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Hypocrite5

ほどなくして乱馬達が警邏のスタート地点に戻ると同時に、次の警邏に出る予定の良牙たちが出発していった。
特に報告するまでもない警邏内容であったため、これから出発する二人に引き継ぐまでの内容はなかったが、
「タクト、どうだった?」
「兄さん」
「何か変わりはなかったか?」
真之介は気になるようで、戻ったタクトが一息つく間もなく尋ねてきた。
「真之介、タクト君も疲れているのよ。少し休んでからでもいいじゃないの」
が、まだ額にうっすらと汗がうっすらと滲んでいるタクトを気遣ったあかねが真之介を戒め、
「みなさん、お疲れ様。向こうにお茶を用意しました」
と、乱馬達の労を労って優しく微笑んだ。
「…」
優しい心遣いも、柔らかい笑顔をとても嬉しいのだが、自分も、タクトもシャンプーもひっくるめて「皆さん」と声をかけられた事が、乱馬は気に食わない。
それに、
「真之介は戻ってきてからよ」
「何だ、随分なことをいうな、あかねは」
「当たり前でしょ。それに、さっき隠れて飲んでいたでしょ」
「何だ、バレてたのか」
…とか何とか。
乱馬の前で快活で楽しそうなそんなやりとりを繰り広げられたら尚更だ。
「…乱馬、顔が怖いあるぞ」
「え?あ、おう…」
「気晴らしするには、甘いものを食べると良いある。私、里の女たちから分けてもらってくるね」
私の気遣いに感謝するよろしぞ。そんな乱馬を見るに見かねたシャンプーが、そういって教会の方へと一旦引っ込んでいった。
半分は、自分が甘いものを食べたかったというのもありそうだが、仲間の心遣いが乱馬にはありがたかった。
これから大きな戦いの渦に飛び込んでいくというのに、些細なことで冷静さを失うのは悪い癖だ。
自分がパーティのリーダーであるのに情けない。
乱馬は心の中でシャンプーに礼を言いつつも、冷静さを欠いて自分本位であった自らをキツク戒めた。


 

 


