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Hypocrite4

「それじゃあ、二時間ほどしたらここに戻ってくる。そこで次のチームと交代だ」

 

夜の警邏を始めるべく、まずは第一グループのタクト・乱馬・シャンプーがスタート地点から出発した。
「癒しの里」は、元々それほど大きな里ではない。本来は一時間もあればだいたい里を一周して回ることができる。
とはいえ、里のはずれには深い森や、泉なども点在する。
神楽の力が弱っている今、どの部分から魔物が侵入して里に隠れているかわからない。
しかも夜は、悪しき者たちの力が増幅される時間帯。昼よりも注意深く警邏をする必要がある。
となると、1チームあたりに割り当てられた二時間という時間は少し短すぎるのかもしれない。

「二時間だと、だいぶ早足で回ることになりそうだ」
スタート地点からゆっくりと歩き出しながら、タクトがぽつりとそう呟いた。
当初よりだいぶ友好的になってきたタクトではあるが、やはりどこかで乱馬達に一線を引いているのか、
常に乱馬達よりも三歩くらい先を歩いている。
もしくは、
「は、離れろよシャンプー!警邏中だぞ!」
「私は女の子あるぞ!警邏しながら私も守るよろし」
とかなんとか言いながら、傍からみると「ただべたべたしているだけ」の二人とは距離を置きたいだけなのか、妙に気を使っているだけなのか。
いずれにせよ、一緒に行動はしているが、少し距離をもって歩を進めている乱馬達であった。

三人は、夜で人通りのない道をゆっくりと歩いて行った。
茂があれば、剣や、タクトのランスでその中を確認をする。時折小さな魔物を見つければ、逃さずにとどめをさす。
そして、
「泉か…」
里の外れに近くなると、森も深くなってくる。
あかねの居住している小屋の付近にある大きな泉とは違い、逆のはずれには小さな泉も森に紛れて点在していた。
昼間、乱馬達が歩いて目にした泉とは、時間帯が違うだけで随分と違う面持ちに見えるものだ。
昼間は「澄んでいて美しいみなも」と感じていた部分とで、夜では「不気味なほど冷たく美しい」、まるで温度のない鏡のような水面にさえ感じる。
以前、乱馬達も目にしたことがあるが、魔物の中には水の中に巣食うものもいる。
不謹慎ではあるが、こんなに冷たくそして美しい水面であるならば魔物でなくても吸い込まれたい妙な気持になってもおかしくはない。乱馬はそんなことをちらりと思ってしまった。
「…いきなり中に入るのは危険だ。まずは…」
と。
うっかりと夜の泉に見とれている乱馬に、タクトがそういいながら近づいてきた。
そして、
シュッ…
タクトは地面に落ちていた小石を拾い上げると、一度軽く握りしめた後、妖しく光る水面に向かってその石を投げた。
キ----ン…
石が水面を滑るように進みながら、水面と共鳴するかのように音を立てて滑っていく。
石は、穏やかに光を放っていた水面を時折歪ませ、そして時折美しく波を描くように踊りながら滑り続ける。
そして…ある瞬間にフッとその動きを止め、やがてポチャン、と泉の中へと沈んでいった。
「な、なんだ今の…」
まるで、何か意志ある生物の踊りでも見ているかのような感覚に見舞われた乱馬が声を上げると、
「…一時的に、石に魔力を与えて操り人形に仕立てたあるな」
タクトの代わりに、乱馬の腕にしがみついていたシャンプーが答えてくれた。
どうやら、自然物に魔力を与えて、一時的に自分の思い通りに操ることのできる魔法をタクトが使った、ということらしい。
「へえ。魔導師ならだれでもできるのか?」
カードの力を借りてならば魔力を少し使うことができる乱馬には、未知の世界の出来事。
乱馬がそう尋ねると、
「誰でも、はできないある。自然物にこのような力を与えることができるのは、大地属性の魔法の使い手のみ。しかも、下級の魔導師では難しい技ね。タクトは大地属性の魔法を使う魔法剣士あるから、可能あるな。それも、上級魔法の使い手と見た」
シャンプーはきっぱりとそう言い捨てると、
「おまえ、中々やるあるね」
「…別に。やるべきことをやったまでだ」
里に同世代の人間がほぼいない為、褒められることに慣れていないのか、はたまたどう反応してよいのかわからないのか。
タクトはぶっきらぼうにそう呟くと、
「先を急ぐぞ。この泉には、魔物はいない」
乱馬達を置いてさっさと歩きだしてしまった。
「あ、ちょっと待てよ!」
「褒められたら素直に喜ぶのがふつうあるのに。シャイな男あるな」
タクトの、少しだけ人間ぽい部分に触れられたのにうれしさを感じつつも、
今はそんなことにかまけてるわけにもいかない状況であることにも、変わりはない。
乱馬とシャンプーは、先を急いでいくタクトを急ぎ足で追いかけて行った。

