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運命1

そして夜が明けた。

いよいよ今日は、あかねが国に帰るために旅立つ日である。
そんな大事な日ではあるのだが、結局乱馬とあかねはこの朝を迎えるまで一言も口を利かないまま時を過ごしてしまった。
気持ちの整理をする為に一晩中眠れずに過ごし部屋でじっとしていたあかねは別として、
それでも乱馬は、全く努力をしなかったわけではなかった。
彼は、夜中に何度もあかねの部屋を訪ねようと努力をしたのだ。
ほんの少しでもいいから、何か話すことは出来ないか・・・そう思って部屋の前までは何度も行くのだが、いざドアの前に立つとノックをする勇気が無い。
もういっそのこと、どうして自分があんなことをしたのか話してしまおうか・・・「いつか」が一体いつなのかで不安に駆られた乱馬が今さらそう思ったところで、話してもあかねがそれを受け入れてくれなかったら、信じてくれなかったら・・・そう思うと再び不安になる。
あんなことをした自分のいうことなど、あかねの耳には今は全く届かないかもしれない。
だったら最初からあんなことしないで、時間はかかってもあかねにきちんと話すべきだったのか・・・そう、後悔をし始める始末だ。
「・・・」
このまま離れ離れになってしまったら、最初自分が考えていたように「いつか分ってくれる」その「いつか」がいつになるのかなんて、想像が出来ないほど遠いかもしれない。
・・・俺、そんなのやっぱり嫌だ。
乱馬は一人モヤモヤと悩み転がるベッドの上でそんな事を考えながら唇を噛んだ。
あんなことしなけりゃ良かったかな。でもああしないと・・・だけど・・・
「・・・」
とにかく話をしなくては。なのに身体は何故、ベッドから起き上がれない?
「うー・・・」
夜明け直後の、部屋の中。時刻は、朝六時十五分。
リミットが近づく中、乱馬は一人部屋の中で悩み苦しんでいた。

一方その頃。
「え?!もう出発するのかい?船は確か・・・朝八時出港だろ?」
「はい・・・」
「まだ六時十五分だし、それにここから港までは二十分くらいで行けるんだ、もう少しゆっくりしていてもいいんじゃないのかい?」
「港で風に当たりたいなあ、って思ったんです」
「それはいいと思うけど・・・でもまだ皆も眠っているから。だいたい七時頃なら皆も起きるだろうし、きっと皆も・・・」
「・・・旅を途中で止めて国に帰るわけですから。それに・・・」
直前まで送られてしまったら、寂しくて不安で心細くて怖いこの気持ちが、きっと自分でセーブできなくなってしまう。
・・・それは東風にはさすがに話はしないが、「昨日の夜夕食も豪華にしてもらって話もたくさんしたから」と、あかねは東風の提案に対し首を左右に振った。
・・・
乱馬が部屋で一人悩みもだえている頃。
日の出を待って、あかねはすぐに医院を出るべく自分の部屋を出たのだ。
そして、医院の裏手の教会脇で朝露に濡れるカスミソウを摘んでいた東風を見つけ彼に挨拶をした。
彼が毎朝早くにこの場所で、あかねの姉が昔植えたという花を摘んでいるのは知っていた。
だから、宿を提供してくれたことや身体のことを心配してくれたことも含め、お礼がてらあかねは東風に挨拶に来たのだ。
・・・結局あかねは、昨夜は一睡も出来なかった。
以前、ミコトはどんな気持ちで自分が殺害される前夜を越したのだろうかとあかねは考えたことがあった。
そして自分はどうなのかと・・・ミコトは分からないが、あかねは穏やかどころか落ち着かず、何だかいつもよりもその夜は短く感じた。
まるで、最後の時へ向かい時が加速でもしているかのように。
乱馬と話をする機会もチャンスも自分で作れなかったし、部屋で膝を抱えてじっとしていても心の中は落ち着かなかった。
気を張っていなければ今にも、不安や恐怖、寂しさと絶望に押しつぶされそうだった。
それゆえに、今ここで旅の仲間達の顔を見てしまったら泣き出してしまうかもしれないと思った。
