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海賊キリトの秘宝1

迷いの森を抜けた乱馬達一向は、今度こそシャンプーの「魔法の地図」を頼りに、迷路のような森をすんなりと抜ける 事が出来た。
そして、いよいよ別大陸に向うべく、港のある街・ウォータークールへとたどり着く事が出来た。
ウォータークールは、港があるだけあり、他大陸との玄関口として機能している大きな街だ。
山の奥にある乱馬の居城のある王国とはまた、違う活気に溢れている。
煉瓦造りの道は、大きな荷車が慌しく駆け巡っており、道の両サイドでは海で取れた海産物を仕入れた商人達が売 買をしている。
怒号のような声が辺りには飛び交い、
「おっとごめんよ!」
「わわっ・・・」
ぼさっとしていると、通り過ぎていく人々に突き飛ばされても文句はいえ無い様な街だ。
道を歩いていく乱馬達の耳には、絶えず「ゴウンゴウン」という、海沿いの倉庫での船の整備音が聞こえていた。
そして、街のどこかしこにも、直ぐそこにある大海原の潮の香りが流れていた。
・・・
「とりあえずは、今日は宿をどこかでとって・・・明日の朝、向こう側の大陸へ渡る船へと乗ろう」
「ええ」
「早く宿、決めようぜ。腹も減ったし」
「汗、流したいね」
・・・迷いの森を抜けたお陰で、モンスターや宝箱から集めたお金に少し余裕がある乱馬達は、そんな事を話ながら煉瓦造りの道を歩いていたが、


「ドロボー!」
「ええ!?」


不意に後ろからそんな声がして、
「わわっ・・・」
「邪魔だ!」
・・・と、猛スピードで走ってきた青年に突き飛ばされるようにして道の脇へと追いやられた。
「待て!小僧!」
道の脇へと追いやられた乱馬達の横を、今度はその青年を追って何人かの男たちが追いかけていく。
どうやら、乱馬達を突き飛ばして道を走っていった青年が、追いかけていった男達の持つ「金品」を盗んで逃げたよう だ。
「・・・物騒ねえ」
「な」
いかんせん、山奥の王国ではそのような盗人も、めったには出る事がない。
乱馬とあかねが思わずそんな事をぼやいていると、
「ああ!?」
「大変ね!」
突如、シャンプーと良牙が、大声をあげた。
「ど、どうしたのよ二人とも?」
あかねが驚きながらシャンプーに話し掛けると、
「ひいばあちゃんから預かった魔法の地図、なくなったある!」
「ええ!?」
「俺も、モンスターから巻き上げた薬草類・・・全部なくなった!」
「はあ!?」
・・・シャンプーと良牙は、それまで地図やら薬草やらが入っていた自分の袋を乱馬達に開いて見せた。
見ると、シャンプー達の袋には、ぱっくりとなにか鋭利な刃物で切られたような切り口があった。
「一体いつ・・・」
「この街に入るまでは、地図を見ながら来ていたのよ?無くしたとしたら、この街・・・あ!」
あかねが、その袋の切り口を見ながら小さな声で叫んだ。
「乱馬、さっきのドロボー!あいつよ、きっと!あたし達を道の脇に突き飛ばす振りして、薬草とか地図を・・・」
「!」
乱馬はその言葉にハッとなって、自分の腰に身につけていた「カードフォルダ」を見た。
伝説のカードを盗まれては・・・と思わず嫌な汗を掻いてしまったが、
「・・・カードは無事だ・・・」
乱馬の腰にはしっかりと、カードフォルダは付いていた。中のカードも無事だった。
しかし、カードフォルダの横にうっすらと刃物のようなかすり傷があった所を見ると、
