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運命5

港に運ばれた怪我人を町の病院に分けて搬送し、命を落とした人々は合同で町の教会が葬儀を執り行った。
一時医療所と化していた乗船案内所も、今では再び本来の姿を取り戻していた。
事が起こったのは午前中であったが、怪我人の手当ても終わり案内所の人がすべてはけた頃にはもう、深夜となっていた。
深夜の乗船案内所では、東風・良牙・シャンプー・右京が物も言わず物品の後かたずけをしていた。
そんな彼らの傍、乗船案内所のソファの上には、一人の「女性」が横たわっていた。
憔悴しきって、目を閉じているが顔色も悪い。
ただ、横たわっているにも拘らず剣だけはぎゅっと・・・握り締めている。
少々ダブダブの衣服に、お下げ髪。見目は随分と麗しい「娘」である。
娘が握り締めている剣の鞘には、独特のスロットがついていた。
それに良く見るとその剣・・・「勇者の剣」である。
勇者の剣を持っている人物といえば、乱馬。
ではこの娘は、乱馬からこの剣を預かってでもいるのだろうか?
似たようなお下げ髪にし、乱馬の真似でもしているのか・・・そう思えなくもないが、実は答えはそんな単純なものではなかった。

この剣を握り締めてソファに横たわっている娘、実は乱馬であった。
・・・「乱馬」自体は、紛れもなく男性である。
ゆえに「王子」として育てられてきたわけであり、
男性としてあかねの事を愛する気持ちを持っているわけであるが、
そんな彼にも、ティルトン特有の「あること」が降りかかっていたのであった。
シャンプーが魔力を使い果たすとネコになり、ムースがアヒルになる。
ティルトンに住むものの中には、一部特異的な体質を持つものがいる事は以前にも説明をしたが、乱馬に関しては今までそのような変化をすることはなかった。
ゆえに彼の身体には、そのようなものとは無関係だと思われていた。
ところが・・・
彼は今日、あかねを探して昼からつい今さっきまで、冷たく広い海に潜り、彼女を捜し求めていたのである。
神経を研ぎ澄ませて彼女の姿だけを求め、休むまもなく海を漂う。
制止も聞かず自らの身の危険も顧みず、ただ海の中で彼女の姿を探す。
そんな乱馬が港に戻された時には、ほぼ気を失うも同然の状態であり、
案内所に運ばれて寝かされた時には、これこのようにしてその姿は、男性から女性へと変化をしてしまっていたのであった。
どうやら彼は、魔力ではなく精神力と体力を使い果たすと、シャンプー達のように「動物」ではなくて、「性別転換」してしまうタイプのようだ。
これは、ティルトンの特異体質を持つものの中でも随分と珍しい。
王族故なのだろうか・・・色々と考えられるが、その所以は今はさほど重要ではないので、皆触れなかった。
ほぼ気を失う同然で「女性」の姿で戻ってきた乱馬に対し、皆は何も言わずただ、それぞれすべき事を黙々と進めていた。
・・・乱馬の姿の方は、体力と精神力が元通りに戻れば戻るだろう。
だが、彼はきっとあかねが見つかるまでずっと、この海を漂うつもりでいる。
つまり、体力や精神力が戻ってもまた、今日と同じ事を繰り返すのではないかと、誰もが予想が出来た。
そして、となれば限界を何度も超えて身体を壊しかねないとも、簡単に想像ができる。
もちろん、周りにいるものは彼の命を削りかねないそんなことをずっと許しているわけではないし、出来ればやめさせたいのだが、
でも彼はあかねが生存しているかもしれないという可能性がある以上は、例え自分がどうなろうともそれを辞めるつもりもないだろうと・・・皆それも分かっているが故に、どうにもすることが出来なかった。
・・・
・・・と、ここで。
何故、彼はあかねを求めて海を漂っていたのか?
「あかねが生存しているかもしれないという可能性がある以上」とは、一体どういうことなのか。
あかねは魔物に襲われて絶命をしてしまったのではないのか?
乱馬の行動や、これらの疑問を説明する為には、まずここから数時間前の昼へと、一旦話を戻す必要がある。

