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迷いの森2

そして、夜が明けた。
「そんだらおめーら、宜しく頼むでよー」
「主人を見つけて来てなー」
木こりの源さんと、大五郎の妻:ジェニファー(どうやら国際結婚らしい)に送り出され、乱馬達は再び、「迷いの森」の 入口に立っていた。



「ねえ、乱馬。昨日の『迷い子には迷い子作戦』はどうなったの?」
昨夜と一向に変らず三人で森にやって来たことに、それを不思議に思ったあかねが、乱馬に早速尋ねると、
「そろそろだな」
乱馬はあかねを制するようにそうつぶやき、「シッ」と指に口を当てて黙らせた。
「?」
そんな乱馬の行動に、あかねとシャンプーが首を傾げつつも耳を澄ますと、

ズーン・・・
ズーン・・・

「え!?何か地鳴りがする?」
・・・不意に、あかね達の足元から、不気味な地鳴り音が聞こえた。

ズーン・・・
ズーン・・・

地鳴りの音は、どんどんと大きくなった。
そして、あかね達の立っている場所の真下あたりで突然その音が止まったかと思うと、

「獅子咆哮弾!」
「きゃー!」
・・・そんな叫び声とともに、突如土柱が巻き起きた。
そして・・・

「こ、ここはどこだー!」
「良牙君!?」


・・・巻き起こった土柱と一緒に、一人の男が現れた。
「良牙」と呼ばれたその男は、土柱が消え、あかねの姿が粉塵の中からみえると同時にあかねの元へと走ってきて、
「あ、あかねさん!?・・・という事はここは城下のあかねさんの道場!?」
愛の奇跡か!?と、あかねの手をしっかりと握りながら涙を流し感動し始めた。
「どこが道場だ!どっからどう見ても森の中だろうがっ」
そんな良牙の手をあかねからベリっと引き剥がし、乱馬は良牙へ「くわっ」と威嚇してみせる。
「乱馬!」
良牙は、今度はそんな乱馬の胸倉を強引に掴みあげると、
「そうだった!乱馬、貴様、一体どういうつもりだ!
  変なばあさんには訳のわからない薬を飲まされるし、こんな妙な森の中には連れてこられるし・・・」
と叫んだ。
「まあまあ。ちょっとな、オメーの力がどうしても必要になっちまってな。不本意ながら、呼んでやったんだよ」
乱馬は、さりげなく失礼なコトバを吐きながら良牙にそう言い聞かせると、
「俺の力だと?」
「そうだ。実はな・・・」
・・・とりあえず、今回の旅の趣旨と、 そして、この「迷いの森」にて大五郎を救出する為に必要な「迷子には迷子作戦」の詳細についてを良牙に話して聞 かせることになった。


と、このまま物語が進行していく前に。
まずは、乱馬と、そしてこの突如現れた「迷い子」こと良牙との関係を説明するとしよう。
・・・良牙は、乱馬の父が国王をしているその国に仕える騎士の一人だ。
良牙は、姿かたちこそ普通の青年だが、彼を語る上で最も忘れてはいけない事がある。
それは・・・・「極度の方向音痴」だということ。
城の中でさえもよく迷子になっては、任務に遅刻する事。良牙は、ある意味城の中では有名人だった。
初めは乱馬も、その有名人な良牙に興味を持ち自分から近づいていったわけだが、
話をしてみると、実は自分と同じ年であったことや、格闘技に興味を持っていること、そして、自分とは悉く戦闘スタイ ルも何もかも相反するその面に惹かれ、 何だかんだいっては、喧嘩をしたり決闘したりする・・・そう、言わば「ライバル」のような間柄になっていた。
スピードや打撃力、全てがバランス良い乱馬に対し、 スピードは数段劣るが、ただし乱馬以上の圧倒的なパワーと打撃力を持つ、良牙。
対照的な闘い方をする2人は、まさに「好敵手」と呼ぶにふさわしい関係だ。
そして。


「・・・この俺が!この方向音痴の俺が、迷うことなくまっすぐにこの場所にやってこれただなんて!愛の力だ!神よ、アリガトウ!」
そう言って、こりずにあかねの手を握る良牙に、
「だーかーら!それは、コロンのばあさんに飲まされた妙な薬のせいだっていってんだろ!」
これまた負け時と、その手をベリっと引き剥がして乱馬が叫ぶ。