「これも盗もうとして刃物を立てたけれど、それぐらいじゃ傷つける事が出来なかったってことか・・・」
・・・さすが、勇者のカードだぜ。
乱馬が妙に関心をしていると、
「あたしも、特に何もとられはしなかったみたい」
「怪我もないか?」
「ええ。でも、シャンプーと良牙君の荷物を取り返さないと・・・。魔法の地図とか、勝手に売りに出されてしまったら大 変よ?」
「そ、そうだな」
乱馬は表情を改めてゴホン、と返事をすると、
「シャンプー、今魔法の地図がこの街のどこにあるか・・・とかわかる方法ないのか?」
と、袋を切られて腹を立てているシャンプーに尋ねた。
「魔法のコンパスを使えば分かるある」
「じゃあ、それで場所を教えてくれ。あのドロボー、とっ掴まえてやんねえと」
「了解ね」
シャンプーは鼻息荒くそう返事をすると、ふっと目を閉じた。
そして、
「魔法の地図の場所、私に教えるよろし」
なにやらブツブツと呪文を唱えた後、コンパスに向ってそう叫び・・・コンパスの上で手を翳した。


すると。

シュルルルルル・・・・
風も何もないのに、コンパスの針がゆっくりと、その場で回転し始めた。
そして、
ヒュンっ・・・
・・・コンパスの針はやがて、シャンプーの手の下である一方向を差して・・・とまった。
「乱馬、あっちね」
シャンプーが、その針が指差した方向を指差して叫んだ。
「よし、シャンプー、地図の場所まで案内してくれ」
「了解ある」
乱馬達は、コンパスの針を持ったシャンプーの後について、そのまま街を歩きだした。
「・・・こっちね」
「・・・あっちある」
シャンプーは時々立ち止まっては、コンパスに手を翳しその方向を乱馬達に示す。
乱馬達は、シャンプーのその案内にしたがって道を、歩きつづけた。
・・・と。
「くそ!キリトの野郎!今度見つけたらただじゃおかねえからなっ・・・」
乱馬達は、先ほどの青年ドロボーを追いかけていった男たちが、肩で息をしながら戻ってくるのに出くわした。
「・・・あの、すみません」
口でブツブツと文句を言いながら、汗だくになった顔をぬぐってあるいていく男たちにあかねが声をかけた。
「ああ?」
男たちは、青年に逃げられたせいで不機嫌なのか、あからさまにめんどくさそうな素振であかねの方を振り返った が、
「あ、な、何かな?」
振り返った先にいたあかねのその目を奪われる美しさに、面白いぐらいにすぐ、顔がへにゃ・・・と緩む。
「あの、私たちもさっきのドロボーを追っているんですが・・・」
あかねが男たちにそう切り出すと、
「お嬢さんもキリトに何か盗まれたのか!?ったくあいつ、こんな綺麗なお嬢さんからも盗むなんざ・・・とんでもねえ奴 だ!」
男たちは憎憎しげな口調でそうぼやく。
「あのドロボー、キリトっていうんですか?」
「ああ。何でも、大昔にこの辺の海を荒らしていた大海賊・キリトの子孫だって言い張ってるガキでな。自分もその大海賊みたいになりたくて、昔っからキリトって名乗ってやがるんだよ」
「大海賊・キリト・・・?」
乱馬が首をかしげると、
「ほら、向こうを見てごらん」
「?」
「海の向こうに見える、小さな島」
男たちはそういって、乱馬達の遥か後方を指差した。
乱馬達がそちらの方を振り返ると、この港町と、そしてずっーっと先の方に見える別大陸との間に一つ、ぽつんと島が浮かんでいるのが見えた。
「あの島は?」
乱馬が男たちに尋ねると、
「あれは、その昔・・・大海賊・キリトが奪った宝物を隠したといわれている『秘宝島』さ。今でもあの『秘宝島』にはたくさんの宝が眠っているらしいが、  海にはモンスターもたくさん出るようになってね、最近じゃあ近づく奴なんて誰もいないのさ」
