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嫉妬

「え?癒しの里・・・?」
「そうじゃ。確かウィスタリア大陸には、そういう町があるのじゃ。そこにこれから行ってみてはどうじゃろうか?」

特に進展もなく迎えた、翌日の朝。
朝食を宿で取っている最中、ムースが皆にそう話を切り出した。
ムースは昨日、この街についてから調べものをするために出かけていたのだが、
「ウィスタリア大陸の海岸を一つ一つしらみ潰ししていたのでは、確かに方法は確実かも知れぬが時間がかかりすぎる。だからある程度、探す場所も辺りをつけねばなるまい?」
「そりゃ・・・」
「おらは昔、聞いたことがあるんじゃ。この世界には、癒しの里があるということを。その場所がうろ覚えだったのもあって調べにいったのじゃが、調べたらウィスタリアに存在するのが分った」
「それとあかねと、何の関係が・・・」
「お主、忘れたのか?光属性の魔法が、究極の治癒魔法だということを。蘇生魔法の最高レベルだということを」
「!」
「確かに、あかねがそこにいるかどうかは、確信がない。じゃが・・・本当にあかねと、おぬしに縁があるならば、おらたちが持っている切り札に必ず突破口はある。そしておぬしが進む道が、必ずあかねの何かと交わるはずなんじゃ」
「・・・」
「残念ながら今のおら達には、決定的な有力情報はないだ。でも、ミコトも言ったのじゃろう?光を手に入れるためには信じることが必要じゃと。癒しの力は光の力でもあるし、もしも本当に縁とか、運命を信じるならば・・・行ってみて損はないと思うがの」
ムースはそう言って、乱馬を見た。そんなムースに対し、
「癒しの里・・・」
何故か乱馬・・・ではなく、シャンプーがボソリと呟く。しかも、何かを考え込む素振りをしている。
「なんや、どうしたん?」
そんなシャンプーの様子が気になり、右京が珍しく穏やかにシャンプーの顔を覗き込むと、
「癒しの里自体は良く知らないあるが、ひいばあちゃんのいつも使っている水晶玉・・・今は私が持ち歩いている水晶玉、世界に二つしかない、結晶度の高いもの。
  もう一つが、確か癒しの里にあると言われているある」
「あっ・・・!そういえば・・・」
「ひいばあちゃんとの通信用にと持ち歩いていた水晶玉、旅でバタバタしている時は頭の片隅にしかないある。それなのに・・・」
旅の最終目的地が、もしかしたら癒しの里になるかもしれない、という不思議な縁。
もしや、旅立つ前からこうなる運命は決まっていたとでも言うのか・・・。
シャンプーがぼそりと、そう呟く。

・・そう。
『この水晶は、純度の高い石だけを集めて作られた特別なもの。世界に二つしかないね』
『二つ?』
『一つは、これ。ひいばあちゃんが持っていたもの。もう一つは・・・世界のどこかにある、『癒しの里』という場所に祭られているといわれているね。純度の高い水晶、魔術の他に治癒能力にも役立てる』
移動した街でコロンと通信をする際に使用する水晶玉。世界で二つしかない水晶の、もう一つが「癒しの里」にある。
そういえば前にそんな話をした事があったというのに、その時は聞き流していたのだ。
いや、聞いた乱馬たちも話したシャンプーも、まさかこんな所でそれが関係してくるとは、夢にも思わなかった。
・・・

「・・・俺は、運命とかそういうの良く分からないけど。でも、あかねさんがそこにいる可能性が本当にあるというなら、迷う必要はねーんじゃねえか?」
その横で、それまで黙って話を聞いていた良牙が、ボソリとそう呟いた。
「・・・」
乱馬はそんな良牙の声に、小さく一度、頷いた。
・・・手がかりがない以上、今はどんなことにでもすがるしかない。
運命論なんて不確実なものだし、
それにムースも最初言っていたように、そこに本当にあかねがいるという確信もない。
しかし、何もせずにただ闇雲に遠回りをしているのは嫌だった。
そこを訪れてもいないかもしれない。
でもそれはそこに行って確かめてみないと分からない。
・・・
「・・・俺達の目指す先は、癒しの里。そう決めるぞ。ムース、場所は見当がついているんだろうな」
乱馬はムースに向かってハッキリとした口調でそう尋ねた。
「だいたいじゃがな。この大陸の中に、魔力を無効化する森というのがあるらしい・・・これは色々な書物にも書かれているし、おらも実際に聞いたことがある。おそらく、その先にあるのではないかとおらは思っておる」

