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不安

「ムースの様子はどうだ?」
「東風に治療をしてもらって、身体は安定したある。でもまだ意識は戻らないし、全身を強打したショックで身体を動かしたり喋ったりするのはまだ無理ある」
「そうか・・・」



ラビィとの突発的な戦いを終えた一行は、怪我をして動けなくなったムース・・・が変身してしまったアヒルを抱えて東風のいる医院へと戻ってきた。そして、東風に彼を診てもらった。
幸い、シャンプーが治癒魔法を大量にムースに注ぎ込んだことと東風が名医であることが重なり、ムースは完全に一命は取りとめたようだ。
が、シャンプーも今言ったように、全身を強い打撲に見舞われ身体を動かすことも、そして話すのはまだ無理だ。
「これだけの打撲で命を落とさなかったのは、治癒魔法のおかげだね。命どころか骨も大丈夫そうだ。ただ、身体を強打したショックで意識がしっかりと戻らないだけだよ」
「よかったある」
「意識の方は、しばらくしたら自然に戻るだろう。でも、打撲は身体の自由を奪うからね・・・完治するまでにはしばらくかかりそうだ。一週間ほど様子を見て、その時にまた治癒魔法を注ぎ込めば、いいんじゃないかな」
「感謝するある」
「それにしても、まさかアヒルを治療することになるとは思わなかったよ」
「貴重な経験したあるな」
「まあ、そうだけど」
シャンプーと東風がそんな会話をしながら、ムースが休んでいる病室から出てきた。
初めてみたラヴィの姿形や、ラヴィとの戦いの模様を思い出して情報を共有しながら二人を待っていた他のメンバーは、そこでとりあえずムースの無事を知り胸をなでおろすが、
「ところで、彼はどうしてあんな怪我をしてしまったんだい?彼は確か、傭兵の経験もあるだろ?」
「何でそれを・・・」
「僕は傭兵部隊の軍医もやっていたことがあるんだよ。兼務でね。その時に見かけたことがあるんだ。」
「へえ・・・」
「格闘技に精通している彼があんな怪我を負うには、何かよほどの事情があったんじゃないのかい?」
例えば、君達の身に何か危険なことが起こったとか・・・東風は、一行の顔、というよりむしろあかねの顔を見ながらゆっくりとそう尋ねる。
「・・・」
ムースが大怪我をした原因。勿論その理由について皆は分っている。
だが・・・
「・・・」
乱馬と良牙は、「戦いの最中での出来事だ」と割り切らなくてはいけないと、思っていた。
あかねだって、別に悪気があってあの時防御魔法フィールドを飛び出したわけではないのだ。
乱馬にしてみれば、自分を助けようとして飛び出してきてくれた彼女を責めるつもりもないし、それにムースだってそれを恨むつもりはないはずだと思っていた。
ところが、
「・・・あかねちゃんのせいや」
「ん?どういうことだい?」
「あかねちゃんがあの時余計なことをするから・・・」
・・・先程広場であかねと話したときと同じように、右京がそう呟いた。
勿論、経緯を知らない東風は、何故ムースの怪我があかねのせいなのか不思議でならない。
「うっちゃん!」
乱馬はそんな右京を制しようと彼女の名前を呼ぶが、
「乱ちゃんは何とも思わへんの?あの時あかねちゃんが飛び出さなければ、こんなことにはならへんかてんよ?乱ちゃん一人なら、ラビィの魔法は交わすことが出来た。皆それを悟っていたから、乱ちゃんのこと、特に助けも入らへんかったんよ?
