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海賊キリトの秘宝2

「俺とランゼは、物心ついた時には孤児院で生活していた」


・・・隠れ家にしている家から少し離れた、丘の大木の下で。
大きな石に腰掛けながら、あかねはキリトの話を聞いていた。
あかね達のいる丘からは、この港町・ウォータークールの街並みが一望できた。
煉瓦つくりの屋根が、徐々に暮れはじめた夕陽できらきらと照らし出されている。
遠くの方では、ゴーン・・・ゴーン・・・と、時を告げる鐘が打ち鳴らされている。
どうやらそこが、この町の教会のようだ。チラリとそちらの方へと目線をやると、オレンジ色の屋根が並ぶ街並みにひ ょっこりと一つ、頭の突き出た円形ドームが見えた。
そのてっぺんの部分には、大きな二つの鐘。
その鐘の鳴る教会のドームの周りを、バサバサバサ・・・と渡り鳥達が飛んでいった。
ザワっ・・・という海からの強い風が一度吹けば、町じゅうの緑がゆさゆさと、揺れているように木も葉を舞い散らせ る。
石畳の坂道を、荷台を押しながら行き交う人々姿を、それらの木々は覆い隠してしまうかのようだ。
この丘の上に立っていると、それら全てが、まるで自分の手の中で起こっているかのように思えるような錯覚さえ、し てしまう。
「・・・」
なんとも不思議な気分を味わいながら、あかねはキリトの話に耳を傾けていた。
・・・


「親に捨てられたらしくて・・・泣きながら何日も港でウロウロしている所を、孤児院のシスターに拾われたらしくてな。  だから、俺もランゼも、自分達の親の顔なんて知らずに育った。でも、俺たちもそろそろ16になる。いつまでも孤児院で暮らしてるのもなんだし・・・思い切って二人で外の世界へ飛 び出したけれど、ま・・・世の中はそんなに甘くねえっていうのかな。ろくに仕事ももらえずに、挙げ句の果てには盗みにまで手を出し て、自分達の生活を守るようになった」
「・・・」
「そんな事をしているうちにさ、俺たちは知ったんだ。この街には、孤児院にさえ入れなかった親のいない子供達もい るって。だから・・・俺とランゼは、そんなガキどもの面倒も見てやりながらこうして生活を送っている。それに・・・」
キリトはそういって、ふいに自分の身に纏っている上着を肌き、胸の部分からあるものを取り出した。
夕陽に反射してキラキラと輝く、透きとおった球状の「石」。シルバーの鎖で首に掲げられているそれは、
「・・・ペンダント?」
あかねは、キリトにそう尋ねる。
「そうだ。でも、ただのペンダントじゃねえ」
キリトは一度頷くと、あかねにそのペンダントの「石」の部分をよく見るようにと指示をした。
「?」
あかねが言われた通りに「石」に顔を近付けると、

『It entrusts to my whole family.From kirit=Jackcal』
(我一族へ託す。キリト=ジャッカルより)

・・・その石の表面に、うっすらとそんな文字が刻まれているのに気がついた。
「キリト・・・ジャッカル?」
あかねが、刻まれていた名前を暗唱すると、
「このペンダントは、俺がシスターに拾われた時、唯一持っていた所持品だったらしい。 だからというのもあるけれど、俺は『キリト』と名づけられた」
「・・・」
「その時にシスターが、『キリト=ジャッカル』というと、大昔の海賊と一緒の名前ねなんて笑うものだから、俺はシスターに頼んで何度も何度も、その大昔の海賊の話をしてもらったのさ」
キリトはそういって、フっ・・・と笑った。


・・・大海賊、キリト=ジャッカル。
その昔、この辺りの海を荒らしていた海賊船・レッドピュア号に乗る海賊達の頭。
行き交う船を襲っては金品を強奪したり。
そして、宝が眠る島があればどこへでも赴いてその宝を根こそぎ奪いに行った。
その手口は、残虐非道。
この街の歴史にも名を残す、人々に恐れられた存在だ。
そのキリトもやがて年老いて、その奪った宝をとある島に隠してから息を引き取る。
その宝を隠した「とある島」というのが、


