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二人4

キーン…


 

乱馬の耳に、聞き覚えのある音が飛び込んできた。
その音にふと足を止める乱馬に、
「!」
「王子?」
「しッ…」
「?」
事情が分からないあかねは、首をかしげる。
乱馬は、そんなあかねに何も言わぬまま目を閉じた。そして、神経を集中して耳を澄ませる。
すると、やはり聞き覚えのある高音が乱馬の耳に飛び込んできた。
そうこれは…カード同士が近くにある時に起こす共鳴音だ。
乱馬は、腰に携えているカードフォルダへと目をやった。
カードフォルダは、微かな光を放っているように見えた。そして、小刻みに震えているようにも、感じる。
…どうやら、この近くにカードがあるのは間違いなさそうだ。
「王子、どうしたのですか?」
先ほどから黙ったり目を閉じたりカードフォルダを見たり、とせわしない乱馬に、再びあかねが声をかける。
「カードが、この近くにある」
「え?」
「…カードたちが、新たなカードに共鳴をしているのです」
乱馬は手短にあかねに今の状況を説明すると、
「とにかく、音をもとに場所を特定しよう。もしかしたらこの先、トラップとかあるかもしれないから気を付けて」
「え、ええ…」
あかねに念のため注意を呼びかけ、再び彼女の前を歩き出した。
…この里にカードがあると、別に誰に言われたわけではない。
里に住んでいる里長とて、そのありかや存在ももちろん知らなかった。
だが、世界中に散らばっていたカードたちをいとも簡単に集めたラヴィでさえも、最後の一枚はまだ未入手だったこと。
そこから、「もしかして一番ラヴィが手を出しにくい場所」にあるのではないか。乱馬達はそう考え、ターゲットをこの里に絞り、里の中を探していた。
『鏡に映る月が沈む山の端、神のみぞ知る』
コロンの占いで手がかりは得たが、里の中を探してもなかなか見つからない。
だから、本当にここにカードがあるのかどうかと、少しは疑いも持っていた。
だが…里の中でも異質なこの場所へ流れ着いての、カードのこの反応。
この先に、カードがあるのは間違いない。
ここに流れ着いたのは偶然だったし、ここが例のコロンの教えてくれた手がかりが示す場所なのか、そうだとしたら、それがどんな意味だったのか。それもわからない。
だが、今はこのカード同士の共鳴を信じて…進むしかない。
「足元、大丈夫?」
「ええ…」
二人は、気を集中してゆっかりと、岩の道を進んでいった。


 

それからほどなくして。
乱馬の耳に流れ込んでいた共鳴音が、一瞬だけ強く、飛び込んできた場所へ差し掛かった。
音は、その場所で力強く音を放ち…そして止まる。
「ここか…?」
乱馬は、音を信じて立ち止まった。
「…」
あかねも、乱馬に並ぶようにして立ち止まる。
乱馬は、カードフォルダへと目をやった。
…カードフォルダは、先ほどよりも強い光を放ち、そして先ほどよりも大きく、揺れていた。
どうやらこの場所に、間違いないようだ。
だが、
「何もないな…」
「岩の下にでも埋まっているのかしら…」
その場所は、特に行き止まりというわけでもなく、かといって地面に印があるわけでもない。
周りの岩壁に、何かレバーのようなものがあるわけでもなく、何かが描かれているわけでもない。
これは、一体…?
「…とりあえず、ちょっとこの辺りを調べてみよう」
乱馬は、持っていた松明を地に立てかけて辺りを照らした。
そして、二人で周囲の岩壁や、足元などを注意深く叩いたり、踏んだり、押したりして念入りに調べて行った。


と。

 


あかねが、岩壁の一部に触れた時だった。
ポウ…
あかねの指が触れたその部分が、微かに光を放った。
「あ…」
あかねと、そしてその光に気づいた乱馬は、思わず声を上げる。
「…」
あかねは、ゆっかりとその部分から指を離した。すると、光も一緒に消える。
あかねは、もう一度その部分に触れた。すると、その部分も再び光を放つ。
…その場所、見た目は他と変わらないのだが、どうやらただの岩壁の一部というわけではなさそうだ。
「…何でしょう、この光」
あかねは、その場所から再び指を離しながらそう呟いた。
「わからない。わからないけど…きっと、何かがあるんだ」
乱馬は、あかねをその場所から離れさせ自分の背中でかばうと、腰から剣を抜いた。
そして、剣先であかねが先ほど触れた場所を何度か叩いた。
すると。
今度はその剣先が微かに光を放ち、なんと…光っていた岩壁の一部分が、まるで砂が零れ落ちるかのようにサラサラと崩れ落ちた。
そして、
「!」
「まあ…!」
今まで岩壁だったその部分に、何と小さな空間が現れたのだった。
空間は、一本の木の棒で塞がれていた。
どうやら、魔力を持つ砂か何かで、その空間を塞ぎカモフラージュしていたようだ。
しかも、
「何だろう、この空間…」
乱馬が空間をせき止めていた木の棒をどかし、
「これ、持っててくれるか?」
「ええ」
万が一何かが襲ってきたとき、殴るくらいには役立つだろう。
そう思って乱馬がその木の棒をあかねに渡したその瞬間。


