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追跡者

その頃。


 

真之介の手に落ちたあかねであったが、程なくして目を覚ました。
目を覚ましたとき、真之介はあかねを腕に抱き、屋敷のすぐ裏の森から、外の世界へと続く道を歩いていた。


そう。
癒しの里は、魔力を無効化する森の奥深くに位置する。
その森に居る間は、自分の全力の魔力を全力では使うことは出来ないのだ…里が守護している光の魔法以外は。
そのため、
手下の魔物を使うにしても、この森を抜けて一般の外の世界と繋がる道へでないと満足に出来ないのである。
あかねのいた屋敷は、里の外れ。
真之介はそれを利用して、あかねを外へと連れだそうとしているのである。


「…あ!」
目を覚ましたあかねは、状況をすぐに理解し、あわてて手足をばたつかせて真之介の腕の中から逃れた。
どのくらい、癒しの里から離れてしまったのかはわからない。
でも、このまま連れ去られるというのが分かったのに、それに黙って従う気もなかった。
「目を覚ましたのか…」
真之介が、目を覚ました途端再び自分へ抵抗をしたあかねに、声をかける。
真之介は相変わらずその風貌は変わってしまったままではあるが、
だが魔力は弱まっているとはいえど、剣の腕が弱まることはないはずである。
「もう一人の」ラヴィと違い、あかねに触れることが出来る真之介であれば、本気になればあかねの命を殺めることも、そして強引に自分のものにしようと襲いかかることも出来るはずであった。
だが真之介はそれをせず、抵抗するあかねをただ、里の外へ連れだしラヴィの元へ向かおうとしているのみのようにも見えた。

「どこへ向かおうとしているの?」
それまで手にしていたはずのロッドは、きっと屋敷の中に置き去りになってしまったのであろう。
素手で真之介に立ち向かおうとするなど無謀も良いところであるが、たとえ微力であっても、抵抗する姿勢はみせたい。
あかねは、心の中に抱える恐怖や不安などを真之介に見せぬように、凛としたたたずまいで彼に尋ねた。
「…あかねには気の毒だが、あいつの元へ行ってもらう」
すると、真之介は静かな口調でそう呟いた。
あいつ、というのはおそらく「もう一人のラヴィ」のことなのであろう。
「ねえ、真之介…さっきの話の続きを聞かせて。ラヴィが二人いるってどういうことなの?あなたは…ラヴィなのよね?でも、私が以前にみたラヴィとは全然別の人のように思えてならないのよ」
真之介が里の皆を欺き、魔法をかけ惑わし、そして神楽や右京をひどい目に遭わせたのは残念ながら事実であり、それについては本人も認めている。
だが、あかねが以前に、ヒルダの町で見かけた…そしてあの船の上で見かけたラヴィとは、どうしても同一人物と思えなかった。だっこそ、「ラヴィは二人いる」と聞いてある意味納得したのだが、
ではなぜ「二人いるのか?」という疑問にはまだ、答えてもらってはいない。
確かめなければならない。真実を知らなければ、なにもする手だてを考えることが出来ない。
それに、ラヴィの元に行くまでの時間を引き延ばしたい意味もある。
あかねは、真之介に再び尋ねた。
が、


「…ラヴィは二人。だが俺は…ラヴィであってラヴィではない」
「ねえ、それは…どういう意味なの?」
「俺は…ある目的のために作られた、偽りの存在。この世に存在しているが、でもやがて存在しなくなる。目的が終われば、俺という存在はもう存在しなくなるのだ」
「真之介、言っている意味が分からないわ。ある目的って何なの?どうして、それが達成されると真之介の存在がなくなるの?」
「…」