・・・そう。
乱馬があかねの道場に通うようになってから少しして、乱馬の母である妃に頼まれて、乱馬の忘れ物を届けに・・・ 来たはずが街で迷子になり、そんな良牙を偶然に見つけたあかねが、親切に道場まで案内してきたこと。
それをきっかけに、良牙はあかねに一目ぼれをし、交流を重ねていくうちに更にあかねに惚れこんで・・・現在にいた るわけだ。
乱馬と良牙。
格闘でも、恋愛でも・・・・どちらもライバル関係にあるのであった。


・・・そんな良牙を。
乱馬は、コロンを通してこの「迷いの森」へ、今回わざわざ呼び出したのだった。
もちろん、ちゃんと良牙がここにたどり着くように、一時的に方向感覚を麻痺させる「特殊な薬」を飲ませたわけだが。
「迷いの森に対抗するには、普通の奴にはありえない方向感覚を持つ『迷い子』が必要だと思ってな」
「ば、馬鹿にしとんのか貴様ー!」
そんな事を言い合っては、胸倉をつかみ合い、「協力しろ」といってるにも関わらず今にも喧嘩を始めそうな乱馬と良 牙を横目に、
「ひいばあちゃんの魔法の地図、役に立たないという事か?」
地図よりも良牙の力に頼るのか、と、シャンプーが不満そうな表情をしてボソッと呟いた。
「おばあさんの地図は、森を抜けるための正しいルートを記してくれるからもちろん必要よ」
「ならば、なぜ良牙を頼るか?」
「それは、ほら。森に迷ってしまった人たちというのは、そんな正しいルート上にいるわけが無いでしょ?地図に記しきれていないような小道とかに入り込んでしまっている可能性が多いいのよ。だから、乱馬は良牙君を呼んだんだと思うわ」
あかねは、シャンプをーの機嫌を直させるように優しくそう言い聞かせると、
「良牙君・・・あたしからもお願い。あたし達に協力して?」
乱馬と依然としていがみあっている良牙に向かって「お願い」ポーズをしてみせた。
そのとたん、
「あかねさんの為なら!この響良牙、命を捨てる覚悟です!」
良牙は乱馬からさっと離れて、あかねの手を取った。
「ほーそりゃ頼りになるな。俺達の為にも頑張ってくれ」
そんな良牙を、すかさず乱馬がそう言って、あかねから引き剥がす。
「誰が貴様の為になんか命を捨てるかー!」
良牙は再びそう叫んで、「べーっ」と舌を出している乱馬へと飛び掛る。
「りょ、良牙君!ほら、乱馬も!もう、そんな風に喧嘩しないの!」
あかねが二人をなだめようとオロオロしていると、
「乱馬、あかねは良牙に任せて、乱馬は私の事一生懸命守るよろし!」
そんなあかねの横から、シャンプーまでもが口をはさみだし、その場は一時騒然となるが、
「・・・まあ、とにかくほら。良牙。とりあえずおめーもこれ、付けろ」
このままここでもめているわけにもいかない、と、乱馬は良牙に例の「バッチ」を差し出した。
そう、昨夜乱馬達も託された「きこりの源さんバッチ」である。
「・・・何だ、この悪趣味なバッチは」
「木こりの源さんモデルの組合バッチだ。これがねーと、大五郎さんが、俺たちが源さんに頼まれて大五郎さんを救 出にきたことを信用してくれないらしい」
「・・・」
とりあえず良牙も、不服そうな顔をしながらも「源さんバッチ」を胸につけた。
「それじゃそろそろ行くぞ!」
そして。
乱馬の掛け声とともに、良牙の「感」とやらを頼りにしながら、「迷いの森」へと足を踏み入れた。