「へえ・・・」
「キリトの野郎は、あの島の宝は自分の先祖のものだって言い張るんだが、あいつもモンスターが怖いのか、あの島には近づこうともしねえ。
  口ばっかりなの。あのガキも」
「・・・」
「島には近付けない、海はモンスターが怖くて出れない。・・・となると、キリトが住む事ができるのは丘の上ってわけ だ」
「そう・・・・」
「いまじゃあ奴は、この辺りに住む親のいねえガキどものボスって感じかな。先祖の秘宝を手に入れられないのなら、街の人々から金品を奪っては、それを、ガキどもたちとの生活費に当ててるって訳だ。はっ・・・時代が時代なだけに、海賊も陸に上がればただのコソドロだ。大海賊キリトの名が泣くぜ」
男たちはそういって、キリトの悪口を散々言ったあと、
「ただ、キリトの奴足だけは妙に速くてなあ。いつもこうして、逃げられちまうんだ。アジトさえ分かれば何とかなるんだろうけど。お嬢さん、残念だが盗まれたものは諦めなさい。キリト達は、すぐに生活費の足しにするために換金してしまうから・・・」
「・・・そうですか。ご親切にどうも」
あかねが、乱馬達を代表して男たちにお礼を言った。
「・・・生活の為に盗みをして、親のいない子供達を養っているだなんて・・・」
本当は悪い人ではないのかもね・・・と、あかねが男達の後ろ姿を見送りながらそう呟くと、
「・・・でも、盗みは盗みね。とりあえず、私の魔法の地図、取り返すある」
シャンプーはさらっとそう切り捨てて、再びコンパスを頼りに歩きだした。
「おい、俺の薬草も忘れんなよ」
その後ろを、良牙も必死についていく。
「・・・行こう」
乱馬も、あかねにそう声をかけて歩き出そうとしたが、
あかねには、盗みをした金品を生活の足しにしなくてはいけないキリトと、そのキリトに頼っている子供達の姿が、何 だか胸の中に妙に思い浮かんで離れなかった。



「・・・この建物の中ね!」
・・・それから、しばらくして。
コンパスを手に道案内をしていたシャンプーが、そう叫んで立ち止まった。
「え?ここ?」
「そうある」
「・・・?」
シャンプーの案内でその建物の前までやって来た乱馬達であったが、現れた建物を見るなり、そんな言葉をぼやい てしまった。
・・・シャンプーが「ここだ」と差しているのは、今にも倒れてしまいそうな「一軒家」だった。
でも、窓はガラスもはまっていなくて桟も取れ、玄関の扉もなく中は丸見えだ。
その上、平屋。そこから中を覗いても、人っ子一人見ることが出来ない。
床だって今にも抜けそうに覗えるし、玄関先にはツバメが巣を作っているくらいだ。
「ホントにここかあ?シャンプー」
乱馬が少し心配になりシャンプーに尋ねると、
「魔法のコンパスはそうさしているね」
シャンプーはがんとしてそれを譲らない。
「・・・家の中にはいないように見えるけれど・・・」
あかねがそういいながら、その平屋の中を覗きこむと、
「あかねさん、下がってください」
そんなあかねの身体を、良牙がそういって家の外へと連れ出した。
「どうしたの?良牙君」
「・・・昔から、ツバメが巣をつく場所には人が住む、といわれています。ぱっと見、誰もいないように見えますが・・・地上に見えないのなら、もしかしたら地下」
良牙は、あかねから二歩ほど遠ざかり、地面に向って突如、指を突き下ろした。
「爆砕・・・点穴!」


・・・ドオン!

