーナはそれを断るが、彼の意思は固かった。
彼の意志と、そして人々を思う心に感動したエレーナは、ルキアの剣に自然を統べる能力を持たせるべく力を注ぎこんだ。
そして、自らと一緒にゼロスの元へと向かった。
かくして、ゼロスと、エレーナ・ルキアの戦いは始まり…やがて。
ルキアの剣に宿った魔力と、エレーナの光を統べる能力から放たれた魔法、そして…ルキア自身の強い精神力と剣の物理的力。
全てが融合し、それらが一つの巨大な力となった時に奇跡が起こった。
強大なゼロスの闇の魔法と、エレーナとルキアの融合した力がぶつかり合った瞬間、偶然か必然かは定かではないが、「時空のひずみ」が一瞬生まれた。
ルキアはその瞬間を見逃さなかった。
ルキアの剣がゼロスを貫き、ゼロスは絶命した。そして…肉体は消滅したがそこから浮かび出たゼロスの魂は、「時空のひずみ」へと追いやられた。
やがてひずみは閉じられ、世界は再び平和になった。

 

『クロノスが『クロノス』魔法を使った時は、本人が発動しているために発動者が甚大なダメージをうけたのじゃが、ルキア達は力の融合と剣の力でそれを起こしたために、クロノス程甚大なダメージは受けずにすんだようじゃな。それに、エレーナの力ですぐに…とはいえ、ひと月程でルキアも回復をした』
コロンは、そういって一息置いた。
そして、
『その後、エレーナは信頼できるものに世界の統治を任せ、自分はいつもの森で、再び傷ついた人々を癒すようになった。もちろん、ルキアと所帯を持ってな』
「へー…」
『やがてエレーナとルキアの子が生まれると、その子には魔法を使える能力が授かっていた。二人には、十人近くの子供がいたそうじゃ。またその子らが子をなし、更にその子が子を産みまた…と繰り返し、長い月日を経て、世界中に魔法を使えるものがどんどん増えていったということじゃ』
「じゃあ、突き詰めると魔法を使える者は、ルキアとエレーナの子孫ということあるか?」
『まあ、突き詰めるとそうじゃな。ただ、えらい遠縁じゃがの』
シャンプーの指摘に、カカカ…とコロンは笑った。
『そして、じゃ。エレーナとルキアは、魔法使いたちが鍛錬を重ね正しくその力を使えるように…と、居住していた森の一角に、魔法の鍛錬場も造ったのじゃ。勿論、誰でも使うことは可能じゃったが、より強力な力を望むものには厳しい鍛錬が用意され…』
「…その鍛錬を乗り越えられたものが、強い魔力を後々使うことが出来た、と」
『そういうことじゃ。ここで話を戻すが、このカードを作り出した王は、恐らくその鍛錬を乗り越えて力を手に入れたんじゃな』
最も、その王が絶命した後は、カードを捨てに行く旅に出た者が遠い場所で街を作り、やがて王になった。
彼自身は魔法使いでもないので、鍛錬場のこと自体も知らなかったし、
その頃には魔法使いの数も世には溢れるほど存在するようになったので、
魔法の鍛錬場は知る人ぞ知る存在となり、やがて人々の記憶からも消えつつあるようになったがの。
コロンはそう言って、口を閉じた。

…コロンの話はとても長く、聞いている三人も、頭の中で整理しながら聞くのは非常に困難だった。
意外にしっかりとしているタクトに至っては、いつの間にかコロンの話をメモに取って何度も確認をしていた。
どうやら、このパーティの中で一番マメで几帳面なのは彼のようである。
シャンプーとムースはメモこそ取らなかったが、時系列で何とか順番で話を整理しながら理解を進めていた。
勿論、そうやって整理することで疑問も浮かんでくるようになる。
早速シャンプーがそれをコロンに尋ねた。

「ひいばちゃん、カードが出来た経緯はともかくとして、そのカードを作り出した王がどうやって強い力を得たのかは、理解したある。魔法使いが多くの時間をかけて世界中に散って行ったことも、どうやって増えていったのかも、理解したある」
『うむ』
「でも…ゼロスの闇に支配された魂が、時間のひずみに入り消えたのはわかるあるが、エレーナの魂は彼女が死ぬまでエレーナの中にあったあるな?光と闇の力を持つ魂だけ、何故、希少確率のみでこの世に誕生するあるか?ゼロスはともかく、エレーナの光の能力は子供に遺伝される可能性もあったはずあるが…」

