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到着

「ん・・・」

光に包まれ意識を失ってから、どれくらい経っただろうか。
乱馬が目を覚ますと、部屋の天井ような光景が目に入ってきた。
光を浴びたのは、外、それもがけの上だったはずだ。
光の中、握っていた剣が何かに導かれるような感覚があったから、そのままどこかへと運ばれたとでも言うのか・・・
それが、ここ?

「・・・」
乱馬はゆっくりとその身体を起こした。そこで、自分がベッドに寝かせられていた事を知った。
ベッドの周りには、サイドテーブルが一つ、そして本棚のような棚が一つ。
あとは明り取りの窓があるだけの質素な部屋のようだ。
どうみても宿、というには質素すぎる部屋。
しかし、掃除が行き届いているように見えるし、掘っ立て小屋というわけではなさそうだ。
「・・・」
ここは、一体どこなのか。
そして、自分と同じように光に包まれた皆は無事なのか・・・乱馬はぼんやりとそんな事を考えていた。

と、その時だった。

「ようやくお目覚めかい」

聞き慣れているわけではないが、どこかで聞いたことのある声が耳に飛び込んできた。
「!」
とりあえず、自分の仲間の声ではないのはすぐに認識できた。
が、誰の声なのかを思い出す事ができない。
敵か味方かも分からない状態で丸腰で居るのは危険だ。
直感的にそう判断した乱馬が、普段腰に差している剣を引き抜こうと腰に手を伸ばすが、
「!?」
・・・意識を失う前までは手にしていたはずの剣。
ここに来るのも導かれるかのようにやってきたのだ、そういえば腰にしまった記憶がない。
勿論、あるべき場所には剣はなかった。
乱馬が持つ剣は、ただの旅人が持っているような武器の剣ではない。
伝説の勇者が使った、伝説のカードを用いて戦う事のできる「勇者の剣」なのだ。
カードフォルダはしっかりと腰に残りカードもその中にはしっかりと収められているものの、
剣だけは失くしてしまったとでもいうのか?
「っ・・・」
乱馬は声の主をそっちのけで、ベッドの下や床に落ちては居ないかと必死に剣を探し出した。
すると、
「お探しのものはこれかい?」
ギラリ
床を探していた乱馬の目の前に、ギラリと光る銀色の刃が差し出された。
「!」
一瞬身を引きながら、乱馬はその刃を見る。
柄の部分には、見覚えのあるカードスロット。紛れもなく、声の主が差し出したものは「勇者の剣」だった。
「珍しい剣だな、持ち心地も切り心地も良さそうだ」
声の主はそう言って、銀色の刃を乱馬の頬へとペタリ、とつけた。
「・・・」
乱馬はごくりと息を飲み込みながら声の主を見る。
・・・背はすらりと高く、髪は漆黒で短い。
割と整った顔立ちであり、瞳の色はグレーだ。
目つきが鋭いのが難点だが、中々の男前。
その出で立ちは、城、もしくは大きな屋敷によくいる騎士のような格好だ。
腰には、シルバーの柄が印象的な剣。そして首には防寒用なのか、マフラーかショールのようなものがしっかりと巻きつけられていた。
そんな青年が、不敵な笑みを浮かべながら乱馬に剣を向けていた。

・・・そうだ。
こいつはあの男だ。自分達はこの男をつけて、あの場所まで。

迂回路を歩く乱馬が見つけた、癒しの里の人間。
友好的に話しかけたのに、やけに愛想悪く返された記憶。
その青年が今、乱馬の持ちものであった「勇者の剣」を乱馬に向けている。
・・・