「あ!宝箱見つけた!」
・・・森に入って、程なくして。
良牙の「迷子アンテナ」のお陰で、何故か次から次へと地図には記されていない小道へ入り込む事が出来た乱馬達 は、木こり組合の面々が森に隠した、という「宝箱」と出くわす事が出来ていた。
「今度は何が入ってる?」
「開けてみるよろし!」
「まあ、待てって」
あかね達にせかされるように、乱馬が宝箱を開けると・・・
「お!盾だ!木の盾!」
宝箱の中には、小ぶりの丸い盾が一つ、収められていた。
「薬草、毒消し草の次は盾か」
大奮発だな、木こり組合とやらも・・・と、良牙もそんな事を呟く。
「ま、持ってて損はねえよな。盾だったらさ」
乱馬はその盾を、何故かあかねに手渡して「これはお前がもて」といった。
「え・・・何でよ。荷物は乱馬が持つんじゃないの?」
あかねが口答えをすると、
「一つぐらいはおめーも持てよ。これぐらいもてるだろ?」
乱馬はそんなことを言いながら、強引にあかねにその木の盾を持たせると、
「さあ、先に進むぞ」
そう言って、再び良牙を先頭に歩きだした。
「な、何よその言いかたはっ」
あかねが、乱馬のそんな口調にムッとした顔をしていると、
「・・・あかねは弱いから、その盾がお似合いね」
「え?」
「乱馬はわざと、あかねにその盾を持たせた。防具に使わせるために。そんな優しさが分からないなど、乱馬の許婚 している資格などないね」
シャンプーが、そんなあかねの横でボソッとそんなことを呟いた。
「わざと・・・持たせたって・・・」
「そんなの、ちょっと考えればわかる事ね。
  それより乱馬、次は私にも何か持たせるよろしぞ」
そして、きょとん、としているあかねの横をすり抜けて、前を歩いている乱馬の腕へとしがみついた。
(・・・気を・・・使ってくれたって事?)
あかねは、そんなシャンプーとそれを振り払おうとしている乱馬の姿を後ろから眺めながら、そんなことをぼんやりと考 えていたが、
(でも・・・あたしだって、武道家だもんっ・・・こんな盾に頼らなくたって!)
強がりな上に負けず嫌いなあかねは、そんな乱馬のちょっとした心遣いよりも、シャンプーの発した「あかねは弱いか ら」というコトバの方が印象に強く残り、 せっかくの乱馬の優しさに感謝するのも忘れ一人、腹を立てていたのだった。

と、その時。

ザワザワ・・・とあたり一体に、不穏な風が吹き始めた。
爽やかな朝の森の中に、突然ふき始めた、生臭い風。
「・・・何か、いる」
乱馬と良牙、そしてシャンプーが、立ち止まった。
その三人の表情は、
先程までのお茶らけたものではなく、とても真剣な、そして引きしまったような表情をしていた。
「えっ・・・えっ・・・!?」
三人の不意に引き締まった表情を見て、あかねがキョロキョロと辺りを見回していると、
「危ねえ!」
「きゃ!」
・・・そんなあかねを守るようにし、乱馬があかねの体を抱いて、少し後方へと飛んだ。
その直後、
ドカっ・・・
・・・それまであかねが立っていた位置へ、槍のようなものが突き刺さった。
「!」
あかねがハッと息を飲むと、
「あかね!おめーはここでじっとしてろっ」
乱馬はあかねにそう言い放ち、
「良牙、シャンプー!来るぞ!」
・・・捜査権で、急いであかねから離れた。
「言われなくても!」
「分かてるね!」
その声に反応し、 シャンプーは腰に挿していた棒を抜いて「ぼんぼり」を作り構え、 良牙は拳に「気」を溜めて、闘う姿勢で構える。
乱馬は、「勇者の剣」・・・はまだ大道芸しか披露する事が出来ないのでそれは腰に挿したまま、素手で構える。
(な、何よ!あたしだって!)
あかねも、自分ひとりだけ戦いを傍観するのは嫌・・・と、コロンから与えられた、例の「光のムチ」を取り出すべく、腰 に挿していた棒を慌てて引き抜いて構える。
と。
・・・ザザザザザ!
突如、四人の周囲の草木が激しく揺れ動いたかと思うと、あかね達が生活していた城下の街などではあまり目にする 事の無い、いわゆる「モンスター」が、次から次へとあかね達の目の前へ飛び出し、そしてあっという間にあかね達を 取り囲んでしまった。
(あ、ああああ・・・・)
旅に出るという事は、こう言った野生のモンスターと遭遇する事も勿論覚悟をしていたあかねであったが、実際にこう して目にすると、いくら道場で格闘技を学んでいるとはいえ、足が竦んでしまう。
が、どんなに恐怖で身をすくませても、それだけでいたのなら・・・このモンスター達に喰われてしまうのがオチ。
「・・・」
額と背中に冷たい汗が流れ落ちるのを感じながら、あかねはムチを握る手にぎゅっと力を込める。
・・・モンスターの数は、ざっと数えて二十体ほど。
「・・・邪魔だ、どけ!」
乱馬が、自分達を取り囲んでいるモンスターたちに向かって叫んだ。
その途端、
「ウウォオオオオ!」
「!」
まるで、地の底から湧きあがってくるような低い声でモンスターたちは嘶くと、
「グワアアア!」
ガっ・・・と牙を剥き出し、そして爪を激しく伸ばしたその姿で、乱馬達に襲い掛かってきた。