「きゃ!」
「うわ!」
その瞬間、無数の粉塵があたり一体に飛び散った。
「げほっ・・・けほっ・・・・」
そして、辺りに巻き起こった土煙を、乱馬達が咳払いをしながら手で払っていると、
「うわー!地震だ!」
「助けてくれー!」
「怖いよー!」
・・・そんな声とともに、平屋の中の、とある床の一角がぱかっと開き、中から乱馬達と同じぐらいの年の少年達が、わらわらと飛び出してきた。
「あ・・・」
「お・・・」
乱馬達が、次から次へと床下から飛び出してくる子供達にあっけに取られていると、
「待ておまえら!荷物ぐらい運べ!」
その内そんな声がして、両手に大きな荷物を抱えて飛び出してくる青年が姿を表した。
良く見ると青年、先ほど乱馬達を突き飛ばして走り去ったあの青年・・・キリトと呼ばれていた青年だ。
その青年の手には、服やら小物やらのほかにも、ひらりと一枚はためく紙が見えた。
なにやら、茶色図形と緑色のもの、そして青い大きな図形・・・
「あ!」
その紙を見た瞬間に、シャンプーが声を出した。
「乱馬、あれ、私の地図ある!」
「何!?」
「!お、お前達っ・・・」
・・・そのシャンプーの声に、青年はギョッとしたような表情をした。
「おい!その地図は俺たちから奪ったものだろ!?」
乱馬が、青年にそういいながら詰め寄っていくと、
「な、何のことだ!」
青年は、脇に抱えていた他の荷物をボトボトと落としながらも、地図を慌てて懐に突っ込む素振をする。
「地図だけじゃねえ!俺の薬草も盗んだだろう!」
そんな青年に良牙も詰め寄ろうとすると、
「くっ・・・」
さすがに、大の男二人−しかも片方は腰に剣を差している−に詰め寄られ、青年もギリ・・・と唇を噛んでいる。
「大人しく地図を返せば、手荒なまねはしない」
「地図だけじゃなくて、薬草もな」
乱馬と良牙がジリジリと青年に詰め寄っていくと、
「・・・ほらよ」
と、不意に詰め寄られていた青年がそういって、自分の懐に手をいれて隠していた地図を乱馬達に向って投げた。
・・・ように見せかけ、実は懐に隠し持っていた砂袋を、二人の顔面に向って投げた。
「うわっ・・・」
顔面に砂をぶつけられて、乱馬と良牙が顔を抑えてしゃがみこむと、青年がその二人の横をすり抜けて走り出した。
そして、
「きゃあ!」
「動くな!」
・・・なんと青年は、事の成り行きをじっと傍で見守っていたあかねの背後へと素早く回ると、あかねの首へと腕を回した。
「あかねっ」
あかねの悲鳴を聞き、乱馬が慌てて振り返り駆け寄ろうとすると、
「おっと動くな!それ以上近寄ったら・・・この女が痛い目を見るぜ」
青年はそういって、あかねの首に回す力をぐっと強めた。
あかねは、何も言わずに青年に首を抑えられていた。
「おい!危ないぞ!」
その様子を見て、乱馬が思わずそう叫ぶ。
「危ないと思うなら、お前らが持っている金品、全てここにおいていけ!そしたらこの女も開放・・・」
してやるぞ。
青年はきっと、そういいたかったに違いない。
が。青年がそう口を開こうとした時には既に、
「せやあ!」
・・・あかねのそんな叫び声と共に、青年の身体は地面に叩きつけられていた。
「あ、あれ?」
一体何が起こったのか・・・ときょとんとしている青年に、
「・・・だから、危ないって言っただろ?いいか?この女はな、普通のか弱い女じゃねえんだぞ?」
乱馬がそういいながら近寄り、青年の懐から地図を奪い返すと、
「か弱い女じゃない、は余計よ!」
ゴンっ・・・と、あかねは乱馬の頭を拳で殴りつけた。
「俺の薬草も返してもらうぞ」
「私達のカバンを切り裂いて荷物を盗む、とんでもない男ね」
そんな二人の横では、シャンプーと良牙がそんな事を言いながら、青年が先ほど地面に落とした荷物をあさり、自分 達の荷物を捜しては取り戻していた。
