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再び5

…先のラヴィとの闘いの後、いよいよあかねを手に入れたラヴィの策略の元、ウィスタリア大陸の中央部に存在していた、いわゆる「魔界への入り口」と称されていた吹雪と霧、そして瘴気が漂っていた大きな穴は、突如隆起し大きな地形変動を起こした。
陥没していたその部分は巨大な山と姿を変え、その山の頂上には巨大な城が姿を現した。
そして隆起した山の周りには地下からわき出た膨大な量の地下水が地を削り、まるで巨大な運河のようにその姿をとどめた。
かくして、ようやくその全貌を表したラヴィの居城であるが、その城へ行くためには、その運河を越えていかなければならなくなった。
一部、突如現れたその運河や城に興味をもった冒険人や旅人が、無謀にもそこへと足をやったようだが、
見た目は穏やかにみえど、水面の下には無数の魔物がうごめき、船で底へやってきた人々を容赦なくむさぼり喰う。
運良く山の麓へとたどり着いたとしても、ラヴィの城から流れ出る障気にやられ命を奪われる。
それに加えて、地上にも、以前にもましてラヴィの手のものがはびこるようになり、人々は恐怖におびえる日々を送らざるを得なくなったのである。


ラヴィがあかねを連れ去って、すでに三日が経過していた。
一行は、癒しの里へと戻りまず、乱馬の治療を行うことに専念をした。
また、真之介が里の皆にかけた術をとくべく、例の「ホロホロ花」を大量に採取し煎じて皆に飲ませた。
神楽には、効くかどうかは別として、浄化の泉の水を飲ませて様子を見た。
すると、里の皆にかかっていた術も徐々に薄らいでいき、そしてなにより、
「じいちゃん!!」
「…おお…タクトか…」
「じいちゃん!良かった…良かった!!」
高齢故にその命も危険にさらされていた神楽も、ようやく意識を取り戻した。
以前のように自由に里の中を歩き回るまでにはまだ回復していないが、ベッドに横たわりながら話をするには、十分な程度には復調していた。

「元気になって、安心したぜ」
ムースやシャンプー、そして癒しの里の薬品庫の薬などによって完全に回復した乱馬は、意識を取り戻しタクトと抱き合っている神楽の元へと歩み寄った。
「…そなたたちには、世話になったな。そして…」
タクトから、自分が眠っている間のことを聞いた神楽が、乱馬にそう呟いた。
神楽が闇の魔法を受けたあの日。
ほかの里人やタクトに比べ、元々体の中に眠っている魔力や耐性が強い神楽は、はっきりとはわからなかったが、「何か」にたいして違和感を感じ始めていた。
そこに真之介がやってきて、カードについて何度も質問をしてきたことでそれが「確信」にかわり、真之介に真相を問いただした。
真之介はそこで本性を現し、それから身を守る為に、神楽は自分で自分自身をガードするべく魔力を大量に消費してしまったのだった。
神楽が大魔導士でなければ、命を落としていたかもしれない。
今思うと背筋がひやりとする出来事であったが、真之介の闇魔法が里から消えた今は、起こってしまったことよりも、これからのことを考えていくことが先である。
先のこと。そう、それはラヴィとの最後の闘い。そしてあかねを取り戻すための闘い。
乱馬にとっては、例の21枚のカードのことはもう二の次、三の次くらいの存在なのであるが、ラヴィを倒すことやあかねを取り戻すことなどを総合的に考えると、必然的にカードの存在もそこには現れてくるので、ひっくるめてそちも取り戻して全部手元にそろえよう、という感じなのだが。

