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Hypocrite6

シャンプーがあまねのクッキーを乱馬とタクトに届け、三人がようやくそれを食べつくす頃。
ムースと良牙が警邏から戻ってきた。
二人も、特段凶悪な魔物に出会ったわけではなさそうだが、

「わあ、綺麗な花…」

戻ってきた良牙の手には、小さなつぼみをつけた黄色い花が握られていた。
「こ、これあかねさんにっ…」
…どうやら、警邏をしている最中にどこぞの泉のほとりに咲いているのを見つけたらしい。
「俺達、あんな花をみかけたか?」
良牙のあかねへの粋な心遣いに焦った乱馬が、こっそりとタクトに尋ねると、
「あれは、月の位置が高くなるにつれて一晩だけ花開くもの。俺たちが歩いていた時間帯にはまだ咲いていなかったはずだから、気づかなくても仕方がない」
それにあれは、ただの花じゃなくて里のものでも滅多に飲まない、苦味のある解熱花だ。タクトは、その見た目美しい黄色い花の説明をしてくれた。
花の名前は、ホロホロ花。夜の、それも深い闇が蔓延る時間帯にしか開かないという不思議な花。
煎じて飲めば、どんな高熱も下がるという。そのかわり口が曲がるほど苦く不味い為、里のものでも滅多に手を出さないそうだ。
ホロホロ花を飲めば、どんなまやかしも打ち消える。ただし、冷や汗が出るほど不味い。
ホロホロ花を飲むくらいなら、熱にうなされた方がまし。
ホロホロ花を飲むくらいなら、どんなに時間がかかっても、どんなに具合が悪くても治癒魔法の施してもらえる列に並ぶ。
…かわいらしい見た目とは逆に、それほど評判の悪いものらしい。
「この花を積極的に飲ませてたのは、カタルのじいちゃんくらいだったなあ…」
「飲んだことあるのか?」
「いや、俺は。リオって子がいるんだけど、あいつは何度か飲まされてたかなあ…それを見ていたら不憫で」
タクトはその時のことを思い出したのか、顔をしかめている。
一体、どんな不味さなのか…興味はあるが、確かにこの様子だと遠慮したほうがよさそうだ。乱馬はそんなことをこっそり考えていた。
「ホロホロ花…そうですか。では、今夜は目で楽しんで明日にでも煎じて薬にしてみましょう。薬品庫に入れておけば、いつかだれかが使う日が来るかもしれないし…」
良牙くん、ありがとう。あかねは花を摘んできた良牙に笑顔で礼を述べた。
そして、
「警邏の最中に落としてしまうと寂しいので、教会においてきます」
あかねはその花を教会へと置くべく、良牙「ありがとう」とお礼を口にし、いったんその場を離れた。
「ああ、あかねさんは優しいなあ…そしてこう、なんていうか、やっぱり可憐だ」
評判が悪い花を手渡したにもかかわらず、優しい対応をしてくれたあかねに、良牙がうっとりしながら呟いている。
「けっ」
乱馬は、そんな良牙に悪態をつきつつも、
「あかねが戻ったら出発しよう。いいな?」
「…ええよ」
ふと、教会に行ったあかねを待ってからの警邏出発を口にした真之介の横に、表情乏しく歩み寄りそう呟いた右京の方を見た。
何となく、乱馬には気にかかることがあったからだ。
そして、
「…なあ、うっちゃん。今日はどうしたんだ?」
真之介が、再び右京から少し離れたのを見て、乱馬は思い切って右京に声をかけた。
「どうしたって?」
右京は、乱馬に問い返すが、
「どうしたって…何か今日は静かじゃねえか?」
乱馬は、自分が感じたことを素直に右京にぶつけた。


昼に、良牙が右京のことを乱馬に話した時は特に何も感じなかったが、
考えてみると、今夜、そして今の今まで、右京は乱馬達とあまり話していない気がする。
旅をしてきて、こんなに右京と話さないことがあったっけ…?と、いつも騒がしく元気な右京を思うと、流石の鈍感な乱馬でも、少し違和感を感じたのだ。