一体、昼、港で何が起こったのか。

まずはそれから説明をしていかなければならない。
・・・

昼。
魔物に襲われた船から港の警備隊が乗客を救助し、戻ってきた。
港には全ての乗客が無事に戻ってきたわけではなく、運悪く命を落としたものいたわけであるが、
そんな中、
その命を落とした者の中に、あかねが身に着けていたのと同じブレスレットを嵌めている女性を見つけ、取り乱した乱馬であった。
・・・
「うわあああ!!!」
・・・担架から零れ落ちた、白い腕。見慣れたブレスレットにしがみつくように、見たこともないような状態で取り乱し叫ぶ乱馬。
良牙やシャンプー達は彼の近くまで走り寄るも、彼のそのあまりの取り乱しように、何と声をかけてよいか分からない。
右京に至っては、がたがたと震えながら涙をこぼしている。
そんな中、
「・・・兄ちゃん、気持ちは分かるがね、泣いてばかりでは彼女も浮かばれないよ」
顔を見てあげたらどうだい?
女性の腕に見えるブレスレットに触れ泣き叫ぶ乱馬に対し、周りにいた船員や警備隊員が声をかける。
が、乱馬にはその声に答える余裕もなければ、隊員が言うように顔を見るために女性の身体にかけられている布をめくる気力もない。
明らかに手はブルブルと震えていた。
「・・・」
良牙は、そんな乱馬に静かに近寄っていった。
もちろん彼もあかねに好意を持っていた。
だからどうしてもこの自分達に降りかかっている状況を理解することや受け止めることなど出来ない。
こうして乱馬に歩み寄る足も、身体も震えてしまうし、自分は男だし泣くものか、と思っても涙が出てしまう。
しかし、良牙は旅立つ前のあかねと約束したのだ。乱馬の事をよろしく、と。
だから、そんなあかねの為にも・・・その約束だけは命に代えてでも守りたい。
そう思うが故に、彼は乱馬の身体を支えながら立ち上がらせた。
そして、
「・・・会ってやれよ」
「・・・」
「好きなんだろ・・・だったら最後に会ってやれ!お前が会ってやらなくて誰が、あかねさんの最後を・・・」
「・・・」
震える声でそう呟く良牙と、何も答えることが出来ない乱馬と。
良牙は一度目を閉じ心の準備をしてからそっと・・・女性の身体にかけられていた布をめくったのだった。
ところが、
「!」
「なっ・・・」
・・・布をめくった後に現れた女性の遺体を目にした二人は、思わず叫び声を上げた。
そこに横たえられていたのは、髪の長い女性であった。
顔も、あかねとは似ても似つかない。年齢もこの女性の方が少し上のように思える。
そう、そこにいたのはあかねではなく、全くの別人だったのだ。
「こ、これ誰だ・・・?」
「何で・・・何でこの女があかねと同じブレスレットを・・・」
目にした、全く見知らぬ女性。
それなのに、何故この女性はあかねと同じ紅いブレスレットをしているのか。
「・・・」
それゆえにこの女性をあかねと間違えた乱馬であったが、冷静になりこの遺体があかねでないと分ってくると徐々にだが、思い出す事も生まれてくる。
「あ!」
「な、何だよ」
「このブレスレット・・・」
ブレスレットをじっと見つめていた乱馬は、ふと思い出したことがあった。
そう、それはこのブレスレットを山間の村の店で買ったときのこと。
『このブレスレットはね、お客さん。世界で二組しかないんだ。一つはヒルダの街で売れしてしまったから、あと残りは一つだよ』
・・・ブレスレットを見つけたとき、乱馬は店員にそう進められたから購入した。
乱馬は、あかねに渡す時もそう説明をした。
ということは、もしかしてこの女性は・・・乱馬が購入する前にこのヒルダでブレスレットを購入していた人物ということになるのか。
「・・・」
乱馬が涙で濡れた頬を袖で拭いながらそんな事を考えている内に、女性の遺体は警備隊によって運ばれていった。
どうやらその女性の遺体で全てのようで、救助に使った船は艇庫へと帰っていった。
「兄ちゃん、不謹慎かもしれないけれど良かったじゃないか」
周りにいた人々は、乱馬に対して気を使ってそう声をかける。
「あかね、違ったか・・・」
「良かった・・・あかねちゃんやなかったん」
事の成り行きを見守っていたシャンプーや右京、そして、
「あかねさんじゃなかったんだ・・・良かった」
乱馬を支えるようにしてその場にいた良牙も、亡くなった女性に心の中で手を合わせつつ、そう呟いた。
ところが、
「・・・良くねえよ」
「え?」
「じゃあ・・・あかねは?俺のあかねは!?救助された乗客の中にも居なくて、遺体の中にもない・・・じゃあどこに!?」
ガシッ!