そんなムースの回答に対し、

「私も・・・それは聞いたことがあるね。ウィスタリア大陸、不思議な森や恐ろしい穴、存在する大陸。森の奥にそのような場所があっても、不思議ではないね」

シャンプーも珍しく同意した。パーティのブレーン二人がそういうからには、やはり何か感じるものがあるのかもしれない。乱馬が決断にいたるまで、時間はかからなかった。
「・・・分かった。じゃあ出発は、今から一時間後。皆それまでに、準備を頼む」
「ああ」
「いーか、遅れるなよ。遅れたら遅れた分数だけ飯の品数減らしてくからなっ」
乱馬は皆にそういい捨てると、朝食の食堂から出て行った。
「おーおー、偉そうに。進路が決まった途端に元気になりやがって」
そんな乱馬の後ろ姿を見つめながら、良牙がそんなことをぼやいた。
勿論、口では否定的なことを言っていても、明らかに元気が無かった乱馬が減らず口を叩けるようになったことは、良牙にとっては嬉しいこと。
「・・・早くあかねを連れ戻してもらわないと、私達の旅の目的、達成できなさそうね」
「あの王子は、それが原動力じゃからのう」
「俺も、あのバカ王子と同じぐらいあかねさんには会いたいしな・・・しょうがねえから支度をするか」
良牙をはじめ、ムースもシャンプーも、乱馬の気持ちをきちんと理解しているので、
それぞれが乱馬の少しでも元気になった姿に安心しつつ、言われたとおりに支度をするためにそれぞれの部屋に戻ったが、

