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救世主?

ディネバの街から、一行が目指す「魔力を無効化する森」までは通常ならば半日ほどでたどりつけるはずであった。
ところが、忌まわしきラヴィの力がこんな世界の北の方まで及んでいるというのが悲しいが、
魔物が増えたということもあり、「魔力を無効化する森」までの最短ルートは閉鎖され、比較的安全なルートが旅人には与えられていた。
そのルートを通ると、目的地までは三日はかかるらしい。
「三日!?三日なんてかかるのかよ、冗談じゃねえ!」
森まで三日、ということはその先にある癒しの里まではそれ以上かかるということだ。
すぐそこに目的地があるって言うのに・・・と、ディネバの街を出がけに街の警備兵からその事実を知らされた乱馬は、早速ぼやいていた。
彼にしてみれば、目の前に餌があるというのにお預けされている犬のような状況なのだろう。
「しょうがねーだろ、道が閉鎖されてるんだから」
「俺達は魔物にやられちまうような普通の旅人じゃねえじゃねーか!」
「魔物は平気かもしれないけど、足場とかが悪かったらどうすんだよ。二次災害のほうが怖いだろーが」
「う・・・」
「三日我慢すれば目的地に着くんだ、我慢しろこのバカ王子」
「バカって言うな!」
しかし、駄々をこねようがぼやこうが、通ることが出来ないものは出来ないのだ。
今ではすっかり世話係・・・の割には暴言を吐くが・・・の良牙にたしなめられた乱馬は、がっくりと肩を落としていた。
「乱ちゃん、元気だしい」
そんな乱馬にすかさず右京が近寄り、優しく声をかける。そしてそんな乱馬の腕を取って再び別の言葉をかけようとしたのだが、
「三日・・・あかねが近くに居るかもしれないのに、三日も待つのか・・・」
腕を取ろうとした直前、乱馬がボソリとそう呟いたのを、右京は聞き逃さなかった。
聞きたくない言葉というのは、何故にこうも、無遠慮に耳に届いてしまうのか・・・右京は、ビクンと一瞬身を竦める。
その隙に乱馬は、
「じゃあ、迂回ルートで出発するか。シャンプーとムース、道案内を頼む」
「了解ね!」
「任せておけ」
と、シャンプーやムースに声をかけてさっさと歩き始めた。右京は腕を取り損ねてしまった。
「・・・」
・・・乱馬があかねのことを好きなことなんて、ヒルダの街に居た時にはもう気付いていたことだった。
それでも彼が好きで、そして彼だけでなくあかねのことも仲間と思って、旅に同行しているというのに。
何故、あんな言葉を聞いただけでこのような気持ちになるのか・・・
「・・・」
先ほど食堂で、妙な男に出会ったからであろうか?
「お、どうした右京。しけたツラが更にしけてんぞ」
「なっ・・・余計なお世話や!」
・・・いずれにしても、あんな男の言うことなどに耳を貸す必要もないし、自分はとにかく今、皆と一緒に旅を続ける。そして消えたあかねと再会する。それだけを考えるようにしよう。
勿論乱馬の力になれることはなって、そして少しづつでも・・・もっと自分の存在を知ってもらうようにしよう。
良牙に憎まれ口を叩きながらも、右京は心の中でそっとそう誓った。
無論、こんな事口に出すことは決して、出来ないのだが。


海岸線から離れどんどんと道なりに進んでいくと、一層周囲の木が生い茂り日を翳らせる地域へと入ってきた。
北に位置するウィスタリア大陸は、日中でも長い時間日が照っているわけでも明るいわけでもない。
それを更に感じさせるような地域に突入し、尚且つ民家や人通りもない事を踏まえ、
「なあ・・・本当にこっちの方角であっているのか?」
「道なりに来ているんだから、あっているに決まっているだろう」
「いや、そうなんだけどさー・・・」
・・・調べたとおりの迂回路を歩いているとは思えども、流石の乱馬達も心配になってきていた。
唯一、コウイウコトに関してはあっけらかんとしているのが良牙なのだが、
いかんせん彼は地図があろうが無かろうが極度の方向音痴なので、このようなナビゲーションの悩みに関してはまるであてにならない。
「魔法の地図と魔法のコンパス、ここでは効かないある・・・」
