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ペルソナ6

「あかね様は、今休まれています」
「あ、そ…じゃあうちこのまま帰るわ」
それからしばらくして。
乱馬や良牙、ムースやシャンプーと別行動で里の外れにあるあかねの屋敷へ向かっていた右京だったが、
屋敷の中にいた、これまた真之介に頼まれてやってきたらしき飯炊きの女にそう聞いて、右京はあかねの顔を見ずにそのまま引き返すことにした。
眠っているのを無理に起こすことはない、というのも一理あるが、
本当にあまりあかねと顔を合わせたくない、というのが心情だった。
それに、眠っていたといえば、乱馬だって会わずに帰ってきた事に対し文句を言うことはないだろう。

…あかねのことは嫌いではないけれど、こと、乱馬が絡んでくると複雑な感情が右京の胸にあることも事実だった。
生まれて初めて、強く魅かれた異性。
容姿もそうであったが、何よりもその内面に魅かれた。
一緒にいればいるほど好きになってしまう。そんな経験、生まれて初めてであった。
でも、一緒にいればいるほど、彼の心の中には別の人物がいることも分かっていた。
右京が旅に同行し始めた頃や、あかねが居なくなる前までは、右京だけでなくシャンプーもあからさまに乱馬に言い寄っていたけれど、
気持ちは変わらないかもしれないが、今はシャンプーは表立って乱馬に言い寄ったりはしていないように思われる。
ムースに心変わりした…というわけではないようだが、
良い方向にしろ悪い方向にしろまっすぐで一本気なシャンプーは、
もしかしたらあかねが乱馬の元に戻るまでは一時休戦、とでも思っているのかもしれない。
が、右京は違う。
あかねには気の毒だが、今は遠くに離れている以上、側にいる自分には良い環境。
乱馬も、少しづつあかねから心が離れるだろう…ずっとそう思って、隙あらば、としていた。
が、一向にそんなことはなく、それどころかどんどんあかねへの思いを強くしているような気がしてならない。
右京は仲間、あかねは…という図式が、乱馬の頭の中では成立しているのかも知れない。
皆で力を合わせなくてはならない、こんな状況下でも。

「…あーあ、もう無駄足だよ。乱ちゃんの馬鹿」
自分も、シャンプーみたいにフェアにするべきか。
でも、恋愛なんてそんなルールにのっとってやっていたらライバルになって勝てっこない。
人の気持ちなんて、しょっちゅう変わるわけだし。
でも…
「乱ちゃんの…鈍感」
右京は小さくそう呟きながら、道端に生えていた背丈ほどもある草をぶちっと抜き取り、道端ののしげみへと投げ捨てた。

 

 

 

 

…と、その時だった。
「うっうっうっ…」
茂みの奥からだろうか。押し殺したような女の声が聞こえてきた。
右京が投げたのは草。草が当たって痛くて泣いているわけではない。
というよりもむしろ、このような里のはずれの、しかも茂みの中で隠れるように泣いていること自体おかしな状況だ。
「…」
右京は、背中に背負っていた大きめのヘラにゆっくり手を伸ばし、柄をぎゅっと握りしめる。
緊張のせいか、汗ばんでいるのがわかった。
神楽の結界が弱まり、あの凶悪なラヴィの手の者がこの里へ紛れ込むことも大いに考えられる。
こんな、一人でいる時に…運が悪い。
でも、やれるだけやるしかない。
右京は覚悟を決めて、大きく一度深呼吸をした。
そして、

「…こんの魔物があ!覚悟しいや!!」

そう叫びながら、へらの先端部分で茂みを覆っている草を左右へと乱暴に荒らした。と、

「ひっ!」
「わっ…!?」

飛び散る草の隙間から、その茂みに隠れていたものが姿を現した。
なんと…子供だ。
しかも女の子供。それに、右京にはその子供に見覚えがあった。
「あんた…確か前に…」
…以前。
この里に来て一番初めにあかねに会いに行くためにこの道を歩いていた時、子供たちの集団とすれ違った。
その集団とは別に、右京達をその近くの木の陰からじっと見ていた少女がいた。
確か名前をリアと言ったと思ったが、
そのリアが、なぜか茂みの中で泣いていた。