うちらかて、乱ちゃんのこと心配に決まってるやん。でも、あの状況ではああするのが一番、誰にも迷惑をかけずにすむことやったんよ」
「・・・」
「それなのに、何でそれがわからへんかってんの?それに、乱ちゃんの一大事に、大切な剣かて拾い損ねて。ドジにも程があるやろ」
「やめろ、右京!」
右京を、今度は良牙が制した。
「・・・」
・・・右京とて、悪気があってこのことを言及しているのではない。
彼女だって、例え合流をしてから日は浅いとはいえ、乱馬を思う気持ちや仲間の身を案じる気持ちが浅いわけではない。
大切に思うからこそ、今回のことを腹立たしくもあり今後再発してはいけない問題だと、強く願うのだ。
「・・・助けてやらなあかん時に邪魔をしてしまっては、居る意味なんてないんやで」
右京は最後に一言そう呟くと、その場から出て行ってしまった。
「ちょっ・・・うっちゃん!」
そんな右京を慌てて乱馬が追いかける。
「うっちゃん!ちょっと待てって!」
乱馬は飛び出した右京を慌てて捕まえて、とりあえず立ち止まらせた。
「うっちゃん、ちょっと落ち着こう。な?」
そして、右京に対し優しく話しかけるが、
「・・・乱ちゃんは、あかねちゃんのこと好きなんやろ?」
「なっ・・・な、何だよ急に」
「せやから、出来ればあかねちゃんのこと、傍に置いておきたいんやろ?」
「うっちゃん・・・」
「でも・・・体力もないし、大事な判断もできへん。肝心な時にヘマをしてまうあかねちゃん、本当にこの旅に必要なん?」
「!」
「うち、あかねちゃんのことが憎くていってるんやないん。客観的に今の状態を見て、言ってるんよ。うちは、皆と合流してからまだ日は浅いけど、みんなの事を仲間やと思ってる。だから、皆を守りたいんよ。」
「・・・」
「あかねちゃんを守ることで、乱ちゃんや皆が怪我をしたり負担になることがあったら、皆にも、そしてそんなことまでして守られているあかねちゃんも辛くなるだけやで」
「うっちゃん・・・」
「乱ちゃん、もっと考えてや・・・」
・・・勿論右京とて、あかねが憎いとか、乱馬に近づく為に一人でも邪魔者が居ない方が便利とか、そういう浅はかな考えだけでこのような事を口にしたわけではないのだ。
客観的に現在のパーティを見て、今回のような過ちや判断の誤りが今後続いては困ると、それを思ったがゆえにこう発言をしたのである。
右京はため息をつきながら最後に一言そう呟くと、乱馬の前から離れ自分の部屋へと入っていった。
「あっ」
乱馬は慌てて右京を引きとめようとするも、パタン、と閉じたドアはもう開く気配はない。
「・・・」
俺は・・・どうしたらいいんだろうか。
・・・本当は旅を始める当初からそこはかとなく感じていた、パーティ内での力の差や役割。
まだ旅に加わったばかりの右京だからこそ、客観的にパーティを見れたこともあって、それを指摘されると言葉に詰まる。
そして今回それが顕となり、そしてそれが原因で皆の間に風が、立った。
「もっと考えろ、か」
乱馬は、閉じた扉に向かい小さなため息をつく。
そして乱馬は右京の言葉の意味をゆっくりと考えながら、再び皆のいる部屋へと戻っていった。




その一方で。
「・・・」
あかねは何も言わず出て行った右京と乱馬の背中を見つめていた。
・・・右京が言っていたことは、あかねも十分に承知していた。
だからこそ、何も言うことができずにただ、聞いていることしか出来なかった。
「あ、あかねさんっ・・・気にすることないですよ!あいつ、さっきの戦いでたくさん動いていたから少し気がたっているかもしれないしっ」
そんなあかねを、良牙が慌ててフォローをする。
良牙も、右京の気持ちは分るのだ。でもだからといって感情の赴くままにそれをあかねに伝えるのには賛成は出来なかった。
人間誰でも、判断を誤るときはあるのだ。今回は大事に至らずに済んだ。ならば、それを踏まえて次回に活かせばいい。
良牙はそんな風に考えていたのだが、
「・・・私も、右京の言うことに賛成ある」
あかねに気を使って声をかけている良牙の背後で、そんな静かな声がした。
シャンプーである。