「へ?何でだよ」
「分からないあるが・・・これでは、道が本当にあっているかどうかも確かめる手段がないあるな・・・」
「じゃが・・・確実に目的地には近づいているとは思うぞ。魔力を無効化する森が、癒しの里に何か関係があるはずじゃからな・・・」
シャンプーとムースが、お互いが持ち歩いている魔道具をチェックしながらそんな事をぼやいている。
「しょうがねえな・・・じゃあちょっとここで休憩してから、辺りを散策してみるか」
迷ってしまった時には、不用意に動かない事が一番だ。
無駄に体力を消耗するのも良くない・・・と、乱馬は皆にそう提案をしてその場に座り込んだ。
と、
「あ、人や!」
そんな乱馬の隣へと腰を下ろそうとしていた右京が、ふいにそんな事を叫んだ。
どうやら彼女の目に、道を歩いてくる人影のようなものが映ったらしい。
「ラッキー!道、ちょっと聞いてみようぜ!」
「あ、うちも行く!」
コレを逃すすべはない、と、乱馬と右京がさっそくその人影に向かって駆け寄ると、
「・・・何か用か」
乱馬達がその人物に話しかける前に、その人物が乱馬達にそう問いかけた。
よく見るとそれは、若い男・・・というか青年であった。
背はすらりと高く、髪は漆黒で短い。
割と整った顔立ちであり、瞳の色はグレーだ。
目つきが鋭いのが難点だが、中々の男前である。
ただ、一般の旅人のようではなく、
その出で立ちは、城、もしくは大きな屋敷によくいる騎士のような格好をしている。
腰には、シルバーの柄が印象的な剣が指してある。
そして首には防寒用なのか、マフラーかショールのようなものがしっかりと巻きつけられていた。
「あ・・・俺達、魔力が使えない森に行きたいんだけど、道に迷ってしまって・・・」
「・・・」
「地図は見て歩いているつもりなんだけど、不安になっちまって・・・道、こっちであっているかどうか教えてもらいたいんだ」
その青年の姿を観察しながら、乱馬はその青年に尋ねた。
するとその青年、乱馬のその質問には直接答えないが、代わりに妙な質問をしてきた。
「・・・何故お前達は、その場所に行く?」
「へ?」
「何故お前達はその森に行こうとしているのか、と聞いているのだ」
「え、だからそれは・・・その、興味があって・・・」
・・・本当は、消えたあかねが居るかもしれないので僅かな希望を胸にそこへと向かうということを話したいのだが、初対面の素性も知れない人間にソコまで話すのは妙な話だ。
乱馬は当たり障りのない理由をその青年に述べた。
すると、
「・・・その森は、貴様らのような一介の旅人が遊び半分で訪れるような場所ではない。日が暮れる前にさっさと引き返せ」
青年は乱馬のその答えが気に入らなかったのか、答えた乱馬にバッサリとそういい捨てた。
「お、俺達は別に遊び半分じゃ・・・!」
本当の理由は事情があるのでいえないが、でも遊び半分でない事だけは伝えたい。
乱馬が必死でそう叫ぶと、青年はその言葉を遮るようにして、
「その場所は聖なる場所・・・貴様らのようなものが気軽に立ち寄ってよい場所ではない」
「聖なる・・・場所?」
「所詮、立ち寄ろうとした所で、足さえも踏み入れることが出来ないだろうが。来るだけ無駄だといっているのだ。さっさと引き返せ」
感情のない冷たい口調でそう言い放つと、乱馬たちを一瞥した後、立ち去ってしまった。
「なっ・・・なんやの!?あいつ!」
当然のごとく、そんな青年の態度に右京は腹を立てて青年の後ろ姿に向かって悪態をつく。
が、乱馬は何故か彼の後ろ姿をじっと見つめると、
「・・・皆、出発するぞ」
「え?」
「今の・・・あの男の後を追うんだ。あいつ多分、癒しの里の人間だ」
「!」
「行くぞ」
皆の返事を待たずに、乱馬は歩き始めてしまった。
『聖なる場所』・・・乱馬にはその青年の言葉に何かを感じるものがあったのだ。
青年がはっきりと「癒しの里」と言わなかったのは、乱馬達に余計なことを知られたくないと思うゆえだったのではないか。
実際は乱馬達は、森ではなくその先の癒しの里を目指す為に旅をしていたので里の存在は知っていたのだが、
青年はそれを知らないのでそのような言い方をしたのだろう。乱馬はそう思ったのだ。
