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二人10

「人間て、頭ではわかっていてもどうにもならんことってあるもんやな」


右京は、時折休みながらも、ゆっくりとした口調で皆に話始めた。
あかねへ抱いていた「嫉妬」に目を付けられて、ラヴィの手下と思われる男の幻影を見せられていたこと、
それを振り払いたいともがいたけれど、どんどん「嫉妬」に心をむしばまれたこと。
そして…


「そしてあの日。乱ちゃんのお使いであかねちゃんのところにいったうちは、その帰りに里の中で一人の女の子に出会ったんや」


右京はそこまでいって、大きく深呼吸をした。
「その子の名前は、リオ。出会ったとき、草むらに隠れて泣いていた」
「リオが?そういえばリオの姿を昨日と今日はみていないな…」
里の子供ー外に修行に行く前の幼い子供ーのことをすべて知っているタクトがそう呟くと、
「リオちゃんは、うちと出会ったとき…怪我もしていないのに血塗れだったんや」
「!?」
「うちも驚いたよ。で、すぐに聞いた。なにがあったのかって…そしたら…」
右京はそういって、もう一度大きく深呼吸をした。
「リオちゃんは、カタルのおじいさんが死んだ瞬間を見ていたそうや。目の前で人間がその…吹き飛ぶのをみて、相当ショックだったんやろ。それでも、その犯人の手に掛かる前に何とか逃げ出した」
「じゃあ、リオが怪我をしていたわけじゃないんだな!?よかった…」
右京の言葉に、タクトが少しだけ安堵の表情を見せた。
が、
「その時は、怪我をしてはいなかった。でも…」


…そう。
右京とリオが出会った後に起こった惨劇のことを、そこからこうして生還した右京は、皆に伝えなければならない。


「でも…リオちゃんに、なにが起こったのかを聞こうとした時、リオちゃんは…」
その様子を見張っていたアイツに、殺されてしまった。
右京は、静かな口調でそう呟いた。


「嘘だ!だって…だって兄さんは…兄さんはリオのことだって知っているんだぞ!?それに…それにリオはまだ子供じゃないか!!そんなひどいことを兄さんがするわけがない!」


さすがにその話の内容にタクトが叫ぶ。


無理もない。
先ほどまで身内だと信じていた人物が実は魔物で、自分の身内の命を危険にさらし、更にまだ幼い少女まで無慈悲に手をかける…たとえタクトでなくても、受け入れがたい内容であった。
だが、悲しいけれど真実を知っているものがいる。
「…体調を崩した日に、黄色い花を煎じて飲んだんやて。そしたら、一人だけ魔法にかからずにすんだみたいやな。言ってたで。アイツは突然現れて、みんなに変な魔法をかけたって」
右京がそう呟くと、
「やっぱり…」
シャンプーがぼそっとそう呟いた。自分達がたててきた説に、確信を持ったのだろう。
ムースもその横でうなずいていた。
「リオちゃんは、うちにすべてを伝えようとしたけど、うちの目の前で殺されてしまった。うちは、そんなひどいことをした犯人の顔を見た。みた後に…闇の魔法をそそぎ込まれてしまったんや」
「…みたのか、顔を」
「みた。…真之介やったよ」
「兄さんの姿をした魔物ではないのか!?おまえ等が追っているラヴィって奴は、そういうのもきっと得意なんだろ!?だったら…」右京の話をやはり受け入れられないタクトが、改めて右京にそう詰め寄った。
だが、
「うちな…思い出してん。うちと乱ちゃんが、この里にきて初めてあかねちゃんのところに向かった時のこと」
右京は激昂するタクトにそう呟くと、それまで静かに話を聞いていた乱馬をみた。
「あかねのところにいくときのこと…?」
突然ふられたのもあるが、もともと考えるという作業がそうそう得意ではない乱馬には、答えを求めるのはそれはそれで酷である。
あかねのことを聞かれるならばこうではないが、それ以外のところにはそれほど気を配っていない、ということが明らかであった。
案の定、「えーと…」と乱馬が言葉を濁していると、
「里の子供が真之介へ寄ってきたんやけど、みんなから一人離れたところで、リオちゃんはみていた。真之介が話しかけても、おびえるように逃げていった。あのときは、リオちゃんは変わっている子だと説明されたから何ともおもわへんかったけど、変わってたのはあのこじゃなくて、ほかのみんなやったんやな」
右京はそういって、ため息をついた。
「リオちゃんは、里の外れの茂みの中に置かれていると思う」
「そうか…」
「そしてうちは、真之介にカードの情報を流して、そして…あかねちゃんを襲った。あかねちゃんに闇の魔法を浄化されて吹っ飛ばされた後、みんなが来るまでの間に一度目が覚めたんやえど、真之介に一撃食らってな」
「!?」
「だってうちがみんなの元に戻ったら、今ここではなしていることをみんなに知られてまうやろ?その前にとどめを刺そうとおもったんやろうな。でも…皆が思ったより早く到着したから、うちを捨てて、自分も怪我をしたかのようなフリをしてでていったんや」
右京はそういって、皆をぐるりと見回した。
「真之介にとどめを刺されそうになったとき、本当に死ぬかもって、うちも覚悟してん。実際に頭も殴られたし、身体も殴られたし。意識だって戻らなかった。でも…でも、目が覚めたら、あかねちゃんの顔が見えたん…」
右京はそういって、涙を一筋流した。
「うちが寝ている部屋に、あかねちゃんきてくれたんやね。よくわからないけど、なんか身体がほわーって暖かくなって、軽くなって、みるみる意識も戻って…目を覚ましたらあかねちゃんが、うちの手を握ってた。あんなひどいことをしたのに、癒しの魔法でうちの怪我を治してくれた。うち、嫉妬にとらわれて魔物と同じことをした自分が恥ずかしくて…」
右京はそういって涙をまた流していた。
乱馬達はその話をそれまでじっと聞いていたが、
「あれ?でも…ちょっと待ってくれよ」
乱馬は、泣いている右京に涙を拭く為の布切れを渡しながらも、口を挟んだ。
「あかねが…うっちゃんのところに行って施術をしたのか?」
「そうやけど…」
「でも、あかねはあの時…」
乱馬は、右京に確認しつつもふと、首を傾げる。