身軽で、スピードのある技とパワーで、次々とモンスターを倒していく乱馬。
圧倒的なパワーで、モンスターをねじ伏せる、良牙。
時折、「敵の能力を奪い自分の力に代える魔法」なんかも織り交ぜながら、華麗に「ぼんぼり」で敵を倒していくシャ ンプー。
・・・戦闘が始まるや否や、この三人は次々とモンスターを倒していった。
「たあー!・・・あれ!?」
・・・もちろん、あかねもその三人のように華麗にモンスターを倒していきたい気持ちは山々だったのだが、 コロンから強力な武器を与えられたものの、根が数倍は人よりも不器用な、あかね。
いきなり戦闘(しかも稽古とは違い実戦)に出て、そんな光のムチなど・・・簡単に使いこなせるわけが無かった。
案の定、
「えいっ・・・あれ!?もう一度・・・あれ!?」
あかねが操るムチは、スルリ、スルリとモンスターの「脇」を走りつづける。
・・・結局、
「てやあ!」
無駄に「ムチ」を使ったが為に、激しく体力は消耗してしまったが、持ち前の「気力」と「素手」の技で、あかねはモンスターを数匹、倒す事となったのだった。
・・・
「・・・よし、全部倒したな?」
・・・しばらくして。
もう、モンスターが襲ってこない事を確認した乱馬は、動かなくなったモンスター達が所持していた薬草などをかき集 め、そして自分達の荷物に入れると、
「じゃあ、大五郎さんの捜索にまた出かけるとするか」
「そうだな」
と、再び「迷いの森」の中を歩き始めた。
が。
乱馬、良牙、そしてシャンプーは、先程の戦闘の事などすっかり忘れたかのような足取りで森の中を歩き始めたが、
「・・・」
・・・実戦に慣れていないあかねは、そうも簡単にはいかなかった。
それに加え、光のムチの乱用で「体力」を異常に使い切っているため、足元がフラフラとおぼつかない。
ただ、それを乱馬達に気づかれないように・・・と頑張っては見たが、
それでもその内、
「あっ・・・」
ドテっ・・・と足がもつれ、地面に倒れ込んでしまった。
「あかねさん!大丈夫ですか!?」
そんなあかねにいち早く気がついたのは、良牙だった。
良牙が慌ててあかねの元へと駆け寄ってきたが、
「へ、平気よ良牙君。あの・・・い、石に躓いただけなの。ゴメンね・・・」
あかねは、余計な気を使わせたくない・・・と、慌てて笑顔を繕う。
「ったく、ドジだなおめーは。もっと・・・」
気をつけて歩けよな。
・・・乱馬はきっと、そんなあかねにそうやって声をかけようとしたはずだった。
が、不意にそのコトバを途中で遮り、静かになった。
「?乱馬、どしたか?」
シャンプーがそんな乱馬に声をかけると、
「いや・・・あれ。あの木蔭に・・・」
乱馬は、あかねがつまづいて倒れた直ぐ傍にある大木の根元を指差した。
見ると、 確か似底は、不自然に草やら小枝やらが積み重ねられて、こんもりと盛り上がっていた。
「・・・何でこんな風に盛り上がってるんだ?ここ」
乱馬はとりあえず倒れているあかねをたたせて自分の後ろに控えさせると、 ザっ・・・ザっ・・・と腰に差した勇者の剣を使って、積み重ねられている葉や木枝を取り除いた。
・・・すると。
「!?」
「地下・・・」
「洞穴の入り口じゃねえか!」
「何処に繋がっているのか、興味あるね」
草木を取り除いた後に現れたのは、木の根元から地下へと続く洞穴だった。
どうやら、風かなんかで舞い上がった木の葉が、吹き溜まり同然でこの入り口へとたまってしまっていたのだろう。
「・・入ってみよう」
「乱馬、これ、持つよろし」
さっそく洞穴へ入ろうとした乱馬に、シャンプーがコロンに持たされた道具の一つで、小さな「ペン」を乱馬に差し出し た。
乱馬がそれを手にすると、パっ・・・と光を発する。
そのペンはどうやら、人の体温をある程度感じると、光を発する「ペンライト」のようなものだった。
「・・・」
一行は、再び乱馬・良牙を先頭に、深くて暗い洞穴の中へと下りていった。
そして、時折ランダムに登場してくるモンスター達を倒しながら、少しずつ穴の奥へと進んでいくと・・・