そう。シャンプーは、それが不思議でならなかった。
時空のひずみに消えた魂と、この世での生を全うした魂。
なぜこの二つだけは、天文学的な運命確率でしかこの世に誕生しないのか?
ゼロスはともかく、エレーナは子をなしている。エレーナの光の能力を宿した魂は、もっと頻繁にそれが引き継がれてもよかったのでは…シャンプーはそう思ったのである。
そんなシャンプーに対し、
『これも本に書いてあると思うが…光を統べる能力は、それは素晴らしい治癒と蘇生の魔力を持つことが出来る。蘇生を行えるということは、蘇生対象やその周辺の人々の運命を変えてしまう、という重大な使命を帯びておる。そんな能力は、そうそう使えるものが増えていっては、大変危険じゃ。それはわかるな?』
「勿論ある」
『じゃから、エレーナも父のクロノスと同じように…特に彼女は、自らが身籠る際もその能力が遺伝しないようにと、自らに魔法をかけコントロールした。無論、完全には無理なので、治癒魔法を使えるものが生まれる程度には力を解放したのじゃな。エレーナは亡くなる際、自らの魂がそうそう転生を繰り返さないようにと、強く念じながら亡くなったそうじゃ。その強い意志を受けて…魂はそうそう転生をしないようになったという。そしてゼロスの魂じゃが…』
コロンはそう言って、小さなため息をついた。
『…ゼロスの魂は…闇に支配された魂とは恐ろしいものじゃな。エレーナとルキアの強い思いの呪縛もあり、こちらもそうそう転生をしないようにはなったのじゃが、ゼロスの思いも強かった。そしてゼロスのエレーナに対する執着もまた、エレーナ達が思う以上にあった。ゆえに…ゼロスの魂・闇の能力を統べるその魂は、再びエレーナの魂に出会うべく、執拗に時を彷徨っているそうじゃ』
「!そ、それじゃ…」
『そうじゃ。何の因果か、この時代に…ゼロスの闇を統べる能力が転生した魂がラヴィに宿り、そしてエレーナの光を統べる能力の魂があかねに宿り、それぞれがそれぞれの能力を覚醒してしまった。天文学的な運命確率でこの世に生まれるその二つの魂が、これまた天文学的な運命確率で、同じ時代に生まれてしまったのじゃろうな…』
「…そういえば、ラヴィはあかねを手に入れるのに執着してたあるな。それは、クロノスソードを作るためにあかねの力が必要だから、だけだと思っていたあるが…」
『どうやら、それだけじゃなさそうじゃな。実際、ラヴィはあかねを妻に娶るといっておったのじゃろう?』
「そういえば…」
『偶然か、それとも本人たちが気づいていないだけの必然か…。そうそう都合よく、前世の記憶など蘇るものではないが、蘇っていないにしろ、目には見えない不思議な『縁(えにし)』により古と同じ願望をラヴィが抱き、そしてそれを実行しようとしておる。何としても阻止せねばなるまい』
コロンはそう言って、今度は大きなため息をついた。
三人は、つい数日前にラヴィと対峙したときのことを思い出した。


『あの女は、我が后とするべく我が手元に置いておく』
『ふざけんな!あかねは俺の許婚だ!』
『以前にも貴様には忠告したはずだ。宝をゴミの山に混じらせておけば、いくら宝とは言えどもくすんで同化をしていく。つまらぬ事で宝をくすませるくらいなら、輝かせる場所に私が誘おうと。この世を統べる力を持つ私こそ、宝を持つに等しい』

そういえば、ラヴィはそんなことを乱馬に話していた。
ただ単に、美しく能力のある女を傍に置きたいだけか、それとも…。
…いずれにしろ、
もしかしたらラヴィ本人も気づかぬ内に、魂の持つしがらみに動かされているのかもしれない。

 

「…魂の記憶だかしがらみだか知らねえが、それがあかねを浚った理由にはならねえ」

 

と、その時だ。

 

