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二人8

「あかね、一体何を言い出すんだ」


 


あかねの質問に対し、真之介は「悪い冗談はやめないか」と笑顔でいさめようとするが、
「真之介、もうやめましょう。…根拠があるのよ」
あかねは冷静な口調でそういうと、ロッドを構える手を下ろさないまま、真之介に語り始めた。
「心を取り込まれていた右京の首筋に触れたとき、私は近くの泉に飛ばされたの」
「ああ、そういっていたな。可哀想に…それで混乱しているんだろう?」
「いいえ。真之介…あの泉は、浄化の泉。体内に蓄積された毒をその名の通り浄化してくれた」
「毒…?」
「そう、毒よ。あなたが私を救ってくれた薬が…毒だったのね」
あかねはそう呟くと、一呼吸おいた。
そして再び続ける。
「二ヶ月前のあの日、海岸に打ち上げられた私は、タクトくんによってここへと運ばれた。でも治療の施しようがなく弱っていた」
「そうだよ。だから、薬品庫で薬を探して飲ませたんだ。おかげで、あかねは元気になった」
「でもそれと引き換えに、私は記憶を失った…」
あかねはそこまで言って、真之介を強い瞳で見つめる。
「昨日までは、それは薬の副作用だと…そう信じていた。貴方も、そして神楽様たちもそう言っていた。だから私は信じていた。でも…実際はそうじゃなかった!」
「…」
「そういう薬を探したのか、それとも貴方が調合したのかはわからないわ。でも貴方には、私の記憶を消さなければならない事情があった。私の身体だけが感知して目が見えてしまったら…不都合だったからよ」
「あかね、何を言うんだ。俺に何の不都合があると…」
「…私が、貴方の顔を見たからよ!あの日、あの時、船の上で…たくさんの人の命を奪い、そして私の力を覚醒させたあの時に…」
あかねはそこまで言うと、一筋、涙を頬に伝わせた。
「だから、私の傍にいる振りをして、私のことを気遣う振りをして、そして…理由をつけて乱馬から遠ざけるようにして、監視していたんでしょう?」
そして、手に構えていたロッドに力をこめる。
そんなあかねに対し、真之介はまだ冷静だ。
「可哀想なあかね、あいつに何か余計なことを吹き込まれて混乱してしまったんだな…大丈夫、俺があいつらを追い出してやるから。そうしたらあかねは、安心してここにいられる」
強い瞳で自分を見つめるあかねに、あくまでも紳士的、そしてあくまでも柔和に接しようとするが、
「信じたくなかった。二ヶ月間私を支えてくれて守ってくれた貴方が、あんな残虐で非道で、そして…私の大切な人の敵であると…そんなこと信じたくない。でも、真実は変えられない」
あかねは真之介を強く見据えたまま、ロッドにもう一度力をこめた。
するとロッドの先端についている宝玉が一瞬白く光り、、
ヒュッ…
細い光の筋へと形を変えて、真之介の首筋あたりを貫いた。
その瞬間だった。


バシュッ…


それまで何もなかった真之介の肌…光が触れた首の部分のみだが、その部分に変化が訪れた。
肌色の塗料のようなものが崩れ落ち、光が貫いたその部分には…黒い花のような紋章がくっきりと浮かび上がっていた。
その痣は、せんだって右京の首元にも浮かび上がっていたもの。
魔物に操られているという、証。
もっとも、船上今回は操られている、という状況ではなく操っている本人、ということなのだろうが。
ともあれ、
「…ばれないように、特殊な塗料で隠していたのね」
あかねはようやくそこでロッドを構える手を緩めた。
「私に光の魔法の知識を教えてくれていたのは、私の能力を早く完全に覚醒させる為だったのね…私が街の人に施術しているときに絶対に外に出ていたのは、万が一光が漏れて自分の紋章が浮かび上がってしまうことを恐れたからなの?」
答えて、真之介。
あかねは、もう一筋涙を流しながら真之介に問う。


…里に来て以来、里の皆は優しくしてくれていたとはいえ、
記憶をなくし、自分が一体どこからきた何者なのかもわからないあかねは、不安で心細い思いをしていた。
そんな時、ずっとあかねを支えて守ってくれていたのが真之介だった。
その優しさや思慮深さ、そして知識の多さに何度も助けられたあかねは、
特別な親しみや好意を持っていたのかもしれない。
それはきっと、恋愛感情というものとは違う、どちらかというと、そう…兄妹というか家族のような、
そういう思いなのかもしれないが。
だから、浄化の泉で溺れてその後目覚めた時。
一気に失う前の記憶が蘇った時は本当に…戸惑った。
何故、あの時見た男が自分の傍にいて自分を守っているのか。
何故、自分にはあの男の記憶がなかったのか。
それらを色々と順番に考えたとき、浄化の泉で溺れた際の、身体に感じていた妙な「熱」を思い出した。
あれはきっと、身体の中に蓄積された「毒」が浄化されている証。
では、何が「毒」なのか…そこに思い至るのに時間はかからなかった。