…そう。
今朝方、確かにあかねは、真之介と屋敷に戻る前に一人で部屋を出ていった。だがその時は身だしなみを整えたいからと、言っていたはずだが…。
「よくわからんけど、あかねちゃん、目を覚ましたうちに皆へ全てをはなすのは、自分がこれから向かう屋敷につく頃にしてほしいって…言ってた。何でって聞いたら、その方が、みんなのために良いからって」
「…」
右京の言葉に、一同は戸惑った。
その中でも、乱馬は戸惑うだけではなく動揺していた。


あかねは、部屋から出る時に自分にも同じことを言っていた。
だから、律儀に約束を守って時間をおいて皆に話をした。
あのときは理由もわからなかったから、深追いはしなかったけど…右京にも同じことを言ったというと、絶対に何か考えが合ってのことに違いない。


乱馬は、皆に自分もあかねに同じことを言われたことを伝えた。
「…それは変じゃな」
話をきいたムースも、やはり乱馬と同じことを呟いた。
だが、何故あかねがそうしたかまでは、やはりすぐには思い至らない。
乱馬達はあれこれとそれぞれ思いを巡らせていたが、


「…もしかしたら」


そんな中。
それまで、じっと黙っていたタクトがぼそっと呟いた。
「もしかしたら、何だよ」
そんなタクトのそばにいた良牙がタクトに訪ねると、
「…彼女、記憶が戻ったんじゃないか?」
タクトはそういって、乱馬をみた。


