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海賊キリトの秘宝3

「秘宝島に行くには、魔物が住む海域を越えていかなくてはいけないんだ」


・・・キリトとランゼが借りてきた船に乗り込んだ乱馬達は、船を進めながらこれからの進路について話し合っていた。
船の操縦は、船を貸してくれたキリト達の知人・リュートという人物がしてくれている。
このリュート、孤児院を飛び出して途方にくれていたキリトとランゼに、親切に手を差し伸べてくれた人物だそうだ。
リュートは街で酒場を経営している半面、こうして船を運転する事で副収入を得る生活をしている。
金銭的にはキリト達を援助してはくれないが、精神的に大分助けてもらっているとの事。
そのリュートの運転で、乱馬達は大海原を進んでいく。
空を見上げれば、白い海鳥達が船と並行して飛んでいく。
青い、どこまでも続く海には、船が進むと同時に白い小さな波が生まれては消え、生まれては消え・・・の繰り返し だ。
船が進む勢いで、来ている衣服や、船の上部に掲げられた帆はバタバタと翻り、そのたびに風になびく短い髪を、あかねは幾度となく耳へとかけては整える。
船の進む音と、向かい風の強さ。そして、否応無しに身体を包む潮の香り。
街にいる時はそんなに意識しなかったが、ようやくここが「海」なのだという事を、乱馬も、そして皆も感じていた。
・・・
「秘宝島の周りは、点々と所在した石の杭で囲まれているんだ。その杭の内側に一歩入れば、そこからはもう魔物の 住む領域。そこを越えないと島には入れない・・・だから、今まで色んな冒険者達はその手前で引き返してきたのさ」
船の甲板に並び、徐々に近づいてくる島を眺めている時、不意にランゼがそう呟いた。
「杭の立つ場所から島の本土まで、どれくらいの距離があるんだ?」
そのランゼに、乱馬が尋ねる。
「そうだね、ざっと・・・百七十フィートくらいかな」
「百七十フィート・・・」
ランゼの口から聞きなれない「単位」を聞いた乱馬は、一瞬つまってしまった。
そう、世界を旅するという事は、通貨や距離の単位などが異なる可能性だってあるのだ。
「フィ、フィート・・・」
乱馬は、思わず両手の指を広げて聞いたことない単位を自国の単位に換算しようとするも、
「・・・」
もちろん、その変換基準を知らないのだ、出来るはずがない。
「・・・」
乱馬が情けない顔であかねの方を振り返った。
「・・・一フィートは、三十センチよ。百七十フィートで、約五十メートル」
そんな乱馬に対し、あかねは「やれやれ」と言った表情でため息をつきながら答える。
「あんた、王子でしょ。ちゃんと異国の単位くらい勉強しておきなさいよ」
「し、仕方ねえだろっ」
「頼りないわねえ・・・。一国の王子がお馬鹿さんじゃ困るでしょ」
「う・・・」
あかねが、更にもう一度ため息をつくと、
「乱馬、私はバカでも乱馬が好きあるぞっ」
そんなあかねを押しのけるようにして、シャンプーが乱馬とあかねの間へと入ってきては彼に抱きつく。
「ばっ、バカは余計だっ」
「あんた、怒る所はそこじゃないでしょーが」
「あかねさん、そんなバカ王子は放って置いて、向こうでもっと知的なお話でもしましょうっ」
「バカ王子って何だよっ」
その内、乱馬、あかね、シャンプー、良牙・・・四つ巴でややこしい話になり、あーでもない、こーでもないと船上で揉 め事が始まってしまった。
が、
「ちょっとあんた達。もめるのは、宝を取り戻してからにしてくれる?もうすぐ、魔物のいる領域につくんだから」
「あ・・・」
「まずはそこから五十メートル、魔物に捕まらないように島へとわたる方法を考えなくてはいけないんだよ。喧嘩なんて後にし てよね」
ランゼにそう一喝され、乱馬達はすぐに反省をした。
「杭の領域から、島までの五十メートル、一箇所だけ木で出来た桟橋があるんだ。そこを歩いて渡る以外に方法はないんだ よ」
「泳いでは渡れないのか?」