それまで、客人と対面していた乱馬と良牙が戻ってきていたのか、コロンと話をしていた場へと割って入り、そう呟いた。
皆は気づいていなかったが、途中から話を聞いていたようだ。
乱馬はシャンプー達が話を聞いていた場所までずかずかと部屋を歩むと、
「それぞれの魂が、今ある前はどこの誰だったかなんて関係ねえ!大事なのは今、生きているこの時間だろ?俺は、あかねを取り戻す!それには変わらねえよ」
乱馬ははっきりとした口調で、コロンにそう言い放った。
…先ほど、宿屋のロビーでキリトやランゼと話をしたせいもあってか、以前にもまして、乱馬の気持ちや発言は揺るがないものとなっていた。
その、ちょっとした変化をそれでも感じ取ったコロンは、
『ああ、そうじゃな。その気持ち、絶対に忘れるでないぞ王子』
乱馬に、深い笑みを浮かべながらそう答えた。
そして、
『…ところで王子。今までどこに行っていたのか?』
「ん?ああ…実は俺を訪ねて客人が来てさ。前にウォータークールで出会った、キリトとランゼだったんだけど…」
乱馬は、自分が今まで席を外していた経緯と、そしてそこで出会った二人から船を都合して貰えることになったことを、皆に報告した。
「…とまあそういうわけで、整備に十日ほどかかるから、それまではここで足止めになっちまうけど」
でも、海を渡れる船が手に入るわけだから我慢しないとな。乱馬は、皆にそう語りかけた。
無論皆とて、多少整備に時間はかかったとしても、欲しかった船が手に入るのだから文句などあるはずがなかった。
「とりあえず、先には進めそうじゃな」
「私たち、ついているある」
「運が味方したってことだろうな…」
ムース・シャンプー・タクトも、乱馬に口答えすることなく、キリトやランゼの提案を受け入れたのだった。

と。

 

『なあ、お前たち』
船を得ることが出来てほっとしていた一同に、改めてコロンが声をかけてきた。
「なにあるか?ひいばあちゃん」
シャンプーがコロンに問い返すと、
『…先ほどの話で、わしが、古は魔法使いの力を育てる鍛錬場があったと話をしたが…』
コロンはそう言って、皆に語りかけた。無論、
「鍛錬場って?」
たった今戻ってきた乱馬と良牙は、コロンの話の意味が分からない。
そんな二人に、今はそうそうそれを説明するのには時間が足りない故、
ごくごく簡単に…言うなれば乱馬にわかる程度にはしょりながら、シャンプーが説明をした。
それを得たうえで、改めてコロンが話し始めた。
『…その鍛錬場じゃが、実はこのウィスタリア大陸に存在する』
「!」
『エレーナとルキアが作り出した鍛錬場は、時が経つにつれ利用するものも少なくなった。今は、エレーナたちが作り出してそれ以来そこの番人となった『ガーディアン』と、ある魔道士の末裔が、そこを守っておるはず』
「魔道士の末裔…?」
『そうじゃ。そもそもは、その魔道士もそこを利用して強力な魔力を手に入れたのだが、その土地に魅かれたのか…それ以来その場所で生きていくようになったようじゃな。そしてその末裔じゃが…名は、タームという』
「ターム…?」
その名前に、何故かシャンプーとムースは聞き覚えがあった。
とはいえ、すぐにはどこで聞いたか思い出せない。二人が苦戦していると、
「あ、そういえば神楽のじいさんが言ってたな。この世界で名をはせた魔道士のことを。セルラ大陸のコロン、レイディア大陸の神楽、そしてウィスタリア大陸のタームって…」
ふと思い出したのか、記憶力がわりと良いのか。今まで黙っていた良牙が、ぼそっと呟いた。
…そう。
確か癒しの里で神楽と話をしている時に、神楽が口にした言葉の中に、確かにその名前は出てきていた。

 

『・・・わしも、今ではほれ、こうして癒しの里で治癒を施すただのジジイじゃが、昔はそれなりに名も馳せた魔道士じゃった。それが、ここに来る前、若いころわしはレイディア大陸におってな…レイディア大陸の神楽、ウィスタリア大陸のターム、そしてセルラ大陸のコロン。百年近く前は、世界でも指折り数えられた魔法の使い手じゃった』

 

…コロンや神楽と共に名を連ねたという、魔道士・ターム。
古からの鍛錬場を、ガーディアンと共に守る魔道士の末裔とはいうのだが、年齢的には、コロンたちと同年代だろうと思われる。
魔法はともかく、鍛錬場は機能しているのか?

