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Hypocrite1

その翌朝のこと。


 


 


「うっちゃん、昨日帰ってくるのが遅かったって聞いたんだけど、大丈夫か?何かあったのか?」
乱馬と良牙は里の警邏に行く途中にぼーっと窓際に立っていた右京に気付き声をかけた。
朝食の手伝いのために炊事場へと向かったシャンプーに先ほど聞いたところによると、
右京は深夜にふらりと帰ってきたとのこと。
右京は昨日、昼間にあかねのもとへ向かった後から消息不明だった、といことは、それ以来深夜まで…数時間以上も帰ってこなかったことになる。
一般の娘よりも腕が立つとはいえ、流石にいつ魔物に出食わすかもわからないこの状況、連絡が何もないままというのは少し心配だ。


乱馬がそんなことを思っていると、
「…別に何もないよ。あかねちゃんの所に行って、そのあと里を回ってたら里の女の人と意気投合しちゃって…」
右京はそう言いながら「心配掛けてごめん」と頭を下げた。
「あ、いや、大丈夫ならいいんだ。でもこれからは遅くなる時は誰かに一言言ってからにしような」
乱馬はそんな右京に対し、とくにとがめる様子もなく「この話はこれで終わり」と句切れをつけようとしたのだが、
「意気投合ねえ…」
乱馬とは違いそんな右京の説明に素直に納得出来なかった良牙は、何か言いたげな様子で口を挟んだ。
「なんやあんた、うちが嘘言ってるとでもいうん?」
右京は今度は相手を良牙に変えて言い返すも、
「なあ、お前それ、どうしたんだ?」
良牙はそれには答えず、逆に右京に質問を返した。
「それって?」
意表を突く逆質問に右京が眉をしかめると、
「それ。お前、昨日までそんな首巻つけてなかっただろ」
良牙は、そんな右京の首筋を指さしてそういった。


 


…そう。
いつもの右京は、東方から輸入したらしき襟元合わせの独特な服を身にまとっているのだが、
その首元はすっきりとなにも巻かれていなかった。
それ故に、白くてほっそりした首に右京の長い茶髪も映えるかのように映っていたのだが。
今日の右京は、その白くてほっそりした首筋に、よれよれの模様が入った布を幾重にも巻いていた。
身にまとっている衣服とも柄もあっていないし、細い首に必要以上に巻かれたその布は重々しく感じられバランスも悪く、
はっきり言って似合っていない。
首に巻かれたスカーフ、といえばタクトもそうだ。
タクトのスカーフも、暑苦しく首に何重にも巻かれていて初めて会った時にも顔の次に「スカーフ」が焼けに印象的だったのをふと、乱馬は思い出した。


と、
「おしゃれにきまっとるやろ。これ、昨日仲ようなった里の人に譲ってもらったんよ」
そんな二人の追及を軽くかわすように、右京はさらりとそうあしらうと、
「ま、女のおしゃれもわからんようやから、良牙はきっとモテへんのやね」
「何をっ!?」
「悔しかったらモテるようになってみい。あ、それとも何か。あんたこれ、男からのプレゼントとか思ったんか!」
「なっ…そんなわけねえだろ!それになあ、そんな悪趣味な布贈るような男と一緒にされるとこっちも迷惑だ!」
「ああそうですか、ならほっといたり。…さ、うちはそんなお節介に構ってるばあいやないな、食事の手伝いに行かんと」
それじゃ二人は警邏、頑張って。右京はひらひらと手を振ってみせると、良牙や乱馬達の前から去って行った。
「な、なんだあいつは!」
良牙は右京の態度に怒りを覚えているようだったが、
「まあまあ。好きで巻いているみたいだし、ほっとけばいいじゃねえか」
一方の乱馬はお気楽だ。
良牙とて、別に執拗に追及するつもりもないし、右京自体にも興味があるわけではないのだが、
明らかに色もバランスも悪いファッションを目の当たりにすれば、年頃の普通の青年ならば気になるだろうに、


「…」


…ったく、あかねさん以外の女には全く興味も示さねえんだよなあ、コイツは。
おおらかなのか、それともあかね以外には無頓着なのか。
確かにあかねは美しいし、自分とて憧れている。
実際、国の中でもあかねは評判の美女だったし、旅の先々でも男たちはあかねの事をそういう目で見ていたっけ。
そんな美女が婚約者なら、まあ惚れこむのもしょうがないっちゃあしょうがないけど、限度もあるだろうに。

が、そんな乱馬が少し羨ましくもある良牙であった。


 


 


 


 


その日の午後の事。
真之介やタクトと再び里の警邏に出ようとしていた乱馬と良牙のもとに、急ぎ足でシャンプーがやってきた。
「よー、シャンプー。そっちの方はどうだ?」
シャンプーとムースは、乱馬達と別行動でカードの捜索をしている。
そのシャンプーが急ぎ足で乱馬達の元へやってくるとは何か進展でもあったのだろうか?
乱馬がシャンプーへ声をかけると、
「乱馬!」
ガバッ
シャンプーは駆け寄りざま、いきなり乱馬に抱きついた。
乱馬や良牙にしてみれば、旅の当初はこうやってよく隙あらばシャンプーは乱馬に抱きついては引きはがされをしていたので「またか」ぐらいの感覚なのだが、