・・・
「何だアイツ・・・急に」
「どうしたあるか」
「何じゃ、もう休憩は終わりか」
無論、そんな乱馬の考えを知らない良牙達は、荷物を持って乱馬のあとを追うも状況が理解できずに居た。
とりあえず、先ほど青年と乱馬のやりとりをみていた右京が分かる範囲で事情を説明するも、
「・・・だからって、何でソイツが癒しの里の人間だって分るんだよ」
「さあ・・・乱ちゃんには何か感じるものがあったんやないの?」
「何かって何だよ」
「それが分ったら、こんな風に悩まへん」
それを聞いても納得できない良牙と、
説明しておきながら自分も理解できない右京は首を傾げてしまう。
「・・・ムース、お前はさっきの男に何か感じるあるか?」
「特には・・・魔力を持っているわけでもなさそうじゃし、特別な何かを感じることはない。しいて言えば、対して寒くもないのに首にあれだけ布を巻いて暑くないのか、ということじゃろうか」
「それはファッションセンスの問題あるな」
シャンプーとムースも、乱馬よりも前に歩いて行く男の背中に手を翳したり目を凝らしたりしながらそんな事を話している。
一体どうして乱馬がそう感じたのかは一行には理解できないが、しかし乱馬がそう思いそしてそう決めた以上はしかたがない。
とりあえず、青年についていくしかない。
一行は地図には頼らずに黙々と、ただ道を歩き続けた。


それから、一時間くらい歩いただろうか。
どう考えても歩いていく予定だった迂回路からは大分外れたようで、
生い茂る木々の間を抜け、一行は更に深い森へと入っていった。
ひんやりとする風を頬に受けながら、深い森をどんどんと進んでいく。
不思議とこの森には、通常の森を進む時のように、魔物が出てくる事はない。
もしかしたら、さっきシャンプーが言っていたように、特別な力の宿った「木」が結界を張り、この森を聖域のようにしているのだろうか・・・。
心なしか通常の森よりも澄んだ空気が、身体にまとわり付いていた。
森を更に進むと、突如、ぽっかりと大きな口をあけた洞窟が現れた。
青年はその洞窟の中へ躊躇せずに入っていく。
乱馬達は、少しだけ間を取り、あくまでも青年に気づかれないように後をついて行く。
暗くてひんやりとしたその洞窟へ入りしばらく歩き続けると、ふいに、視界があけた。
遮るものが何もない、明るい空間。澄んだ空と空気が、まばゆいまでにそこにはあった。
それまでうっそうと茂った木や、薄暗い洞窟で明るさを遮られていたので、視界が開けた今は何となく目がしょぼしょぼとしてしまった。
一行は、目をしょぼしょぼとさせながら目を凝らして辺りを見回した。
・・・洞窟を抜けたそこは、良くみると高いガケの先端部であった。
ガケの下には広大な森、泉、そして大きな教会を取り囲むようにいくつもの家々がある。
ちなみにガケ先端部からは、特に下へ降りる道はない。
つまり・・・ここから先に進むには、何らかの手段が必要になると思われる。
外部からの来訪者を減らす目的で、このような特殊な地形で街を作ったのだろうか・・・海からは大分離れたので流氷が流れ着くような街ではないのだが、山を昇り、森を抜け、そして洞窟を抜けた高いがけの下に集落を造っているところを見ると、何らかの目的があってこうしたと思わざるを得ない。
「あ、あの男!何でもうあんな所にいるん!?」
と。
がけの下を覗いていた右京が、不意にそんな声を上げた。
乱馬達が右京の見ていた方向を見ると、なんと少しだけ先を歩いていたあの青年が、すでにがけの下の集落の道を歩いていく姿が見えた。
乱馬たちとの距離は、さほど離れていないはずだった。
だとすると・・・
「恐らく、何らかの方法でここから下へと降りたあるな」
「しかし、どうやって降りただか・・・?」
どうやら例の青年、乱馬達が目を慣らしている内に何らかの方法で下へと降りていったらしい。
勿論、道などない。
ガケからロープなどが出ているわけでもなく、勿論ガケにへばりついて下へと降りているわけでもなかった。
ジャンプで降りることの出来る距離でもない。
「一体どうやって降りたあるか?あの男、魔道士というわけでもなさそうなのに・・・」