「…」

頭の中によぎる、若干の不安。
口にはせずとも、皆がそんなことを思っていると、

『実際に鍛錬をさせるのは、四大属性の力を持つそれぞれのガーディアンじゃ。タームは、それ以外に知識や何やらを授けてくれるじゃろう』
皆の言いたいことは理解しているのか、コロンがすかさずそう説明をした。
そして、
『先ほどの話の中で、ゼロスとエレーナ・ルキアが戦った際にエレーナがルキアの剣に魔法を注ぎ込んだといったな?』
「そうある」
『そして、その剣は奇跡的に『時空のひずみ』を作り出したと…』
「そうある」
『『クロノス』の魔法を使えぬものが、奇跡的に『時空のひずみ』を作り出した…結果として、その剣のおかげでゼロスの魂は、時空の彼方へと飛ばされた。エレーナとルキアは、その後もその剣を大切に保管していたそうじゃ。もしかしたら、今もその鍛錬場のガーディアンがその剣も守っているかもしれぬ』
「!」
『詳しくは、『クロノス』の本を読むのがよいと思うが、万が一クロノスソードを生成され、ラヴィが『クロノス』を発動するようなこととなった時…その剣の存在が、我らの唯一の反撃の一手となる可能性は高い…。船を手に入れるまで少し時間があるのなら、その鍛錬場に赴くのも良いだろう。場所は、シャンプーの『魔法の地図』に記されるようわしが手配する』
コロンは神妙な面持ちでそう呟くと、そのまま通信を打ち切った。
その瞬間、部屋は今まで通りのただの宿屋の一室へと戻り、一瞬であるが静寂の時がそこに流れた。

 

 

「我らの反撃の一手か…おばばのいうことも一理ある」
コロンとの通信が切れた後。
訪れた静寂を打ち破るかのように、ムースがぼそっと一言そう呟いた。
「魔法の鍛錬場か…こんな時でなければ、喜んでそこへ向かうが…」
タクトが、続いてそんなことを呟く。
タクトにしてみれば、ディノバと癒しの里以外の場所へ、しかも大地の魔法の力をパワーアップするために鍛錬に出かけられることは、大変興味深いのだろう。
ただし、状況が状況だけに、純粋に喜ぶことも賛成することも、軽はずみには出来ないようだが。
「…」
乱馬と良牙に至っては、話をまだ詳しく聞いていない部分もあるので、一概に「すぐ行こう」とも「いや、決戦の前の危険な修行は控えた方がよい」も、判断するのが難しい状況だった。
ただ、
実際にラヴィと剣を交えた一同には、今のままではそうそう簡単にラヴィに打ち勝つことが難しい事だけは、はっきりとわかっていた。
勝てないまま戦って、一体何の意味があるのか?しかし、戦わず逃げることだけはしたくはない。
それならば、多少危険な賭けではあるがこのチャンスにかけてみるのもありなのか。
「…」
普段使いなれない頭をフル回転させながら、乱馬は色々と考える。
と、