「あんた、こんなところで何してるん?」

とはいえ、もしかしたら里の子供に化けた魔物かもしれない。
まだ気は抜かずに、へらを構えたまま右京はリアに尋ねる。
「殺されちゃったの…カタルのおじいちゃん、殺されちゃったの…アイツに、アイツに殺されちゃったの…」
リアは、おびえた表情を見せながらも、必死で右京に話しかける。
「カタルの…おじいちゃん?」
勿論、右京にとっては何が何だかわからない。
が、泣きながら必死で右京に話しかけるリアの服は、なんと真っ赤。
ぱっと見、赤い色合いが施されているのかと思ったが、よくみるとそれは血のようだ。
涙のせいで流れ落ちてしまったのかもしれないが、もしかしたら最初は顔にも手にも血がついていたのかもしれない。
「あ、あんた怪我でもしたんか!?」
とりあえず、リアからは禍々しい気は感じられない。
右京はヘラを背中へ戻し、茂みを分け入ってリオのすぐそばへと並んだ。
見たところ、リア自身から出血しているものではなさそうだ。
ということは、この血は、その「カタルのおじいちゃん」という人物の血なのだろうか?

「あせらなくてもええ、何があったのか、うちにゆっくり話してみい?」
とにかく、事情を把握するのが優先だ。右京はリアに優しく話しかけた。
「カタルのおじいちゃんと、散歩してたの…そしたら…アイツが来て、カタルのおじいちゃんに、質問したの…」
「質問?」
「…カードはどこだって、言ってたの…」
「!そ、それでどうしたん!?」
「カタルのおじいちゃんは、そんなの知らないって、言ったの。そしたらアイツ…アイツが急にカタルのおじいちゃんの首に…」
リアはそこまで言って、再び激しく泣き始めた。
体がぶるぶると震えていた。どうやら、相当恐ろしい光景を目にしたようである。
「ごめんな、思い出すのも怖いよな…でも首に、どうしたん?」
本当は、こんな年はかもない子供に、そんな怖いものを思い出させるのは心苦しいが、だがリアが見たことが何か今の状況を打開することにつながるのなら、聞かなくてはならない。
右京は心を鬼にして、リアに再び質問した。
リアは、なんでもしゃっくりをあげならが、とぎれとぎれだが必死で右京に状況を伝える。
「おじいちゃん、何も悪いことしてないのにっ…首…首に大きなツメみたいな刃物で切りかかってっ…首から血がたくさん出たのっ…」
「!」
「おじいちゃん、私に早く逃げろって…アイツ、私も殺そうとして爪を振り上げて…そしたらおじいちゃん、私をかばってアイツに足を…」
「…あんたは、その隙に逃げることができたんやね?」
「アイツに見つからないように逃げて…気付いたらここに…」
「あんたの親は?心配してるんちゃうの?」
「そんなのいない。だからカタルのおじいちゃんが面倒見てくれて…」
リアはそこまで話すと、また激しく泣き始めた。
親代わりに育ててくれた人物が目の前で惨殺されたのだ、無理もない。
だが、右京はそれらの話を聞いて、一つ気になった。
「なあ。さっきからあんた、何度も『アイツ』っていっとるけど…『アイツ』って、誰なん?カタルのおじいさんて人を殺したの、悪い魔物やったんやろ?」
そう。
先ほどからリアは、自分たちを襲った相手を『アイツ』と表現していた。
話の流れからして、カードのありかを訪ねるためにこのような冷酷非道なことをするのはラヴィ、またはその手下の魔物としか考えられない。
だが、リアは『アイツ』という。それだと、まるですぐ側にいる知り合いかでもあるようなのだが…
「あんたが見たの、魔物やな?それとも違うん?」
右京が、黙り込むリオに再び尋ねると、リアはすぐにはその問いに答えず、
「…みんな、騙されてるんだもん」
震える声で、右京にそう返した。
「騙され、てる?」
右京が鸚鵡返しをすると、
「ある日突然この里来て、みんなに変な魔法をかけたの…アイツはあの日、数ヶ月前急にここに来たのに、昔からここにいるみたいにみんなが言うの…でも知らないの、本当は皆だってアイツのこと知らないはずなのに!!」
リアは、激しく泣きじゃくりながら一気に叫んだ。
「私、アイツが来た日は熱を出していて、カタルのおじいちゃんにもらったお薬、飲んで寝ていたの…黄色い花をすり潰したっていう、特効薬。…起きて里に出てみたら、カタルのおじいちゃんも、里のみんなも、神楽のおじいちゃんも…みんなみんなおかしくなっちゃったの…みんなに何度もそれを話すのに、誰も信じてくれないの…」
リアは、真っ赤な血で染まったポケットへ手を突っ込み、何かを取りだして右京へと渡した。
小さな皮の小袋だった。あけると、黄色い粉が入っている。
どうやらそれが、熱が出た時のための特効薬、なのだろう。
右京は中を確認だけしてそれをリアに返した。そして再度質問をする。
「薬はわかったんやけど…えーと、それは一体どういうことなん?つまり、あんたの言う『アイツ』ってやつは、みんなをだまして魔法をかけたってこと?」
右京の大まかな解釈に、リアが小さくうなづいた。
「えーと、そんでもっとそれをちゃんと解釈すると…『アイツ』って奴は、さも自分がこの里に昔からいたかのように皆に魔法をかけ、皆を欺いているってことか?」
右京の次なる解釈に、リアが大きく頷いた。
「…」
…リアの話は、確かに信じがたい話だ。
ある日突然やってきた者が、あたかもこの里に以前からいたかのように思わせる魔法をかける。
そして、この里に人間として、紛れ込む。
里の神楽は大魔導師でもあるはずなのに、その神楽の目をも欺くほど、強力な魔法を気づかぬうちにかける…そんなことが可能なのか?
そんな夢のような話、と思ってしまいたくもなるが、
「ペルソナ…」
昨夜、ムースが「仮面」の話をしたことを右京はふと、思い出した。