「・・・この街から少し離れた海の上に浮かんでいる、秘宝島というわけだ」
キリトはそこまで話して、一息置いた。
「どうして、そんな大海賊の名前の刻まれたペンダントを、子供のあなたが持っていたの?」
あかねがそんなキリトに尋ねると、
「それは・・・わかんねえ。何で俺があのペンダントを身につけていたのかは分からないけど、
でも、あれは俺が捨てられる前、親からもらったもの・・・そう考えるのが普通だろ?
きっと、何らかの理由で俺を捨てた親が、形見のつもりで持たせたんだろ」
キリトはそういって、ふっと小さく笑った。
「とにかく。俺は、自分が大昔の大海賊・キリトの子孫だと信じている。だから、あの秘宝島の宝は・・・俺の物って理屈さ」
「・・・」
「俺は、あの島に眠っている先祖の秘宝を手に入れて・・・船会社を作るんだ」
「船会社?」
「そうさ。この港町で一番大きな船会社を作って、それで今面倒見てやってるガキどもや、それ以外の親のいねえガ キどもの面倒を見てやるんだ」
「そうだったの・・・」
「孤児院にいたとき、俺がこの話をしても・・・皆が笑い飛ばして、馬鹿にして。誰一人として相手にしてくれなかった。でも・・・」
「ランゼさんだけは違ったのね」
あかねは、キリトが話し出す前にそう口をはさんだ。
「ああ」
キリトはコクン、と頷くと、
「ランゼだけは、俺のこの話を信じてくれて、一緒にこうやって孤児院も飛び出して付いて来てくれた。でも・・・俺はこんなざまだ。足は速いけど、勇気もねえ。剣術も武術もできねえ。するといったら、この足の速さでスリ。生活費を稼ぐのがやっとさ。今ではキリトの子孫どころか、この町の盗賊団のボス扱い。・・・情けねえよなあ」
そういって、ふとあかねの方を見た。
「・・・あんただって、俺の事情けねえ男だと思ってんだろ?あんたのような女にも投げ飛ばされるような情けない男だ って・・・」
「べ、別にそんな事は思ってないわよ」
ただ、弱いなあ・・・とは思ったけど。
その言葉はさすがに、あかねもごくりと飲み込んだままだったが、
「だったら、明日の冒険で見せてあげればいいじゃない」
「え?」
「ランゼさんに。貴方だって勇気をもてば、こんなに力強い冒険も出来るんだって。秘宝島で活躍する姿を、見せてあ げればいいじゃないの」
あかねはそういって、うなだれているキリトの肩にそっと手を置いた。
「見せるって・・・」
「確かに、ランゼさんは腕も立つわよ。でも女の子じゃない。危険な目にあいそうになったら、貴方が助けてあげれば いいのよ。あたし達は、あくまで貴方をサポートって形を取らしてもらうわ。だから、ランゼさんは貴方が守りなさい」
「・・・できるかな」
「出来るって思っていなきゃ、何ごとも上手くいかないんだからっ」
バシっ
あかねが思い切り力を込めてキリトの肩を叩くと、
「ぐわっ・・・」
ゴロゴロゴロ・・・
キリトは座っていた大きな岩から転げ落ちて、地面へとボテっと落ちた。
「あ、ご、ごめんなさいっ」
あかねは慌ててキリトの傍まで走り寄ると、
「あんた、姿かたちはすげえ女らしいのに・・・すげえ怪力なんだな」
キリトは、顔をしかめながらそういって立ち上がった。
「か、怪力は余計よっ」
あかねがムッとした表情をすると、
「・・・まあ俺にはこんな怪力はねえけどさ」
「え?」
「・・・せっかく秘宝島にいけるチャンスが出来たんだ。やれる事だけはやってみる」
キリトはそんなあかねに、少し自信なさげだけれどとりあえず笑顔を、見せた。
あかねも、そんなキリトに笑顔で返してやった。
「・・・それじゃ、俺は明日の準備とかしなくちゃいけねえから」
キリトは、あかねにペコリと一度頭を下げると、家とは逆の方向へと走っていってしまった。


・・・乱馬のように、王家に生まれて容姿も恵まれ、剣術の腕もあり、そして何より両親にとても深く愛されている子供 もいれば、キリトやランゼ、そしてキリト達が面倒を見ている子供達のように、何らかの事情で親と離れて暮らす、もしくは捨てられてしまった子供達もいる。
生きていく為に盗みをし、日々の生計を立てる。
・・・
神様というのは、時々無慈悲な事をなさるものだ。
・・・
「・・・」
あかねは、キリトの背中を見送りながらそんな事を思いふと、ため息をついていた。




