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Hypocrite9

その一方。
泉の反対側を走っていた乱馬であったが、未だあかねを見つけられないこと、そしてやみくもに走っていてもらちがあかないこともあり、一度足を止めて頭を整理することにした。
…元々頭脳派でもない乱馬にしてみれば、それはもう「整理」という名の知恵のフル回転である。心配なのは、オーバーヒートしないかどうかであるが。


この「浄化の泉」は、それほど大きくない泉である。それはタクトにも言われていたし、実際に先の警邏で乱馬達もそのほとりを歩いたからわかっていた。
ほどなく進むと、大きな茂みで行き止まりになるのだ。
茂があまりにも深い為、タクトも、もちろん里の人間も、あえてその中に入ろうとはしていなかった。
魔物が潜んでいる雰囲気も感じられなかった。
この泉、ほとりから見ると半円の形をしている。
警邏の時も、半円の端までは一応歩いてきていた。それが、今乱馬がたっているところ。
ここから先は行き止まりでもあるし、茂の表面を見ても、ここから誰かが中に入り込んだ形跡は見られない。
例の光が見えたのは、この泉の辺りだということは確かだ。そこで何かがあったのも、確か。
だが、近辺にあかねの姿も、そして右京の姿もない。


里から消えるにも誰かが連れ去るにも、乱馬達が駆け付けるまでの時間ではほぼ不可能だと思われる。
だとしたら、一体どこへ?
良牙が探している側に、あかねも右京もいるのか?


「一体、どこに…」
乱馬は、もう一度辺りをゆっくりと見まわしあかねの姿を探した。


と。


キラリ…
乱馬の目に、一瞬だけ何かの光が飛び込んだ。
どうやら、泉の水面に浮かんでいる「何か」が月の光に反射して偶然光ったらしい。。
「何だ…?」
件の件でほとりから飛び散った小石かなんかが、水面に浮かんで光ったのか?それとも波の加減か。
そうだとしたら、今はそれに気を取られている場合ではない。
乱馬はその光からすぐに目をそらして再び辺りを見回していたが、
キラリ…
もう一度、「何か」が光を放った。一度ならず二度目となると、関係ないものではあったとしても、気になってしまう。
「んー…?」
健康優良児は視力ももちろん優良。
乱馬は、光があった方角をじっと目を凝らして見つめた。
…月明かりに反射したと思われる「何か」は、よく見ると小石などよりも大きいものであった。
なんというか、表現をするならばそれは…輪っか?
そう。乱馬に目には、ちょうど手首にはまるくらいの大きさの輪っかが映りこんだ。
腕輪、もしくはブレスレットか。色は…すぐにはわからなかったが、もう一度それが光ったのではっきりと識別できた。
色は、赤だ。


「赤い…ブレスレット…」
…それが赤い、おそらく腕輪ではなくブレスレットであろうと乱馬が認識した瞬間。
乱馬の頭の中にある映像が流れた。


月明かりの下、あかねの手首にブレスレットをはめる乱馬。嬉しそうに礼をいうあかね。
そして…この里に来てすぐの、夜道。
乱馬に、乱馬がそれをあかねに送った記憶を失ったあかねが、「ここへ来た時、自分が大事に握りしめていた」と教えてくれて笑った、あの瞬間の映像。


「…!」


その映像の中のあかねのブレスレットと、今、目を凝らして見つめているブレスレットが重なった瞬間。
乱馬は迷うことなく泉に飛び込んで、奥へ奥へと進んだ。
…あかねは、茂ではなく、泉に吹き飛ばされた。きっと、そうに違いない。
乱馬にはそうとしか考えられなかった。
何らかの原因で光を発し、あかねは吹き飛ばされた。それも、泉へと。
きっと、泉に沈む時に苦しくてもがいて、ブレスレットが手からすり抜けた。
そう考えると、つじつまが合うのだ。


…あいつは、泳げないのに。きっとそれは、記憶を失ったところで変わるものではないと思う。
それなのに。それに、また冷たい水の中へと沈んでしまうなんて!


神様というのは、一体どれだけ残酷なのか。
水をかき分け、そしてブレスレットのもとへと進む乱馬の胸は、ぎゅうっと締め付けられる。


あかねが船から消えた時。あの時も、意識を失い冷たい海へ落ち流された。
もう、そんなことに巻き込ませない。そう決めていたのに、思っていた矢先にこれだ。
こんなことなら、真之介なんかに任せないで、あかねから離れなければよかった。
乱馬は激しく後悔する。
しかも、だ。
泉の中を進んでいるとわかるのだが、
この泉、奥へ近づくにつれ、流れが渦を作って複雑になり動きがうまく取れなくなるのだ。
ほとりで水に指を付ける程度ではわからないが、中央へ近づくにつれ水の流れが複雑に入り組み、気を抜いたらすぐにでも体を持って行かれそうになる。
しかも、急に深くなっているのだ。


「はあっ…はあっ…」
乱馬は、何とかブレスレットまでたどり着き、手を伸ばした。そしてとりあえず自分の手首へとはめる。
このように流れが複雑で激しいのに、よく水面に流されることなく浮かんでいた。
運がよかったのか、それとも何かの運命か。乱馬は、そんなことを思う。
だが今はそれよりも…


「あかね…あかねは…」
ザブッ…ザバッ…
流れに身体を持って行かれないようにしながら辺りを見回し
そして何度か水中に潜って見回すも、あかねの姿はない。
「泉は、ここで行き止まりなのにな…」
乱馬は、泉の奥の茂へと手を触れた。
…水は、この茂でせき止められている。だから、これ以上奥には進めない。
だが、
「…」
乱馬は、大きく息を吸って、一度水の中へ潜った。
水面より上では、茂がありそこから先へは進めない。
だが、少し深く潜るとそこにせき止めるものはない。
茂みを構成している草や木、根っこなどが途切れて深く暗い空間が続いているのだ。
外側から見ると、ほとりの道の行き止まりから泉の奥へ半円状の形に沿ってずっとずっと、深い茂が繋がっていて形を成している。
だが、実際は水面から少し深く潜ると、それらの茂の影形もなくなり、深く暗く冷たい空間がずっと続いている。
この泉、もしかしたら…本当は半円形どころかものすごく大きいのかもしれない。
「…」
乱馬は、一旦水面に顔をだし大きく息を吸うと、もう一度潜った。
暗い、冷たい深い空間。
先ほどから感じている激しい水の流れの渦は、隙あらば乱馬を飲み込もうとすぐそこで手ぐすね引いているようにも見えた。


きっとあかねは、この渦の飲まれてもっと遠くへと流されたのだろう。
だとしたら、迷う必要もない。
追いかけて、今度はちゃんと捕まえなければ。彼女を助けなければいけない。


乱馬は、もう一度水面へと顔をだし大きく息を吸った。
そして、再び水の中へと戻ると、今度は流されないようにもがくのではなく、体の力を抜いて渦へと身をゆだねる。
…あかねのもとへ、何とかたどり着いてくれ。
乱馬は流れに身をゆだねながら、心の中で強くそう願った。


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