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ペルソナ2

その日の、夕刻。
里の女たちが夕食の用意をしたというので、乱馬たちは広間へ移動した。
ところが、いつまでたっても神楽が姿を見せない。
「あれ、じいちゃんは?」
普段は愛想が悪くつっかかってばかりのタクトであっても、食事の時と家族のことを思うときは素直。
昼間、乱馬に突っかかっている時とは全く違う柔軟な表情で給仕の女性を捕まえてそう尋ねると、
「部屋の外から何度もお呼びしてるんだけど、返事なさらないのだよ」
「出かけているのか?」
「いーや。最近お歳のせいもありよくお疲れになるみたいで…眠っていらっしゃることも多いんだけどねえ」
女性はそう言って一息おき、「でもやっぱり起こしてこようかね?」と神楽の部屋へと向かおうとするが、
「いや、寝かせておいてやろう。じいちゃん、昼間も客人があって、たぶん疲れたんだ」
その女性を、タクトの横で話を聞いていた真之介が止めた。
「客人て?」
神楽は食事には来ないとわかった途端、目の前に並べられた食事に手を付け始めたタクトがそんな真之介に今度は尋ねる。
真之介の話によると、どうやら治癒の儀式が終わったのち、神楽は「客人」と会うので自分の部屋には誰も近寄らせるなと真之介に命令をしたらしい。
「さあ…でも、俺にも部屋には近寄ってはいけない、とじいちゃんは命令した。誰にも見られたくない相手だったのか…」
真之介も食事に手を付けタクトに説明しながら、そんなことをつぶやく。
「その客人と会った後、神楽のじいさんはどうしたんだ?」
乱馬がそんな真之介にさらに尋ねると、
「それ以降はじいちゃんとは会ってない。俺も、再び里の警邏に出て今さっき戻ってきたばかりだから」
そういう真之介の服の袖は、うっすらと土埃で汚れていた。確かに今まで外に出ていた証である。
「まあ、そういうことなら…」
「じいちゃんには、後で食事を部屋に持って行ってもらうことにする。タクト、給仕の人たちに頼んでおいてくれ」
「ああ」
世界の三大魔導師でも、寄る年波には勝てないのか。
あの元気なコロンも、こんな時があるのだろうか?乱馬たちはそんなことを思いながら、それぞれ食事に手を付けた。

と。

「ごめんください」

建物の外から、透き通るような女性の声がした。
聞き覚えのあるその声は、あかねである。
声がした瞬間、まるで何かの機会にスイッチが入ったかのように真之介と乱馬が立ち上がったので、それを見ていた良牙が思わずすすっていたスープを吹き出してしまった。
「まるで機械仕掛けの人形あるな」
「感情がないだけ人形の方がまだいいだ」
シャンプーとムースが二人を見ながらひそひそと呟く中、
「治癒の儀式も終わったのに、何か用でもあるんやろか」
一人冷静な口調で、右京がぼやく。
右京にしてみれば、あかねがやってくることで乱馬の気がそちらに向いてしまうのが面白くないのだ。
「あの、あかね様が神楽様に本をお返しにいらしたのですが、神楽様が少しお疲れでお休みになられていることをお話ししましたら、ぜひお見舞いをされたいと…」
と、あかねの応対に出ていた給仕の女性が、広間にやってきて真之介にそう報告をした。
「そうか。じゃあ俺が案内する」
すると、いうが早いか真之介がそう言って足早に部屋を出て行った。タクトはそんな真之介の様子をニヤニヤと見ている。
そして、「お前にあの二人の間に入る隙間はない」とでも言わんばかりに乱馬を見た。
もちろん面白くない乱馬ではあるが、ここでカッとなってタクトとイザコザ起こしては、それこそタクトの思うつぼ。
ここはグッとこらえて、渋々と席へとついた。
と、そんな矢先だった。

 

「きゃあああああ!!!」

 