「…」


…実はそのことは、乱馬も思っていた。
カードを見つける前に偶然ロッドを手に入れた時。乱馬はあかねが何気なく呟いた一言が引っかかっていた。
それに何故記憶が戻ったのか、どのタイミングだったのかもわからないし、気になったとはいえ確たる証拠はなかった。
だからもう少し落ち着いたらあかねにそのことを聞いてみようと思っていたが。
「…根拠は?」
他にもそう思うものが出たというのなら、別である。
乱馬がタクトに尋ねると、
「…兄さんのことは、今でも信じられない。信じたくもない。だがもしも…もしも、おまえ等が言っていることが正しいとすれば、だ」
タクトはそういって、そっと目を閉じた。そして何かを決意したかのように再び目を開けると、
「彼女がここへきて、そして命が危険だった時。そんな彼女に薬を…薬品庫から薬を探し出して飲ませたのは兄さんだ。その薬を飲んだ彼女は、身体は直ったが…それと引き替えに記憶を失った」
「…」
「兄さんがもしも本当は敵で、ここにたどり着いた彼女をねらっていたのだとしたら、飲ませた薬は本当に薬だったのか?」
「!?」
「命は救った。だけど記憶は失った…兄さんには彼女が記憶をなくしていないと困る事情があった、と考えてみたのだが…」
タクトはそういって、口をつぐんだ。
真之介を、今でも信じたい。だが…突きつけられている事実は、自分の意志とは正反対のものばかり。
誰よりも一番動揺しそして困惑しているのはタクトなのだ。
だが、全てを明らかにするためにも、現実と向き合わなくてはならない。
タクトは、頭をフル回転させてそう、呟いたのだ。
それを受けた乱馬であったが、それよりも先にシャンプーが口を開いた。
「…ここにたどり着く前のあかねは、船上でラヴィと出くわして、光の魔法の使い手として覚醒したある。
もしかしたらその時に…確かその時は、視力が落ちてはいたけれどまだちゃんと目が見えていたはずあるから…」
「…ラヴィの正体をみたのかもしれぬな」
「それある!」
「え?」
「あかねはきっと、海に落ちる前にラヴィの顔をみたある。だから、薬を飲んで身体が完治したら、当然のことながら視力も戻るある。そうなってしまったら、追ってきた自分の顔を見て、ラヴィだと気づいてしまう。だから…記憶が消えるような薬を調合した。間違いないね!」
シャンプーはそういって、ムースをみた。ムースもシャンプーのその考えには同意しているようだ。
「…彼女が昨夜流されたのは、浄化の泉だったはず。浄化の泉は、毒を浄化するんだ。兄さんの調合した薬が本来は毒だったとしたら…」
「…泉の水を飲んだ時に、毒が浄化された」
タクトの言葉を受けて、乱馬はそうつぶやきそしてゆっくりと目を閉じる。


やっぱり、あかねの記憶は戻っていたんだ。乱馬の疑問は間違いではなかった。
あのとき感じた違和感は、やはりそうだった。
乱馬はそう確信した。
だが、


 

「…記憶が戻っているってことは、あかねは真之介がラヴィだとわかっているってことだろ?じゃあ何故一緒に自分の屋敷へ戻ったりしたんだよ?そんなこと真之介に知られたら自分の命だって…」


乱馬はそこまで言ってはっと息をのんだ。
それは乱馬だけではなく、シャンプーもムースも、いや、その場にいる一同皆がそうだった。


…記憶が戻っているはずのあかねが、何故、皆に黙って真之介を連れて一人屋敷へ戻ったのか?
ばれたら、自分のみが危険だというのに何故なのか。
しかも、真実を皆が知る時間を少し遅らせてでも二人になりたかった理由とは?
それはもしかして、


「…まさか…アイツ、自分一人で決着つけるつもりなんじゃ…」


そう呟いた乱馬の背中に嫌な汗が一筋流れた。
光と闇は相反するもの。正直言って、今真之介と戦うとすれば、あかねの光の魔法が一番強力かもしれない。ほかの属性の魔法は無効化されているし、強力な闇の魔法があったとしても、あかねの力なら浄化することが出来る。
それに、真之介はあかねになら油断するかもしれない。
自分が決着をつけることで、皆を危険な目に遭わせないようにと考えたのならば、その可能性はなくはない。


「とにかく、今、あかねと真之介は二人きりだ。急いでいかなければ…!」
乱馬は、落ち着かない様子で椅子から立ち上がった。それに続いて良牙とタクトも立ち上がる。
良牙はともかくとして、タクトに至っては、おそらく真相を真之介にきちんと尋ねたい一心なのだろう。
「我らも、行く」
シャンプーとムースも立ち上がったが、
「うちはここで、待っている。…あの時あかねちゃんにひどいこと言った手前、足手まといになるとわかっていて、一緒に行くのは出来へんしな…」
まだ本調子ではない右京はそういって、皆に頭を下げた。
あの時、というのは、ヒルダの街で初めてラヴィと対決し、ムースが大怪我をした時のことだ。
事情を知らない右京は、剣を取り損ねたり皆をみすみす危険な目に遭わせたあかねを、理論は正しいとはいえ非難をした。
今、自分がその時と逆の状況になりつつあると感じたのだろう。
「大丈夫、うっちゃん。とにかくうっちゃんはちゃんと身体を治すんだ」
もちろん、右京の気持ちはわかるし行動を無理強いするつもりはない。
乱馬はそんな右京に優しく声をかけると、
「…急ごう。あかねが危ない」
腰に差していた剣を静かに抜きながら、部屋を飛び出した。
皆もそれに続いて部屋を出、あかねと真之介がいる屋敷へと急いだのだった。


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