「私、前にあかねに言った。自分の身を守ることがでいない人間、他人を守ること出来ないと。自分の身を満足に守ることが出来ないのに、他の誰かを守ろうとすること、優しさ違う。ただのエゴある」
「シャンプー・・・」
「結果、ムースは大怪我をした。今回はたまたま相手がムースだったから、全身打撲で済んだある。でもこれがもし魔力を持たない右京だったら死んでいたあるぞ?」
「っ・・・」
「仲間を守りたいと思うのなら、まずは自分がするべき事をしてから、そうするある。今のままでは、あかねがいること、パーティーの足かせになる」
感情の赴くままストレートにあかねに進言するシャンプー。
そんな彼女に対し、
「おい、シャンプー!お前そんな言い方っ・・・」
相変わらず、言っていることは正しいが歯にものを着せないストレートな発言・・・良牙が慌ててフォローを入れるが、
「・・・私は、もう少しムースの様子を見ているある」
シャンプーは良牙のことを無視して、再びムースの病室へと入ってしまった。
「あ、あかねさん・・・気にすることないですからねっ。あかねさんの優しさは、決してそんな・・・」
良牙は、右京やシャンプーに忠告を受けたシャンプあかねを必死でフォローしようと声をかけるが、あかねの様子があまりにも沈んで見えるので、その声さえもかけづらくなり、居たたまれない。
「あかねさん、本当に気にしないでくださいねっ。俺達、あいつらが行っていたようなことは思ってないですから!」
こういう時は、周りから何を言われてもきっと、耳には入っていかないだろう。だったら、少し落ち着くまで待ったほうがいい。
良牙はそう判断しつつも、やはり気になり最後にあかねに言葉をかけてから、診療室を出ていった。



「・・・」
診療室の中には、物も言わず俯いているあかねと、そして皆の話を客観的に聞いていた東風が、残った。




「・・・剣、取り損ねちゃったのかい?」
・・・あかねが剣を取り損ねたのは、決して彼女の注意力散漫なのではなく、視力が霞んでしまったが為に起きてしまった事故である。
それが分かる東風は、優しい口調でそう呟く。
「・・・」
あかねは、東風の言葉に小さく頷く。
そんなあかねはずっと俯いているために、どんな表情をしているかは東風からは見えない。
「・・・」
東風は、ムースが怪我をしてしまった詳しい経緯はその場にいなかったので良く分からないが、
その出来事があかねの悪気が在って起きたことではないということや、彼女を責める右京達も、決して悪気があって先程のように発言をしたのではないというのは、分かる。
どちらも、このパーティが大事で、そして皆を守りたいと思っているからこそ、ぶつかってしまっているだと言う事を。
ただ・・・剣を取り損ねたこと等を「注意力散漫」と言い切られてしまうことの辛さや、まだ本当の理由を皆に言い出せないあかねの苦しみは・・・計り知れないだろう。
「・・・もっと、王子に頼ってもいいんじゃないかい?」
「・・・」
「あかねちゃんが苦しんでいることを、王子に話してもいいんじゃないかな・・・いい機会だと思うよ」
「・・・」
「・・・さっき、シャンプーちゃんも言っていたよね?自分を守ることがでいない人間が他の人を守りたいと思うのは優しさではなく、エゴだと。僕はそこまでハッキリとは言い切らないけれど、でも彼女の言っていることには一理あると思うんだ」
「・・・」
「これから先、旅を続けていけばきっと危険な目に遭うことも増えるだろう。そんな時、ある程度は自分の身は自分で守らないといけな時だってある。今のあかねちゃんは、それがきちんとできると、言い切れるかい?」
・・・隣の部屋にシャンプーがいるがゆえに、あまり大きな声でも詳しいことも話せないが、これだけでも今のあかねには伝わるはずだ。
東風はあかねを諭すような口調でそう告げた。
「・・・」
あかねは黙って一度だけ、そんな東風に頷いて見せた。
「・・・」
この頷きは、何なのだろうか。
王子に話す決心がついたのか。それとも、言われなくてもそんな事を分かっていると、そういう意味の頷きなのか。
あかねは俯いているし彼女の表情が見えないために、それが何を意味しているのか東風には分からなかった。