「・・・」

そんな皆とは対照的に、一人食堂に残って席に留まっている人物がいた。
右京であった。
右京は一人席に留まったまま、席からすぐ傍にある窓のほうへと目をやる。そして、窓の外で移ろいで行く街の人々や様子を見つめながら小さなため息をついていた。
・・・乱馬があかねのことを好きだということは、よく分っているつもりだった。
出会った当初は、ただ自分好みの青年に惹かれてとにかく一緒に居たいと思った。だから、旅にも強引についてきた。
旅を続ける内に、自然と旅のパーティの人間関係が見えてきた。
ムースはシャンプーが好きで、シャンプーは自分と同じように乱馬に憧れて。良牙はあかねのことが好きで、そして乱馬は・・・
多分、というか絶対にあかねのことが好きなんだ。そう分かった。
聞くところによれば、王子である乱馬とあかねの親同士が旧友で、それで子供同士を強引に婚約者にしてしまったらしい。でも、婚約者にする前に出会った城のダンスパーティで、どうやら乱馬の方があかねに惚れてしまったような、そんな印象を受けた。
乱馬は、色眼鏡を抜かしても客観的にいい男だと思う。
しかも王子であり、剣術や格闘術も身につけている。若干知識に乏しいところがたまに傷だが、問題になるほどでもないウィークポイントだ。
自分をはじめシャンプーだって、一緒に居れば居るほど彼のことが好きになっていったはずだ。
だから、婚約者、ということであれば相手のあかねとて・・・と右京ははじめ考えていた。が、あかねは何故か、乱馬のことを好きだとは明言をしない。
好きというわけではなく、明らかに体力も無く戦闘能力も無く無力なあかねが一緒に自分達と旅をする意味が理解できない。
好きな人の足を引っ張るくらいなら・・・と考えるのが普通なのではないだろうか。そう考えた右京は、あかねとぶつかったこともあった。
でも、どうしてあかねがこの旅に参加をするのか・・・色々考えて、戦闘能力や体力の問題ではなく、彼女自身の存在が乱馬には必要で、それを彼女自身も感じているから一緒にいるのか。いわゆる、パーティの清涼剤みたいな感じなのか。そういう結論にたどり着いた。
だがその数日後、あかねは国へ帰る決断をし、最後の別れもままならないまま、皆から離れた。そして・・・
・・・
「・・・」
・・・あかねが行方不明になった時の、乱馬の取り乱しよう。誰がどう見ても尋常ではなかった。
セルラ特有の「呪い」により、精神力を使い果たした乱馬が女性の姿になってまでも、暗い海を漂い彼女を探そうとしていた。このままでは彼自身が死んでしまうと皆が止めても、止めた手を振り払って毎日毎日、海へと出て行った。
・・・
きっと、乱馬だけ港にあかねを見送りに行った時、二人の間に何かがあったのかもしれない。
それについて、良牙に探りを入れてみたが、良牙は何も話してはくれなかった。
進路が決まるまで、何となく様子のおかしい乱馬を、どうすることも出来なくてただ、見守るだけだった右京。
そんな乱馬が、もしかしたら行方不明になったあかねと繋がることができる道を得て喜んでいるのならば、
本来なら自分の好きな相手にとって喜ばしいことがあるというのなら一緒に喜ぶのがいいのかもしれない。
だが、今の右京の胸の中には、何か黒いモヤが少しづつ、広がりつつあるような気がしていた。
だからこそ、皆のようにすぐ、席を立てなかったのだ。
「・・・」
・・・もしもこのまま、あかねに会うことが出来なかったら?
ミコトは、あかねがどこかの海辺で誰かに抱き上げられて連れて行かれたと予言したけれど、もしもその直後、あかねが命を落としていたら?
それに、
あかねに心境の変化があって、例えば再び出会った時には誰か別の男と結ばれていたら?
・・・
ここから先の部分は、誰も見ることも出来ないのだ。
そういう可能性があったっておかしくはない。
だったら・・・先が見えない相手の事を思い続けて苦しむよりも、今傍にいる人物ときちんと向き合ってはくれないのだろうか・・・。
「・・・」
決して、あかねのことが嫌いだったり憎かったりするわけではない。
でも・・・
・・・
右京の心の中には、自分の言葉では上手く説明できないような複雑な感情が生まれていた。
彼女はまだ、知らないのだ。
愛する相手を思うがゆえに生まれた嫉妬というものが、育てば育つほど恐ろしいものになるということを。
そして、今自分の胸を満たし始めているものが、そう変化しつつあるということを。
「・・・」
乱馬達と一緒に旅は続けたいし一緒にいたい。
でも、先に進むことであかねと再会し、そして乱馬とあかねがそのまま幸せになっていくのをただ見ているだけでしかないというのなら・・・
「・・・それは、どうにかして避けねばなりませんな」
「!?」
・・・右京がそんな事を思っていたちょうどその時。
彼女の心の声を急に代弁するかのような第三者の声が聞こえてきた。
「なっ・・・」
まさか、声が出ていたのだろうか?
自分が思っていることなど、決して誰にも知られてはいけないことなのに・・・右京は慌てて口を押さえ、声のした方を見た。
すると右京のすぐ傍には、すらりとした体系の、若い男が立っていた。
細い目がきゅっと釣りあがり、髪の毛はない・・・つまり坊主頭だ。
白いローブを身に纏い、ジャラジャラとカラフルなアクセサリーをつけている。
頬や腕には奇妙なペイントがされている所を見ると、魔導士なのだろうか?
特に、首筋に浮かび上がる不気味な花の形をしたペイントが印象的だ。
「・・・」
右京がじっと、そんな男の姿を見つめていると、
「・・・欲しいものを手に入れるのに力が足りない場合は、借りればよいのですよ」
男はそんな右京に対し、静かな口調でそう呟いた。
「借りる・・・?」
「欲望の赴くままに生きるのが一番です・・・人なんていつ死んでしまうか分からないのだから。邪魔なものは排除すればよい」
「!あんた一体・・・」
その言葉の内容に右京がびくりと身を竦めると、
「・・・もしも貴方がこの先、どうしても手に入れたいものがあると思った瞬間があったならば、心の中で強く私の名を呼びなさい。そうすれば私は、きっと貴方に最高の力を貸して差し上げる事ができるでしょう」
男はそういって、自分をじっと見つめている右京の頬へと手を伸ばした。
「!」
ゾクリ、とする冷たい手。
「力を貸してやる」と友好的なことを言われているにもかかわらず、そして頬に触れられているというのに「人」としての温かさを全く感じることが出来ない。
「う、うちはあんたの力なんて必要ない!変な事言わんといて!」
バシッ
右京は男の手を慌てて振り払うと、
「う、うち急いでいるから・・・!」
男の声を、そして男の名前などこれ以上聞かないように、と耳に両手を当てるようにしながら、食堂を出て行った。
「・・・」
男はそんな右京の後ろ姿を見つめながら、不敵な笑みを浮かべていた。
そしてその内、スッ・・・と空気に紛れるかのようにその姿を消す。
「な、何なん!?あの男!いきなり現れたと思ったら、妙な事言って!」
で、でも結局男の名前を聞かなかったのだから、呼ぶこともないし・・・
「・・・」
一方、食堂から出た右京は、自分が今まで抱いていた思いや考えを慌てて打ち消すようにそんな事を叫んでいたが、どんなに叫んでもわめいても、先ほど男に食堂で触れられた頬を触れる手の冷たさが、忘れられなかった。

・・・この先、右京がこの男と再会するかしないかは、彼女が男の名前を呼ぶか呼ばないかにかかっているのだが、
告げられなかったのに、右京がこの男の名前を知ってしまう日がそう遠からず訪れてしまう事。
そして男の首筋にあった不気味な花のペイント・・・これが、実はラビィの関係者であることを物語っているという事を。
今は右京も、そして周りの皆も知る由もない。


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