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二人1

「…う…」


 


それから、どれくらい経ったか。
流れに身をゆだねた乱馬の身体は、薄暗い洞窟に打ち寄せられる水際へと運ばれていた。
…泉の渦は、乱馬を泉の奥へ奥へと運び続けた。
そうしているうちに水は徐々に減り流れも収まり、最終的にはこうして、洞窟のようなところへとつながったようだ。
水は洞窟の入り口で止まり、乱馬の身体は再び、水のない岩砂利の上へと運ばれたのだ。
「ぐほっ…」
口と耳に入った水を何度か吐き出して、乱馬は自らの身体を起こした。
続いて衣服に入り込んだ水をだし絞り出そうと自らの服に触れてみると…今まで何の問題もなく纏っていた衣服の袖が、なんだか妙にダボダボしているように感じる。

「あっ…」

もしや、と、乱馬は自分の身体に目をやる。
すると、どうにもこうにもまた…女性の姿に変化していた。
どうやら、何とか身を守りつつ気を遣いながら流されているうちに、肉体的疲労・精神的疲労が多くなり、体が女性へと変化してしまったようだ。
乱馬が女性になるのは、ヒルダであかねを探し何日も海を漂っていたあの時以来、二度目であった。

「…ったく。難儀な体質だぜ」

いくら呪いのせいでの特異体質とはいえ、こうして旅を続ける身としては迷惑極まりない。
乱馬は、少し大きくなった自らの衣服から水を絞り出しながら、ため息をつく。
…女の姿になると、スピードは上がるし身体も軽くはなるが、男の時よりも格段にパワーが劣る。体力だって減る。
それに…

「…」

女のままじゃ、例えあかねを見つけたとしても、力強く抱きしめることもできない。
服に含んだ水を絞り出して抜きながら、ため息をついた。


 


と、その時だった。


 


 


「…う…うん…」
乱馬がたっている場所から少し離れた地点…洞窟の端の奥から何かが聞こえた。
明かりがないので、ほんの少し先であっても何があるかわからない。
乱馬はとりあえず手探りで木の棒と、そして火種になりそうなものを探し、松明とした。
そしてその松明を持ちつつ、いざとなったらすぐに応戦できるように警戒しながら、音のした方へと歩み寄り、松明の火を向けた。
と、

「…あかね!」

ほんやりと明るく照らされた先に見えたのは、乱馬と同じようにここへ流され、そして水浸しとなったあかねの姿だった。
うめき声と共に、少し水を吐き出していたあかねだったが、すぐに静かになる。
それっきり、体自体もさほど動いていない。

「あかね!おい!」
乱馬は、松明を倒れないように岩と岩の間に突き刺し、辺りを照らしながらあかねを慌てて抱き起した。

あかねの身体は、まるで氷のように冷たく、そして触れて分かったのだが、小刻みに震えているように感じた。
体温低下は、生命の危険にも関わってくる。まだ意識も戻っていない状態でこの震えは非常に危険だ。
「何とかしないと…!!」
乱馬はまず、自分が羽織っていたマントを取り外した。
この「皇族専用のマント」は見た目こそ普通だが、防御力が高い。それゆえ、まだあかねと一緒に旅していた頃は、あかねに羽織らせたこともあった。
だが、実は防護力が高いだけではなく、撥水性も高いという優れものなのである。
なので、何度か大きくはためかせるだけで水分も飛ばすことができるのだ。
おまけに、保温機能もしっかりとついている特別な布で、作られた優れものだった。
金持ちが金に物を言わせて作ったシロモノ…もとい、実はどんな高価なドレスやアクセサリーよりも多大な費用と最先端の技術を費やし投じられて作成された、最高傑作なのである。
最も、羽織っている本人はさほどそんなことは気にも留めていなかったのだが。

「あかね…ご、ごめんな」
乱馬は、あかねに小さな声で謝ると、素早くあかねが身に着けていた衣服を脱がせ、下着姿にした。
次に、件のマントであかねの身体を包み…
「み、見てない…俺は見てないからな」
一体誰に言い訳をしているのかよくわからないが、
「さ、触ってない。余計なところは触ってない」
まるで念仏でも唱えるように、一応は指先だけに意識を集中させて、包んだ身体を見ないようしながら彼女の下着も取り外す。
そして、水際から離れた場所の岩などを探し、あかねの身体を一旦そこへ横たわらせると、先ほどの松明を再び手に取り辺りを照らしながら、火をくべるのに便利そうな材料を探して火を起こした。
その火が、暖をとれるくらいに大きくなったのを見計らい、
乱馬はあかねの身体をその近くへと寝かせた。そして自分も上半身は脱いだものの、下半身は下着だけつけるような形で、体と服を乾かす。


…パチ、パチ…と、火の粉が音を立てて、ぼんやりと辺りを照らし出していた。
服も徐々に渇き、そして体も暖まってきた乱馬は、自分の傍で横たわり先ほどよりも顔色もよくなったあかねを見つめながら、ため息をついた。
ふと、横たわるあかねの頬に、軽く指で触れる。

柔らかくて、絹のような肌触り。吸い付くようなその肌は、一度触れたらいつまでも触れていたいような、そんな感触だ。

「…」

ああ、ホントに俺はなんで、こんな時に女になっちまうんだ?
男の姿で、今この状況を乗り切れない不運さ、そして大切な人を力強く抱きしめて温めてやることのできないふがいなさ。
多分、服が乾くまでの間ちょっと仮眠でもとれば、前に変身した時と違って、体は元に戻るような気もするんだけど。
願わくば、あかねがその間起きなければ何の問題もないんだけどなあ。
くそ、泉からここに流されるので精神集中したくらいで精神力と体力を使い果たすようじゃ、まだまだ修行がたりねえよな。
もっと鍛えないと。
乱馬は、あかねの頬に指を滑らせては、そんなことを思い何度もため息をついていた。


