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かみ合わない気持ち

「何で俺の後をついてくるんだ?」
「何でって・・・」
「・・・癒しの魔法を一度見てみたいと思ったからや!な?乱ちゃん」
「あ?あ、ああ・・・」



里外れの屋敷にいるあかねの元へと向かう真之介から、突如投げられた質問に思わずどもった乱馬であったが、右京の機転に救われていた。
乱馬にしてみれば、あかねは本来ならば自分の許婚であり、その彼女の元に向かうのに何故他の男の許可が必要なのかと、すぐに喧嘩ができる体制ではあるのだが、
あかねの記憶が無い以上強引な手を打つことができないこと、カードが見つかるまではなるべくこの真之介にも協力を頼みたいこと、そして物忘れのひどさゆえに何度同じ事を伝えても忘れていそうな感があり、
更に今の状況で、あかねと接触できなくされてしまっては堪らないという思いも手伝って、
そういう理性がギリギリの線で乱馬を踏みとどまらせているのだ。
もしもタクトがラヴィと何らかの関係があるとするならば、この真之介を自分達の見方としておいたほうが、何かと便利だということは勿論ある。
ただ、一応はそんな打算的な事を考えて平常心を装っているつもりでも、
ふとしたことでそれを越えてしまう可能性もなきにしもあらずだった。
そんな時、右京のようにサポートを入れてくれると、乱馬としても大分助かるのだ。
もっとも乱馬は、そんな右京の本当の気持ちや思いには全く気付いていない・・・。
・・・
「癒しの魔法は、施されている人間だけでなく、それを周りから見ている人間の心までも癒す事ができる。本当にすばらしい魔法だ」
「へー・・・すごいもんなんやねえ」
「特にあかねの魔法は、あかね自身のように強く、清らかだ。一般的な癒しの魔法とは全然違うんだ。・・・そう考えると確かに、一度は見る価値はあるだろう」
道を歩きながら、右京と真之介がそんな会話を交わしていた。
乱馬は二人の話を黙って聞いている。
「あかねちゃんのように清らか、か。あかねちゃんの事よく知ってるんやねえ」
「あかねがここに来てからはずっと、一緒にいるからな」
「なあ、てことはあかねちゃんとは仲いいん?」
「あかねは、この里の宝だ。仲が良いとか、そういう問題ではなく俺はその里の宝を守る役目にある。それだけだ」
「でも、あかねちゃんめっちゃ可愛いやろ?正直、好みなんちゃうの?」
「なっ・・・言ってるだろ、俺は里の宝の守り目だ。余計な事を考えてる暇は・・・」
「あ、その様子じゃ図星やな?ええんちゃうの?好きやったらそれなりに頑張ってみれば。あかねちゃんやて、悪くは思ってへんやろしー・・・」
右京は、何となくそわそわとしている真之介をからかいつつ、ちらりと乱馬へと目をやった。
乱馬は二人よりも一歩後ろを歩き、あさっての方向を見ている。
しかしその表情は明らかに不機嫌そうだ。どうやら話に参加はしていないが、聞こえているが為に不快らしい。
・・・
「記憶を失ったあかねちゃんが、今の状態で誰を選ぶかはわからんけどー・・・」
右京は、そんな乱馬に対し追い討ちをかけるかのようにそう呟き、
「しっかりあかねちゃんのこと守ったってや。そしたらきっと、あんたの気持ちも伝わるで」
「だ、だから俺は別にそんなんじゃ・・・」
「男と女の中なんて、なるようにしかならんて」
・・・乱馬の心中を思うと、こんなことを口にするのも本当は胸が痛んだ。
でも、乱馬が自分の理性を必死に抑えているのと同様、右京もまたギリギリの状態で自分の気持ちをコントロールしていた。
右京は真之介を応援するかのような口調でそういうと、少し照れているような真之介の背中をバシッと叩いた。
真之介はそんな右京の言動に対し、照れて困ったような表情をしているものの、まんざらでもなさそうな様子だった。
そんな二人の様子に、乱馬は更に不機嫌になる。
「・・・」
・・・あかねは俺の許婚なんだよ!
ただ記憶を無くしているだけで、あれは俺の・・・俺のあかねなのに!
「・・・」
強引に状況を変えることが出来ないもどかしさ。今にも大きな声でそう宣言したくて仕方が無いのだが、
なにぶん物忘れがひどい彼、
先ほどその事も確かに話して聞かせたはずなのにすでに忘れているし、
その上、いかにも自分はあかねの事をよく知っているかのような口調。
例え、この状況や彼を不満に思うことが黒く醜いとわかってはいても、どうにもとめることができない。
更に乱馬の機嫌の悪さに拍車をかけていた。
「・・・」
俺の、あかねなのに・・・
「・・・」
怒りを通り越すと、残るのは空しさと、失った彼女を思う寂しさで胸が満ちる。
ゴスッ・・・と足元に転がる道の石を蹴り上げて遠くへ飛ばしたりしながら、乱馬は二人の話を何とか聞き流す努力をしていた。