「きゃ!」


ポウ…


乱馬が触れたときにはただの木の棒だったのに、あかねがその棒に触れた瞬間、棒は急に光を放ち始めた。
そして、


カッ…


一瞬強く光ると、木の棒はその姿を変えた。
美しい白木で、そして先端に澄んだ水晶のような宝玉がくっついた美しい棒杖…ロッドへと変化したのだ。


「これは…」
絵本や童話の中に出てくる魔法使いが、魔法を使うときに用いているようなロッド。
長すぎず短すぎず、不思議とあかねの手や、あかねが使いやすいサイズにその姿を変えている。


「この木、もしかして霊木だったのかもしれませんね…」
自分の手に突如姿を変えて現れたロッドを握りしめ、あかねはそう呟いた。
「霊木か…あなたが警邏の時に携えていた木も、確かそうだった」
乱馬は、コロンがあかねに昔渡した霊木の鞭のことをふと思い出し、あかねに言った。
ここに流れ着いたときには見当たらなかったから、もしかしたら流されたときにどこかへと言ってしまったのかもしれない。
乱馬がそんなことを思っていると、
「あのお借りした霊木と、同じように霊験あらたかなものなのですね、このロッドも、きっと…」
あかねはロッドを握りしめながらそう言うと、
「それよりも王子、空間の中をのぞいてみてください。何かあるかもしれません」
乱馬にそう進言し、ロッドを自分の胸元へと抱き寄せた。
が。


…お借りした、霊木?


乱馬はあかねが発したその言葉に、違和感を感じていた。
そう。
確かにあかねが持っていたくだんの霊木の鞭は、コロンがあかねに渡したものだった。
言うなれば、コロンがあかねに「貸した」のだ。
でも、何故それを、記憶をなくしているあかねが知っている?
真之介にはそんなこと話していないし、他の皆だって、今のあかねにそんなことを話しているとは思えない。
だとすると…


「…なあ」
乱馬はすぐにでもあかねにそれを確認したかったのだが、
「王子、さ、早く…」
「あ、ああ…いや、でも…」
「王子」
あかねに急かされてしまい、その言葉の真意を聞きそびれてしまった。
でもまあ確かに、今はそれを確認するよりも、ここに何があるのかを確認する方が先だ。
…戻ったら、聞いてみよう。
乱馬は気を改めて、先ほどの空間の中を調べることに集中をした。


空間は、入り口は狭いが奥へと長く続いていた。
とはいえ、乱馬が腕を伸ばせば伸ばしきったくらいで一番奥へとたどり着いてしまうが。
乱馬は、中に入れた手で空間の中を触れて回った。
すると、空間の天井部分の一番奥に触れた時だった。


シュッ…


まるで、自らの意思を持って飛び出してきたかのように。
乱馬の指に触れた「何か」が、空間の入り口から飛び出してきた。
そして、
「あ…」
空間から慌てて手を引き抜いた乱馬の手の上に、ふわり、ふわり…とゆっくりと舞い降りてくる。


それは、一枚のカードであった。
カードの番号は「XXT」。「THE WORLD」と書かれていた。カードの属性は、水だ。
中央に、一人の美しい長髪の女性が描かれていて、その女性の周りには美しい花と光がちりばめられていた。
女性の手には、あかねが先ほど入手したロッドとは違い、シンプルで飾りのない、誰もが手にすることが出来るような木のロッドが握られている。


「これが、最後の一枚のカードか…」
乱馬は、自らの手の上に舞い降りた美しい絵柄のカードを見つめて、呟いた。
カードの持つ力や役割などはシャンプーに聞かないとわからないが、
「…見ているだけで、心が洗われるようなカードですね…」
「ああ。この広い世界を全て見守る女神みたいな…」
「女神様…そうですね」
このカードが、何か清らかで、そして力強い能力を持っているということだけは、乱馬にもあかねにも感じ取ることは出来た。
そして、
カードの属性が水。だからこそ、このような、泉を通り抜けないとたどり着けないような場所に隠されていた。
相変わらずこのカードたちは、主や場所を選ぶ。乱馬は少し背筋に冷たいものを感じつつも、ようやく手に入れることが出来たカードを、カードフォルダにしまった。
すると、