「…いい御身分だな」
「邪魔をしては悪い。警邏は我々で行こう、タクト」


そういう行為自体に免疫のない真之介やタクトは驚いたようで、さっと乱馬に背を向けると、さっさと里の警邏へと出てしまった。
王国貴族というのは節操がない、とでも思ったのだろうか。
真之介に至っては、あかねあかねと騒いでいる割には別の女と、とでも思ったのかもしれない。
「しゃ、シャンプー!ちょっと離れろって!」
とりあえず初めてではないにしろ、乱馬が居心地悪げにシャンプーを自分から引き剥がすと、
「ムースがいない開放感によりうっかり、心の奥底の願望が先に働いてしまったある」
シャンプーはケロッとした口調でそういうと、大人しく離れた。
そして、
「カード自体はまだ見つかってないあるが、進展があったある」
「ホントか!?」
「納屋でひいばあちゃんと交信出来たある。そこでヒントをもらったあるが、私とムースだけでは手掛かりが見つけられないね」
「ヒント…?」
「"鏡に映る月が沈む山の端、神のみぞ知る"と、ひいばあちゃんは言っていた。もし里を警邏している特にそれに関連した場所や話を聞いたら教えてほしいある」
シャンプーはそこまで一気に喋ると、「ムースが今一人で書庫で文献を探しているので、私も戻るね」と、駆けてきた方向へと戻って行った。
「…鏡に映る月が沈む山の端かあ。今までそんな場所、あったかなあ?」
ここ数日里を警邏しているものの、山、はふんだんにあれど、『鏡に映る月』とはそもそもなんなのだろうか?
一向にそんな場所に心当たりがない二人であったが、
「でもばあさんが言ってるんだから、なんかに関係あるだろ」
「そうだな」
里を警邏しながら、少し気をつけて周りを見なくてはいけない。
鏡、月、山の端…乱馬と良牙は改めて気を引き締めたのだった。
その一方で、


「…ということあるから、お前も何か心当たりがあったら私かムースに言うある」
「わかった」


シャンプーは、里の女たちの手伝いをしながら色々な情報を集めてる、という任務を遂行している右京の元へも立ち寄り、同じ情報を伝えた。
「あんたとムースも大変やな。頭、フル回転ちゃうの」
「魔導士は頭を使ってこそ、価値がでるある。ラヴィ達のせいで私たちの魔力自体も復活しつつあるから、状況に応じて動かないといけないある」
「がんばりや。うちも情報入ったらすぐ教えるよって」
「了解ね」
珍しくねぎらいの言葉をかけてきた右京に若干違和感を感じつつも、シャンプーはそう言ってムースの元へと戻って行った。
右京はそんなシャンプーの後ろ姿をしばらくは笑顔で送っていたが、しかしその瞳は…全く笑っていない。
それと合わせて、眼だけ笑わない右京の首筋---そう、厚ぼったい布で隠された首筋では、布の下に刻み込まれた不気味な花の痣が妖しいまでに赤く熱を帯びていた。

「うち、向こうの泉で洗濯してくるわ」
「ああ、悪いねえ、姉ちゃん。客人なのにさ」
「お互いさまやろ。ほな、行ってきます」
その赤く熱い痣を悟られぬように、右京は里の女たちの洗濯物をまとめてかごに入れると、一人、洗濯場として使っている泉へと向かった。
泉につくと湖畔にかごを置き、自分が誰にもつけられていないか、そして誰にも見られていないかを確認する。
そして、泉のそばに立っている大きな樫の木の陰に身を隠すと、
「…」
懐に隠し持っていたペンで、首に巻いている布の端を少し破り、
『カードのありか。鏡に映る月が沈む山の端、神のみぞ知る』
そう記すと、樫の木にあいている小さな穴の中へとねじ込んだ。


…そう。
昨夜、術にかけられた右京は、ラヴィとラヴィの仲間の為に行動するよう記憶をプログラムされてしまっていた。
何か情報を得たら、首筋に浮かび上がる花の痣がその証拠である。
そしてそうなった場合は、この泉の樫の木の穴に情報を入れておくように体が勝手に動いてしまうのだった。
心の奥底ではこんなことはやめたいのに、頭と体がまるで別人のようで言うことを聞かないのだ。
それに、


『お前が心の中で望むことに力を貸してやろう』


あの時言われた言葉が、薄れ行く右京の意識の中でなぜかはっきりと残り、今もこうして記憶にとどまっていた。
この里に来た時から、同じようなことを別の者にも言われていた。
不気味な、人物だった。
あの時、その者のことを何も知らない右京に対し、その者は『どうしても欲しい時はわが名を呼べ』と言っていた。
あの時は何の事だか分らなかったし、そんなつもりもなかった。
が、こんな状況の今ならば少しその『名』が何なのか理解できる気がする。
そう、多分あれは…「嫉妬」。
ジェラシー。
あかねに対しての醜くも激しい嫉妬。
どこにもぶつけられないその思いを、まるでラヴィ達手の者には見透かされていたかのようだ。
昨日襲われた時、もしもそんな醜い嫉妬が右京の中になかったのならば、今こうしてラヴィの手の中に落ちるなんてことはなかったかもしれない。
その代わり命は落としていたかもしれないけれど…。
「…」
そう、右京は。
心の底に眠る感情をうまく前面にあぶり出されてしまったのかもしれない。
もしかしたら、『お前が心の中で望むことに力を貸してやろう』と言われた時、
否定していた自分とは裏腹に、心の奥底にいる本当の自分は、禁断の力を手に入れてでも乱馬の事を手に得入れたいと…思っていたのかもしれない。
「…」
…本当はこんなことをしたところで、乱馬が本当に手に入るなんて思っていない。
でも、それでもほんの少しだけ何かに期待してしまう自分もいる。
もうそんなにまで惚れこんでしまったのか、と自分に問いかけてみるも、その答えなど分かりはしない。
右京は、樫の木の穴に埋め込んだ布切れをもう一度しっかり奥の方まで埋め込みながらため息をついた。


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