と。


「…ん…」
その感覚があかねに伝わったのか。それとも、乱馬の胸に秘めているつもりが全部口に出ていたその言葉の音量に何かを感じたのか。
身体も少し温まり、そしてようやく意識を取り戻したあかねが、小さな声を漏らして目を開け
た。

「わあ!!」

乱馬は慌てて、あかねから指を離し彼女から離れる。

「…」

あかねは、そんな乱馬の存在にはまだ気が付いていないようで、彼のことなどお構いなしに何度か目を閉じたり開いたりしていた。
そして続けてゆっくりと身体を起こす。
が。
無論あかねは、まさか自分が全裸でマント一枚でその身体を包まれていたとは知らないので、身体を起こした拍子に身体に纏っていたマントがずり落ちた瞬間、ようやく自らの置かれた状況に気が付き始める。
「え…?私…え?」
はらりと落ちたマント。それに目をやれば、服を着ていたはずの自分の身体が、なぜか肌あらわで一糸まとわぬ状態。あかねの口から言葉が止まる。
さすがにそうなれば、あかねとてまずは何とか自分の置かれている状況を理解しようとするのだが、
問題は、自分が脱いでいない以上、一体誰が彼女を裸にしたか。
そこでようやくあかねは、
「…」
全裸の自分のそばに、もう一人誰かがいる…という発想にたどり着くのであった。
「あ…」
あかねは、明らかに動揺した表情で自分の近くにいた人物・乱馬を見ていた。


「あ、あの!その、水に濡れていて体、も冷えていたし!…このままだと危ないと思って…あ、で、でも疾しい気持ちで脱がしたとか、そういうわけじゃなくてっ…いや、触りたくないとかそういうわけじゃなくて、寧ろ触りた…い、いや今はそういう状況じゃないし!そ、その…」

そうなると、乱馬も必死にこの状況に陥った原因を説明しようとするのだが、慌てたせいか、ついつい余計なことまで口走ってしまう。
ただ、何とか正当な理由で服を脱がしたことだけは伝えないといけない。
乱馬は何とか必死で、あかねにこの状況を伝えようとした。
が、そうやって一生懸命に説明しようも、あかねの表情はまだ、強張っているように見えた。いやむしろ、「怪訝そう」と表現するのが妥当なのか。
とにかく、乱馬の説明を聞いている間ずっと、あかねは硬い表情で乱馬を見ている。

「え…な、何…?」
説明、まだ全然足りないのかな…流石に乱馬も少し怯むと、
「あなた…誰?」
そんな乱馬に対し、あかねは戸惑いと、そして警戒心を隠し切れないような表情で逆に乱馬にそう切り替えしてきた。


…そう。
あかねは、まだ女の姿の乱馬と対面したことがなかったのだ。
戻ったあかねの記憶をたどれば、
セルラの国民の中には、特異体質のものがいるのは知っていたし、実際にムースがアヒルに。シャンプーが猫になるのも知っていた。だが、まさか乱馬が女性になるなど思ってもいなかった。
だから、
あかねにしてみれば全裸なのはともかくとして、目の前にいるこの「見知らぬ女性」の存在が不気味この上ないのだ。
しかもよく見るとこの女性、乱馬に似ているし…


「…」
あかねは、乱馬をじっと見つめている。
なるほど、そういうことか。乱馬はようやくあかねの心中を察した。
なので、


「あ、あの、俺はっ…いや、あの俺が俺って言っているのは、別に変な趣向の持ち主とかそういうのじゃなくてっ…」
「…」
「は、話せば長くなるからっ…で、でも話さないと…は、話してもいいですか?…」

乱馬は、身体をマントで隠しながら自分をじっと見つめているあかねに、
しどろもどろではあるが、自分が乱馬であること、ムースたちと同様に特異体質で姿が変わってしまうこと、ここへたどり着くまでに精神力と体力を使い果たし女の姿になってしまったこと、恐らく仮眠をすればすぐに元に戻ること。
そしてどうしてあかねの服を脱がせたか…ももう一度、付け加えて説明をした。


「…」


あかねは、しばらくの間は表情を崩さず乱馬の話を聞いていたが、
丁寧かつ必死な説明でようやく、今のこの状況を理解し自分でも納得したようだった。
なので、


「…では、あなたはその…王子なのですね?」
「そ、そうです…」
「…」
「…」


しばらくして。
ようやく乱馬とあかねはお互いの身分を確認し合えたのだが、残念なことにそこで一旦、会話がそこで途切れる。
そう。身分がわかったらわかったで、状況がわかったらわかったで、今度は別の問題が二人にはあるのだ。
そのため、一瞬微妙な空気が二人の間に流れたのだが、


「…身体を、温めてくださってありがとう…ございます」
「あ、い、いや、う、うん…」
「…私たちは、里の泉からここへ流れてきたのですね」


その空気を打ち破るように、まずはあかねがぽつりとそう呟いた。
だが、
「ここは一体…」
再び、黙り込む。
「…」
乱馬もあかねのその問いに答えてやりたいのだが、乱馬自体もここがどこなのか、そしてどんな場所なのかがわからない。
そのため、乱馬は無理にあかねの問いには答えず、ただじっと、自分たちの前で燃えている炎を見つめていた。


 


…乱馬にも、そしてあかねにも。
こんな会話を交わすよりももっと、本当は話したいことや聞きたいことは多々あった。
だが、頭はフル回転していても、うまく言葉が出てこないのだ。


 


「…服、まだ乾きませんね…」
「そうだな…」


こうして二人は、お互いの衣服が乾くまでの間、あたりさわりのない会話をしながら時を過ごすはめとなった。


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