「生身の人間が泳いでなんて渡ったら、魔物に3秒で食われちまうよ」
「じゃあ、その桟橋を歩けばいいのか?」
「そうだけど。でも、島に渡るものがその橋を通る事が分かっているから、魔物たちはいつも目を光らせているのさ。ただ走って渡るだけでは、だめさ。何とかして島まで渡るまでの間の10秒弱、魔物達の目から注意を逸らさないと いけない」
そして、反省している乱馬達に、「ほら、」とある一箇所を指差してそちらを見るように促す。
「・・・」
乱馬達は、ランゼが指を指した方向へと目をやった。
するとそこには、海の中に立っている小さな杭から、島の本土へ向かってまっすぐに伸びている、朽ちかけた木の桟 橋が伸びていた。
桟橋は、海の中にぽつんと立てられている。
そして、島の本土・・・砂浜へと真っ直ぐに伸びていた。
砂浜からはまた真っ直ぐの木の生い茂った小道が続いていて、螺旋状に少し昇っていけば、キリトの秘宝とやらが隠 されている「屋敷」へとたどり着けるようだ。
桟橋の周囲の海は穏かで、波一つ立っていない。
子供が水遊びをしていてもおかしく無いような、そんな海辺の光景だ。
「・・・こうして見ると、何の事はない桟橋に見えるのに」
あかねが素直な感想をぼつりと洩らすと、
「・・・それは見た目だけね。この桟橋に、結界が張られているから何もないように見えるある」
そんなあかねに、シャンプーがぼそっと呟いた。
「え?」
あかねがシャンプーをふと見ると、それまで乱馬に対してにこやかに笑っていたはずのシャンプーの表情が、ピリ リ・・・と張り詰めている。
シャンプーは、自分の右腕にはめている時計のようなものをスッ・・・と手首ごと海のほうへと差し出した。
すると、
キー・・・・ン・・・
海へと手首が飛び出した瞬間、まるで超音波のような高音が、あかねの耳にも飛び込んできた。
「や・・・な、なに・・・?」
「なにさ、この音?」
あかねも、そしてそれまで気丈に振舞っていたランゼも。
そればかりか、
「うわっ・・・」
「耳障りだな」
乱馬や、良牙までもその音に顔をしかめている。
「・・・これは、ひいばあちゃんからもらった、魔力感知機ね。魔力を感じれば感じるほど、この機械は音を出すね」
シャンプーはそう言って、手首を自分の体のほうへと引き戻した。
とたんに、それまでしていた高音がパタリとやむ。
「・・・たぶん、魔物たち、私たちがあの桟橋に降り立つのを待っているある。何も知らずに降り立ったのを見計らって、襲いかかろうとしているあるね。海の中からこれだけの魔力を感じるという のは、ただ事ではない」
「!」
「しかも、乱馬も、私も、良牙もいるのに魔物の気配さえも感じなかった。自分の気配を消す事ができる魔物、強い魔 物ね」
シャンプーはそう言って、右手首につけられた「魔力感知機」をぎゅっと抱き締める。
「・・・や、やっぱり魔物がいるんだよ。だから、普通の人間じゃこの島には立ち入る事が出来ないんだ。皆、ここまで で引き返しちまうんだよ」
ランゼが、そんなシャンプーの言葉を受けて、少し怖気づいたような言葉を吐いた。
「だ、大丈夫よランゼさん!貴方の事はキリト君が守ってくれるんだから・・・・」
あかねは、今がキリトを売り込むチャンス!とばかりにランゼにそういうも、
「キリト?さっきから下の船室で船酔いで倒れているやつに期待なんかしてないわよ」
「え?」
「船酔いひどい見たいだし、リュートさんと一緒にここで待たせておこうと思って。秘宝島に行くのはあんた達とあたし で良いわ」
ランゼはバッサリと冷めた口調でそんな事を言っていた。
「・・・だめだこりゃ」
そんなランゼの言葉を聞いて、乱馬がボソッとそんな事を呟く。
「ばかっ」
あかねは、そんな乱馬の足をぎゅっとわざと踏みつけてやると、
「そ、それはダメよ!あの秘宝島にある宝は、キリト君の物なのよ?彼がとりに行かないでどうするのよっ」
「だって、役に立たないんだからしょうがないじゃないの」
「そんなことないっ。彼もきっと、役に立つわっ。だからランゼさん、彼をここまで連れてきて!」