『この里の人々はみな、我らに友好的じゃと思っていたが…この中にはどうやら、仮面(ペルソナ)を被っている人物が紛れ込んでいるらしい』

神楽のように力の強い魔導師さえも欺き、そして魔法が使えないはずのこの里の中でも、魔法を使って見せるというその技。
そんな姑息な技を使う人物なのだ、仮面をかぶってこの里の人間として紛れ込んでいたとしても不思議はない。

「な、なあ!『アイツ』って誰なん!?誰がカタルのおじいさんや、そして皆に魔法をかけたん!?」
このリアの話は、一重にイタズラや作り話として却下することなど出来ない。
魔法にかけられた皆が信じなくとも、そういうしがらみのない右京達ならば、それが本当かどうかを調べることが出来るはずだ。
そのためにはまず、皆にこのことを説明しなければ。
仮面をかぶってこの里に紛れ込んでいる『アイツ』という人物のことを、伝えなければ。
右京は、リアの両肩をガシっとつかみ、更に情報を聞き出そうとその体を揺さぶった。
リアは、そんな右京にこたえるべく唇をゆっくりと、その人物の名前を呟くべく動かそうとしたが、

「…いやあああ!!!」

 

次の瞬間、世にも恐ろしいものを見たかのような表情に代わり、発狂したかのように叫んだ。
「ど、どうしたん!?なあ、あんた一体…」
どうしたのか。
右京が再度リアに尋ねようと口を開いた、ちょうどその瞬間。
…不意に右京の頭部に鈍い衝撃が走った。
「あ…あれ…?」
ドサリ、と体が斜めになり急に地面が近くなったように感じた。
鼻先に、土のにおいがする。それまで見ていたリアの小さな体が、なぜか右京の上部に見えるような気がした。
土のにおいとともに、鼻先に生ぬるいものが流れてきた気がした。
ツンとした独特の鉄分を含む匂い。もしかしてこれは血か?
「きゃあああ!!!助けて…助けてえ!!」
と、
急に倒れてしまった右京の耳に、リオの悲鳴が飛び込んできた。
が、その悲鳴もすぐに収まり…右京の側に何かがドサリ、と倒れこむ音が聞こえた。
もしかしたら、その『アイツ』という奴がリアを探し出し、手をかけたのかもしれない。
カタルのおじいさんという人を襲ったところをリアは見ている。それ故に、リアがいては何かと不都合だ。
だからこうして探し出し、リアまでも…