が、

「別に、普段通りだけど」
「そうか?でも…」
「旅の疲れが出てきたのかもしれん。警邏が終わったら、うち、ちょっと休ませてもらうわ」
右京はそんな乱馬に対して、先ほどの表情とは異なる「笑顔」で答えると、
「あかねちゃん、はよ戻ってこんかね」
自身の首に巻いているストールの結び目を強く結びなおしながらそう呟いた。
そういえば右京、タクトと同様、昼からずっと、里女にもらったというストールを首に巻いているわけだが、
「…なあ、うっちゃん。ストール巻くのが今の流行りなのか?」
警邏に行ったタクトもそうだったが、
…今は夜だし、警邏に行くだけなのにストールを巻いている意味はあるのか?
タクトに至っては、「暑い」とか言っている割に頑なにストールを取ろうとしない。
そんなに、ストールを巻くことは今はやっているのか?それとも、何か別の意味があるのか?
…不思議に思っていた乱馬が、思い切って右京に尋ねてみると、
「…意味なんてないけど、身だしなみみたいなもんやね」
「身だしなみ?」
「そ。乱ちゃんやって、マントつけとるやん。それと一緒」
「…」
「それに、首は急所だから。守る意味でも、ストールは便利なんよ」
右京は、さらりと乱馬に対してそう答えた。
急所を守る、と言われれば仕方がない。乱馬が納得せざる得ない表情をしていると、
「…ああ、あかねちゃんが戻ってきた。じゃあ、今度はうちらが警邏にでるから」
右京は教会の方角から戻ってきたあかねの姿を見てそう言うと、乱馬との会話をそこで打ち切った。
…右京にしてみれば、これ以上首のストール---しいていえば、その下に刻印された痣について触れられそうになるのが嫌だった----に触れられたくはなかったので、
あかねが戻ってきたタイミングは、ベストであった。
勿論、乱馬は右京がそんな思惑を持っていることは想像もしていないのだが。

「ほな」
右京は、乱馬に笑顔で手を振ると、真之介と、そして戻ってきたあかねの傍へと駆け寄った。
「…では、行こう」
真之介は、あかねと、そして右京にそういうと、乱馬と同じように背中に着けているマントを翻してゆっくりと歩き出した。
右京も、そのあとに続く。
あかねは、
「あ、じゃあ行ってきます」
その場にいた乱馬達全員に笑顔でそう告げると、二人の跡を小走りで追って行った。
「あ、き、き、気を付けて…!」
その笑顔に一瞬見とれて、肝心の身を案じる言葉をかけそびれた乱馬は、あかねに聞こえるか聞こえないか微妙なタイミングで慌てて叫んだ。
どうも、自分はいいタイミングというのをいつも逃してしまう。そんな自分に自己嫌悪に陥りつつ、乱馬はため息をつく。
が、落ちこんだところで自分がすぐに変わるわけではない。
「我らは、再びおばばと通信できるか試みてくるぞ」
「ついでに書庫もあさってみるね」
「ああ、頼んだ」
真之介たちも出発し時間が出来たので、再び書庫奥の納屋へ向かうムースとシャンプーを送り出した乱馬は、
良牙、そして相変わらず必要以上のことを自分から話さないタクトと共にあかねたちの帰りを待つこととなった。

 

 

 

 

 

「歩きなれていると思っていたのに、全然知らない道を歩いているみたいだわ」
…先ほどの2チーム同様、あかねたちも警邏に出発し里の中を歩いているわけだが、
教会から書庫、そして自分の屋敷以外は夜という時間帯に外を歩くことがないあかねにとっては、今夜の警邏は、不謹慎ではあるが、半ば新鮮で、そして未知なる世界への冒険みたいな感覚を覚えているのであった。
もちろん、そんなことは皆の前では口にできないが。

「魔物と出くわした場合は、俺と、そのそっちの女で退治をする。だから、あかねは後ろに下がってて。怪我をしないように気を付けるんだ」
「わ、わかったわ」
まるで、お姫様を守る騎士のように紳士的でかつ優しい様子の真之介と、素直にそれを聞き入れるあかね。
と、
そんな二人のやり取りをみていた右京が、不意に、
「二人は、なんかいい感じやね」
お似合いや。と、静かに笑いながらあかねにそう呟いた。
これまで無言で歩いていたのに、急に発言したと思ったらこのセリフ。
あかねは右京の人と柄がよくわからず、若干戸惑いつつも、
「まあ。そんなことを言ったら真之介に失礼だわ。ねえ、真之介」
あかねがすぐに右京の言葉に反応して否定した。が、
「俺は別に」
真之介は動ずることなくさらりとそういいのける。
「真之介ったら、また冗談を言う」
真面目なくせに、こういうところは子供っぽいというか、何というか。
あかねは、その真之介の発言をさらりと交わすと、

