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ペルソナ1

癒しの里の朝は、外部の町から連れてこられた病人、怪我人などの治癒の儀式から始まる。
とはいっても、怪我をしたり病気になれば全員がここに来れるわけではなく、
ディノバの町やその近隣の町で、医者の治療を受けれない貧しい環境の人々の家や、噂、そして実際に町を歩いてみて治療が必要な者を選び、
この里と外部を自由に行き来できる能力を持つタクトが、連れてきては連れ帰るのだ。
手間ではあるが、そうすることで一部の富豪や、そのようなことで商売を行おうとするものに人選が集中することを避けることができる、と、タクト自身が考えだしたすべであった。

乱馬とあかねに少しだけ変化があった翌日も、勿論そんなことは関係なく治癒の儀式はおこなわれる。
その日も、決まった時刻の決まった場所で、決まった人物によるその治癒の儀式が執り行われていた。
唯一違うのは、少し離れた場所で、その儀式の様子を、「心ここにあらず」といった風体でぼーっと眺めている人物がいることだろうか。

 

「…さあ、目を開けてください」
朝の柔らかな光が差し込む教会の中に、穏やかで優しい声が響いた。
その声と同時に目を開けた患者は、自らの体を蝕んでいた痛みが跡形もなく消えていることに涙を流し喜んでいる。
患部に触れて祈ることでその力を発揮する治癒の魔法。施すことで人に笑顔と、喜びを与えるまさに奇跡の魔法である。
続いての患者も、その次の患者も、次々とその奇跡の効力に涙を流し喜ぶ。
そして、
「…エレメンタルキュア!」
触れるだけではなく、四大元素(火・水・風・大地)の力を借り治癒の力を患部へ送り込むことで治癒をより強力に施す魔法が施されれば、教会内に鮮やかな光が飛び散り、患者が光り輝いた。その光が収まるころには、
「…立ち上がった…もう二度と歩くことはないとあきらめていた娘が、立ち上がった!!」
聞けば、もう五年も寝たきりであったという。
五年の寝たきりの生活のために筋肉は多少衰えふらふらしているものの、元気よくあたりを歩きまわったり、一緒についてきた母親と抱き合って泣き叫び喜ぶその姿を見れば、いかに魔法の威力が強力であるかを垣間見ることができる。

その日は、治癒魔法の最高レベルである「蘇生」術は見ることはなかったが、数々の魔法が儀式では施されていた。
魔法を施しているのは、勿論あかね一人である。それがあかねの、この里での役目である。
そのそばでは、里長である神楽が治療が終わったものに対して、タクトが町に連れ帰るまでの時間、念のために薬を処方したり、相談に乗ってあげたりとしているのだ。
真之介は、というと治癒の儀式の間は顔を出さず、どうやらその間は里の警邏に行くというのが日課になっているらしい。
この里は特別なシールドで守られている、外の世界からは隔離された空間である。
それに加え神楽が、内側から特別な魔法によりシールドをより強力にしているのもあるのだ。
その神楽が治癒の儀式の間はそちらに全身全霊を注ぐので、内側のシールドが少し弱くなる。
それ故に、真之介のように里を警邏する者も必要なのである。
ということなので、真之介はたいてい、儀式が終わったころに警邏を終えひょっこりと姿を見せるのだ。

「…」
…乱馬がこの里に来て、あかねが治癒をしている姿を見るのはこれで二回目だった。
凛として、そこにいるだけでも清厳な雰囲気が漂う。それでいて、柔らかさや温かさも感じられる。
乱馬のそばで一緒に旅をしていた時とは違う、あかねがそこにいた。
でも、そこにいるのはやはり、乱馬が探し求めていたあかねであることもまた、間違いではなかった。

昨夜、「一度だけなら」という許しを乞うて彼女をこの腕で抱きしめた。
必死で抑えつけていた気持ちが、もうどうにもならなかった。そう、あの忌まわしき黒魔導師・ラヴィと同じようなことを考えるほどに自分の心を見失ってしまった。
彼女を腕に抱いたことで、その気持ちが全てふっきれたわけではもちろんない。だが、少しだけ前に進めたような気がしたのは、きっと気のせいではないとも思う。
とにかく早く、カードを集めラヴィを倒し、そして…あかねを元に戻してみせる。
あかねは、自分がこの手で守る。もう絶対に手放すものか。昨夜のことのせいで、よりその気持ちが強くなった。