「え?」
「いいから!彼も一緒に行くのよっ。ほら、早くっ」
「わ、分かったよ・・・」
あかねの剣幕に圧倒されたランゼは、しぶしぶ下の船室までキリトを呼びに向かった。
「・・・でも、あの女の言う事、一理あるね。腕も立たないし船酔いじゃ、足手まといもいいところね」
そんなランゼの背中を見つめながら、シャンプーがぼそっと呟いた。
「でも、彼は足が速いのよっ。きっと、役に立つわ」
・・・それに、ランゼさんを守りたいって気持ちは誰よりも強いんですもの。
あかねは心配そうなシャンプーや良牙にそう言って聞かせると、
「それよりも、桟橋を渡る間魔物たちから目をそらさせる方法を考えましょう?桟橋を渡りきってしまえば、魔物は追っ てこないんでしょ?」
気を取り直させるべく、パンパン、とみなの前で手を叩いた。
「水の中にすむ魔物は、基本的に水がない所には追ってこないね。桟橋自体が水の上に立っているから、桟橋が危 険なだけ」
「そう」
「ただ、渡りきった陸地の状態は降り立ってみないと分からないある。だから、まずは桟橋の魔物の目を欺きながら 陸地へ渡って、渡った先でシールドを張る人間が必要ね」
そんなあかねに対して、先ほどまでとは打って変わったような真面目な口調でシャンプーが言った。
「シールドって?」
乱馬がシャンプーに尋ねると、
「簡単に言えば、魔物から私達の身を守る為の壁、見たいなものね。東洋では、結界・・・なんて表現しているある」
「結界、か。てことは、それを作れるのはシャンプー、おめえだけじゃねーか」
「そうある。ただ・・・」
「ただ?」
「私がシールドを作るまでに、少し時間がかかるある。その間、私は無防備ね。その私を守ってくれる人、必要あ る」
シャンプーはそう言って、急に甘えたような表情で乱馬に擦り寄った。
「乱馬、乱馬のその剣で、私を守るよろし。乱馬が私を全力で守ってくれている間、私は陸地にシールドを作るある」
「そうだな、じゃあ俺がシールドを作っている間ガードするか」
「大歓喜!乱馬、命懸けで私を守るあるぞっ」
もちろん、皆を守る為の作業の要請を頼まれ、乱馬が断るはずがない。
皆だって、それならば文句をいうことなど出来ない。
それを見越して提案したシャンプーは、嬉しそうにそう言って乱馬に抱き付いた。
「・・・じゃあ、まずはシャンプーと乱馬が向こう岸に渡ってシールドを作るのね?」
あかねは、そんなじゃれあっている二人を無視するようにそう呟いた。
「そうある。私と乱馬が行くある」
「それは分かったから。その後のあたし達はどうすればいいのよ?」
「そうだったある。シールドを作った後、今度はシールドの内側とこの桟橋、そして船を直結する『道』を私が作るある。皆はその道をとおって私達の元まで来るがいいね」
「乱馬とシャンプーはどうするの?」
「私と乱馬の二人は、一時的に魔物から気配を消す魔法を使って、二人っきりでまず、向こう岸へと渡っていくある」
シャンプーは、「二人」という表現をやけに強調してそう言った。
「はいはい」
あかねは、思わずため息をつく。
シャンプーはそんなあかねを無視し、最後に、
「ただし・・・シールドを作ること自体が、強力な魔力を要するね。道が出来て、だいたい30秒が限度ある」
といって、皆に注意を促した。
「じゃあ、まずは女性からだな。あかねさんと、あのランゼって女を走らせて、次にあの船酔い野郎。最後が俺だな」
良牙が、シャンプーの話を聞きながらそんな計画を立てている。
「じゃあ、ランゼさんとキリト君が戻ってきたらその話をしましょう」
「そうですね、あかねさん。・・・ということだ。今の説明で分かったか?バカ王子」
「バカは余計だっ」
「まあ、安心しろ乱馬。お前の変りに俺が、あかねさんを全力で守って見せるから」
「くっ・・・」
そして、そんな良牙と乱馬は、ギリギリ・・とお互いにらみ合っている。
「もー、喧嘩しないのっ」
あかねは、今にも喧嘩を宥めながら、ランゼとキリトが甲板にやってくるのを待った。