乱馬は、自分に語りかけてくる神楽に対し、あえてあかねが再び自分の元から消えてしまったことについては多く語らなかったが、
「俺たちはこれから、ラヴィの元へと向かわなければいけない。そのためには、このウィスタリア大陸の地形や気候の特徴、そして様々な知恵が必要になる。
出発は三日後を考えているけれど、それまでに俺たちにいろいろと教えてくれないか?」
「もちろんじゃ。できる限りのことをさせてもらおう」
「頼む。俺たちも、コロンのばあさんにも連絡を取りながら情報を集めるつもりだ」
これからの自分たちの予定について神楽へと語り、そして協力を仰いだ。
コロンの友人であり、また同じレベルの大魔導士であった神楽なら、たとえ体は自由にまだ動かなくても、最終の決戦地へ旅立つ自分たちへ、なにかしらいろいろもたらしてくれると思ったのだ。
もちろん神楽は、乱馬の提案に対し快く応じてくれたが、一方でそんな乱馬に対し、とあることを提案してきた。
「王子よ。一つ頼みがあるのじゃ」
「なんだ、じいさん」
「…ラヴィの元へいくこれからの旅路じゃが…タクトも一緒につれていってはくれまいか?」
「!?」
「今回のことがあり、この癒しの里も大きなダメージを負ったことにはかわりない。特に…身体の傷よりも、タクトにとっては心の傷を負わされたことは無論じゃ。あいつは幼い頃に両親を亡くし、わしと里のもの皆が親代わりとなり育ててきた。だが、里の定めで、同じ世代の友達は皆、年頃になるくらいには居なくなってしまった。里からでたものは、ほぼ帰ってこない。帰ってきたとしても、年老いてからがほとんどじゃ。しかも、里を守り里のために尽くす運命を背負って」
「…」
「口では何もいってはいないが、あの年頃の子供では、こんな環境…大変寂しい思いをしておったはず。だから…偽りでも、ある日突然、自分に同じ年頃の兄がいたと思わされたら…きっと、心強よかったに違いないのじゃ」
「…」
「その気持ちにつけ込まれ、闇の魔法は巧妙に心の中に入ってきたのだろう。わしにも、タクトに対する負い目などがあり心の透き間もあったのじゃろうな。それでもわしは、自らそれを打ち消すよう力が働いたが、タクトは…。じゃから、今回のことは、体のダメージよりも心のダメージが大きい。恐らく、長い月日をかけないと、完全にその傷は消えぬだろうな」
「じいさん…」
「だから、ではないが…傷は消えぬとも、気持ちのけじめは付けることはできる。王子よ、タクトに心のけじめを付けさせてやってはくれまいか?」
「けじめ…?」
「偽りではあったが、奴・真之介は塚のまではあったが、タクトの兄であった。だから今回のこと、ラヴィのことはともかくとして、真之介についてはタクトにとどめを刺させたい。真之介は絶対に、また王子たちの前へと姿を現すだろうしの
「じいさん…」
「それに、タクトは腕が立つ。きっとお主等の助けになるはずじゃ。ウィスタリア大陸の特有の自然と渡り合うためには、大地の加護を受けた魔法戦士の力はとても有効じゃぞ」
なんせ、わしの本当の孫じゃからな。神楽はそういって笑った。
恐らくタクトの性格的に、そして自分のこの里での役目を知っているが故に、絶対に自分からは旅に同行したい、や真之介と再び決着をつけたい、などとは、いいださないであろう。神楽はタクトの心うちの何ても左記を読み、乱馬へと独断で依頼をしたのだ。それは勿論、神楽の優しさであった。
だが、
「里の方はいいのか?」
…そう。
タクトは、この里を守るために、そしてけが人を外の世界からつれてくるために働いている人間。
大切な役目を担うその人物を、事情は事情とはいえ、
乱馬たちに同行させて良いのか。
気になった乱馬が神楽に問うと、
「昨日、コロンより連絡があった。例の地形変動のせいで、今まで2カ所しか船がつけなかったこのウィスタリア大陸も、何カ所が船がつける場所ができたそうじゃ。そういう場所に、このウィスタリア大陸へも、セルラ大陸やレイディア大陸から医師団が駆けつけてくれるようになったそうじゃ。じゃから、しばらくはそちらにサポートしてもらえるので大丈夫。この里も、まだまだわしの力で何とかなりそうじゃ」
「でも、じいさんそんな体で…」
タクトを同行させてくれるのは心強いのだが、本当に今の神楽でこの地を守れるのか?
ラヴィのせいで、以前にも増して恐らく魔物が付近にはびこる率も高くなると思われるが、それでも大丈夫なのか。
乱馬がそんなことを考えているときだった。

 

