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許婚

一方その頃。


乱馬と真之介が話をしていたその隣の部屋では、
「なあ、さっきも聞いたんやけど・・・治癒魔法って言うのは、そんなに体力を消耗するん?」
「種類によるわ」
部屋に設置されている椅子に腰掛け身体を休めているあかねに、乱馬によってこちらの部屋にこさせられた右京が話しかけていた。


本来ならば、あかねは旅の仲間であって、短い間では会ったけど一緒に生活をしていた。
が、さまざまなことが重なりあかねが姿を消し再び出会った今、
今、右京の目の前にいるあかねには、右京の記憶が、ない。
一方通行の知り合い。右京はそのなんとも微妙な距離感に、いまだなじめずにいる。
ここにいるあかねは、間違いなく、自分達と一緒にいたあかね。そして、乱馬が捜し求めていたあかね。
それなのに、こんなに違和感、というか距離感を感じるのは本当に記憶をなくしているからだけなのか?


「・・・」


・・・いや、違うな。


右京は、目の前にいるあかねをじっと見つめながら、自問自答をする。


部屋に設置してある椅子に腰掛け、リラックスしながら傍のテーブルに活けてある花瓶の花に触れるあかね。
透き通るような白い肌も、絹のような艶やかで柔らかい髪も、
なんだか以前よりもずっと、あかねの魅力を引き立てているように感じた。
以前からあかねは、道行く男性がすれ違うだけで振り返って見とれられるほどの整った容姿をしていた。
右京もあかねとはじめてであったとき、思わずその美しさに驚いて本人に伝えたくらいだ。
それに加えてあかねは、多少不器用なところは否めないが、とても素直で性格のよい娘だった。
もちろん、自らの容姿を鼻にかけることなどない。恐ろしく謙虚であった。
現在は、それに加えて「しなやかさ」や「女らしさ」が彼女には感じられる。
しかも、光属性の魔法能力が開化し、癒しの魔法を使えるようになったあかね。
美しい女性が癒しの魔法を施す・・・まるで絵に書いたような世界観だ。
そんな女性が、だ。もしも傍にいて笑顔をいつも浮かべていてくれたなら。
たとえ傍にいるのが真之介じゃなくても、彼女を女性として意識しないわけがない。
乱馬だって、それがわかっているから、きっと面白くないのだ。
あからさまに真之介に敵対心を持っているし、今だってこうして、真之介からあかねを離そうと自分を・・・。
「・・・」
仲間としてあかねと再び出会えたことは嬉しい。でも・・・。
そんな複雑な思いを抱えながら、右京はあかねをじっと見つめていた。


と、


「お料理が、上手なんですってね」
そんな右京に、あかねが不意に話しかけてきた。
「え?あ、まあ・・・うち、料理人やし」
しかも、思いもよらぬ内容に、右京は答えながらも戸惑っていた。
記憶が戻ったわけでもないのに、どうしてそのことを知っているのだろうか?
少なくても、この里にきてから、自分からは話した記憶がないのだが。
右京がそんなことを思っていると、
「あ、ごめんなさい・・・そういう話を聞いたものだから・・・」
「え?ああ、そういえば食事会のとき、良牙があかねちゃんと少し話したんやっけ?」
「え?あ、ううん・・・そうじゃないんだけど、でも・・・羨ましいわ。私、どうもお料理とか苦手みたいなの・・・」
みたいなの、というのは、きっと記憶が亡くなる前もそうだったのだろうとあかねは思っているのだろう。
いや、実際そうだったのだが。
それよりも右京は、あかねに右京の情報ソースを話した人間が気になった。
今のあかねの口ぶりからすると、あかねに話したのは良牙ではなさそうだ。
シャンプーやムースは常に何か調べ物をしていたから、あかねとはほとんど接触をしていないはず。
ということは・・・


「・・・」


・・・いつ、話したのだろうか。
少なくても右京が見る限りでは、二人きりになるタイミングなどなかったはずだ。少なくても、昼間、は。
となると・・・夜?
夜、二人きりで何かを話す機会があったのか?
いつの間に?いったいどうしてそんなことになる?
右京の胸がドクン、と大きく一度鼓動した。
・・・