ヴォン…


カードフォルダに収められたはずの「THE WORLD」のカードがフォルダの中で小刻みに震え光を放ちだした。
そして、ヒュッ…と、真っ直ぐな一筋の光を道の奥の方へと向けている。
もしかしたら、里の中央-皆がいる場所へと導いてくれているのかもしれない。


「…行こう。もしかしたらこのまま、皆の所へ帰れるかもしれない」
「え、ええ…」
二人は、カードの光を信じひたすらその方向へと進んだ。
途中、狭い隙間や段差のある岩、幾重にも道が分かれた分岐点などにも差し掛かるが、すべてカードの射す方向へと歩を進める。
やがて、


「やった…!」
「森の中へと、戻れたみたいですね…良かった」


…そこが、里のどこの場所になるかはわからないのだが、二人は木がうっそうと生い茂る森の中へと出ることが出来た。
二人が歩いてきてたどり着いた道の入り口は、外からは絶対にわからないように上手く草木や岩などで隠れた窪みの一角にあった。
このような隠れ方では、ましては夜という時間帯では、絶対に見つけられるはずがない。
「やりましたね、王子」
あかねは、乱馬にそう語りかけた。
「ああ」
乱馬もあかねに笑顔で答えるが、その前に一つだけ確認したいことがあった。
なので、
「ちょっと、この木の上に登ってみるよ」
乱馬は、自分たちが出てきた出口の一番近くに生えている、大木の幹をぽんと叩いてあかねにそういった。
「え?木に、ですか?」
何故、今この瞬間に木登り…?乱馬の行動の真意がわからないあかねは、はてと首をかしげる。
「大丈夫、すぐに戻ります。それよりも、一応は里の中だけれども何があるかわからないから、そのロッドを使ってシールドのようなものは作れますか?」
「え?ええ、多分…」
「じゃあ、そのシールドの中に入っていてください」
乱馬はそう言って、あかねが胸に抱いているロッドを指差した。
あかねは言われるがままに頷くと、そっと目を閉じてロッドを強く握りしめた。
すると、ロッドの先についている宝玉から柔らかな白い光が放たれ…あっという間にあかねの身体の周りを包んだ。
乱馬はそれを自分の目で確認すると、大木の幹に足をかけて上に登り始めた。
…カードも手に入れ、再び里の森へと出てきたことはよかったと思う乱馬であったが、一つだけ解明できていないことがあることを思い出したのだ。
それは、コロンが乱馬達に示してくれた『鏡に映る月が沈む山の端、神のみぞ知る』の、言葉のこと。
神のみぞしる、というのは、おそらくカードが隠されていた空間のことではないかと、察しが付く。
ご神木で封じ込められ、魔法の砂で外部との接触を絶っていた空間。
その中は、それこそ神聖な空気に満たされていたはずだ。だから、『神のみぞ知る』となぞらえたのだろうと思う。
だが、『鏡に映る月が沈む山の端』とは何なのだろうか?それがわからなかった。
もしかしたら、上に登って客観的にこのあたりの地形でも見れば、何かヒントを掴めるのかもしれない。
乱馬は、そう思ったのだ。

乱馬は、器用に大木の幹を上へ上へと進む。そしてさほど時間もかけずにその頂点へとたどり着くと、改めてその場所から里全体を見渡した。


「…そういうことだったのか」


その瞬間。乱馬は、すべてを理解した。
この場所から下を見ることでヒントを得ると思っていたのだが、そうではなかった。
ここから下を見ることで、すべてが解決したのである。


 


…乱馬達が水に入った例の「浄化の泉」が、半円を描くように眼下には広がっている。
その半円の反対側、本来ならば泉が隠れている部分には、下界からでは分からないように大量でうっそうとした草木が蔓延っている。それはこんもりと立体的に、まるで「山の稜線」を描くかのように。
泉と、その本来は泉の「森」の部分は、真ん中で姿を変えてそれぞれが存在はしているが、本来は同じ姿。
つまり真ん中を境に「鏡」のように存在をしている。
この「鏡」に、月が映る。その月が、沈む、山の端っこ。
水のみの部分には、朝日を浴びて反対側の森が描いている稜線が、映し出されている。
その稜線の一番先端。その部分と、乱馬が今昇っている木はちょうど平行に、位置していた。
乱馬達は、狭い道を長い事進んだ。もしかしたら、本当はあの稜線の一番端の辺りにいたのかもしれない。
つまり、乱馬たちが最初にたどり着いたあの水際の洞窟のような場所は、森に隠れた、そのあたりの場所。
『鏡に映る月が沈む山の端、神のみぞ知る』というのはそういう意味だったのだ。
…すべてが、カードのままに。知らず知らずに、それが意味する方へと導かれる。
乱馬は改めてカードの魔力の強さに背筋を凍らされたが、今は、ラヴィより先にカードを手に入れたことに少しだけ、安堵するのであった。


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