「うちらがサポートするから、安心して。乱ちゃん」

乱馬の背後から、そんな声が聞こえて人の気配がした。
乱馬が振り返ると、そこには右京と…そして見慣れない女性がそこに立っていた。
髪は、後ろで一つに束ねてポニーテールにしていた。
右京よりも背は高いが、ほっそりとしていて、そしてなによりしなやかな感じ。
右京の一歩後ろに立ち、おずおずとした表情で乱馬をみている。
「うっちゃん…と、その人は?」
右京はともかく、見慣れないその女性はいったい誰なのか。
乱馬が右京に訪ねると、
「こいつは、セルラでうちと一緒に店を切り盛りしている子で、小夏っちゅーねん」
「へえ…」
「船が前よりも港につけるようになったやろ?たまたま買い出しでディノバの町に来てたみたいでな、そこでセルラ大陸から派遣された兵士からうちらがこの里にいるって聞いて、昨日、ここにたどり着いたってわけ」
もっとも、例の外森のところをうろうろしていたときに、タクトに不審者に間違われて成敗されそうになって、必死で状況を説明してつれてきてもらった、っというのが正しいンやけどね。右京はそういって苦笑いをした。
「あの、初めまして。小夏と言います。右京様には、いつもお世話になっております!」
そんな右京の紹介を受けて、女性・小夏はそういって乱馬に笑顔で挨拶をした。
礼儀正しいその姿に、乱馬も頭を下げる。
「ここから先は、ラヴィとの真剣な闘い。今のうちでは、足手まといになるのが落ちやし…じゃあうちになにができる?って考えてな。うちは、乱ちゃんたちが戻ってくるまで、この里を守るのを手伝おうと思ってな」
右京はそんな乱馬に対して、自分の心の内を述べた。
右京は、自分が以前、あかねに対してそう感じたように、
今の自分がパーティにとって一番の戦力不足であると、きちんと状況を把握しているのだ。
だからこそ、無理についていこうとはせずに、自分が今できることをしようと考えて結論を出したのだ。
乱馬には、そんな右京の気持ちがありがたかった。
だが、
「でもうっちゃん。その、うっちゃんはわかるんだけど…その…」
小夏、さんは大丈夫?…乱馬は小夏には聞こえないように小声で右京に呟いた。
そう。
治癒魔法のおかげで怪我も完治し、そしてある程度は闘い慣れしている右京はともかくとして、ただのウエイトレスと思われる小夏に、このような過酷な役目を負わせて平気なのか。
気になった乱馬が右京にそう気遣うも、
「ああ、問題あらへんよ。小夏はああ見えてな、くのいちなんよ」
「くのいち?」
「東方の国では、忍術っちゅー格闘技をつかう集団がおって、男を忍者、女をくのいちっちゅーんやて。小夏はくのいちやから。ああ見えて腕は立つんやで?」
「へえ!そりゃすげえな」
「それに…」
右京はそういって、突然小夏の元に歩み寄ったかと思うと、小夏が身に纏っていた着物を主一切り左右に剥いだ。
「ちょっ…うっちゃん!?」
あまりの行動に思わず目をそらした乱馬であったが、ゆっくり視線を戻し小夏の方をみるも…
「え!?」
「…何の因果かわからへんけど、くのいちっていっているくせに…男なんよねえ」
うちよりもしなしなしてるけど。右京はそういって、ため息をついている。
そう。そこに現れたのは、やけにうすーい胸板。しかも、凹凸がほとんどない。というよりむしろ、その胸板は男性そのもの。
衣服で隠れていた二の腕も、筋肉でしっかりと固まっている。
「もう!右京様ったら〜。やめてくださいよ〜」
当の小夏は、きゃっとか何とか言いながら、しなしなと体をくねらせ右京にすり寄っている。
見た目は完全に女性。しかし、隠れた部分は完全に男性。
人間、見た目にだまされてはいけないものである。
また一つ人生勉強をした乱馬であったが、それは今はおいておいて。
「…うっちゃん、本当にいいんだな?」
改めて、この里に残ることについて乱馬が右京に確認するも、
「うちは、決めたんや。だから、乱ちゃんたちは、ラヴィを倒して、そして…あかねちゃんをちゃんとつれてかえってきてや」
うち、あかねちゃんにちゃんと謝らなあかんねん。右京はしっかりとした口調でそういうと、
「小夏、いくで!そろそろ、みんなのご飯、支度せなあかん」
「はい!右京様」
「じゃあな、乱ちゃん。また後で」
と、小夏をつれて部屋を出ていった。
「…」
多くは語らないが、右京もここ数日、いろいろと思うこともあったろう。
だがそれを出さずにこうした結論を導き出し明るく皆を送ってくれようとしている右京に、乱馬は心から感謝した。
そんな乱馬が、右京と小夏のでていったドアを見つめていると、
「…王子よ」
神楽が、静かな口調で乱馬に再び問いかけた。
「わしと、そしてお主等の仲間二人と力を合わせて、この里は守る。じゃから…お主等は、お主等のするべきことをせよ」
「じいさん…」
「タクトを、頼んだぞ。ことがすべて終わり、そしてお主等が再び、タクトをこの地へ返してくれること、信じて待っておる」
神楽はそういって、そっと乱馬の手を取った。
乱馬は「ああ。約束する」と力強い口調でそういうと、神楽の手を強く握り返した。
…こんな状況だ。神楽とて、本当の本当はタクトを手放したくはないだろう。
だが、今回タクトの受けた心のダメージ、そして心中を察し、今回のような決断を下したのだ。
実際、さきのラヴィとの闘いの中でみることができたあのタクトの能力は、これからの闘いには大変心強い。
「タクトには、後でわしから話しておこう」
「わかった」
目的はそれぞれ違っても、目指すところは一緒。
乱馬は神楽の配慮に心から感謝しながら、神楽の部屋を出た。
そして、その足で…教会の裏手にある書庫へと向かった。
昼間ではあるが薄暗いその部屋には、ひんやりとした空気が流れている。
今は誰もいないその部屋に入った乱馬は、そっと中から鍵をかけ、そしてあかりをつけぬまま、部屋の隅に置いてあったソファへと腰掛け…やがて寝ころんだ。
本来ならば、神楽と話したそのことを、シャンプーたちにも伝えなければいけないところなのだが、
ラヴィとの闘いの後、時々どうしても、こう気もそぞろになるというか…脱力を感じるときがあるのだ。
「…」
乱馬は、寝ころんだままそっと、目を閉じる。
そして、先日のことを瞼の裏へと蘇らせては深く、ため息をついた。