遺体を運び終えた警備隊や、周りに居た漁師、そして船の船員に、乱馬は再びそう叫ぶ。
そう、船の乗客達は皆移動をし、生存者も絶命者も全て船から降りているのだ。
だが、その中にはあかねの姿はなかった。
船には確実に乗ったのだ。それなのに、何故港には戻ってこないのか・・・
「あいつ!あいつ泳げねえんだよ!船の中にまだ、いるかもしれないんだよ!」
乱馬は、すがる船員にそう叫んだ。だが、
「船はもう、今頃沈んでしまっているよ・・・それに、救助するときに船を良く調べたけれど、隠れている人は居なかった」
「じゃあ何であかねは居ねえんだよ!」
「もしかして魔物に連れ去られたか・・・いや、でもあれだけ酷い有様だ。魔物が人間の女性を連れ帰る事は考えられないな。だとしたら、逃げようとして海に落ちたか・・・」
船員は乱馬にそう呟くと、
「船が襲撃を受けた辺りは潮の流れも早いし、深さもある。漁師も船でなければ進まないあたりさ。海に落ちたとなると・・・」
ほぼ、絶望的。最後は口に出さないが、船員はそう言いたげな表情をした。
「・・・」
乱馬はその船員の話を聞くと、一瞬何かを考えていたようだが、突然、
「おい、兄ちゃん!何してんだあんた!」
「乱馬!お前、一体何をっ・・・」
・・・ザバッ!
乱馬は背中につけていたマントを素早く取り外すと、突然、海に飛び込んだのだった。
そして、叫ぶ良牙達を全く無視して、沖に向かって泳ぎだす。
「戻れって!」
「乱馬、戻るよろし!」
「乱ちゃん!」
良牙だけでなくシャンプーや右京も慌てて叫ぶが、乱馬は猛スピードで沖に向かって泳いでいき、どんどんと港から遠ざかる。
「兄ちゃん、無茶だ!戻るんだよ!!」
船員や漁師も慌てて乱馬に向かって叫ぶが、彼は全く戻る気配もない。
そう、彼は行方不明のあかねを、座礁ポイントまで探しに泳ぎだしたのである。
先ほどどんなに頼んでも船を出してもらえなかった事を考えると、泳いだ方が速いと、咄嗟に判断したのだろう。
・・・
「あー、もうしょうがねえなあ・・・」
そんな乱馬の様子を見ながら、船員達がため息をついていた。
が、
「でもまあ・・・あの兄ちゃんの気持ちも分からなくないし、あかねちゃんには健康診断で世話になったしなあ」
そう。
乱馬の姿を見ている船員・漁師達の殆どは、あかねと、東風の医院で健康診断時に顔を合わせていた。
乱馬が船を頼んだ時は、相手があかねのことだと分からなかったが、
今は相手が「あかね」だと分かった事、
そして健康診断の時東風が言っていた「彼女には恋人が」というその恋人がこの乱馬であることが分かったので、何とかできないかと、考えてくれたのだ。
よって、
「・・・あのままあの兄ちゃんを泳がせたら、あの兄ちゃんこそ死んじまいかねないし、船、出してやるよ」
「!本当か!」
「ありがたいある」
「よろしゅう頼んます!」
その中の一人の漁師が、乱馬の為に特別に船を貸してくれ、泳いでいる彼を乗せて船の座礁ポイントまで行ってくれたのだった。
そして乱馬がそのポイントに潜り、あたりを漂ってあかねの姿を探したのだった。
・・・結局あかねは見つからずに、日も暮れ夜の海は危険、と判断したその漁師が、まだもぐり続けていたそうだった乱馬を強引に船に上げ、つれて帰ってきてくれたのだが、
「まだ探せるよ!あかねはまだ、あそこにいるかもしれないのに、俺だけ戻れねえ!」
「何言ってんだ!昼からずっと、潜りっぱなしで、今度は兄ちゃんの体力がもたねえよ!」
「でも・・・!」
「それに、遺体が見つからないってことは、まだ生きている可能性もあるってことだろ?また明日来てやるから、とりあえず今日は・・・って、あんたさっきの兄ちゃん、だよな?」
強引に船に引き上げた乱馬は、どう考えても港に居た時よりも身体が一回り小さく、そして「兄ちゃん」とはいえない容姿をしていたのだった。
「!?」
勿論乱馬も自分の変わり果てた姿には驚いたのだが、
今はそれよりも、遺体が見つからない イコール あかねがまだどこかで生きている可能性もゼロではない、という事の方が重要であった。
乱馬は再び明日、漁師と共にこの場所に来る事を決め、そして不本意ではあるが港へと帰ることを了承したのだった。
・・・

乱馬の方はこのような事情がある故に、海を漂っていたのである。
そしてもう一方、あかねは、というと・・・彼女が魔物の爪に狙われたあの瞬間の後、実はこのように時間が過ぎていたのであった。
・・・


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