流石のシャンプーも、首をかしげている。
「なあ、魔法で下まで降りることってできねえのか?」
ガケから下を見ながら、良牙がそんな事を尋ねるが、
「そんなに都合の良い魔法など、簡単にあるわけなかろう」
それに対してムースが、呆れた表情をしながら答えた。
「ふーん、やっぱそんなもんかね」
「攻撃・防御系の魔法と違って、浮遊魔法は特殊な修行が必要なんじゃ。浮遊魔法を使えるものは、そのかわり他の魔法は使えないがな」
「へー・・・」
「それよりも、このがけから降りて下の集落に行く為にはどうすれば良いか考えねば。あの男がどうやって魔法も使わずに下へと降りたのか・・・」
だが、どのようにこの先へと降りたのかが全く見当が付かない。
あの青年が言っていたように、「単なる興味本位」でこの先に進もうとしていたならばここで諦めて道を引き返せばよいのだが、
乱馬にはこの先に進まなくてはいけない理由がどうしてもあった。
「うー、考えててもラチがあかねえ。こうなったらもう、ガケを降りるしか・・・」
一応は皆で考えてみるものの、中々打開策が見つからない。
中でも考えるよりも身体が先に動いてしまうタイプの乱馬と良牙は、おそるおそるガケから下へと降りるべく足を下に伸ばしてみるも、
パラパラパラ・・・
足を伸ばしたはいいが、その足を置く足場がない。
結局は足を元の位置へと戻し、再び別の方法を考えざる得なかった。



と、その時だった。



「こんなところで何をしておるのじゃ?」
「え?」
「この先は、癒しの里・・・傷ついた者達を癒すための土地。見たところ、おぬしら元気そうじゃが・・・」
がけの上で立ち往生していた乱馬達に、声をかけてくるものがいた。
どうやら、乱馬達と同じルートでこのガケまでたどり着いたらしい。
乱馬達が振り返ると、そこには一人の老人が立っていた。
「・・・」
一体、いつの間に後ろを歩いていた?
・・・老人が後ろを歩いていた事に気が付かなかったことにも驚いたのだが、
今この老人が「この先は癒しの里」と発言した事の方に、乱馬は意識を集中させていた。
やっぱり、そうか・・・その事は乱馬にとってとても励みになるのだが、
「じいさん、俺達癒しの里にどうしても行きたいんだ」
「ほう。それは何故」
「今は理由を話せないけど・・・中途半端な気持ちじゃねえんだ。どうしても、確かめたい事があるんだ」
先ほどの青年には、妙に気を使って話したがために誤解されてしまった。
ならば今度は少しだけこちらの手の内を見せるしかないのか。
乱馬は老人に向かって必死にそう訴えた。
「・・・」
老人は、そんな乱馬の顔をじっと見つめ、その後後ろに居た他のパーティメンバーも見渡す。
そして、
「・・・なにやら事情がありそうじゃな。それに・・・お主が腰に差しているその剣、それは・・・古の勇者が使った剣であろう?」
老人は一言そう言って、乱馬が腰に差していた勇者の剣を指差した。
「!なっ・・・」
・・・今まで出会った人々の中で、乱馬が腰に差している剣が勇者の剣だと見抜いたものは、面識が無いものではいなかった。居たとすればラビイやミコトであるが、彼らはまた特別な事情で剣の事を知っていたので例外だ。
「・・・」
老人の一言で、他のメンバーも表情を強張らせる。
ムースと良牙にいたっては、それぞれの武器や暗器へとそろそろと手を伸ばす素振りをする。
「・・・あんた・・・何者なんだ?」
癒しの里の人間、ということは間違いなさそうだが、
かといってクセが無いわけではなさそうだ。
とはいえ、今の段階ではこの老人が敵か味方かも分からないので、乱馬は思わず勇者の剣の柄をぎゅっと握り締めながら老人に尋ねた。
すると、
「まあ、そう焦るでない。それにワシを今ここで斬った所で、おぬしらが先に進めるとは限らぬ・・・色々な意味でな」
老人は、そんな乱馬達の様子を見て笑いながらそんな事を呟いた。
「それはどういう意味だ?」
老人の笑顔はとても柔らかい。だが・・・
・・・
そうはいってもまだ警戒はしながら乱馬が老人にそう尋ねると、
「とにかく、里へと降りたいのじゃろ?ならば連れて行ってやろう」
「え?」
「もしかしたら、おぬしらが、ワシが待っていた客人かも知れぬ」