 

 

…油断だった。闘いに没頭して、その隙を突かれてあかねを再び浚われた。
しかも、あかねを自分の后にするなど勝手なことを言う。
だが、次にラヴィとあうときがきっと最後の闘いだ。
悔しいが、今の段階ではラヴィに勝てる可能性がそうそう高いわけではない。
しかし…

「…」

だからといって、あかねを渡すつもりなどさらさらない。
この闘い。次の闘いは絶対に負けられないのだ。

乱馬は、目をゆっくり開いた。そしてのろのろと体を起こし、自分の両手へと目を落とす。

震えて、泣いてたんだよな…あのとき。
あのときはわからなかったけど、
きっと記憶が戻って、今までの状況を考えたとき自分がなにをしたらいいかって考えて…あいつのことだから、周りを危険な目に遭わせないために全部自分が背負う覚悟で。
本当は、自分が「あかね」だって、きっと俺にも話したかったんだ。話したかったのに、そうしないほうが俺たちが安全だからって、勝手に考えてそれで…

「…」

…ああ、俺は。ヒルダでもここでも、あかねを守ることができなかったのか。

 

乱馬はそんなことを思いながら、深くため息をついた。
だが、いつまでもそう、メソメソしているわけにもいかない。
いよいよ次は最後の闘いだ。そのために、タクトもつれて、最強の布陣でラヴィの元へと向かうのではないか。
「光」を手に入れるためにはそうそう簡単な道ではないと、以前、ミコトにも言われたではないか。

「…」

…そうだ。俺は絶対に、帰るんだ。
あかねをつれて、自分たちの国へ。そして…あの日、ウォータークールの街でした約束を果たす。
旅が終わったら、今までの旅のことを思い出して。ずっとずっと、そうやって二人は一緒にいるのだと。
あの日の約束を絶対に、果たすぞ。

乱馬はぎゅっと強く目を閉じそう誓うと、再び目を開けた。

と、その時だった。
ヴン…
一瞬だが、なぜか、腰に巻いているカードフォルダのカードたちが一瞬、共鳴した。
「?」
乱馬の強い決意に共鳴でもしたのか?…特にこの周りに新たなカードがあるわけでも、魔物の気配でもあるわけでもないのだが、何だろうか。
乱馬が不思議に思っていると、