「・・・それじゃあ、私と乱馬がまず、行くある」
・・・それから、少しして。
船酔いで真っ青な顔をしているキリトをチラリ、と冷たい目線で見つめつつ、シャンプーと乱馬が、まずは船から桟橋 へと下りていった。
・・・そんな二人の体の周りには、うっすらと、水色の「壁」が出来ていた。
それは、シャンプーが先ほど言っていた、『魔物から気配を消す魔法』という奴なのだろう。
本当は全員にその魔法をかければ一番良いはずだが、陸地でシールドを作る分の魔力を取っておくためには、そうも いかないようだ。
見た目ではただの壁だが、この魔法は、見た目よりも遥かに魔力を使うらしい。
・・・
甲板に残っているあかね達は、桟橋をゆっくりと歩いていく乱馬とシャンプーの姿をじっと見守っていた。
気配を消している魔法がかかっているだけあって、二人が桟橋の上を歩いていても、桟橋の下の海に潜む魔物たち は何の動きも見せない。
あかね達の目に映るのは、あいもかわらず穏かな、海辺の風景だった。
しかし。
「・・・」
二人が陸地に着き、打ち寄せる波が砂浜を濡らさない程度の場所に降り立ったその瞬間、

シャアアアア!
ザザーンっ・・・・!

「!?」
・・・まるで、リミッターが外れる瞬間を待っていたかのように、それまで波一つ立っていなかった海面が盛り上がっ た。
そして、
ザーンっ・・・
ザーンっ・・・
桟橋の上を、何往復もするように・・・魔物が飛び始めた。
その反動で、
「きゃっ・・・」
「うわっ・・・」
それまで穏かに浮かんでいた船も、ぐらり、ぐらりと揺れ動く。
かろうじて、杭の外には出てこないようになっているものの、 触れてもいないのに大きな船を揺らす事のできるその魔物の力が強大だという事くらい、
あかねにも、良牙にも、そして、格闘に精通していないランゼ達にもすぐに理解が出来た。

ザーンっ・・・
ザーンっ・・・

あかね達の眺める桟橋の上を飛び交う、巨大な、魚の魔物達。
目の辺りまで裂けた大きな口、逆立つ鱗、そしてそこから覗く立派な牙。
ギロリ、と血走るぎょろりとした瞳が、あかね達の背筋に嫌な汗を生まれさせる。