「待っていた・・・?じいさん、それってどういう・・・」
「さあ、どういうことじゃろうか」
老人が呟いた瞬間、
「うわ!」
「なっ・・・」
「何事あるか!?」
「これは・・・っ」
・・・それまで風も何も吹いていなかったその場所に、突如強い「風」が巻き起こった。
しかもその風、非常に重い「気」を含んでいる。
「な、何やのこれ!?」
一行の中では格闘技の専門経験のない右京は、その軽い女性的な身体を吹き飛ばされそうになっている。
慌てて、乱馬の腕にしがみつきながら体が持っていかれるのを防いでいるが、
格闘技に精通している乱馬達であっても、その突如現われた「気」に身体をどうにかされそうになっていた。
「りゅ・・・流水壁!」
「くっ・・・ルナティクス、ルグナス!(出よ、光の壁)」
シャンプーとムースも咄嗟に防御魔法を繰り出そうとするが、この先が本当に「癒しの里」だというのなら、この辺りの木々は魔力を無効化してしまう作用があるはずだ。
案の定、普段は皆を守ってくれる防御魔法が全く発動しない。
そんな一行とは正反対に、その風と「気」の中心に居る老人は微動だにせず笑顔のままで一行を見ている。
「あんた・・・あんた何者だ!」
傍にいて普通に話していたにも拘らず、老人がこのような風を巻き起こす力を秘めているとは全く気が付かなかった。
もしかしたらこの重い気は、老人の「気配」・・・魔力か何かなのか?無効化してしまう森よりも強い、魔力・・・?
だとしたら、非常に危険だ。乱馬は悟った。
土地勘もない、そして得体の知れない相手を前にパーティが直面している。
頼みの綱の魔導士二人も、その魔法を封じられてしまっているかのようだ。
それにも拘らず、乱馬たちを圧倒する「気」を放つこの老人・・・。
もしも老人に悪意があるならば、最悪乱馬達はここで全滅させられる危険もある。
「くっ・・・俺は・・・俺はこんな所で負けない!俺は、先に進まなくちゃいけねーんだ!」
だが、ここで絶対に負けるわけには行かなかった。
負けたら、共に旅をしている皆を守ることが出来ない。
それに・・・何よりあかねに。あかねに再び会い、気持ちを伝えることが出来ない。彼女を再び自分の下へと取り戻すことが出来なくなってしまう。
「うおおおお!」
乱馬は必死に腰に差していた剣を抜き取り、皆をかばうようにして一歩前に出る。
すると老人はそんな乱馬に対し、
「案ぜよ。何もとって食おうとしているわけではないわ」
「!?」
「言ったじゃろう・・・おぬしらが、わしの待っていた客人なのかと」
「ど・・・どういう・・・ことだ」
「わしが、おぬしらを癒しの里まで連れて行ってやろうと、言っておるのじゃよ」
「!」
「里に行くには、通常の魔力では突破できぬフィルターが掛かっておるんじゃよ・・・ここから先に進む為には、特別なものだけが備えている、鍵が必要になるんじゃ」
「カギ・・・?」
「目には見えない、特殊な魔力の鍵。森の木々にも無効化されない、魔力の鍵がな・・・」
最後に一言そういうと、乱馬達に向かって徐に左手を翳した。
その途端、カッ・・・と白い閃光が辺りを包む。
「うわああ!」
その光をよける暇も無く、乱馬達は光へと包まれた。一瞬、その光の中に鍵の形をした黄金色の何かが、見えた。
それが、老人の言った「魔力のカギ」なのだろうか?
・・・足を包む不思議な感覚、そして浮遊感・・・薄れ行く意識。
皆の気配が、フッ・・・と消えていく。
それゆえに、自分の後ろにいた皆が一体どうなってしまったのか、乱馬にも分からなかった。
ただ一つ・・・乱馬が光に包まれる前まで手に握っていた剣が、まるで何かに導かれるように、
浮遊している乱馬の身体をどこかへと導いている事。
時に、意思を持って動く剣。
ラビィと対峙した時は、その力に反応しカタカタと震えていた気がする。
今回も、また何らかの意思を持って乱馬を誘っているとでも言うのか・・・
「・・・」
どうにもする事ができないまま、乱馬は光と剣に導かれながら目を閉じた。


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