『ここに来る前のあかねはともかく、今ここにいるあかねが、今のあかねなんだ。あかねがそれを望んでいなかったとしても、お前はそうするのか?』

先日の真之介の言葉は、そんな乱馬の心の奥底にずっと残っている。
あかねが、乱馬と帰ることを望まない。もしかしたら、そんな決断を下すことがあるのかもしれない。
でも…それでも、どうしても乱馬にも譲れないものだってある。
それは、エゴ、他ならない。しかし…
「…」
乱馬は、ぼんやりと治癒の儀式を眺めながらそんなことを考えていた。

と。

「いい御身分だな、王子というのは。こんなところで儀式の観覧と決め込んで」

ぼんやりとあかねを眺めていた乱馬に、不意にタクトが声をかけてきた。
いや、声をかけてきた、というよりも挑発にきた、という感じだろうか。
治療が終わり連れ帰る人々が集まるまでの間の時間つぶしを、乱馬に喧嘩をふっかけることでしようとしているのか。
いずれにせよ、友好的に話しかけてきているわけでないことは、明らかであった。
「…」
この里に来る前から、タクトは何かと乱馬達、とくに乱馬にはつっかかる。
かといって、いちいちその喧嘩を買っていても双方に利益があるわけではないことは明らかだ。
乱馬は、タクトの声に何を答えるわけでもなく、スッ…とその場から立ち去ろうとした。
すると、
「また逃げるのか。王子様はいつでも弱腰だねえ」
どうしても剣を交えなくては気が済まないといわんばかりに、タクトは乱馬の顔先に不敵な笑みを浮かべながら剣先を向ける。
流石にこれには儀式の最中であったあかねも、そしてその場にいた者たちも気がついた。
朝日を受けてギラリ、と光る剣先に、治癒を施されていた者たちが小さな悲鳴を上げる。あかねは慌ててその者たちを安心させるべく気を引こうとするが、
「…」
やはり気になってしまうのか、目線はタクト、そして乱馬に向いてしまう。
「さあ、どうする王子様」
タクトが引く意思がないということは、話を丸く収めるには従うしかあるまいに…そう言わんばかりのタクトは、乱馬に挑発的な瞳を向けた。
が、
「剣をしまえ」
乱馬は剣先を向けられても表情一つ変えずにタクトにそう言い放った。
「…」
ヒュッ…タクトがそれでもなお挑発するように剣先で乱馬の頬を掠めるも、乱馬は瞬き一つせず、ひるむ様子もなくタクトをを見つめる。
そして、
「…たとえここで剣を交えたとしても、おまえは俺に勝てないよ。無意味な争いはやめろ」
乱馬はそう呟くと、タクトの剣先を手の甲で払い、その場を立ち去ろうとした。
「負け惜しみを言うな!なぜ俺がお前に勝てない?」
勿論タクトがそんな言葉で納得するわけもなく、乱馬に向かってそう叫ぶが、
「ここは癒しの里…剣を交えて怪我をしたお前を手当てするのはあかねの負担になる」
「俺はお前になんて負けない!」
「…お前は俺に勝てないよ」
「だからなんでっ…」
「俺には…守りたい人がいる。その人を守るためなら、この命も冨も名誉も全て捨てる覚悟はある。俺が今この旅で剣を抜くのは、その人をこの手に取り戻したいと願うからだ。大義名分や世界を守ることは、その次についてくる。
もしも俺が今剣を抜くというのなら、意味がある戦いをするということ。だったら俺は負けない。絶対に負けられない」
乱馬はそう言い放つと、タクトに背を向けその場を後にした。
「くっ…待てよ!まだ話はっ…」
タクトはそんな乱馬をすぐに追いかけたが、すでに乱馬はどこかへ行ってしまったあと。
その代わり、
「タクト!お前、治癒の儀式が行われているところでなんてことをしているんだ!」
治癒の儀式の補助として手伝いをしていた里の女たちにでも聞いたのだろうか。
里の警邏に出ていた兄の真之介があわててタクトの元に駆け寄り、無粋なことを行う弟をしかりつける。
「うるせえな!兄さんには関係ねーだろ!」
「関係ないわけないだろ!だいたいお前はいつも…」
「はいはいはいはい、兄さんの説教はもう聞きあきたよ!」
が、勿論タクトはそんな真之介の助言に耳も貸そうともせず、
ガン!
そばにある壁を思いきり蹴り飛ばし、真之介の前から姿を消す。
「…」
俺が、あいつに勝てない?…負け惜しみを。王子だか何だか知らないが、ますます気に食わない野郎だ。
タクトにとってはこれきしのことで諦めるような行為に値はしない。もちろん、また乱馬に剣を向けることはあるだろう。
しかし、
「…」
なぜだろうか。なぜか乱馬のその言葉が、胸のどこかに残る気がするのであった。


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