だからこそ、皆が起きてくる前に出ていきたいとそう思ったのだ。
が、
「本当にいいのかい?このまま出発してしまっても・・・」
そんなあかねに対して、東風はもう一度そう問いかけてきた。
彼はあかねのこれから辿るかもしれない運命については知らないわけだから、こんなあかねの行動が気になるのだろうか。
「はい・・・皆とは昨日の夜、ご飯の時にたくさん話したし・・・」
あかねはそんな東風に対して小さく頷きながらそう答えるも、
「・・・皆とは話したかもしれないけど、まだ王子とは話していないよね?」
「!それは・・・」
「これから少し、離れているわけだから・・・ちゃんと挨拶はしなくちゃ。ね?」
・・・乱馬があかねにチケットを渡したと思われる日から、どうも二人の様子がおかしいことを東風は感じていた。
乱馬にチケットを渡したのは自分であるが、それを彼がどうやってあかねに渡したのかは分からない。
ただ、あれだけ頑なに旅に同行すると、離れたくないと泣いていたあかねが納得したわけだからそれなりの何か、が二人の間にあったのは違いない。それも、会話を交わしづらくなるような何かが・・・
少しそのことに対して責任も感じているのもあるし、それに大切な人とわだかまりを持ったまま離れることがあまり良いことではないことぐらい、東風とて分かる。
あかねのことは、たとえ血が繋がっていなくても本当の妹のように思っているのだ。
それゆえに、早く治療させてやりたいと強く願ったのだ。決して、二人を引き離してその関係を終わらせる為にこんなことを王子に頼んだのではない。寧ろ逆。二人の長い未来を考えてこそ、だ。
・・・
「・・・でも私・・・」
「大丈夫、僕に任せて」
「でも・・・」
「いいから、ね?」
東風は、急に表情を翳らせたあかねの肩を優しく抱きながら、乱馬の部屋の前に連れて行った。
そして、とんとん、と控えめにドアを叩く。
「・・・はい?」
勿論、昨晩から一睡もしていない乱馬はすぐに部屋の外に出てきた。
そして、朝っぱらから自分を訪ねてきた東風と、その横に居たあかねに対しはっと息を呑んだ。
が、
「・・・」
あかねが乱馬からスッと目をそらし俯いてしまったのを見た乱馬は、モヤモヤとしていた胸を更に強くさせ苦しくなった。
と、
「王子、あかねちゃんですが・・・もう今から港に向かうそうです」
「えっ・・・だって船はまだ・・・」
東風の言葉に、乱馬は慌てて部屋の時計を見た。
時刻は、先程より十分ほど進んで六時二十五分。出港は八時だしいくらなんでも早過ぎないだろうか?
乱馬がそんな事を思っていると、
「見送りはいらない、とのことなのですが、一応王子にご報告を」
「ああ・・・で、でも・・・」
「それで、皆の見送りはいらないと彼女は言っているのですが、それではいくらなんでも少し寂しいと僕は思うのです。そこで・・・皆を代表して僕が、あかねちゃんの見送りにいこうと思うのです」
東風は乱馬に対して笑顔できっぱりとそう言い放った。
・・・勿論これは、東風の作戦である。
絶対に自分がこういえば、乱馬はそれに対して反発するだろう。
最後の見送り、皆の代表に何故東風がいかねばならないのか、しかもあかねの見送りだというのに・・・と。
いくらここ数日、話しづらい状況であるとはいえ、彼とてきっかけを探していたはずだ。東風はそう思ったのだ。
案の定、
「・・・だったら、俺が行く」
乱馬は、ほぼ躊躇せずに東風に向かってそう答えた。
東風はほっと胸をなでおろしつつ、再び笑顔で頷くと、
「そうですか、では王子、お願い致します」
そういって、あっさりと自分の後ろで控えていた表情の暗いあかねを、乱馬に差し出した。
そして、
「あかねちゃん、僕もあと半月ほどしたらティルトンに戻る予定だから・・・向こうで会おうね。向こうの医院に戻ったら連絡するからね」
「先生・・・」
「気をつけて、ティルトンまで戻るんだよ。オレンさんとお義父さんにもよろしくね」
