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光の魔法

暖かな光が天窓から降り注がれて、ステンドグラスに反射をすると七色の光が辺りを照らしていた。
優しい色使いの木製のテーブルと椅子、そして赤い絨毯。
光がそれら全てに調和され、心なしか部屋の温度も大分暖かく感じる。


今は、いわゆる治癒の儀式の真っ最中である。


この儀式は一日一回、午前中のみ行われるというのだが、
部屋に一歩足を踏み入れただけで、胸がすっと、澄み渡るような錯覚すら覚えた。
そんな幻想的な雰囲気の中、


「大丈夫、ゆっくりと目を閉じてください・・・」


柔らかな声と共に、白くて華奢な手が開かれる。
指示通り閉じられた目の上にその手が置かれると、声の主は自らもゆっくりと目を閉じた。
それと同時に、手のひらに集まる光のヴェール。ゆらゆらと幾重にも揺れて重なる光のヴェールが、徐々に辺り一体に広がっていった。
「・・・エレメンタルキュア」
広がり続けるヴェールに向かって、声の主が一言そう呟いた。
すると、


「!」
「な、何やいまの・・・!」


・・・パン!
光のヴェールが、主の声にあわせて一瞬で手の中央に凝縮された。
そして、見る見るうちに光の「玉」と姿を変える。更にその光の玉は音を立てて弾けとび、
青・緑・赤・茶の四色の玉へと姿を変えた後、目を閉じている人物の身体の中へと入っていった。
すると、


「・・・か、身体が・・・痛くない・・・胸も苦しくない!」
「もう、大丈夫ですよ。貴方の傷も、病も全て消し去りました」
「ありがとうございます!ありがとうございます!!」


驚いている乱馬達を他所に、たった今まで目の前で治癒を施されていた人物が元気な声を上げた。
「ありがとうございます!本当に・・・本当にありがとうございます!」
「お大事にしてください。そしてこれから新しい、人生を歩んでください」
「はい!」
その人物は元気にそう返事をして深々と頭を下げると、
「さ、では戻ろうか」
「お願いします」
里のもの以外の人間がいるせいか、考えられないくらい穏やかなタクトに連れられて屋敷から出て行った。
どうやら、元の街へと戻るらしい。そう、タクトの力がないと、外部の人間は里へ入ることも、出る事も出来ないのだ。


「・・・今の光の具合からすると、エレメンタルキュアか。随分と強い魔法だな」


タクトが出て行った後。
先ほど治癒魔法を施した声の主・あかねに向かって、真之介が優しく声をかけた。
真之介は、乱馬と右京を教会に入れた後、自分にいたっては「あかねの気が散ると悪いから」と治癒が終わるまで教会の外で待っていたのだ。