「・・・誰か、いるのか?」

・・・穴の最深部なのか、行き止まりの袋小路部分に、なにやら黒い影が見えた。
「人か?人だったら、声を出してくれ」
乱馬が声をかけながら、その影に向かってペンライトを向けると、
「お、オメーらこそ誰だ!おら達は喰っても美味くなんかねー!」
やけに殺気だった声が、乱馬達に向かって帰ってきた。
「あ、もしかして、大五郎さん?」
乱馬がその声にすかさず反応して、
「いやー、実は俺たち木こりの源さんに頼まれて・・・」
と、気さくに近づこうとしたその瞬間だった。
「!おらが名前を名乗る前に、おらの名前を知っているとは・・・おめーら、魔物だな!?」
「え!?」
「お、おら達は、そうは簡単にはくわれねーぞ!」
乱馬のその人懐っこい所が仇となったというか。
大五郎は、表情を険しく改めると、突然腰に差していた斧を構えた。
そして、
「森に迷ったお客さんを、森の出口まで無事届けるまでは、おらは死ねん!おらは生粋のガイドじゃー!」
そう叫ぶや否や、めちゃくちゃに斧を振り回しながら、乱馬達に襲い掛かってきた。
「わっわっ・・・ちょっと、大五郎さん!」
「落ち着いてくださいって!」
斧で襲われた乱馬達が、大五郎の攻撃をヒラリヒラリと交わしながらそう叫ぶも、
「やかましー!人の姿をしていても、おらは騙されんぞ!何度それで殺されかけたか!」
・・・この森で迷っているうちに、よっぽど怖い目に会ったのだろう。
「ひとみしり」と聞いていた大五郎は、さらに「人間不信」になっていた。
「・・・」
しかし。
このまま、いつまでも大五郎と争っているわけにも行かない。
「あかね、シャンプー」
乱馬は、あかねとシャンプーに、大五郎が守ろうとしている旅人達へ近づき事情を話すように促すと、
「大五郎さん!ほら!これを見てくれ!」
そう言って、大五郎の攻撃の矛先を自分と良牙に向けながら、
「ほらこれ!俺たちは、あんたの仲間だ!」
「何が仲間だ!魔物のクセに!」
「魔物じゃねえ!ほら、良く見ろ!」
・・・と、木こりの源さんから託された例の「きこりバッジ」を大五郎に差し出した。
「んー?」
初め大五郎は、「なんだそれは?」とばかりに顔をしかめていたが、
「そ、それは・・・源のバッチ!しかも、メモリアルモデル!」
源さんがバッチリとポーズを決めた例のバッチだとそれを確認するや否や、驚くくらい表情が柔らかくなった。
「・・・」
・・・そんなに効力があるのか、このバッチは、と、乱馬はふとそんなことも思いつつ、
「わ、分かってくれたか大五郎さん。俺たちは、源さんと、あんたの奥さんに頼まれてあんたを捜しに来たんだ」
殺気をようやく収めてくれた大五郎に優しく話し掛けると、
「源と・・・ジェニファーが!?ああ、おらの愛しいジェニファーが!」
大五郎はそう言って、ゴトン、と斧を地面に落とした。
そして、
「襲い掛かったりして悪かったな・・・あんた達、おら達を助けに来てくれただか・・・」
乱馬達に、そう言って頭を下げた。
「とにかく、早く森から出よう。みんな心配している」
「ああ・・・宜しく頼むよ」
大五郎はそう言って、乱馬と良牙に頭を下げた。
「乱馬、こっちの皆さんも大丈夫よ」
「けが人はいないね」
それと同時に、大五郎の後ろの方で固まっていた旅人達も、あかね達が説得し終えた所だった。
「・・・じゃ、森の外まで出ますか」
「おう」
大五郎、そして旅人達を見つけた乱馬達は、今度はシャンプーの「魔法の地図」を使って、すんなりと森の入り口まで 戻っていったのだった。