「助けてやって礼として、この剣もらってやるよ」
青年が、にやりと笑みを浮かべながらそう呟く。
「・・・それはお前が扱えるような剣じゃない」
刃を頬に当てられながら、乱馬はすぐにそう返した。
「へえ、じゃあ誰なら扱えるんだ?少なくてもあんたより俺の方が腕は立ちそうだけど」
「いいから返せ!」
「どうしようかな。俺、この剣気に入っちまったし」
が、青年はふざけているのか乱馬に剣を返す素振りを見せない。
それどころか、乱馬の頬にあてている刃をピタピタと動かし、挑発しているかのような素振りを見せた。
血の気が多いのか、面白半分なのか。
まるで、「腕づくで取り返してみろよ」とでも言いたげである。
「・・・」
無駄な争いはしたくない。
だが、「勇者の剣」はどうしても取り返さなくてはならないものだ。
「・・・」
乱馬は一歩、青年から身体を引くと青年を真っ直ぐに見据えながら拳を構えた。
剣がないので剣術は使えないが、もともと乱馬は素手での格闘技に長けているのだ。
道場ではその修業をしていた。
「・・・」
青年はそんな乱馬をにやりと笑いながら見つめる。
そして、剣をゆっくりと構え、じっと乱馬を見据えて間合いを取り始めた。