と、その時だった。
「キリト!」
・・・地面の上でひっくり返り、呆けている青年・キリトを呼ぶものが現れた。
「?」
乱馬達が振り返ると、
「何やってんのよ、キリト!またドジを踏んだの!?」
「ら、ランゼ・・・」
「盗み一つもろくに出来ないようじゃ、大海賊のご先祖様も泣いてるよ・・・この、役立たず!」
きつい口調でそう叫びながら、歩いてくる少女がいた。
年の頃は、乱馬達よりも少し上だろうか。
頭にバンダナを巻き、胸の部分だけを覆う上着。ヘソと腕は丸見え・・・という露出の高いファッションに、黒いロングパ ンツをはいている。
腰にはサバイバルナイフをフォルダーに入れて差し、髪はバッサリとショートヘア。
はっきりとした顔立ちなのか、薄い化粧でも随分と際立つ顔をしている。唇の端まで塗られた口紅が、やけに際立っ て見えた。
それに加えて目が少し釣りあがっているのもあり、第一印象は随分と「キツイ」印象だ。
「ランゼ」と呼ばれた少女は、キリトの前まで歩いてくると、
「・・・ったく、せっかく高く売れそうなものだったのに・・・」
そういって、乱馬が取り戻した地図をギロリと睨んで舌打ちをする。
「し、仕方ねえだろ・・・」
キリトがゆっくりと起き上がりながら言い訳をすると、
「あんた、大海賊の子孫なんでしょ?なのになんで弱いのよ?女にまでやられてさ・・・そんなんだから、いつまでたっても向こうの島の秘宝島の秘宝を取りにいけないのよ」
「う、うるせえな!」
「足が速いのだけが取りえだなんて、全く、聞いて呆れるよ」
倒れているキリトに向って容赦なく怒号を浴びせるこの少女・ランゼは、どうやら完全にキリトよりも気が強くそして・・・
彼を尻に敷いているようだ。
もしかしたら、子供達のボスはキリト・・・ではなく、このランゼなのかもしれない。
「・・・」
乱馬も、そしてあかね達も。ふとそんな事を思っていた。
「・・・ところで・・・」
ランゼはそういって、乱馬・・・ではなく、先ほどキリトを投げ飛ばしたあかねの方をギロリと睨んだ。
「な、何ですかっ・・・」
そのランゼの迫力に、あかねが思わずビクリと身を竦めると、
「・・・あんた、女のくせにキリトを投げ飛ばしてたけど」
「そ、それが何よっ」
「あんた、腕は立つの?」
「え?」
「これからあたしと勝負をして、もしも勝てた時には・・・あんたに頼みがあるのよ」
ランゼはそういって、不意に腰からサバイバルナイフを抜いた。
「おいっ・・・」
その瞬間を見ていた乱馬が、すかさずあかねをかばうようにして立った。
「どきな!怪我するよ!」
ランゼが、乱馬に向ってサバイバルナイフの刃を向けると、
「勝負なら俺が受ける」
乱馬は、あかねをかばうようにして素手で構えた。
「あたしは、そっちの女と勝負をしたいんだ」
ランゼは、容赦なく乱馬の目の前まで刃を突き出してくるが、
「コイツと勝負させるわけにはいかねえ。女と勝負するのは気が進まないけど、仕方ねえ」
乱馬はそれに怯むことなく、あかねをかばったまま立っている。
「乱馬・・・」
あかねが乱馬の背中に向って声をかけると、
「あかね、お前は下がってろ」
「でもっ・・・」
「いいから」
乱馬はあかねの方を振り向かずにそう叫ぶ。
その声が、いつもよりも半音下がっている事に気がついたあかねは、ハッと息を飲んだ。
「・・・」
ランゼは、そんな乱馬とあかねの様子をじっと見ていた。
「・・・」
そして、素手で構えた乱馬の目をじっと、しばらくの間見つめていた。
「・・・」
乱馬も、そんなランゼから目を逸らすことなくじっと見据えている。
・・・二人は、お互いの出方を覗っているのだ。
そして、そうやって見詰め合うことでお互いの力の差を知ろうともしていた。
乱馬はともかく、ランゼが先ほどまでの威勢を捨てて全く攻撃を仕掛けてこないのは、