「…あ、ひいばあちゃんから鍛錬場の場所が届いたある」

悩む乱馬達をよそに、シャンプーが嬉しそうに声を上げた。
シャンプーの手には、この旅で幾度となく使用してきた魔法の地図が握られていた。
訪れたことのある場所が自動的に記録される、魔法の地図。
今回は特別に、コロンが新たなる場所を記す魔法をかけたのだろう。
「ええと…今いる街がここあるから…うん、これなら陸路を1日くらいで行ける距離あるな」
新たに記された道を指でなぞりながら、シャンプーが明るい声でつぶやいた。
「…私は、鍛錬場に行く、賛成ね。私たちが劇的にパワーアップする、チャンスある。船が整備されるまでの間、ここで待機しているくらいなら、行くべきあるな」
シャンプーは、迷いない真っ直ぐな瞳を輝かせてそう提案する。
シャンプーも、自分が旅の当初に比べだいぶパワーアップしているのは感じているようだが、それでも今のままではラヴィに太刀打ちできないことは、わかっているようだ。
「うむ…確かに、十日近くもここで待っているだけでは、体もなまる。武具の整備もそこまではかからぬし、『クロノス』の本を読み解くのも、十日もかかるまい」」
そんなシャンプーの提案を受けて、それまで同じように悩んでいたムースも、ぼそっと呟く。
ムースもシャンプーと同じことを思ったのだろう。それに、十日もずっと部屋にこもって本を読むよりも、鍛錬場にいるであろう偉大な魔道士の話を聞き知識を深めたい、とも考えたのかもしれない。
それに対しては、タクトも特に反対はしなかった。彼は元々鍛錬場について興味を持っているため、乱馬達よりももっと純粋に二人の意見に同意していた。
「…俺はどちらでもいい。まあ、悪い話ではないとは思うがな」
良牙も、口では突き放したような感じで答えるが、自分がパワーアップできることに反対などしない。
そういうところは、昔から全然変わっていない。乱馬はそれが少しおかしくもあった。
「…わかった。じゃ、支度を整えて明日の早朝、出発しよう。シャンプー、道案内は頼む」
改めて皆の思いを感じ取った乱馬は、ついに決断を下しそう言った。
「了解ね!それ以外にも、色々と情報を集めておくある」
「それじゃオラは、出発まで本でも読むか…」
「俺は、剣の手入れでもしていよう」
「じゃあ俺は、宿の裏手で少し身体でも動かすか…」
皆はそれぞれ出発までの時間を過ごすべく、それぞれの部屋や外へと散って行った。
そんな皆の背中を見送りつつ、乱馬も自分の部屋へと戻った。
そして…腰に巻いているカードフォルダから、「THE WORLD]のカードを取り出した。

 

…先ほど、コロンの話をシャンプー達から簡単に説明してもらって知ったが、
恐らくあかねには、エレーナという女性の魂が転生し、そして覚醒した状態なのだろうと言うこと。
覚醒しなければ、こんなことに巻き込まれることもなく一生を終えていたかもしれない。だが…
「…」
それは、半分は自分と出会って、傍にいたから。カードの強い魔力に触れていたせいで、もしかしたら一生覚醒しないで済んだ能力が覚醒した。乱馬は、そのことに心を痛めていた。
だが、今それを悔やんでも仕方がないのも事実だった。
このカードは、人を選ぶ。
自分とあかねが出会っていなくても、もしかしたらカードは、何らかの形であかねにたどり着き、そして能力を覚醒させたかもしれない。
返す返すも、本当に恐ろしいカードだ。
乱馬は、小さく身を震わせた。そして、改めて手にしたカードの絵柄をじっと見つめる。

 

一人の女神が、木のロッドを持ち光や花に満ちあふれた絵柄。
女神の髪は短く、そして色白で、笑顔のかわいらしい…そう、おおよそ「女神」というよりもただただ可愛らしい女性が、女神として「光」で世界を暖かく包んでいるような絵柄。

 

乱馬は、この絵柄が変わったカードを見た瞬間、思わずつぶやいた。「あかねに似ている」と。
見つけた時はわからなかったが、
このカードの絵柄が変化し、描かれていた女神のような女性があかねに似ている女性に変わったのは、
もしかしたら、エレーナの魂があかねに転生したっていうことにきっと関係があるのだろう。
ということは、このカードに描かれているのは…エレーナなのか。そうなのなら、いくらかは合点がいく。
それに、だ。
癒しの里の水路にカードと一緒に隠されていたロッドが、カードの中にいつの間にか吸収されて描かれていたのは…そのロッドが、もしかしたら元々はエレーナの持ち物だったから、かもしれない。
そう考えると、ロッドを見つけてあかねがそれに触れた瞬間反応したのも、理解が出来る。

いずれにせよ、先ほど聞いた話ときっとこの変化は、関係があるに違いない。

 

鍛錬場には、古からそこを守るガーディアンと、そこにいた魔道士の末裔で名をはせた魔道士もいるという。
鍛錬ももちろんだが、行けば何かがわかるかもしれない。

自分と出会ったことを後悔させるのではない。
寧ろ、出会ったから…守ることが出来る。
あの時離してしまった手を、今度は絶対に離してなるものか。

乱馬は再びカードを握りしめると、決意新たにカードを見つめたのだった。


RUMIC'S NOVELS LINK

パラレル
糖度2
糖度3
糖度4
糖度5
企画

OTHER CONTENTS

■オリジナル作品(外部サイト)
お仕事情報

THANKS!

TOTAL: HITS(Y:)