「あんたー!」
「ジェニファー!」
・・・そして、しばらくのち。
ようやく森の入り口へ戻る事が出来た大五郎は、首を長くしてやはり入り口で夫の帰りを待っていた新妻:ジェニファ ー(国際結婚)と感動の再会を果たす事が出来た。
「他の旅人達も、無事に救出できたかねー、はー、よかったよー」
大五郎の後ろを歩くようにしていた、供に森の中で迷っていた旅人達も、嬉々としながらそれぞれの家へと帰っていっ た。
「よかったよなあ」
「そうね」
「ったく、世話の焼ける」
「宝捜しも、命懸けね」
乱馬達は、そんな面々の様子をしばらくぼんやりと見ていたが、
「さ、俺の命の恩人さん達に、おもてなしをしなければいけねーな。あんた達、俺の家に来てくれ」
やがて、愛妻・ジェニファーとの熱い抱擁が済んだ大五郎に誘われ、 ひとまず、大五郎の家へと向かう事となった。
「いやあ、あんた達が源に頼まれて俺を捜しに来てくれたなんて夢にも思わなかったから・・・・襲い掛かっちまってご めんな」
・・・とりあえず、大五郎の家の居間に通され、木のテーブル越しに向かい合って座る乱馬達は、
大五郎と、そして、「このうっかりさん」「しょうがねえべ?」「もう、そこがあんたの可愛い所でもあるよなあ」と、人 目もはばからずイチャイチャべたべたする愛妻・ジェニファーの話を聞きながらお茶を飲んでいた。
「・・・恥かしくないのか」
「さすがは新婚さんね」
その二人を眺めながら、若干頭を抑えている良牙・シャンプーと、
「そうか、新婚さんはああやって人目をはばからず・・・」
と、訳の分からない事をいいながら、何故かちらちらとあかねの方を見ている乱馬。
・・・そんな三人をとりあえずおいておいて、
「あの源さんのバッチにあんなに効力があるとは思いませんでしたが。でも、ご無事で何よりです」
皆を代表して、あかねが大五郎にそう答えた。
「それにしても、あの迷いの森のあの洞窟・・・地図にも乗ってないし、普段は草木に隠れているような場所だし。あそこにたどり着く事が出来るなんて、あんた達は本当に運がある。常人とは思えないような運の持ち主だな」
「迷いの森には迷子で抵抗、というところでしょうか」
「?」
「いえ、こっちの話」
あかねは、チラッと良牙のほうを見てコホン、と咳払いをした。
そして、
「ほら、乱馬。大事な事、聞かないといけないんじゃない?」
いまだなにやらぶつぶつと呟いている乱馬の胴をひじでつついた。
「え?あ、そうか、例えば二人が結婚に踏み切ったきっかけとか・・・」
いきなりあかねに話し掛けられた乱馬は、さらに訳の分からない事をぼやいたが、
「違うでしょっ。ほら、カードの事っ」
あかねにガン、と足を蹴られると、
「いてっ・・・あ、そうだ、そうだった!」
ようやくしゃっきりと頭の中を切り替えて、
「そうだ、大五郎さん。俺たち、森の中に隠されている宝箱の中に入ってる、カードを捜してたんです。 いくつか宝箱は見つけたけれど、そのカードは見つけることが出来なくて。森のどの辺に、そのカードの入った宝箱を隠したか・・・覚えてますか?」
と、大五郎に改まって質問した。
・・・ そう。
乱馬達は、大五郎を捜索するのと同時に、森の中に隠された宝箱のなかの宝を、手に入れることを許されていた。
しかし、薬草や武器・防具は手に入れても、森に入る前に源さんに聞いていたカードらしきものは見つけることが出来なかったのだ。
とりあえず、大五郎は捜索できたので、 こんどは本腰を入れて、そのカード入り宝箱を捜しに出る為の、そのヒントを大五郎に尋ねようとしているのだ。すると。