「・・・ええんちゃうの?ここにいるなら、なんせんでも誰かつくってくれるやろ」
しかし、その動揺をあかねに悟られぬように、右京はボソッとそうつぶやいた。
「確かに、教会に居れば里の人たちが交代で食事を作ってくださってるから・・・里の皆に。私もお手伝いしたいのだけど、真之介に止められて」
「賢明な処置やな」
「え?」
「なんでもない。まー・・・人間ひとつくらい弱点があったほうが可愛げがあるってもんやで」
「でも女性としてはどうかと思うわ。料理が苦手なんて・・・」
「せやったら・・・」
料理せんでも構わへん男の所に嫁いだらええやん・・・右京はそう呟こうとしてふっと、口をつぐんだ。
・・・王族である乱馬のところならば、使用人たちが料理を作るのであかねがわざわざその腕を披露する必要はない。
うっかりそんな事を言ってしまって、記憶が蘇ったりしたらなんだか嫌だ。
たった一瞬だったけれど、右京はそんな事を考えた。
なので、
「・・・せやったら、まず真之介に上手いって言わせるように色々料理を作ってやればえーんよ」
「食べてくれるかしら」
「あかねちゃんが作る料理やで?食べるに決まってるやん」
あかねの気持ちや注意が極力真之介に向くように。右京は、そんなことを思いながらあかねに呟いた。
ところが、
「そうね・・・皆さんや、それに王子に食べていただく前に腕を上げないとね」
どうしても注意をそらしたかったのに、何故結局はそちらの方に向いてしまうのか。
あかねの口から「王子」という言葉が出た瞬間、右京の胸が急に激しく鼓動し始めた。
「・・・何で乱ちゃんに、食べさせたいん?」
「御礼をしたいの」
「お礼・・・?」
「ええ。楽しくて、とても素敵なお話を聞かせてもらったの・・・本当に楽しかったから。何かお礼が出来ないかと思って、それで」
あかねは柔らかな笑みを浮かべながらそう言って、花瓶の花を指で触れている。


「・・・」
・・・やっぱりそうか。
右京の胸が更に激しく鼓動する。


昨日の夕食会でも、確かほとんど会場にいなかった乱馬は、あかねとはろくに話もしていなかったはずだ。
今朝だって、あかねはずっとここにいたわけだし接触する機会なんて無かったはずだ。
それなのに・・・一体いつ二人は話したのか。
話すとすれば、昨日の、夜。
皆が寝静まった、後、だろうか。
まさか二人で示し合わせて・・・話す機会もないのにどうやって!?


・・・
再びそれを考えた瞬間、右京の頭にかっと血が上る。
記憶が無くても、どんなに離れていても、自分のことを覚えていなくても、そして他の男に守られて生活していても。
それでも、何かが二人をひきつけるとでも言うのか・・・ガンガンと耳鳴りを感じながら、右京はそんな事を思う。
「ら・・・乱ちゃんに食べさせるならば、料理人に弟子入りして本格的に修行せなあかんよ。一日二日で出来るようなもんやないで」
「え?」
「乱ちゃんは国では毎日うまいもん食べてたしっ・・・食べ物の好みにはうるさいんよ。それにっ・・・」
「それに?」
「それにっ・・・乱ちゃんの許婚は料理の天才やからっ・・・あかねちゃんなんて足元にも及ばないくらいの腕前の持ち主なんやからっ・・・」
嘘を、ついた。
乱馬が国で食事に恵まれていたのは嘘ではないが、彼の許婚が料理の天才」というのは嘘だ。だって、彼の許婚はあかねなのだから。
でも、右京や他のものがそれを口にしなければこの事実はあかねに知られる事はない。
皆は、あかねを混乱させない為にその事実を合えて口にしないはずだ。右京にとっては、かなり好都合だった。
「王子の許婚・・・そう、王子には婚約者がいらっしゃるのですね」
「そうや。綺麗で、優しくて、おしとやかで料理も上手くてっ・・・乱ちゃん、その人のことめっちゃ好きやねん!せやからっ・・・」
他の誰も、二人の間に割り言ってはいる事なんてできへんねんて!
・・・一体この言葉は誰に向かって言っているのだろうか。一瞬、右京は混乱してしまった。
だが、こういえばきっと、あかねがこれ以上、必要以上に乱馬に関わる事はしないだろうと。
そして乱馬が傍に来ても、距離を置いてくれるだろうと。そう感じていた。
案の定、
「国にいらっしゃるのかしらね、その方・・・それでは王子も、きっと早く旅を終えて、帰りたいでしょうに」
「・・・」
「じゃあお料理は、その方に作ってもらった方が一番良いですわね」
あかねはそう言って再び柔らかく微笑むと、
「そうだ、花瓶に活ける花・・・もう少し摘んでこようかしら。座ってお話していたら、だいぶ体もよくなったし」
「え?あ、ああ・・・行ってらっしゃい。うちもみんなの所に戻るから・・・」
「そうですか。皆さんによろしくお伝え下さい」
まだ少しふらつく足取りであったが、ゆっくりと椅子から立ち上がり部屋から出て行った。


「・・・」


・・・乱ちゃんの為に、きっとこうすることが一番やもん。
記憶なくしてここに居た方が、きっとあかねちゃんやて幸せやもん。
縁がなかったんよ・・・乱ちゃんかて、自分のことを思ってくれる人とこれから過ごしていく方が幸せに決まってる。
嘘をついたことは、勿論悔やまれた。
だが、それを正当化させるために何度も何度も自分にそう言い聞かせて、右京は静かに部屋を出た。


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