と、そんな中。


「きゃー!」
「わー!逃げろー!」
きゃあきゃあ、と楽しげな声を上げた数人の子供たちが、道を歩いている乱馬たちの前にやってきた。
そして、
「あ、お兄ちゃん!こんにちは!」
「お客さん?こんにちは!」
真之介と、そして乱馬と右京の姿に気が付き、初々しくお辞儀をする。
年のころは、皆五歳ほどだろうか・・・どの顔も、無邪気な笑顔が溢れていた。
「うわあ、めっちゃ可愛い子らやなあ。うちも、こういう子欲しいなあ」
右京が、子供の高さに合わせてしゃがむ。
そして子供たちの頭を撫でながらそんな事を呟き乱馬をちらりと見るも、乱馬は相変わらず不機嫌そうだ。
そればかりか、右京の言葉など聞いている様子も無く、あげく空を見上げてため息をついている始末だ。
明らかに、右京の言葉にも視線にも興味なし。心、ここにあらずという感じだろうか。
・・・もしも、同じ事をあかねが呟いたなら。
きっと乱馬は肩の一つでも抱き、「そうだよな」とか言いながら笑顔を見せたのかもしれない。


「・・・」


何が一体、違うん?
うちかて、乱ちゃんのこと好きやのに。
あかねちゃんに負けへんくらい好きやのに・・・少なくても乱ちゃんのこと忘れてる、今のあかねちゃんよりはずっとずっと、乱ちゃんのこと好きなのに。
顔?育ち?性格?髪の長さ?短い方が好みやから?


・・・


あかねちゃんと瓜二つになって、そんで同じ風に接したら、乱ちゃんはうちのこと見てくれるん?
あかねちゃんなんて、乱ちゃんのことわからへんのに。今のあかねちゃん、乱ちゃんのことなんて全然見てへんのに。
乱ちゃんがいくら強く思ったって、あかねちゃんは乱ちゃんのことなんて!


・・・


そう思うと、右京の心はズキ・・・と軋む。
そしてその胸の痛みと同時に再び脳裏に、いつものあの声が響く。


『・・・もしも貴方がこの先、どうしても手に入れたいものがあると思った瞬間があったならば、心の中で強く私の名を呼びなさい。そうすれば私は、きっと貴方に最高の力を貸して差し上げる事ができるでしょう』


そう、あのときのぞっとするような冷たさとともに、右京の脳裏に蘇る。


少し思いつめると、その隙間を縫うようにして右京の心に流れる声。
この里の中にまでも追ってきて、心の声を聞く右京を見つめる妙な男。その男の冷たい不気味な視線が頭の中から消えてくれない。
いけない・・・また変な事を考えて!
右京は慌ててその声を打ち消すように首を振った。
そして、
「ほんまお利口さんやね、あんた達・・・」
と、何とか笑顔を取り繕ってその声を忘れるように呟いた。


そんな右京の横で、


「皆、どこへ行くんだ?」
「これからねー、神楽さまに魔法を教えてもらうのー!」
「じいちゃんにか。もうすぐ散歩から帰ってくるだろうから、しっかりと習ってくるんだぞ」
真之介が子供たちに笑顔でそう声をかけた。
「はーい!」
「お兄ちゃん、またねー!」
子供たちは嬉しそうにそう答えると、真之介の手を触ったり身体に触れてぐるぐると回ったりした後に、再び走り去っていってしまった。
世界はラヴィのせいで魔物も増え物騒になってはいるが、どんな世界でもどんな時代でも、子供だけは無邪気なもの。
それに、純真無垢な子供に接すると、自分のどす黒い心が浄化されるかのようだ。
「全く、あいつらだけはいつでも元気だな」
そんな事を言いながら子供たちを笑顔で見送っている真之介の姿を見ながら、
「そうやね・・・」
右京はこっそりとそんな事を思っていた。
と、


「・・・あれ?あの子は・・・どうしたんやろ」


右京たちがいる場所から少し離れた場所に立っている大木の陰に、一人の子供が身を潜めているのに右京は気が付いた。
その子供も、年のころは先ほどの子供たちと一緒。 だが、先ほど楽しそうに走り去っていた子供たちに比べ、その子供の表情は暗い。
いや、暗いというより・・・右京たちを睨みつけているかのように思える。
「どうしたん?もしかして人見知りなんか?」
それとも、仲間はずれにでもされてるんか?右京がその子供に近づこうとすると、
「・・・リオじゃないか。どうしたんだ?何か言いたい事でもあるのか?」
その子供、どうやらリオという名前らしい。
真之介が、リオの方に歩み寄り自分の方へと来るようにリオの手を取ろうとした。
が、リオはその手を乱暴に振り払うと、何も言わないまま走り去ってしまった。


「何や?あの子。一体どうしたん?」
弟のタクトよりも明らかに穏やかで、そして人当たりもよく優しい真之介。先ほどの子供の集団の反応を見ても、子供にも受けが良さそうだ。
なので、リオのその反応が不思議でならない、と右京が首をかしげていると、


「リオは、ちょっと気難しい所がある子供なんだ」
「何だ、そうやったん。じゃあ、うちと乱ちゃんにビックリしてしもうたんやね」
「そうだろうな。さ、それより屋敷に急ごう。あかねをあまり無理させるわけにはいかない」
真之介は走り去ったリオの背中にため息をつきながらそう呟くと、屋敷への歩を再び進めた。
右京と乱馬も、リオについては特にそれ以上追求せず再び歩き始めた。


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