 

そうこうして道を進んでいた三人であったが、
ふと気が付くと、すでに出発から一時間半も過ぎていることに気が付いた。
「もうそろそろ戻らなくては…」
茂をランスでチェックしながら、タクトが額の汗をぬぐいそう呟く。
「私たちの警邏では、大きな魔物とは出会わなかったあるな」
小さいのはちょこちょこといたけれど。シャンプーも、タクトと同じように茂を調べながらそう呟く。
「そうだな…お、また泉がある。タクト、また石を投げてくれないか」
乱馬もタクトたちと同じように茂を調べていたが、前方に新たな泉を発見したのでタクトに声をかけた。
すると、
「そこの泉は、調べなくても大丈夫だ」
それまでいくつもの泉を率先して調べていたタクトが、意外な言葉をつぶやいた。
「?なんでだよ」
「そうある。ここに、もしもラヴィのような巨悪なものが隠れていたらどうするあるか」
まさか、調べたら何か不都合なことでも?…乱馬達がそんな疑いの目でタクトを見つめると、
「そうじゃなくて。この泉は、里の中でも特別な泉なんだ」
タクトはそう言って、手にしていたランスの先端を、泉の水面へとつけた。
ランスと触れ合った水面は、穏やかな光を放つ弧を描きながら緩やかにうごめいている。
一見すると、特に他の泉と変わるところがないように見えるのだが…乱馬達が不思議に思っていると、
「…この泉は、数ある泉の中でも特別な泉。『浄化の泉』と言われている」
タクトは、水面からランスを戻し水を拭いながら乱馬達に説明をした。
「浄化の泉?」
「そう。これは、死んじまったカタルのじいちゃんに教えてもらったことだけれど、この泉の水は『解毒』作用があるらしい。
それも、治癒能力では治らない『毒』の浄化だと…カタルのじいちゃんは言っていた」
タクトはそう言って、泉の水を手ですくって口に含んだ。
「浄化されるものがなければ、飲んだ者にとってただの水。ただし、浄化されるものがあるものが飲むと…ひどく苦しんだ後、それに耐えることができれば、体が浄化されることが可能なそうだ」
「耐えられなかったら?」
「命を落とすこともあると、聞いてはいる」
最も、今まで治癒能力では治らない『毒』などを体に含んだ者はこの里には来なかったが。タクトはそう言って、乱馬やシャンプーにも泉の水を進めた。
二人は一瞬顔を見合わせるも、泉の水を手ですくって飲んだ。
…無論のこと、二人には浄化されるべき『毒』などないので何の異変も起こらない。
「魔物は、この泉の水に触れると溶けてしまうだろう。水に巣食うものなどなおさらだ。だから、この泉には魔物は潜んでいない」
タクトは二人の体に異変がないことを確認したうえで、そういうと水で濡れた唇を手で拭った。
「この『浄化の泉』のことはみんなも知っているのか?」
乱馬が、シャンプーからハンカチを借りて口をふきながらタクトに尋ねると、
「いや…ここのことは、カタルのじいちゃんと俺、あとはじいちゃんなら知っていたと思うけれど。ああ、兄さんも知っているかもな」
「里の皆にも秘密なのか?」
「秘密というか…あまり頻繁にこの水を口にしていると、いざ『毒』を浄化したいときに効き目がないと困るから、里の中でも口の堅いものや、直接治療に携わる行為をしているものしか知らないようにしているだけだ」
タクトはそう言って、「さあ、そろそろ戻らないと」と、乱馬達との話をさえぎるように再び歩き出した。
その際、
「…暑いな。なんで今日はこんな暑いんだ」
タクトが不意にそんなことをつぶやいた。
見ると、いつもタクトが首に巻いている厚ぼったいストールのせいで、体温が上がっているようだった。
それに加え、二時間近く里を歩き回り、最後に冷たい水を中途半端に口にしたせいで余計に体が「冷」を求めているようだ。
「暑いなら取ったらいいある」
シャンプーがそう助言するも、
「…余計なお世話だ」
タクトはそう言って、わざわざストールの先端をきつく首へと巻き直していた。
「あまのじゃくあるな」
そんなに首を見られるのが恥ずかしいあるか?怪訝そうな表情でタクトに更につっこむシャンプーだったが、
「だから、余計なお世話だといっているだろ」
タクトはそんなシャンプーから逃れるように、足を速めて歩き出した。
「…」
そういや、右京も首にストールを巻いていたっけ。今、この里では流行っているのか?ストール。
ファッションについては無頓着な乱馬であるので、そんなことをふと思ったのだが、
特にその時はそれ以上、この件について考えることはなかった。


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