静かな空間を切り裂く、女性の悲鳴が聞こえた。その直後、ドオン!!と建物が揺れるほどの衝撃があたりに走った。
「!」
「何あるか!」
「いったい何事じゃ!」
衝撃のせいか、広間中を照らしていた大きなランプの灯が一瞬で消えた。
ここでは、シールドのせいで魔法の力がある程度制御されてしまうため、すぐにランプへ魔法で灯をともすこともできない。
「くっ…」
しかし、明らかに何か、異常事態が起こっていることは確かである。しかもあの悲鳴の主、あかねではないだろうか?
「あかね…!」
乱馬とタクトが、まず剣を握りしめて広間を飛び出した。そのあとに残りのメンバーも続く。
広間の外は、給仕の女性たちがあわててランプの明りを灯しなおしている最中であった。
「タクト、大変だよ!神楽様の部屋から光がっ…」
「光!?」
「光がドアを突き破って…!」
給仕の女性の一人が、タクトに状況を話す。
「ドアを突き破る、なんて表現されるようじゃ穏やかな治癒の光ってわけじゃなさそうだな…」
「そんなものとは違うね、ランプの明りも吹き飛ばして振動を起こすような光、考えられることはただ一つある!」
「一つって…」
「さっき、あかねが神楽を見舞うといっていたある。ということは、疲れていた神楽に治癒の力を施そうとしたと考えてられるある。
もし、施したのと同時にこの状況が引き起きたのならば、考えられることはただ一つ。神楽の体の中に満たされていた”光”があかねの”光”と反発しあって衝撃が生まれたね!」
その話を聞いたシャンプーが、即座に状況を分析して叫んだ。
「おい!それじゃあ俺のじいちゃんの”光”が悪い光とでも言いたいのか!」
そんなシャンプーに対して、タクトが血気盛んにつかみかかろうとしたが、
「そうではない!神楽の中に、何者かが意図的に、事前に悪しき光を大量に注ぎ込んだ、と言いたいのじゃ!なあ、シャンプー?」
「えっ…?」
「以前、似たような状況が我々の仲間にもあったんじゃ!聖なる光は、相反するものは受け入れない…となると、あかねの光と相反するものが神楽の体に満たされていた。そう考えるのが筋じゃ」
タクトからシャンプーを守るようにかばいながら、ムースが叫んだ。
「で、でもなんでじいちゃんの体に!?じいちゃんは、年は取っててもこの里一番の力の持ち主なのに!」
納得できないタクトが今度はムースにそう突っかかると、
「そこが問題じゃ。神楽殿は確かに、強力な魔法の使い手。それは我らも認める。でも、あかねの光と相反したという事実も認めざる得ない。ということは、考えられることは一つ。何者かが、神楽殿の体の中に悪しき光を注ぎ込んだんじゃ」
「!?」
「しかも、少量であれば恐らくあかねが浄化してしまうことを考えると、相当大量に注ぎ込まれていたと考えられる。強力な魔法の使い手にそんなことが出来ることができる者など、限られておる!」
「ま、まさか…」
「…考えたくないが、ラヴィの手のものが里に紛れ込み、神楽殿にそうしたんじゃ。もしかしたら神楽殿を訪ねてきていたという客人は…」
ムースはそう言って、「とにかく、早く神楽たちのもとへ急ごう」と、タクトをうまく誘導した。
「…シャンプー、今ムースが言ったことは確かか?」
タクトとムースの後ろを走りながら、乱馬はシャンプーにこっそりと尋ねると、
「私も同じことを考えていたね。多分、原理的には…その、あかねがラヴィと対峙し、自らの光があかねを守ったのと同じね」
「…」
「とにかく、今は状況を確認するのが先ある」
シャンプーはそう言って、口をつぐんだ。乱馬もそれ以上はシャンプーに聞かず、ひたすら神楽たちがいる部屋へと足を動かした。

 

 