ただ光の力が強ければ強いほど教会の外へもその光は漏れる。それを感じて、こうしてあかねにその光の名を尋ねたのだ。


「ええ」


あかねが、そんな真之介の声を受けてゆっくりと振り返った。
ステンドグラスの光がきらりと黒髪に反射し、その姿が輝いて見えた。乱馬の胸が小さく鼓動する。
「・・・今の方は、胸に大きな黒い影がありました。あと、手足も酷く傷ついて。傷はともかく、胸の黒い影は全身に転移していたし、ある程度強い力でないと治癒はおろか命のともし火も・・・」
あかねは真之介に簡単に説明すると、優しく微笑んだ。
「・・・今のが、光の魔法なん?」
と、
そんなあかねの説明を乱馬の後ろで聞いていた右京が、あかねに質問をした。
右京自身は魔力を持っていないので勿論魔法自体は使えないが、治癒魔法自体は、何度か見たことがあった。
それは、旅をしていてちょっとした怪我をした時、モンスターとの戦いで傷ついた時、
「じっとしておれ」
「すぐ治すある」
時にはムースが、時にはシャンプーが、治癒を施してくれる事があるのだ。
ただ二人が施す治癒魔法は、
唱える詠唱呪文はそれぞれ違うにしろ、患部に翳した手のひらから白っぽい光が出て傷を癒す。その程度だ。
また傷でなくても、
例えばヒルダの診療所でシャンプーが風邪を患っていた老人に治癒を施したように、
やはり患部に手を翳してその光を体内に送り込むような魔法ばかりのような気がした。
だが、今目のあたりにした「治癒」の魔法は明らかにそれらとは違う。
手を患部にかざしたところまでは同じであったが、光のウェーブが発生し、四種類の光の玉がはじけ飛んで・・・まるで、言い方は悪いがイリュージョンのようだ。
「エレメンタルキュア、って言うん?今の・・・」
記憶をたどりながら右京があかねにそう尋ねると、
「エレメンタルキュアは、光属性の治癒魔法の中でも中級の強さを持つ施術だ。エレメンタル・・・つまりこの世界の魔法を構成している四大属性の火・水・風・大地の全ての要素を組み合わせて、光の中へと詰め込むようなものだと思っていればいい。通常は、どれかの属性の力を光に組み合わせれば簡単な治癒魔法となるが、エレメンタルキュアのように、全ての属性を使うとなると効力は強力だが、それなりに術者に負担がかかる」
何故かあかねの代りに、真之介が答えた。
あかねは、真之介のその説明にうなずいていた。
「・・・やけに詳しいじゃねえか」
あかねに聞いたのに、何でおまえが答える?
・・・声には出さないが、それにカチンときた乱馬が無愛想にその説明にそう呟くと、
「あかねがここに来る前から、癒しの力・・・つまり光属性魔法のことは勉強していたからな。それに実際にその使い手のあかねを守る事になった以上は、知っていなくてはいけない。当然の事だ」
真之介はさらりとそう答えて、再び魔法の説明を続ける。
「あかねがここに来た時は、まだあかねはこの力も、魔法のこともなんらわからなかった。だから、俺は昔から里に伝わる書物を調べて、あかねに施術方法や、あとはほとんど使う機会はないと思われるけど、光属性の中の数少ない攻撃・防御呪文などを教えたんだ」
「あんたが教えたのか?」
「教えたというか・・・俺はただ、里に昔から伝わる書物を見ながら、理論や方法を伝えただけだ。そもそも俺は光の魔法なんて使えないしな。それでもあかねには、元々その能力が秘められていたみたいだから・・・俺からの情報を得てぐんぐんとその能力を習得したんだろう。全てはあかねの才能と、努力だ」
真之介はそこまで乱馬達に説明をすると、
「あかね、疲れていないか?少し隣の部屋で休むといい」
「ありがとう、真之介・・・」
「あかねはすぐ無茶をするからな」
さりげなくあかねの体を支え、あかねを別の部屋に移動させようとした。
「・・・」
その姿を見つめていた乱馬は、
「・・・うっちゃん」
「え?何?乱ちゃん」
「うっちゃん、あかねを別の部屋に連れて行ってやってくれよ。疲れているみたいだから」
「・・・」
「おい、真之介。あかねはうっちゃんが連れて行くから」
真之介の腕をあかねの体から引き剥がすと、右京に強引にあかねを任せ、部屋を移させた。
部屋の内部には、乱馬と真之介が残った。
「・・・」
お互い、何も言わずじっとお互いを見つめている。
が、しばらくしてその静寂を破るように、「・・・何か言いたいことがありそうだな」と、真之介がつぶやいた。
「・・・」
乱馬は、一瞬考えるも、そのまま考えていたことを口に出す。
「俺が言いたいことは、昨日も言ったはずだ」
「昨日?」
「・・・たとえ記憶を失っていても、光属性の魔法を使えることが判明して、この里の宝だかなんだかになったとしても・・・あかねは、俺の許婚だ!」
「だから?」
「だからっ・・・あかねは俺が連れて帰る!」
「それをあかねが望んでいなくても、か?」
「!」
が。
真之介のその問いに、乱馬は思わずはっと息を呑む。
真之介は、そんな乱馬を真剣な眼差しで見つめた。
「無論あかねが口にしたわけではない。でも、ここにくる前のあかねはともかく、今ここにいるあかねが、今のあかねなんだ。あかねがそれを望んでいなかったとしても、お前はそうするのか?」
「っ・・・」
「・・・俺はあかねを守る。もしもお前があかねを傷つけるようなことをするのなら、俺はお前を許さない。それだけだ」
ここにきた初日、タクトが言ったことと同じことを真之介は、
「・・・あかねは、俺が守る」
最後にもう一度そうつぶやいた。
そして、
「あかね、俺は一旦じいちゃんの所に行くよ」
隣の部屋で休んでいるあかねにそう声をかけたあと、乱馬の横をすり抜けて部屋を出て行った。
「・・・」
たとえあかねがそれを望んでいなくても、か?
真之介の言葉が、乱馬の耳から離れなかった。
あかねが望まないはず、ない。そう信じている。一緒に帰るために、ずっと一緒にいるために、あかねを探したんだ。
あかねが望まないなんてこと・・・
・・・
・・・考えもしなかった。
目の前に居るあかねは、自分が捜し求めていたあかね。
でも、
「・・・」
自分が知らぬ間に、身につけていたらしき光の魔法。そして、もしかしたら「帰らない」という選択肢を口にするかもしれない、「今」のあかね。
あかねは、あかね。間違いないはずなのに・・・なんだか捜し求めて出会えたというのに、まだ遠くはなれたままのような気がした。そう、やはり心の距離は物理的な距離よりもはるかに遠かったのか・・・。
乱馬の胸には複雑な思いが一気に広がっていった。


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