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助け舟

「あ、とは何だよ。せっかく訪ねてきてやったのに、失礼な奴だな」
「でも、そういう所は変わってないのね」

突然の来客を目にして驚いている乱馬達に、かの客人たちはそんなことを呟いて笑っていた。
乱馬たちを訪ねてきたのは、一組の男女。年のころは乱馬たちと同じ。
男性のほうは、すらりとした身体に白く動きやすそうな衣服をまとっていた。
頭にはバンダナを巻き、首にはシルバーの光り輝くアクセサリーをつけている。
女性のほうも、スレンダーでショートカットの女性だった。
へそが出るようなツーピースの衣服をまとい、腰には短剣をさしている。
決して「皆が振り返るような」絶世の美女というわけではないが、元気があふれる雰囲気と勝気で面倒見よさそうな笑顔が印象的の少女であった。
そう。この二人に、乱馬たちは見覚えがあった。
それは…

「お前ら、キリトとランゼか!」
「そうそう。やっと分かったのかよ」
「いつまでも分からなかったら、足くらいふんずけてやろうと思っていたわ」

そう。
彼らは、乱馬たちがセルラ大陸のティルトンを出発し、迷いの森を経て港町のウォータークールについた時に出会った若者だった。
ウォータークールからレイディア大陸に渡ろうと町を訪れた際、そこで起こった事件の当事者達。
キリトの先祖---古の大海賊・キリト=ジャッカルが隠した宝の中に、例のカードが三枚あったのだ。
その頃は俊足だけがとりえのキリトであるがゆえ、幼馴染のランゼをイライラさせることも多々あったが、
無事に宝も回収し、その礼としてキリトは、カードを乱馬達に譲ってくれたのだった。
確か、乱馬たちがレイディア大陸に出発する際も見送りに来てくれて、その時は「船会社を作ろうと思う」といっていたと思うのだが…

「おかげさまで、海賊キリトの秘宝を売り払って出来た資金で船会社を設立できてさ。町の孤児院の子供達にも頑張ってもらって商売も軌道に乗ったんだよ。今じゃ、ウォータークールの港組合一の船会社だぜ?」
あ、俺は社長ね。あの頃よりも明るく、そして前向きになったキリトがそんなことを言って笑った。
「ったく調子がいい。組合との調整とかお金の管理なんかはみーんな、あたしがやってるんだから。世話が焼けるのは昔と変わらないったら」
そんなキリトに、ランゼがしっかりと釘をさす。
ランゼのそういうしっかりしたところも、あの頃と変わっていない。
「はいはい」
キリトは形式上は頭を下げつつも、全く反省していない表情で笑っていたが、ふと真面目な顔になって、
「そういうわけで、会社の取引の一環で偶然、ディノバ港の組合に来ていたんだけど、そこでセルラの兵士達と会ってさ。世界の状況とか、それに…お前らが船を必要としているって話を聞いて」
「そうだったのか」
「兵士の奴ら、一回断ったんだろ?申し訳なさそうに話していたぜ?王子はこの世界を救ってくれる為に戦っているのにって」
「…」

どうやら、以前に乱馬たちが船について協力を依頼した際断らざるを得なかった兵士達が、気に留めておいてくれていたようで、
今回その心遣いがこうしてまた再び、キリトとランゼに出会えることへと繋がったようである。
こんな混乱した状況の中でも、人を思いやる気持ちを忘れない自国民を、乱馬たちは心から誇りに思った。
とはいえ、