そして、翌朝。
いよいよ、海の孤島「秘宝島」へと旅立つ日を迎えた。
「乱馬、ちょっと散歩に行かない?」
「えっ・・・お、俺と!?」
秘宝島へ向かうためには、船が必要だった。
とりあえず1日だけ船を貸してもらうよう、ランゼとキリトが知り合いに頼みに行って準備が整うの間、 乱馬達は武器の準備等をしながらそれぞれが時を過ごしていたのだが、 あかねは、準備も終わりぼーっと空を見上げていた乱馬を上手く誘い出し、二人で街中へと散歩に出かけた。
「あっ。あかね卑怯あるぞっ」
そんな二人の背後でシャンプーがそんな事を叫んでいたが、
「すぐ戻るからっ」
あかねは、とりあえずシャンプーにはそう弁解をして、乱馬の手を引いて歩き出す。
・・・煉瓦で出来た道が続く坂を降りると、 両サイドには、港町の「朝」を思わせるような活気のある商店が軒を連ねていた。
昨日、あかね達が街をはじめて訪れた時よりも人通りの激しい道。
台車や馬が、次々とあかね達とすれ違っていく。
朝の市場特有の怒号や、買い物袋を両手に抱えた商人・主婦・・・煉瓦造りの道いっぱいに溢れかえる人々のせい で、しっかり手を繋いでいないとすぐにはぐれてしまいそうだ。
「・・・」
あかねは、そんな人ごみの中を乱馬と共にすり抜けて、
「ここなら、ゆっくり話せるね」
・・・商店の並ぶとおりを抜けた先にある、ちょっとした広場。
敷地の中央に噴水があり、ちょっとした待ち合わせなんかにも使えそうなモニュメントの設置された場所へとたどり着 いた。
「話って・・・ど、どしたの急に・・・」
モニュメントの近くにあったベンチに腰掛けながら、 あかねに急に散歩に誘われて、少し落ち着きのない様子の乱馬に対し、
「うん・・・」
あかねは、そんな乱馬の手を引きながら少し言葉を濁す。
そして、
「乱馬に、お願いがあるのよ」
あかねは、自分の隣でソワソワとしている乱馬に対し、思い切ってそう切り出した。
「話って・・・そのお願いのことか?」
・・・なぜか、少しがっかりしたような様子を見せる乱馬。
「うん」
「・・・何だよ?」
「うん。実はね・・・」
あかねは、そんな乱馬に昨夜、自分がキリトから聞いた話をすべて伝えた。
そして、
「今日の秘宝島の探索の件・・・ランゼさんにはボディガードみたいな事を頼まれたけれど、あくまであたし達は、キリトくんの後方支援ってことにして欲しいの」
「それはいいけど・・・」
「ランゼさんを守るのはあくまでキリト君。そうすることで、彼にも自信をつけさせてあげたいし・・・」
「でも、俺達が危険だと状況を判断した時は助太刀に入るぞ?それはしょうがないよな?」
「うん。だから、極力ってことで・・・」
・・・と、 今日の秘宝島探索の探索方法の提案というか、 ランゼの、キリトに対する印象をあげる事・・・そして、キリトに「自信」を持たせる事。
そのための方法を、乱馬に相談した。
「良牙とシャンプーには、あとでこっそり俺から伝えておく」
「ありがとう」
あかねが乱馬にお礼を述べると、
「・・・なあそれより、何でそんなにあいつの事に肩入れすんだ?まさか、おめー・・・あのキリトって奴が・・・」
乱馬は、その事がどうも気になるらしく、複雑な表情をしている。
提案自体は別にどうとも思っていないようだが、 ここでもし、
「あたし、キリト君がタイプなの」
そんな事をあかねが言おうものなら、
「あいつは俺が倒す」
とかなんとか。言い出しかねない乱馬であった。
でも、
「ち、違うわよっ。ただ・・・」
「ただ?」
「・・・神様は時々不公平だなって、思ったから・・・」
あかねが、ぽつんとそう呟いて俯くと、
「・・・」
乱馬は、ぽんぽんと、うつむいたあかねの頭を軽く叩いた。
そして小さくため息をつくと、
「・・・ま、おめーの頼みじゃしょうがねえからな」
「ありがとう」
「神様ってのは、気まぐれだからさ。だけど、一生のうちに掴む事が出来る幸運の量ってのは皆同じだって言うぜ?昔や今が苦しくても、きっと未来は違う。そう思って、頑張るしかねえよ」
「乱馬・・・」
「気まぐれな神様には、俺だって困らされる時はある。例えばさ。こんな天気のいい朝、綺麗な噴水の前に誰かさんと座っていても・・・別に、デートって訳じゃないしな」
「え?」
「こっちの話。ま、とにかく、だ。キリトの奴にいいカッコをさせて、ランゼってあの女にみせてやればいいんだろ?要は」
「うん」
「やれやれ」
乱馬はそんなことを言いながら、ベンチから立ち上がった。
そして、
「さ、そろそろ戻ろう。キリト達が戻ってくる頃だ」
そういって、今度は乱馬があかねの手を引いて歩きだした。
「乱馬・・・ありがと」
あかねが、手を引かれて歩きながら乱馬の背中に向って礼を述べると、
「お礼は、この件が片付いたらたっぷりとしてくれ」
例えば、今度こそ街で二人っきりで一日、ゆっくりすごすとか・・・とか何とか。
乱馬はぼそぼそと小さな声で呟いたのだが、
「え?なあに?聞こえない」
・・・朝市の雑踏の中、そんな乱馬の小さな声があかねの耳に届くわけもなく、
「ちきしょー、やっぱ神様は意地悪だ」
乱馬は、さらにいじけたような様子でそんな事をぼやいていたのだった。



こうして。



「あ、来たきた!」
「どこ行ってたんだよ!」
「ごめんごめん」
キリトとランゼの知らない所で、あかね達はこのような計画を練り、そして、
「さ、船も借りたし・・・いざ、出発!」
キリト達の知り合いから借りた船に乗り込んだ一向は、海にひっそりと浮かんでいる「秘宝島」へと旅立っていったのであった。

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