すべてを思いだしてしまったら、そしてすべての事情を理解してしまったら、
このままにしておくことは出来ない。
でも、せめて他の人の手で真実を暴かれて事が進む前に…自分で決着をつける。
あかねはそう考えていた。


「…」
首の紋章をあらわにされた真之介は、その痣を隠すことなくあかねのことをじっと見つめていた。
あかねも、真之介の次の言葉を待った。
が…


「…結局はアイツが言うとおりとなってしまった」
「え…?」
「俺は…俺なのに」


真之介はあかねの問いには答えず、まるで独り言のようにそう呟くと、


「例え偽りの日々とわかっていても、気づかなければもう少しこうしていられたのに…やはり俺には、それを望む資格はないということなのだな」
「真之介、貴方一体…」
「でも、しかたがない。手荒なまねはしたくない、あかね…俺と一緒に来てもらう」


真之介はそういって、ゆっくりと自分の首の痣に触れた。
するとその瞬間、
バシュッ…薄暗い光が部屋中を一瞬覆ったかと思うと、
「!?」
あかねの目の前にいた真之介の姿が…瞬時に変化した。
それまで、この里の人間として衣服をまとい、そして温和で柔らかな印象をかもし出していた彼であったが、
一瞬にしてその装いを変えていた。
黒かった瞳の色が、ブルーへと変色していた。柔らかだったその印象も一変し、表情も険しくなる。
髪の色も、柔らかだった茶色から漆黒へと変化している。
真之介の身体からも、それまでは感じなかったようなオーラが発せられていた。
「っ…」
あかねは、身の危険を感じて真之介から逃れようと、先ほど施錠したドアの鍵を開けようとしたが、
「きゃっ…」
そうやすやすとターゲットを逃がすほど、真之介も優しくはない。
あかねはその手を掴まれ、そして真之介のほうへと引っ張られる。
両手首を真之介に捕まれ、壁際に背中を押し付けられた。
…これまでの真之介ならば、絶対にしない乱暴な行為だ。
「…手荒なまねはしたくないんだ。頼むから、言うことを聞いてくれ」
真之介はぐっとあかねへと顔を近づけてそう呟く。
氷のような瞳に、それまでとは違う異質の気配。
あかねはその変貌振りに身体を震えさせるも、
「…ひとつだけわからないことがあるの」
あかねには、先ほどからひとつ気になることがあった。だからそれが解決するまでは、怖くてもそれに臆してはいけないと…自分を奮い立たせる。
あかねがわからないこと。それは…


「貴方は…ラヴィなんでしょう?そして私は、光属性の魔法の使い手。光と闇は相反し、反発しあうはず。だから神楽様に触れたときも、右京に触れたときも、お互いの力が反発してはじきあったはず」
「…」
「なのに、どうして?船の上で私に触れようとしたラヴィは、結局力が反発しあって私に触れることが出来なかった。でも今あなたは、私の身体に触れているわ。それは、何故?」


そう。
今の今まで、たとえ正体を隠していたとはいえ、ラヴィであることは変わりないはず。
以前に出会ったラヴィは、力が覚醒した直後のあかねに触れることが出来なかったはず。でも、今の真之介は、違う。
この里に来た当初から、そして今も。しっかりとあかねに触れることが出来る。
この里の中の特殊な気のせいなのか?外部のものの魔力を無効化する森が近くにあるからか?
神楽の力が弱まっている今、それは違うとは思うけれど…


あかねがそんなことを考えていると、
「…形は同じだが、異なるもの」
真之介が、ボソッとそんなことを呟いた。
「どういうこと…?」
その言葉の意味がわからず、あかねが真之介に問い返すと、
「俺とアイツは、形は同じだが異なる存在だということ」
「アイツ…?」
「あかねが言うラヴィという男は…二人いるってこと」
「!?」
「もっとも…アイツにとって俺は、ダミーでしかない」
真之介はそういって、あかねの顔をまっすぐ見つめた。
その瞳は、氷のようで冷たく鋭いものではあるけれど、
でもどことなく…もの悲しげにも見える。
「…」
一体、どういうことなのか。
そもそも、ラヴィが「二人」というのは一体…?
あかねがそんなことを思っていると、
「…あかね、すまない。でも、こうするより他ないんだ」
トスッ…
真之介は素早くあかねの首筋へ指で触れる。
その瞬間、あかねの身体はガクン、と力を失いそのまま意識も遠のいた。
どうやら、身体の力を奪い気絶させる急所をついたのだろう。
「…」
カラカラ…
倒れたあかねの傍を、光を失ったロッドが転がっていく。
真之介は、ゆっくりとあかねの身体を抱き上げた。そして抱き上げたあかねの身体に転がったロッドを抱かせると、
「すまない、あかね」
自分の腕の中で、ぐったりとして動かないあかねの頬へと額を寄せてそう呟いた。


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