東風はあかねの頭をぽん、と軽く叩くと、「では王子、宜しくお願い致します」と二人の前から去っていった。
「・・・」
・・・乱馬の部屋の前に、複雑な表情をした乱馬と、あかねが残った。
「・・・」
・・・半月後。本当に会えるかどうかなんて分からない。
あかねには妙にその再会に関する言葉が心に重く感じていた。
そんなあかねがぎゅっと・・・俯いて唇を噛み締めていると、
「・・・荷物、持つから」
数えて三日ぶり。久しぶりにあかねに対して、乱馬が言葉を掛けた。
あかねが顔を上げると、
「港まで、荷物持つから」
乱馬はもう一度あかねにそう言って、彼女の手にあった荷物を強引に取ってしまった。
「い、いいよ別に・・・あたし自分で・・・それに見送りも別に・・・」
・・・あかねの鞄に入っている荷物なんて、殆ど無いのだ。
あえて言うならば今朝まで使った洗面用具と右京がくれたプレゼントのお茶と最後の着替えだけ。
負担にもならないし、それにこんな風にしかも乱馬に送られるなんて耐えられない。
あかねは慌てて乱馬の手から荷物を奪い返そうとするが、
「・・・行こう。もう、出るんだろ?」
「そ、そうだけど・・・でも本当に私・・・」
「・・・いいから、行こう」
乱馬はそんなあかねなど諸共せずにそう言うと、静かに朝の廊下を歩き出した。
「あ、待って・・・」
あかねは慌てて彼の後を追い荷物を取り返そうとするが、彼はそんな素振りも見せず黙って、あかねの前を歩いていく。
あかねは仕方なく荷物を取り返すことは諦めたが、
「ごめんなさい・・・」
ずっと自分に背中を向けて歩いていく彼に対して、小さな声で一言、謝った。
・・・急に訪れてきた東風とあかね。
もしかしたら起こされたのかもしれない。
そして急に見送りに行くことになり、言葉少なげにあかねの前を歩く。
「何で謝るんだよ」
「・・・だって・・・」
あんなこともあったし、こんな風に送りに行くこと自体、乱馬にはめんどくさいし迷惑かもしれないというのに・・・最後の最後まで、自分は彼に迷惑をかけるのか。
そう思うと、あかねの胸がぎゅっと痛む。
「・・・」
あかねが黙り込むと、乱馬もそれに対して何も言わず、歩いていく。
あかねはそれっきり何も呟かず黙って乱馬の後を歩いていった。
が・・・
「・・・」
あかねに対しては特に何も語らずとも、一方の乱馬にしてみれば、迷惑どころかこれはチャンスであった。
そう、あかねは知らない。
乱馬が東風のノック音に起こされてドアから顔を出したのではなく、元々眠れなくて部屋の中でずっと考え事をしていたことも。
何とかしてあかねと話をしたくて、夜中何度も部屋の前まで言っていたことも、そして躊躇しては部屋に戻り、モヤモヤしていたことも。
それなのに、
どうして「迷惑なんかではない」というその思いも、
謝るような悪い事をあかねは何もしていないという言葉も、
とにかく何かを話したかったという強い思いも・・・どうして強さと反比例して口から出て行ってはくれないのか。
乱馬はそっと、あかねに気付かれないようにため息をつく。
とにかく、せっかく二人きりになったチャンスだ。気まずくたって何だって、話をしよう。
そう、何かきっかけを作って・・・
乱馬はそんな事を考えながらふと、自分が手に持っているあかねの荷物に目を遣った。
「・・・」
・・・あかねの手から奪い取って自分が荷物を持っているのは良いのだが、そういえばなんかこの荷物、軽いような気がする。
今まで旅をしていたのだから、それなりに荷物も重さもあるはずなのに・・・しかも何故か鞄がスカスカのような気もしないでもない。
・・・何でだ?
「・・・」
・・・そういう、何か対して重要でもなさそうなことから話すきっかけを探そうか。
本当はそれが実は大きな問題であったのだが、まさかそうとは思わない乱馬は港へ向かう間中そんな事ばかり考えていた。


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