「あ、あんなのがいるのかっ・・・お、おええっ・・・」
その魔物を眺めながら、キリトは再び甲板の隅で吐き始めた。
「ちょっとっ。しっかりしなよ、キリトっ」
そのキリトの背中を、ランゼがため息をつきながらさすっている。
「・・・」
あかねはそんな二人の様子を気にしつつも、既に桟橋を渡っている乱馬達のほうへと向けた。
・・・陸地では、シャンプーが両手を胸の前で組み、なにやら呪文を唱えていた。
そのシャンプーのすぐ脇を、乱馬が剣を片手に構えて立っている。
と。
そのうち、呪文を唱えているシャンプーの周りに、緑色の光が生まれ始めた。
生まれた光は、まずはシャンプーの身体を全て覆った。
そして次に、その傍に立っている乱馬をも包む。
「・・・」
二人の体が包まれた事を確認したシャンプーは、呪文を唱えながら、両手をヒュっ・・・と左右に広げた。
その瞬間、
ヒュンっ・・・・
「きゃ!」
「おお!」
まるで、弓矢で魔物をいるかのごとく、桟橋の上を緑色の光が駆け抜けて船の甲板へと届いた。
その光の道は、それまで桟橋の上を飛びかっていた魔物の身体も瞬時に貫いた。
キシャーっ・・・・
光に身体を貫かれた魔物は、不気味な悲鳴をあげて、海へと沈んでいく。
が、身体を貫かれなかった他の魔物たちは、
ドンっ・・・ドンっ・・・
桟橋を守るその光の道に、その巨大な身体を思い切りぶつけては、その光を破壊しようとしていた。
「いいあるぞ!時間がないある、早く来るねっ」
その時、向こう側の陸地でシャンプーが大きな声でそう叫んだ。
「分かったわっ。ランゼさんっ」
「あ、ああ・・・っ」
その合図を受け、まずはあかねとランゼが甲板から桟橋へと飛び降り、光の道を駆け抜けた。
その最中、
ドン!ドン!
「うひゃっ・・・」
「立ち止まっちゃだめよ、ランゼさん!」
「あ、ああ・・・っ」
走り抜けるあかねとランゼの姿を見て、魔物たちが更に強い力で光の道へと体当たりをする。
「見ちゃダメよっ」
「あ、ああっ・・・」
あかねは、ランゼを守るようにして橋を駆け抜け、そして、
「きゃっ・・・」
「うわっ・・・」
ビュインっ・・・
十秒もかからないうちに、シャンプーと乱馬の待つ陸地のシールドへと入り込むことが出来た。
「あ、ああ・・・す、ごいね、あの魔物・・・」
ランゼが、少し興奮した口調でそんな事をぼやいた。
「そうね。さ、次はキリト君と良牙君・・あら?」
あかねは、そんなランゼを落ち着かせながらそう言って船の方を見るも、
「・・・?」
あかねの目に映ったのは、光の道を猛スピードで駆け抜けてくる、良牙だった。
「・・・良牙君、キリト君の次に来るんじゃなかったっけ?」
シールド内に良牙が飛び込んでくるのを確認してあかねが良牙に尋ねると、
「そのつもりだったんですけど。あの野郎、怖気づいちまって、行くの嫌だって言うから来てしまいました」
良牙は、はあ、とため息をつきながらそう呟く。
「・・・ったく、弱虫だね。やっぱりアイツはしょうがないよ」
そんな良牙の報告に、ランゼが苦虫を潰すような顔でぼやく。
「じゃあ、これで全員ここの中に入ったあるな?ならば、シールドの範囲を狭めるある」
シャンプーも、それを確認して再び呪文を唱えようと手を胸の前に組んだ。
が、
「待って!」
あかねは、呪文を唱えようとするシャンプーを塞き止め、船の方を向いた。
そして、
「キリト君っ・・・だめよ!勇気を出してっ・・・」
「おい、あかね!戻れ!」
「あかねさん!」
・・・良牙と、そして乱馬が叫ぶのも聞かず、再び光の道を船へと向かって駆け抜ける。
「だめね!シールドはあと数秒で消えるあるっ」
そんなあかねの背中に向かって、シャンプーが叫んだ。
「シャンプー、時間を延ばせねえのかっ」
「無理あるっ。これ以上時間を延ばしたら、シールド自体も消えてしまうねっ」
「っ・・・」
そのシャンプーの言葉に、乱馬はいらだたしい表情を見せる。
迫る、タイムリミット。
消え行く、光の道。徐々に迫り来る魔物。そして、戻らないあかね。
「っ・・・」
・・・しかし、
その状況で、何をしなくてはいけないのか。
何を自分は守るべきなのか。
そんな事、乱馬にとっては迷うことではなかった。
そう、自分にはしなくてはいけないことがあるのだ。
「乱馬!」
「乱馬っ、戻るよるしー!」
「ちょっ・・・無茶だよっあんたっ」
・・・乱馬は、シャンプーたちを振り切り、迷うことなくシールドから飛び出した。
そして、甲板に向かって手を差し出しているあかねの元へと走り出した。