「もう、冗談はともかく。それに私…」
…自分でもよくわからないが、自然にそんな言葉があかねの口をついた。
そして、そこまで言って、はっと我に返り口をつぐむ。

「私、がどうしたんだ?あかね」
急に口をつぐんだあかねに、真之介が問いかける。
「え?あ、私…それに私、その、今は光の魔法で皆を治療したり、この里の為に何かをしたいって思うことでいっぱいだからって、言おうとしたの」
あかねは慌てて笑顔を取り繕ってそう答えると、
「真之介だって、里を守ることに力を入れたいでしょ?」
「ああ、そうだけど…」
「ほら、私と一緒じゃない」
だから、この話はこれで終わり。先を急ぎましょう…あかねは強引にその場の話をまとめ、二人に歩を進めることを進めた。
真之介も右京も、それ以上はこの話題には触れず、再び静かに歩き始める。
あかねも、表面上ではそれまで通りの笑顔で、歩を進めてはいるが、
実はその胸の中は思いのほか複雑で、そしてざわざわと音を立てていることを強く感じていた。

 

 

…本当は考えないようにしていたが。
あかねの心の中では、「それに私」の後に続く言葉は先ほどのそれとは違う、というのが明らかであった。
ただ、その内容は決して口に出してはいけないとわかっているし、
まだあかねの心の中でも、言葉ははっきりしていても、気持ちはまだもやもやした状態である、という複雑な状況であるのも明らかであった。

あれは、戯れ。あれは、身代わり。

…長い旅を続ける旅人の心を癒し、寂しさを埋めるために、たった一度だけこの身を貸した。
ただそれあけの出来事。
あの夜、本人もそういっていたし、自分でもそうだと理解したうえでそうした。
…つもりだった。
なのに、あの時。
抱きしめられていたあの時に、あかねの体の奥の、心とはまた違う部分…よくわからないが、その部分が「共鳴」して、
涙を流していた時に感じた妙な気持が、落ち着かなくてそして忘れられないのだ。

あの時、彼があかねを腕に抱いたのは、自分が「遠いところにいる愛しい婚約者」と同じ名前だったから。
その人を思い出して、心が疲れ寂しさで満たされどうにもならなかったから。
…ただそれだけだと、わかっていたはずだった。
それなのに、今のあかねはちょっと気を抜くと、すぐにあの時のことを思い出してしまう。
表面上は普通に装っていても、実は先ほど、会話はしなくても、同じあの場所に彼を見ただけで、あかねの心はひどくざわついていたのだ。

彼らがここに来てすぐ、偶然だが二人で話す機会があった。
その時は、優しくて楽しい人…そう思うだけであったし、特に何も感じはしなかった。
だが、それ以来時々口をきき、そしてこの間のことがあり…時間が進むにつれ、あかねの心は、何かどうも、「変」なのだ。
相手には、心に決めた婚約者がいる。
本人からも別の人間からもそれを聞かされている。
望みなど、自分が入る隙など、一分もないとわかってはいるのに。

「…」
あかねは、真之介たちに気づかれぬように小さなため息をついた。

…神楽のことが片付き、そして里の宝であるカードが手に入れば、彼らはきっとすぐにこの里から立ち去るだろう。
もうそれからは会うこともないだろうし、
今のこの気持ちも、きっと一時的な気の迷い。
時がたてば薄れているに決まっている。それに、そもそも相手は王子。身分が違うのだ。
一体自分は、何をとちくるっているのだろう?

皆が必死に頑張っている時に、こんな風に自分本位なことで頭がいっぱいなんて恥ずかしい。
あかねは再び自分を戒めるべく、手にしていた武器のような木の棒を、ぎゅっと握りしめた。

 

 

 

 

…と、その時だった。


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