真之介は、あかねの再びの問いには答えてはくれなかった。
そのかわり、
「なにも知らないままの方が、きっと良い。俺が俺でなければ…」
「…え?」
「俺が俺でなければ…本当は巻き込みたくなどないのに…」
真之介はそう呟くと、今まで進めていた歩を止めた。
あかねもそれに続いて立ち止まる。
ただ…立ち止まった真之介はあかねに背を向けたままであるが、何故か首筋を押さえて顔をゆがめている。
例の、妖しい痣の部分だ。どうやらそこが原因で、苦痛を真之介に与えているようである。
「真之介?」
話の途中だというのに、一体、どうしたのだろう。
あかねは慌てて真之介のそばに駆け寄るも、
「…来るな!」
ドン!
真之介は駆け寄ったあかねの身体を強く押し返した。
無論、突然のことに驚いたあかねはバランスを崩し、地面へと倒れ込む。
「真之介…」
それでもすぐに体制を直し、あかねが真之介の名を呼ぶと、
「頼む、来ないでくれ…アイツが…アイツの力が流れ込んでくる…」
「アイツ…ラヴィのこと?真之介、一体…!?」
「アイツの声が聞こえる…アイツが…来る!」
真之介はそう叫んで、顔を苦痛で歪ませたまま、その場にヘたり込んでしまった。
「真之介!」
あかねがそんな真之介のそばに駆け寄るも、
「すまないあかね…ここはもう、森の外…アイツが、手下どもをつれて間もなくここへ来る」
「!」
「俺とアイツは、元は一人。しかもアイツが本体…本体が願えば、俺の思考や魔力など自由自在に調整できてしまう」
「そんな…」
「だからこのままでは、俺はおまえをアイツに差し出す。アイツがここにたどり着いた瞬間、俺の思考も身体も全てアイツに支配されてしまうから…」
真之介はそこまであかねに伝えると、更に顔を歪めた。息も上がっており、玉のような汗も額からとめどなく流れ落ちていた。
あかねは、そんな真之介の汗を自分の服の袖で拭いながら支える。
「騙していてすまなかった、あかね」
「真之介、今はそれどころじゃ…」
「俺は俺で…本当は皆を騙したくもなかった!それに…アイツにだってお前を渡したくないのに…!」
真之介は息絶え絶えにそう言うと、一度大きく息を吸った。
そして、
「だから…アイツが来る前に、俺がお前をアイツに差し出す前に、森の中へと戻れ、あかね」
「!」
「仲間に事情を話し、守ってもらえ…ラヴィの狙いは、勿論最後の1枚のカードを手に入れることもある。が、一番の目的はお前を手に入れること。お前を確実に手に入れるために、結果的にはこうして俺を生み出し、そして監視させていたのだから…」
真之介はそういって、首の痣を押さえながらよろよろと立ち上がった。そして、肩で息をしながらあかねから一歩でも遠くへ、遠くへと離れていく。
「真之介…」
もちろん、そんな真之介をあかねは見捨てて森に戻ることなど出来なかった。


彼が「もう一人の」ラヴィであることはわかった。
それなりに残忍なことをしてきたのもわかったし、それにあかねを監視するためにここへ配置されたのもわかった。
だが、やはりヒルダで出会った『本物の』ラヴィとは違う。
真之介は、まだあかねに全ては話してはくれない。
でもきっと、事情があってこのようなことになっているというのは、間違いないのだ。


…この里に来て以来、家族のように助けてくれていた真之介だ。
光の魔法の知識を教え、そして外から来たあかねが寂しくないように、最大限時間を作っては話し相手にもなってくれていた。
結果的に、たとえそれが自分を監視する為だったとはいえ、支えていてくれたことには変わりない。
真之介は、「もう一人の」ラヴィだった。
だが、優しかった真之介の、その優しさの全てが偽りであった…とは、こんな状況になってもまだ、あかねには思えないのだ。
だからこそ、まずは自分ので真之介に問いただしたくこうして危険を承知で一人、真之介と対峙したのだ。


「ああ…」


本当は自分の敵であったとはいえ、苦しんでいる真之介を見捨てて一人逃げることはできない。
あかねはその場でただ、苦しむ真之介をみつめ動くことが出来ないままでいた。


と、その時だった。


「ご苦労であった」


そんな声がしたかと思うと、辺りに突風が吹き抜けた。
土埃は舞い上がり、道の脇の茂みからは風に乗って枯れ葉が大量に宙へ飛ぶ。
「きゃああ!」
あかねは、身体が吹き飛ばされないようになんとか地面に身体を伏せてそれを防いだが、
「…待っていたぞ、この時を」
再び身体を起こしたその瞬間、目の前に声の主が移動してきており、恐怖で表情を曇らせた。


 

あかねの目の前には、一人の青年が立っていた。
身体には、分厚い漆黒のローブを羽織っていた。頭の部分を覆う布は、外してその顔をはっきりとあかねに見せている。
漆黒の髪に、蒼い瞳。そして…真之介と全く同じ顔形。
唯一違うのは、首筋に痣がない事だ。
それを見てあかねは、ふと思い出した。
ヒルダでラヴィと対峙した後、
そういえば乱馬が「右腕の上部に不気味な刺青があった」と言っていたことを思い出したのだ。
もしかしたらそれが唯一、外見でラヴィと真之介を見分ける点なのかもしれない。

そんな彼の身体から漂わせるオーラは何とも冷たく、そして闇の匂いがする。
あかねのオーラと相反するそれは、目に見えない空間でジリジリ…と音を立てて反応していた。
顔は同じなのに、身に纏うオーラが全く異なる。
でも、あかねにとっては初めてではない。
数えてそう…三度目だ。


「…ラヴィ…」


あかねは、恐怖で顔を強ばらせたまま呟いた。


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