「・・・」
こうして無言で見詰め合うことで、乱馬の力の強さを悟ったからだった。
「・・・」
ランゼのサバイバルナイフを握るその手に、ジワリと汗がにじんでいた。
「・・・」
乱馬もそれが分かっているので、とくに自分からは攻撃したりはしなかった。
いや、相手が女性という事もあり、たとえ攻撃したとしてもミネ打ちだけにしようと考えている。
「・・・」
どうシュミレーションをしても、ランゼが乱馬に勝てる事はない。分かりきった戦いだった。
それがはっきりと感じられるだけに、二人の間には緊迫した時間が流れていた。
いや、二人だけではない。
格闘技に心得のある、あかね・シャンプー・良牙も同じ空気を悟って経過を見守っていた。
「ら、ランゼっ・・・」
・・・が。
そんな緊迫した空気を全く感じ取れないものが一人いた。
じっと目をにらみ合って動かない二人の間に、突如キリトが割り込んできた。
そして、
「ら、ランゼには危ない事はさせられねえ!うあわあああ!」
とかなんとか。そんな事を叫びながら、キリトは乱馬に向って殴りかかってきた。
ブンブンと腕を回して大声で叫んではいるが、どう考えてもその攻撃、まともに当たるとは思えなかった。
「・・・」
乱馬はため息をつきながらキリトの攻撃をひらりと交わすと、
ドスっ・・・
手とうで、キリトの首筋に当身を食らわせた。
「あっ・・・」
キリトがドサリ・・・と地面に沈んでしまうと、
「・・・分かったよ。まいった。この勝負は、あたしの負けだ」
そんなキリトの身体を慌てて抱き起こしに走りながら、ランゼがため息をついた。
そして、サバイバルナイフを腰のフォルダにしまうと、
「・・・あんた達は、今まであたし達があった奴らの中で一番、腕が立ちそうだね。それを見込んで、改めてお願いがあるんだ。盗んだものも全部返すから、だから・・・あたし達に協力してくれない か?」
「協力?」
「そうさ。報酬は・・・大海賊キリトが残した宝。三分の一でどうだ?」
と、乱馬達に提案してきた。
「都合がいいお願いね」
「盗人とけだけしい」
シャンプーと良牙は、はっきり言って良い顔をしなかったが、
「宝・・・」
宝と聞いた瞬間、乱馬の表情はピクリと動く。
「乱馬?」
それにいち早く気がついたあかねが、乱馬にこそっと囁くと、
「その宝、三分の一もいらねえよ」
「え?」
「その代り、宝の中に『カード』があった場合はそれを俺たちが頂く。それでどうだ?」
乱馬は、あかねに一度だけ頷いて見せた後、ランゼに向ってそう提案した。
「カードが欲しいのか?変ってるな」
「どうなんだ?それを飲むのか、飲まないのか?」
「・・・いいだろう。その代り、あたし達が他の宝物を回収する手伝いをしてくれ」
ランゼは、その乱馬の提案をすんなりと飲んだ。
「おい、乱馬。あの島にカードなんて・・・あるのか?」
良牙が、乱馬にこっそりとそう囁くが、
「無いともいえないだろう?」
乱馬は、極めて前向きに答える。
「世界中に散らばっているんだ、この辺りの海を収めていた海賊が持っていたって不思議じゃないさ」
「なるほど・・・。おまえにしちゃあ、よく閃いたな」
「一言余計だ」
乱馬と良牙がそんな会話を交わしていると、
「・・・ほら、キリト!いつまで寝てんだよ!起きな!」
ランゼが、地面に倒れたままのキリトを抱き起こして、背中にドス・・・と拳を入れた。
「う、うーん・・・」
キリトがぼんやりと目を覚ますと、
「ほら、あたし達と一緒に、この人たちがあの秘宝島へ言ってくれるってさ」
「え?」
「やっと、あんたの先祖が残した秘宝にありつけるんだ。あんたからも礼をいいな」
ランゼはそういって、いまだぼんやりとした表情をしているキリトの背中を叩いた。
「・・・」
キリトは、何だか無表情のまま乱馬達に挨拶をすると、