「で…?わざわざ宿まで探して尋ねてきてくれたのは、ただ単に懐かしむ為ではないんだろ?」

そう。乱馬にはそれが気がかりであった。
この二人がただそれだけのためにこうして、宿屋まで探し出してきてくれるとは少し考えにくかったのである。
当然のことながら、
「そりゃそうさ。俺達だってそんなに暇じゃないんだぜ?」
「そうそう。あたしら、これでも一応、今一番の勢いがある船会社なんだから」
キリトとランゼは自らの現在の境遇を誇らしげにそう自慢すると、
「船、欲しいんだろ?だったら俺達が一艘都合してやるよ。それを言いに来たんだ」
「え!?」
「…キリト=ジャッカルの宝の時には、お前らには世話になったしな。それにあのまま貸しを作っておくのもなんだし」
「そうよ。だから、私達が今出来ることで、あんた達に借りを返そうと思って」
ランゼはそういって、一枚の紙を乱馬達に渡した。どうやらそれは、キリト達が普段顧客に自社の商品を説明するのに使用するパンフレットの一部のようだ。
小奇麗な紙にカラフルなタッチで描かれているそれには、小型だが屋根や動力源も保有している立派な船が見えた。
定員は五名。
特に船頭がいなくても、行き先をインプットすれば自動で向かうという最新型の船らしい。
下のほうに小さく、オプションであれこれつけられます、とか何とか書いてあるので、
シャンプーの魔道具と合体させれば、魔物のいる海を渡っていくのにも恐らく問題ないようにグレードアップできるだろう。
ただ、
「でも、いいのか?この時期は物資も人でも足りないんだろう?」
申し入れはありがたいのだが、様々な事情を考えると「はいそうですか」と簡単にそれを受け取るわけにもいかない。
乱馬が恐る恐るキリトに尋ねると、
「言っただろう?まずは借りを返すって。それに、これはいわゆるギブアンドテイクだ」
そんな乱馬に対し、キリトはにやりと笑ってそう答えた。
「ギブアンドテイク?」
「そうだ。まずは、この前の借りを返す為に、俺達が船を貸す。今までのことはそれでチャラ。でも…この時期に船を貸したってことで、今度は新たにお前らが、俺達に貸しが出来るってことだろ?」
「まあ、そうなるよな」
「そうよ?だから…今度あんた達があたし達に借りを返してくれる時は、世界が平和になった後にうちの運送会社もごひいきにしてやってよってこと。わかった?一応王子様?」
キリト、そしてランゼはそういうと乱馬と良牙の肩を叩いた。
どうやら、ただ純粋に借りを返しに来ただけではなさそうだが、それはそれで飲めない条件ではない。
正直言って八方塞になりつつあった乱馬達にしてみれば、まさに救いの手。キリト様様だ。
「本当に助かる。二人とも、ありがとう」
迷うことなく交渉成立。乱馬も良牙も、素直にキリトやランゼに頭を下げた。
「気にすんなって。その代わり、船の最終調整やら引渡しの準備が必要だから、十日だけ待ってもらえるか?もしその間に、魔力を動力源に変えるとかそういうのがあれば、材料をくれれば設定するから」
「十日だな…わかった。材料は…シャンプーたちに聞いてみる。今日中に、港のドッグに届ける形でいいか?」
「了解。それで構わない」
キリトは、他にも持っていた資料の端っこに自分達のドッグの場所と連絡先をサラサラと書いて乱馬に渡した。
そして、
「十日後、ドッグに来てくれ。調整すみの船を引き渡す」
キリトそう断言すると、「俺達の整備の腕、驚くんじゃねえぞ?」とふんぞり返って笑った。
ランゼもそんなお調子者のキリトを軽く戒め笑っていたが、
「ああ、ねえ…そういえばあの子はどうしたの?」
船の話も終わり、ずっと気になっていたのかふいに、乱馬にそう尋ねた。
「あの子って…」
突然話題が変わったのもあって、乱馬が戸惑いながらランゼにそう聞き返すと、
「決まってるでしょ?ほら、あんたの許婚よ。まあ、相変わらず男が好きそうな容姿をしていることは、変わりないとは思うけど」
ランゼは、乱馬の胸を拳でドン、と突きながらそういった。
そう。ランゼは「あの子」ことあかねのことを、乱馬に尋ねてきたのである。
そもそも、乱馬達がキリトたちに深く関わることになったのは、あかねがランゼに喧嘩をふっかけられた…もとい、対決を挑まれたからであって、
ランゼにしてみれば、どんな形であれ、自分達が出会ったのに欠かせない人物なのである。
「ま、あの子にもあの時、色々と世話になったしね…。せっかく来たから挨拶ぐらいはしたいんだけど…部屋?」
ウォータークールを出て以降の旅の経緯を知らないランゼは、無邪気にそういって、なんのけなしに再び乱馬の顔を見た。が、
「…」
…ランゼが乱馬の顔を再び見たところ。
ランゼが予想だにしない表情に、乱馬は変わっていた。
それどころか、柔和な表情も翳り、どこかしら…なんともいえない苦悶の色さえも浮かんでいるように、見える。