そんな乱馬の為に教会へと向かったシャンプーは、
「何か甘いものはないあるか?」
「あら、休憩かい?ご苦労さん。ちょうどクッキーを焼いたから皆に持って行っておくれよ」
教会の厨房で、おそらく明日の10時のお茶の時間用にクッキーを焼いて準備していた里女のあまねから、まんまとおすそ分けをもらっていた。
「ん、やっぱり甘いものは格別あるな…」
焼きたての菓子の匂いも味も、また格別だ。
バターのこんがり溶けた甘い匂いと口の中に広がる深い味わいに、シャンプーがうっとりと目を閉じ、堪能していると、
「あははは…どんなに綺麗で強くても、やっぱり子供は子供だねえ。子供はみんな、この匂いも味も好きなんだよね」
あまねは、まるで自分の子供を愛おしむかのような口調でそう呟いた。
そう、この里では、ある程度の年齢まで達すると、修行のために子供は里を出る。その後は、何十年もたってから、一部のものだけがここへ戻る事があるようだが、大部分は親が元気なうちに会うことは難しようだ。
タクトと真之介は長老の孫であり、この里を守る役目を担うために例外としてここに残っているわけだが、
「お前の子供も、好きだったあるか?このクッキー」
シャンプーが、クッキーをもう一つ口の中にほおりこみながらあまねに尋ねると、
「女の子だったけど、里一番の食いしん坊でねえ。1日に何度も何度も焼かされたのは忘れないよ」
今もどこかでたくさん食べているのかねえ…あまねはそう言って、寂しそうに笑った。
…あまねの娘・ミラは、半年ほど前にウォータークールへ向かうと手紙をよこしたそうだが、どうやらそれ以来音信不通のようだ。
半年ほど前というと、乱馬達が旅立ちをした頃。ちょうど、世界の平和も悪化しだしたころだ。
「…軽はずみなことは言えないあるが、きっとどこかで生きているある。お前の娘なら、たぶん逞しい、思う」
「ああ、そうだね。そう信じたいよ」
「だからその時まで、この味を変えないでクッキーを焼き続ける、よろし」
確かに、軽はずみに「無事に決まっている」などは言えない。だが、希望を持ち続けることは悪いことではない。
言葉は悪いが、今のあまねには精いっぱいの励ましの言葉になるように、と、シャンプーなりに気を使ってそう呟いた。
そして、
「それまでは、私がこのクッキーを食べるある」
シャンプーはもう一つクッキーを口の中にほおりこんだ。
あまねはそんなシャンプーの姿に小さく笑うと、
「はは…あんた、本当にあの子に似ているよ。そういうところ。そう、そうだよね。あんたの言うとおり、あの子の生命力を信じて、あたしはクッキーを焼き続けなくちゃね」
なんせ、あたしの娘だからね。明るい表情で、そう言った。
その表情からは、先ほどまで見え隠れしていたどことなく寂しそうな面持ちはなく、
母親としての強い決意というか、何というか。迷いが吹き飛んだような…すっきりとしたような感情が読み取れた。
その強い思いに、シャンプーも心が少しだけ熱くなった。
あまねは、改めてシャンプーに「ありがとね」とお礼を述べると、
「ああ、そうだ。ねえあんた、このクッキーもみんなの所へ持って行ってくれないかい?」
シャンプーが食べているクッキーとは別のクッキーをオーブンの中から取り出し、袋の中に入れてシャンプーへと手渡した。
こちらは、ゴマとくるみを全体にまぶして、真ん中にちょこんと赤いビーンズのようなものが乗っている、少し手の込んだものだった。
あまり市場では見かけたことがないタイプのもので、
「これ、オリジナルのものあるか?」
シャンプーが尋ねると、あまねは「そうさ」と大きくうなずいた。そして、
「このクッキーはね、タクトが好きなんだよ」
「ええ?あの無愛想で失礼極まりない男が、あるか?まあ、最近は少しおとなしくなったあるが…」
「タクトは元々、端正な顔立ちをしているからね…誤解されやすいんだけど、本当は優しいし、子供っぽさもすごく残ってる純粋な子なんだよ。同じくらいの年の子供とあまり接する機会がないから、きっとあんたたちともどうやって接すればいいかがわからないんだね」
あまねはそう言って、シャンプーの顔を優しい表情で見つめる。
「あの子は、私たち里の人間の希望なのさ」
「希望…」
「何の因果か、タクト自身には治癒の力は備わっていないけれど、大地をすべて包み込むような優しい大地の魔法を生まれながらに身につけている。神楽様の孫だってことと、その魔法の力ゆえに、こうして今も里を守るためにここで頑張ってくれているのさ。でももしかしたら本心は、ほかの子供たちと一緒に修行のために外に出たかったのかもしれないし、それに…同じように里を守るためにここで頑張って里守をして命を落としていった自分の父親と同じ運命をたどりたくはないって、思っているのかもしれない」
「タクトの父親も、里守をしていたあるか…」
そういえば、祖父の神楽はいるがタクトや真之介の父親や母親はいないな、とシャンプーはふと感じた。
「父親は、今のタクトと同じように里守をしていたよ。町とここを何度も行き来してね。そのうち、町の娘と恋に落ちてね…その娘、まあタクトの母親だけど、体が弱くて出産と同時に亡くなってしまったのさ。タクトは生まれた時から、里の皆で育てたってわけ」
「ああ。なるほど…。あれ、でもそうなるとタクトと真之介は母親が違うあるか?」
「え?」
「それとも、真之介を生んだときは元気で、タクトの時に命を落としてしまったあるか?」
あれ、でもそうなると、真之介は母親としばらく一緒にいたということ?…シャンプーが今までの話を整理しようとするも、
「真之介様は…うーん、どうだったかねえ。昔のことだしちょっと思い出せないねえ…」
あいたたたた…と、少し考えてはくれたが、思い出せなくて頭痛がするのか、あまねは自分の頭をぽんぽんと叩いている。
「…」
シャンプーはそんなあまねに「ああ、無理しないでいいある」と声をかけ、
「…とにかく、まあ、タクトは里の皆にとって大事な存在ということあるな」
「そうそう。それが一番、あたしが伝えたいこと」
だから、そのクッキーをタクトにも持って行ってね…あまねはシャンプーに笑顔でそういうと、再び悦のクッキーを作るべく、生地をこね始めた。
シャンプーはクッキーをもらった礼を述べると、邪魔しないようにと厨房を出た。
が、


「…」
シャンプーは厨房から少し離れた廊下の隅で立ち止まり、今一度厨房の方を振り返る。


 


…今の、あまねとの会話。
会話自体長かったので、まだ頭の中の整理は全部できてはいないが、
その会話ので、どうしてもシャンプーには消化しきれないことがあったことを感じざる得なかった。


あまねの話に、大そねおかしなところはなかった。
そう、おおそね。
おおそねおかしくはないが、ただ、「不可思議」な部分はあった。
その「不可思議」な部分が、シャンプーの消化しきれないこと、なのだ。、
それは、もしかしてシャンプーの考えすぎなのかもしれないし、大して大事なことじゃないかもしれない。
だが。


……勘


そう、シャンプーの本能的な「勘」が、このままこれを済ませてはいけないと訴えかけている気がした。
ムースに相談してみようか?でも、ムースにも流されてしまうかもしれない。
ならば、
「ひいばあちゃんに…ついでに相談してみるかな…」
これは、もしかしたら、コロンになら解決してもらえるだろうか?
コロンの、「思い違い」のことについてももう一度話したいし、相談するには良い機会かもしれない。
「…」
シャンプーは、あまねにもらったクッキーをまた一つほおばりながらぽつんとそう呟いた。


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