「・・・どうせ出発は明日の朝だろ。俺、準備してくる」
ボソッとそう呟いて、どこかへと言ってしまた。
「・・・なんだよ、アイツ。いつもにもにもまして無愛想だな」
ランゼは、そんなキリトの背中に向ってぼそっと呟いたが、
「それより、あんた達。今夜の宿は決まったのかい?」
と、不意に乱馬達の方を向いて話し掛けてきた。
「いや、まだなんだけど・・・」
乱馬がそう答えると、
「宿屋に泊まると金が掛かるから、あんた達、あたし達の隠れ家に泊まんな」
「か、隠れ家って・・・この地下か・・?」
「そうだよ。地下っていっても、結構な設備は整ってるんだ。寒さも、雨風も凌げるし。
  風呂だけは、町の共同浴場を使ってもらう事になるけど」
ランゼはそういって、強引に乱馬や良牙の手から荷物を引ったくると、さっさと先ほどの廃屋の地下へと歩いていって しまった。
「お、おいっ・・・」
乱馬と良牙が、慌ててランゼの後を追っていく。
「なんと言う強引な女か」
シャンプーも、「やれやれ」と言った表情で乱馬達の後についていく。
「・・・」
あかねも、やれやれ・・・といった表情でシャンプーのあとをついていこうとしたが、


「・・・?」

・・・歩き出そうとしたあかねの目の隅に、とある人影が目に入った。
あかねがゆっくりとそちらの方を振り向くと、 先ほど「準備がある」とか何とか言いながら走り去っていったキリトが、あかねの方を見ていた。
見ているというか・・・正確には、地下へと降りていった一行を観察しているというか。
あかねがキリトの方に目をやると、キリトは慌てて目をそらす。
「・・・ちょっと」
あかねが小走りでキリトに近寄り、そして袖をくいっと引っ張ると、
「な、何でもねえよっ」
「何でもないわけないでしょ、何でこそこそとあたし達のほうを覗いてんのよ?」
「べ、別に覗いてなんてっ・・・」
キリトはそういって、再びあかねの手を振り切って逃げようとしたが、
「うわ!?」
ボテっ・・・と、あかねに引っ張られたその袖を振り払いきれずに地面に転倒してしまった。
「ちょっと・・・だ、大丈夫?」
あかねが地面に倒れたキリトに手を差し伸べると、
「・・・」
キリトは、その手をパシッと払いのけてノロノロと立ち上がった。
そして、
「・・・おまえも、ランゼ同様、俺の事を情けない弱っちい男だと思ってるだろ?」
と、不意にそんな事を呟いた。
「え?」
あかねが首をかしげると、
「・・・行き当たりばったりの旅人に頼らなくちゃ、自分の先祖の宝物も回収にいけねえ情けない奴だって。女に投げ 飛ばされちまうような奴だって・・・」
キリトはそういって、ため息をついた。
「誰もそんな事言ってないじゃない。それに、あのランゼさんだって・・・」
あかねがキリトを慰めようとすると、
「・・・一緒に暮らしているガキどもだってそうだ。俺よりもランゼになついてるし・・・」
キリトは、そんなあかねの言葉を遮るようにそういって、ため息をついていた。
「・・・」
・・・どうやら、明日の宝箱回収に行く前に、このキリトとその取り巻いている環境についてもう少し理解して把握している必要があ りそうだ。
「ねえ、あなたとランゼさんについて・・・もっと教えてくれない?」
「え?」
「いいじゃない。お互いの事を知らないまま、宝箱回収に行くのもどうかと思うし」
あかねは、そういって肩を落としているキリトの腕を取って歩きだした。
そして、近くの広場のような所にある大きな岩へと腰掛けると、にっこりと微笑んだ。
キリトも、そんなあかねにため息をつきながらも、
「俺とランゼは・・・」
・・・と、あかねの横に腰掛けてゆっくりと、話し始めたのだった。

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