・・・一方、桟橋の中央まで駆け戻ったあかねは、 甲板からガタガタと震え脅えた表情で桟橋を眺めているキリトと対峙していた。
「キリト君っ・・・!早く!」
「お、俺はむ、無理だよっ・・・こ、こんな魔物のいる中っ・・・」
脅えているキリトは、甲板を見上げているあかねに首を左右に振ってみせる。
その間も、光の道に対して、ドン、ドン、と魔物たちが体当たりをしていた。
しかも、魔力が切れかかっているせいもあり、徐々に、体当たりにより道が歪み始めている。
このままでは、船にいるキリトは助かるが、桟橋にいるあかねは間違いなく・・・魔物に食われてしまうだろう。
「あ、あんた、早く向こうへ走れよっ・・・く、食われちまうぞっ」
「キリト君を連れて戻るわっ。だから早くっ」
「お、俺は無理だよっ・・・」
「無理じゃないわっ。・・・」
あかねは、脅えて震えているキリトに対してそこまでは大きな声で叫んだ。
が、
「・・・ランゼさんに、いいところを見せなくて、いいの?」
「!」
「貴方のご先祖様の宝物、他の人に任せてしまって、いいの?」
・・・そこだけは、陸で待つランゼに聞こえない声の大きさでキリトへ言う。
「・・・っ」
その言葉に、キリトがびくっと表情を動かした。
「早く!あなたが変れるチャンスじゃないの!」
あかねは、そんなキリトの変化を見逃さなかった。
「行こうっ・・・ねえ!」
そして、もう一度だけ、キリトに向かって手を伸ばし、呼びかけた。
「っ・・・」
キリトは、そんなあかねに対して、一度、ぎゅっと目をつぶってみせた。
が、その直後。
「う、うわああああ!」
・・・まるで、何かを吹っ切るかのように大声を上げながら、甲板の上へと降り立った。
そして、
「うわあああっ・・・」
得意の足早を活かし、猛スピードで桟橋を走り出した。
目をつぶったままではあるが、キリトはあっという間にあかねの追い越して桟橋を走り抜けていく。
「キリト君っ・・・」
あかねは、ようやく勇気を出して飛び出したキリトの姿に感動し思わず笑みを洩らすものの、
「!」
ぐにゃあっ・・・
そんな自分が立っているその桟橋が、大きく音をたてて歪み始めたのに気がついた。
「あっ・・・!」
そう、シャンプーが作り出した光の道が消える、リミットが来てしまったのだ。
シャアアアっ・・・・!
光の道が消えかかるのと同時に、それまで体当たりをして道を脅かしていた魔物たちが、一斉にあかねの身体めが けて襲いかかってきた。
「っ・・・!」
食べられるっ・・・
キリトを誘う事で自分が逃げる事を忘れていたあかねは、襲いくる魔物から逃げる事も出来ずにその場でぎゅっと、目 を閉じた。

しかし。

ザンっ・・・!
ギャアアアア!