「…」

なんて、卑劣。右京は怒りで胸がむかむかした。
だが、反撃したいと思っても、どうやら自分は頭を殴られて怪我をしたようで、体が思うように動かない。
しかし、転んでもただでは起きない。せめて、カタルのおじいさんという人やリアの命を奪った『アイツ』、仮面をかぶって里に忍び込んでいる『アイツ』の正体を見てやろうと、
右京は掠れる意識の中でなんとか体を回転させ、リアの体に無残にも剣を立てている冷酷非道なその人物の顔をみた。
その瞬間、

 

「!!なっ…」

 

…右京の体全体に衝撃が走りぬけていくのを感じた。
見てはいけないものを見た。これはきっと、そういう感覚なのだろう。
しかし、信じられない。
もしかしたら見間違いかもしれぬ、と薄れゆく意識の中何度も掠れる目をこらしたが、そこにいる人物は変わらない。
「っ…」
これは、大変だ。右京は何とかしてこの事実を皆に伝えるべく起き上がろうとしたが、

ドスっ…

「うぐっ…」
リアの亡骸を剣先で茂みの奥へと押し込んだその人物は、右京が逃げようとしているのに気がつき、動きの鈍い右京の体を足で蹴りつけひっくり返ったところを踏みつけた。
「くっ…なにさらすねん…」
必死にその足をどけようと手をかけるも、その人物は無情にもそんな右京の体を更に強く踏みつけた。
そして、
「こんなに早く機会が巡ってくるとは計算外だが、おまえのその体、利用させてもらうぞ」
そういうが早いか、右京に向かって左手をかざした。すると見る見るうちに左手に黒い光が集まってくる。
「!」
殺される…わけではなさそうだが、右京の身が危険なことは確かである。
しかも、足で踏みつけられているため、逃げることが出来ない。いわゆる絶体絶命である。
「う、うちの体を利用するって、どういうつもりや!」
それでも、このまま大人しく何かされるのは嫌だ。
右京は最後の抵抗、とばかりに威勢よくそう叫んだが、
「…お前が心の中で望むことに力を貸してやろうというのさ」
その人物はそれだけ答えると、右京の体に向かって集まった黒い光を放った。

「う、うわああっ…」

ぐねん、ぐねん、と何か得体のしれない怪物が体の中に入ってくるかの感触。
右京の中の何かを、一つ一つその怪物が食べて消していくかのように自分が無くなっていく。
やがて眼の光も、体温も全てが今までの自分、と違う感覚に陥った。
外見は今までどおりなのに、変な感触である。
しかも、なんだか首筋が異様に…熱い。
右京の背中まである長い髪の毛で頸筋も隠れてはいるが、なんだか焼きつくような熱さである。
「う、うぐぐ…」
右京がその熱さになんとか耐えていると、
「…その首筋の花は我らが仲間の証…仲間の証にお前がほしいと望むものを手に入れるために邪魔なものを消す力を与えてやろう」
右京に黒い光を注ぎ込んだその人物がそう呟いた。

 

「…」
…そのフレーズを。
右京は一度だけ聞いたことがあった。
そう。
この里に来て、まるで幻覚のように右京にだけ付きまとっていた不気味な男が口にしていたフレーズである。
同一人物、ということは顔が違うのであり得ないが、
同じことを右京に囁くということは、もしかして二人ともラヴィの仲間ということか。
もしくは、この人物が、あの不気味な男の「幻」を右京に見せていたのかもしれない。
仲間の内で一番心に隙のありそうな右京に目をつけ、徐々に浸食をしながらこのような機会を狙っていたのかもしれない。

「そんなの…いらん…」
「しかしお前の心は欲している。…受け入れよ。さすれば楽になる」
男はそう言って、右京の熱い首筋に指で触れた。その瞬間、まるで電気が走ったような衝撃が右京の全身を駆け抜けた。
「!」
…右京の意識はそこで途切れた。
その代わり、

「…」

まるで意志を持たぬ操り人形。
豊かな表情を一切消し、瞳に冷ややかな光を宿した右京の「体」が、その直後ゆっくりと地面から立ち上がったのだった。


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