コロコロ…

「!?」

そこには、なぜか…あかねがあの日、水路の中の岩の道で見つけたロッドが、転がっていた。
「なんで、これが…?」
乱馬がここに来たときには、このロッドは存在していないはずであった。
というより、このロッド。
あのあかねが再び浚われた日、真之介とあかねが最初にあかねの屋敷に向かったときは、あかねが手に持っていた。
だが、そこから真之介があかねをつれて森の外へと向かったときは、確か屋敷の中に落ちていたはずだ。後から乱馬たちが屋敷に行ったとき、たしかその床に転がっていたような記憶がある。
そこから、誰かが持ち出したわけでもなかったはずだが、なぜ今ここにあるのだろうか?
「…」
乱馬はそのロッドを床から拾い上げ、しげしげとその姿を見つめた。
すると、
ヒュン…!
「うわ!」
乱馬が、ロッドの先端の宝玉に偶然指で触れたその瞬間であった。
宝玉が急に発光し、一筋の光を放ち始めた。
それは、書庫の中の一角を指している。
乱馬は、その光をたどっていき、光の先にあるものをてにとった。
それは、一冊の本であった。
本のタイトルは、「クロノス」…どうやら、禁断の時の魔法・クロノスについてかかれている貴重な書物のようである。
「へえ?おまえ、この本の在処を教えてくれたのか?」
乱馬は、その書物を開いてみた…が、内容が難しすぎて一瞬目眩がする。
「だ、だめだ…これはシャンプーとムースに読んでもらうべきだぜ」
剣の腕があがり、そして男としても人物スキルはあがっても、悲しいかな、勉強嫌いは直っていないようである。
「とにかく、この本は持っていこう…って、あれ?」
乱馬は、開いた本を再び閉じて、小脇に抱えた。が、そこであることに気づいた。
そう。本を見つける前は手に持っていたはずの例のロッド。本を手にした瞬間、跡形もなく乱馬の手の中から消え失せてしまったのだ。
「え?あれ?落とした…?」
手にしていたものが、また再び消えた?いや、そんなはずはない。乱馬がそんなことを思いながら辺りを探すも、全く見あたらない。
「おっかしいなあ…」
乱馬は首を傾げつつも辺りをもう一度探し始めた。

…と。

ヴン…
再び、乱馬のカードフォルダが小さく共鳴をした。
そして今度は、1枚のカードだけなにやら光を放っている。
「?なんだ…?」
乱馬は、おもむろにその一枚のカードをフォルダから取り出した。
とたんに、
「なっ…そんな!」
思わず、言葉を失った。

そう。光を放っていたカードは、ついこの間、あかねと一緒に見つけた「THE WORLD」のカードであった。
そのカードには一人の女神が、木のロッドを持ち光や花に満ちあふれたカードであった。
が、今乱馬が手にしているそのカード。女神が手にしているのは…そう、先ほどまで乱馬が手にしていた、例のロッドに変わっている。
そしてなにより、見つけたときは長髪の女神が描かれていたはずなのに、
今は…髪が短く、そして色白で、笑顔のかわいらしい…おおよそ「女神」というよりもただただ可愛らしい女性が、女神として「光」で世界を暖かく包んでいるような絵柄に変わっていた。

「…あかねに似ている…」
乱馬には何故か、その女神はあかねに似ているように思えた。
それは、あかねのことを常に想い考えているからだろうか。だからそう見えたのか。
いや、でもこの絵柄は…
「…」
古に作られたカードの絵柄が、こんな風に途中で変化したのは初めてであった。
いったい、なにが起きたのか。
ロッドがカードに取り込まれることで、カードが本来の姿に戻ったのか?ではなぜ、そんなことが?
元に戻ったら、何故女神があかねの姿に似ているのか。

「…」
理由はわからないが、もしかしたらそれは、カードの中に取り込まれる前のロッドが導いた「クロノス」という書籍の中に答えがあるのかもしれない。
「…」
乱馬は、カードをゆっくりとフォルダの中へとしまった。
そして、
「…」

…何の因果かはわからないが、なんだか、あかねがそばにいるような気がする。
単純かもしれないけど、それだけで力がわいてくるもんだぜ。

俺は、こんなところでくよくよしているわけにはいかねえ!

「…」

乱馬は、「クロノス」を脇に抱えると、決意新たに書庫を出て皆が待つ教会の中へと向かった。
そして…三日後。良牙・ムース・シャンプー、そしてタクトと共に、ラヴィの居城を目指して癒しの里を出発、次の目的地であるディノバ港へと向かったのであった。

 

 

かくして、物語もついに、ラヴィとの最終決戦の地へと向かうのである。
ラヴィとの闘いの顛末も、乱馬やあかね達の命運も、そして「クロノス」魔法の詳細と21枚のカードの未来も、次の物語で語られることになる。


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