「・・・」
目を閉じたあかねの頭上で、そんな不気味な叫び声と、 そして何かを切り裂く音、 更に、
ザザーンっ・・・・
何かが、勢い良く海の中へと落ちる音が聞こえた。
「・・・?」
あかねが恐る恐る目を開けると、
「・・・」
・・・そこには、剣を構えた乱馬が立っていた。
乱馬の持つ剣には、緑色の液体がべっとりとついている。
それはきっと、あかねを襲おうとした魔物を切り裂いた際についた物なのだろう。
「ら、乱馬っ・・・」
あかねが乱馬の名を呼ぶと、
「走れっあかね!」
乱馬はそれには答えず、あかねの手を引いて走り出した。
シャアアアっ・・・!
そんなあかね達を、容赦なく魔物たちは襲いくる。
ギラリ、とした血走った目があかねと乱馬を捕らえ、その大きく裂けた口から覗く牙を光らせながら、魔物たちはあかね達に近づく。
が、
「きゃあ!」
「くっ・・・!」
ビュインっ・・・
・・・そうやって、魔物があかね達に牙を立てるその前に。
二人は、何とか皆の待つシールドの中へとたどり着くことが出来た。
二人がシールドに入ったと同時に、歪んで消えかかっていた光の道が、完全に桟橋の上から姿を消した。
そして、
キシャアアアっ・・・
シャアアアっ・・・・
ビタン、ビタンっ・・・
・・・それまで光の道が走っていた桟橋のうえを、再び巨大な魔物たちが飛び交い始めた。
そう、まさに乱馬があかねを助けたのはまさに「間一髪」であったのだ。
「・・・」
もしも、途中で転んだりしていたら。間違いなく、その身は引き裂かれていただろう・・・足がもつれて転ばなかった事は、非常に幸運な事だった。
奇声を上げながら桟橋のうえを飛びかう魔物たちをシールドの内側から眺めながら、あかねと、そして乱馬は今更ながらゾクリ、と身を震わせた。
・・・そして、
「あかねさん!大丈夫ですか!」
「え、ええ・・・」
・・・そんな光景を眺めながらしばし呆然としているあかねを気遣うように、良牙が叫ぶ。
「全く、シールドが消えかかっているのに戻るなんて無茶ね」
「ご、ごめんなさい」
「乱馬もあるぞっ。乱馬いなくなったら、私、生きていけないねっ」
そしてシャンプーも、あかねと、そしてあかねを追って桟橋に駆け戻ってしまった乱馬にぼやいた。
「わりいわりい」
「心配かけて、ごめんね」
あかねは、改めて良牙とシャンプーに謝りながら、
「・・・」
ふと、目線をランゼと、そして勇気を出して桟橋を駆け抜けたキリトへと向けた。
「・・・」
・・・ランゼは、キリトを真剣な表情で見つめていた。
「ランゼ、俺・・・ごめん」
キリトは、一度でも怖気づいて皆を困らせた自分の行動を謝ろうと口を開いたが、
「・・・意気地なし」
「ランゼ・・・」
「今度怖気づいて皆に迷惑をかけようとしたら、あんたとなんて一生口を利かないから」
「あ、ああっ・・・」
「良く覚えておきな」
ランゼは、そんなキリトの言葉を遮るようにそうはき捨て、ふいっとそっぽを向いてしまった。
「・・・」
キリトは、そんなランゼの態度に、ガックリと肩を落としていた。


・・・やれやれ、これじゃあ先が思いやられるわ。


とりあえず、キリトを船からここへと連れ出したものの、こんな様子では先が思いやられるのは一目瞭然。
「・・・」
何とかして、挽回させてあげる機会を作ってあげたいな。
あかねは、シールドの中で険悪な雰囲気の二人を見つめながらそんな事を思っていた。




・・・と、 こうして一悶着あったものの、六人全員、無事に秘宝島へと降り立つ事が出来た。
そして、この後六人は、このシャンプーの作ったシールドを拠点として、丘の上に聳え立つ「海賊キリトの館」へと向かっていっ たのだった。

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