「カード?カードって、熊八っつあんの?」
「そうです」
「これの事か?」

・・・なんと、乱馬のその言葉を聞いた大五郎は、なんのことなくそう言って、軍手をしたごつい手を自分の懐に突っ込んだかと思うと、一枚のカードを無造作に取り出し、 木のテーブルの上に置いた。
「あー!」
思いがげない「探し物」の登場に、乱馬を始め、あかね、良牙、シャンプーは思わず大声をあげてしまう。


そう、それは、キラキラと光り輝く一枚のカード。
乱馬が持っている、大道芸人の描かれているカードとはまた違い、 一人のドレスを身に纏った女性と、 そして獰猛なライオンの描かれたカードだった。
獰猛なライオンを、凛とした女性が抑制しているそのカード、カードの上部には「]T」と数字が記されていた。
『STRANGE』
カードの下の部分にはそのように字も記されていた。


「それ!そのカード!」
乱馬が思わず興奮してそのカードを指差すと、
「これは、木こり組合の創設者でもある熊八っつあんが、モンスターと戦った時に勝利の証として貰ったカードだで」
「し、知ってるよっ」
「宝箱に入れて森に隠してたんだけど、迷ってる最中に俺がまた偶然見つけてな、お守り代わりに持ってたんだ」
大五郎はそう言って、「こうして助かったし、効力は充分だべ」と、豪快に笑って見せた。
「・・・」
乱馬が、そんな大五郎を見て思わずゴクリ、と喉を鳴らすと、
「ま、俺はこうしてジェニファーの元に戻る事も出来たし・・・それに、あんた達は俺達の命の恩人だし。そのカード、くれてやるわ」
そう言って、テーブルの上に置いたそのカードを、乱馬へと手渡した。
「いいのか?大五郎さん!」
「ああ、助けてくれた礼だ」
「サンキュー!大五郎さん」
乱馬はそのカードを遠慮なく受け取ると、大五郎と堅く握手を交わした。
「・・・さ、今夜はゆっくりうちに泊まっていけ!俺達の木こり特製料理と、うちのジェニファーの特技、サンバDEマンボ も見ていってくれ!」
「・・・え、遠慮します」
「遠慮するなって!ハハハハハハ・・・!」


・・・こうして、思いがけずにあっさりと、乱馬は二枚目のカード『STRANGE』−剛殺−を手に入れることが出来た。
そして、翌朝の出発に向けてとりあえずその日は、大五郎と源、そしてジェニファーの熱いもてなしを受けることになっ たのだった。



『STRANGE』−剛殺−は、二十二枚のカードの中で、印字されている通り十一番目のカード。
その名の通り、「力」や「強さ」を司るカードで、
エネルギーや行動力を誇示する事が出来る事を意味し、また、人間の精神的な強さや困難に立ち向かう姿などを表 している。
このカードを、乱馬の持つ「勇者の剣」のスロットに差し込むと、
剣を扱うもののある一定の時間だけ、剣を扱うものの「力」を増幅させる事が出来る。
さらに、カードを差している間は、「危機回避能力」や「直感」など、眠れる能力なども伸ばすことができるカードだ。
ただし。
カードをスロットに差し込むときに、カードの「上下」を間違えて差し込むと、剣を扱うものに全く「別」の力を引き起こさ せる事になることは、気をつけなくてはいけなかった。
パワーを増幅させるカードゆえに、スロットに差し込む方向を間違えれば、「パワーを失う」ことになりえるということで ある。
・・・そう。
実はコロンが剣を渡す時に、乱馬にこのことを詳しくは話さなかったのだが、
乱馬の集めるこの二十二枚のカードには、それぞれ「正位置」と「逆位置」があり、
それぞれに全く違う意味を持っているということ。
・・・そのことについては、また次の話で語られる事となる。

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