「じいちゃん!じいちゃん!しっかりしろ!」
乱馬が神楽の部屋へ着くと、一足先に部屋へとついていたタクトが、ベッドに横たえたままの神楽の体を激しく揺さぶっていた。
神楽は、目を開けない。が、息をしていないわけではないようで、どちらかという「深い眠り」に入っているかのようだった。
建物を揺さぶる程の衝撃を発した張本人であるにもかかわらず、深い眠りについているというのは、また異常である。
その一方で、
「あかね!あかね、しっかりしろ!」
部屋の片隅では、真之介があかねの体を抱き、揺さぶっていた。
こちらは、怪我はしていないようだが、光の反発の衝撃で気を失ってしまったようだ。
「あかね…」
乱馬は、今にでも真之介の腕の中からあかねをひったくって自分のもとへと手繰り寄せたい気持ちに焦がれるが、
さすがにこの状況ではそれを優先させるわけにはいかない。
「ムース、シャンプー、これはいったい…?」
真之介とあかねの姿を極力視界に入れないようにしながら、乱馬はまずは状況を把握するべくムースたちに尋ねる。
「…」
ムースは、タクトをまずは良牙に抑えさせ神楽の体から離させると、
「真之介、いったいこれはどういうことじゃ?何があった」
この状況下で唯一、何かが起こった時に室内にいた、と思われる真之介に尋ねた。
「…」
真之介はあかねを右京へと任せると、何度もあかねの方を振り返りながらではあるが、説明を始めた。
「…広間で言っていたみたいに、じいちゃんが今日は疲れているみたいだから、あかねが治癒を施そうと部屋に」
「お前も一緒にか?」
「ああ。そしたら…」
…真之介の話によると。
はじめ部屋の外から神楽を呼んだが、全く返事がなかった。
なので、少し迷ったが部屋の鍵を開けて中に入った。中は薄暗く、ベッドに神楽が横たわっていた。
そんな神楽に、あかねがゆっくりと近づいた。そして、神楽の名を呼び、治癒を施そうと額に軽く指で触れた、その瞬間だった。
バチバチバチ!!
神楽の額に触れたあかねの指から火花が散ったかと思うと、次の瞬間、
「うわ!」
「きゃああああ!」
言いようのない「圧力」が、神楽の体から巻き起こった。
真之介はその圧力で吹っ飛ばされ、壁に激突した。
あかねは…というと、巻き起こった圧力はあかねにぶつかろうとした瞬間に、あかねの体からその圧力と同じくらいの強い「力」が生まれ、その圧力を弾き返した。
その跳ね返した反動であかねは壁に叩きつけられ、気を失ってしまった、というのだ。

「あかねの体を、まるで守るかのような…一瞬で光が包んで、じいちゃんの体から生まれた圧力を跳ね返したんだ」
「神楽はその後どうしただ?」
「そのあとも何も、初めから今に至るまでずっとあのままだ。まるで、本人の意思に反して眠っているかのようで…」
ムースの質問に、真之介も何が何やらわからない、とでも言いたげな表情でそう答える。
ムースはそんな真之介の答えには何も返さず、黙って何かを考えていた。
そして、
「…とにかく、皆、この部屋から出るんじゃ」
「え!じいちゃんをこのままにしておけっていうのかよ!」
「神楽は多分…いや、今はこのままでよい」
「今は?」
「それよりも、皆で早急に話し合わねばならぬことがある。とりあえず皆はいったん広間に戻るんじゃ。あかねは、給仕の女たちに任せよう。気が付いたら、我らを呼んでもらうよう伝えればよい」
渋るタクト、困惑している真之介、そして何が何やらわからない乱馬たちを促しながら、ムースは神楽を部屋の中に一人のこし、すべての人を外へ出した。
そして、
「…考えたくないが、この里の中に我らの目を欺きラヴィの仲間が紛れ込んでいるようじゃな」
「!」
「この里の人々はみな、我らに友好的じゃと思っていたが…どうやら、そういう仮面(ペルソナ)を被っている人物が紛れ込んでいるらしい」
「っ…」
「とにかく、広間へ。何とかおばばにも助言をもらいたいし、対策を練らねばならぬ」
ムースはいつになくこわばった表情でそうつぶやくと、皆を広間へと誘導し、自らが最後に部屋へと入ると、その扉を静かに閉めた。


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