「え、ちょっと…まさかあの子…」
考えたくはないが、この不安定な世の中だ。もしや、この戦況で命を落とした?…ランゼだけではなく、キリトも一瞬で嫌な予感に苛まれるも、
「いや、そうじゃなくて…今はここにいないんだ」
「いない?怪我でもしたの?」
「いや…」
そういったきり黙りこむ乱馬。そんな乱馬に代わり、それまで黙って経緯を見守っていた良牙が、キリト達に今までの事情を説明した。
もちろん、全てを話すと長くなるので、要所要所かいつまんでではあるが。
「…だから、俺達が海を越えてラヴィの城まで行くのは、もちろん世界を混乱させた張本人を叩きのめすってのもあるが…」
「…あの子を、今度こそ取り戻す為ってことね」
良牙の説明を聞いたランゼが、最後に一言そう纏めた。
ランゼはキリトに比べ頭の回転も速いので、良牙の掻い摘んだ説明でも、凡その事情は理解できたようである。
そんなランゼは、乱馬の肩をぽんぽん、と軽く叩くと、
「あんた達、あたし達と出会ったばかりの頃は、王位継承の儀式の一環としてあのカードを集めるって。それだけの為に旅に出てきたって言ってたわよね」
「ああ」
「それがこんな自体に発展するとはね…運命ってのは、恐ろしいもんだね」
「ああ…」
乱馬は、言葉少なげにランゼにそう返した。
するとランゼは、そんな乱馬の少し丸くなった背中をバシッと一度強く叩くと、
「ちょっと。あんたがそんなんでどうするのよ」
「え…」
「もう進むしかないんでしょ?」
未だ表情が晴れない乱馬に、そう言い放った。そして、
「格好つけてないでさ、ここまで来たら、それだけ考えて戦えばいいのよ。世界を救う、なんて大義名分はクソ食らえだわ」
「ランゼ…」
「たった一人の人間を救えない奴に、世界なんて大それたものは救えない。でしょ?」
ランゼはそういうと、キリトを指差し、
「キリトを見てみなさいよ。あの頃はどん底の毎日だったのにさ。あの時あんた達がくれたきっかけのおかげで、いまや船会社の社長よ?あの時誰がそんなこと思った?」
「…」
「要は心の持ち方一つで、運命なんて二転三転するってことよ。運命、なんてぼんやりした言葉に負けてはだめよ」
ランゼはそういうと、もう一度乱馬の背中を叩いた。
きっとランゼは、こうやってキリトのことも葉っぱをかけてきたのだろう。
ランゼも言うように、いまでこそ船会社の社長として順風満帆に見えるキリトだが、乱馬達と出会った頃は、足が速いだけの臆病者として町中の皆に蔑まれていた。
ただ、ランゼ一人だけは何があってもキリトを見捨てずにずっとずっと傍にいて支えてきたのだ。
「…キリトは、感謝しても仕切れねえな」
乱馬と同じことを思っていたのか。良牙がそんなことをぼそっと呟いた。
「…そうだな」
乱馬も小さく笑いながらそう返すと、
「…そうだよな。クヨクヨしていたって何もかわらねえし。世界を救うのは、あかねを取り返す次いでってことで」
「そうそう。そういうことよ。その為に、あたし達は船を貸してあげるんだから」
「ありがとな」
「お礼は、全てが終わってから。それに、お礼は出来るだけ会社の利益になるようなものがいいわ」
そこはちゃっかりモノのランゼはそういうと、「それじゃ10日後に」とキリトを連れて宿を出て行った。

 

正直言って、クヨクヨするなというほうが無理なのかもしれない。
でも、ランゼの言ったとおり、もう先に進むしか現状を打破する方法はないのだ。
大義名分、クソ食らえ。乱暴ではあるけれど、乱馬の心の中に、まるで水のように染み渡る言葉である。

 

「…あいつらの言うように、巻き込まれる渦の大きさに目的を見失ってはだめってことだよな」
「そうだ。俺達は、あかねさんを取り返して、そのついでにカードも集めて、更についでに世界も救うってことで」
「ああ」

待望の船も、思わぬ形で援軍が現れ入手することが出来た。
その船が航路をそれずにラヴィの元へと向かうように、自分達の目的も気持ちもぶれては行かない。
乱馬は改めてそう自分を戒めると、キリト達にもらった資料を握り締めながら自分達の部屋へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

一方、その頃。
部屋に残されたシャンプー・ムース、そしてタクトは、乱馬たちが戻ってくるまでの間、コロンと通信をするべく、セルラにいる彼女を呼び出していた。


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