と、その時。

「悪ふざけはそこまでにしろ、タクト」
間合いを取っている二人の背後・・・部屋の入り口の方から、第三者の声がした。
聞いたことのない声だった。
しかも声だけ聞くと若い青年、のようだが・・・
「・・・」
今度は誰だ?
乱馬がそちらの方へと目をやると、
「タクト、その剣は客人に返すものだろう」
声の主はそう言って、剣を構え間合いを取っていた青年・タクトからいとも簡単に剣を取り上げてしまった。
「兄さん、何するんだよ!」
勿論、その一方的な行為にタクトは納得がいかないようだが、元々はその剣、乱馬のものなのだ。
それが分かっているがゆえに、
そして、兄さん、と呼んだその声の主には敬意を示しているのか、
「・・・分かったよ。返せばいいんだろ!」
「当たり前だ。だいたいお前は・・・」
「あー、もう!分かったって。兄さんの説教は聞き飽きたよ!」
タクトはそう言って、剣の事は諦めたような素振りを見せた。
だが乱馬に対してはまだ何か言い足りないのだろうか。
口や手を出すと、「兄さん」と呼ばれたこの青年に怒られうとわかっているのか、
しかし せめてもの抵抗として、乱馬をじろりと睨みつけてから、そのまま部屋を出て行ってしまった。
「・・・すまなかった。あれはいささか、やんちゃなところがあるんだ」
「あ、いや・・・」
「剣、お返ししよう」
声の主は、乱馬にタクトの非礼を詫びると、素直に剣を手渡した。
乱馬はその剣を腰に挿しながら、声の主をじっと見つめる。
・・・年の頃は乱馬より一つ、いや二つくらい上なのだろうか?青年だった。
すらりと背が割と高く、細いけれどほどよい筋肉が身体には付いている。
乱馬ほどではないが髪が長めで、後ろで一つにまとめていた。
タクトとは似ていないものの、顔も割りと整っており、鳶色の瞳が印象的だ。
どちらかといえばタクトよりも、この青年の方が随分と暖かそうなイメージがある。
そして、タクトほどしっかりではないが首にスカーフのようなものを巻き、 身に纏っている服は、城の兵士ほどではないがキッチリとした戦士服である。
「・・・」
同じ青年でも、随分と気性が違うものだ。
物腰も柔らかいし、これならば女性にももてるだろうに・・・乱馬が青年を観察しながらそんな事を思っていると、
「えーと・・・で、俺は客人に何を言いに来たんだっけ・・・」
「は?」
「・・・あ、そうだ。他の客人達は既に、広間の方へと集まっておられる。それを伝えに来たんだ」
「そ、そうか・・・。?」
「すまん、俺は少々忘れっぽい所があってな・・・」
どうやら、物覚えが悪いのか記憶障害でもあるのか。
タクトのことに気を取られたせいなのか、何故自分がこの部屋に来たのかを忘れてしまっていたらしい青年が、そういってバツが悪そうに笑った。
「ご案内しよう」
そして、ようやく思い出した目的を遂行すべく、部屋のドアを大きく開けて乱馬を外へと誘導した。
物忘れが酷そうな事を抜かせば、やはり先ほどのタクトと違い、随分と紳士的で且つ、丁寧だ。
青年は、乱馬を誘導して廊下を歩き始めた。
部屋の中は質素なのにもかかわらず、廊下は明るく、そして華やかなイメージが感じられた。
通路の左右にある窓のせいだろうか?
割と高めの天井に、天窓が等間隔で設置されていた。しかも、ステンドガラスをはめ込まれている。
白い色の壁に、キラキラと七色の光反射され眩いばかりだ。
・・・
「あの・・・ここは・・・」
物忘れは酷いようだが、必要最低限の情報くらいは忘れないでいるだろう。
青年には聞きたいことが山ほどあるのだが、とりあえずは今自分達が置かれている状況をまずは把握しようと、乱馬は青年にそう尋ねた。
「ここは、癒しの里。そしてこの建物は、癒しの里の中央部に位置する教会だ」
案の定、青年は概要的な事柄に関してはすらすらと答える。
「教会・・・」
「傷ついたものは皆、この教会へとやってくる。そしてあらゆる方法で治癒を施されるんだ」
青年は、乱馬に背を向け廊下を歩きながら続けた。
「・・・」
・・・そういえば、がけの上から下を見たとき、真ん中に大きな教会があったっけ。
乱馬はふと、自分が意識を失う前のことを思い出した。
「・・・そういえば、あのじいさんは?」
「じいさん?」
「俺達をここへと連れてきたじいさんだ!何か俺達の事、客人って・・・」
次に乱馬は、自分達をここへと飛ばすべく光を放った不思議な例の老人のことを青年に尋ねた。
「・・・ああ、じいちゃんのことか。それは俺とタクトのじいちゃんだ」
「魔法使いか何かなのか?」
「さー・・・忘れた」
「あ、そ、そうか・・・」
「でも・・・世界でも稀少な水晶を使った、占いみたいなのは得意らしいが」
青年は乱馬の問いに素直に答える。
「・・・」
・・・水晶。
コロンが使っているあの水晶と同じものを、あのじいさんも持っているのか。
けれど、あんな風に意図的に自分の魔力や「気」を操れる人間が、魔導士でないはずがない。
「・・・」
乱馬がそんな事を考えていると、
「じいちゃんは、この里の里長もかねているから、何か気になる事があれば聞いてみるといい」
俺に聞くよりも確実だろう・・・青年はそこまで乱馬に答えて、突然ピタリ、と立ち止まった。
見ると、大きなドアの前であった。どうやら、広間の入り口にたどり着いたらしい。
「このドアを開けると、広間だ」
「すまない」
「俺は人に会う用事があるからここで失礼するが・・・ゆっくりしていってくれ」
青年はそう言って、乱馬をドアの前に残し再び廊下を逆に歩き出した。
「あ、ちょっと!あんたそういえば名前は!?」
乱馬はそんな青年の背中に向かって、慌ててそう叫んだ。
そう、聞きたいことが山ほどあり、とりあえず状況把握を優先に物事をこの青年に尋ねていたのだが、
勿論この青年のことも聞いておきたかった。
あの血の気の多そうなタクトの兄、しかも腕が立ちそうなタクトと兄となれば格闘の腕前もそこそこだろう。
それに、落ち着いた物腰に紳士的な態度。里長の孫、であるならば、里の人間からの信頼も厚いだろう。
里で色々と行動するにも彼と仲良くなっておけば多分こちらにも有利になるだろうし、
それよりなにより、剣を取り戻してくれた礼も満足に言っていなかった事を思い出した乱馬は、青年にその名を尋ねた。
青年はそんな乱馬の方をちらりと振り返ると、
「俺は・・・真之介だ。普段はこの里全体の警備や、この里の宝の騎士も兼任している」
そう呟き、乱馬に向かってきちんと頭を下げた。
「宝・・・?」
もしや、伝説のカードの事か?乱馬がそんな事を考えていると、
「あれ、俺、何しようとして・・・あ、そうだ、約束があったんだ!急がなくちゃ・・・」
真之介はそれには答えずに、ごちゃごちゃとそんな事を呟きながらさっさと廊下を歩いていってしまった。
「あ・・・」
迷わずに宝のことも聞けば良かったが、今更気が付いても後の祭りである。
が、
宝の事は後ほど、里長であるあの老人に聞けばよい。
そう考えた乱馬は、気を取り直して広間へと続くドアへと手をかけたのだった。


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