そうこうしている内に、あかねは東風に表情を見せないまま一度、深くお辞儀をした。そしてそのままフラフラと、部屋を出て行ってしまった。
「・・・」
可哀想に。
あかねの事情を全て理解しているわけではないが、視力や体調の事だけは知っている東風は、あかねの複雑な気持ちを思うと胸が苦しくなる思いであった。
何とかして救ってあげられないだろうか・・・
「・・・」
東風は暫くその場で考え事をした後、とある場所へと連絡を取ることにした。
そして神妙な面持ちのまま医院を出て、その場所へと向かったのだった。
・・・そんな東風とは別に、
東風の診療室からフラフラと出たあかねは、そのまま玄関を出て街の中を彷徨っていた。
とにかく一人に、なりたいと・・・そう思ったのだ。
特にヒルダの街について詳しいわけではないが、行く当てもなくフラフラと歩いたあかねが最終的にたどり着いたのは、少し古びた教会だった。
その教会は、東風の医院の裏にあるものよりもだいぶ古く、そして小さい。
誰かがそこに居たら入るのはやめようと思ったあかねであったが、教会を覗いてみると幸いなことに誰も居なかった。
あかねはその教会の中へと入り、真ん中辺りの席へとゆっくりと腰掛けた。そして、先程までと同様に俯きながらぎゅっと・・・唇を噛み締める。
「・・・」
と、俯き目に映る自分の手や太股に、ぼたり、ぼたりと暖かいものが零れ落ちていた。
目を熱くさせ、次から次へと雫を作り出す瞳。ただでさえ翳む視界を更に翳ませる。
あかねはその雫を塞き止めようと手の甲で何度も拭うが、残念なことに意思と反して瞳を熱くさせる雫は留まることはない。
止めようと思っても止まらぬというのなら、自然に止まるまで待つしかないのか・・・
「・・・」
あかねは、ただ俯いてその雫が作り出す温度を、感じていた。
・・・少しでも長く、乱馬の傍にいて彼の為に出来る限りのことをしたい。迷惑をかけないように、そして少しでも彼の力になることが出来るように。
旅の始まりにコロンがあかねに告げた占いの結果には正直言って驚き、ショックを受けたが、
それが変えられぬ運命であるのなら、せめて最後の最後まで、乱馬の力になれるように努力しよう。
そう思って、あかねはこの旅を続ける決意をしたはずだった。
ところが、今の自分はどうだろう?
「力になりたい、迷惑をかけず彼をサポートしたい」・・・そう思う自分と、そんな自分に対する周りの評価は違うのではないのだろうか?
自分がいることにより、皆は迷惑を蒙っているのではないか・・・あかねは、そう思ったのだ。
現に、皆も言ってがあかねがあの時余計なことをしなければ、ムースはあんなことにならずに済んだ。
そして、乱馬のサポートをしなくてはいけない肝心な時に、あかねは・・・役に立たなかった。
戦っている皆の姿も、見ているだけだった。
「何もしないこと」が一番皆の役に立つ
・・・そんな言葉通り、戦う皆と、治癒を施すシャンプーをただ、見ているだけでしかなかったのだ。
「・・・」
戦力になるわけでもなく、魔法を使えるわけでもない。
何もしないことが一番の役に立つ人間・・・これでは、いない方がマシではないか。
あかねは、今回のことでそう強く感じたのだ。
「・・・」
先ほど、右京やシャンプー、そしてあかねをフォローをしてくれようとしていた良牙。
少なからずあかねのせいで、仲の良かったパーティに波風も立ってしまった。
あかねが一言、「旅をやめて帰る」といえば、今のこの状況は収まるのかもしれない。
自分の事を守れない人間は、他人のことなど守れるはずもない。
だったら・・・いるだけで迷惑をかけてしまう人間がこの場から姿を消せば、それはイコール皆に迷惑をかけず皆の事を守れることにもなるのではないか。
でも・・・
「・・・」
あかねが旅をやめて一人、このパーティから離れる時。
それは、あかねの「時間」のリミットにもなる。
怖い。怖くて、不安で、寂しくて仕方がない。
でも・・・それはあかね個人の事情であって、乱馬や皆には関係がないことだ。
「・・・」
・・・東風は、全ての事情を知っているわけではないがあかねの視力の事は知っている。
本当は全ての事情を唯一知っているムースであれば何か助言やフォローをしてくれはしただろうが、彼はあかねの為に大怪我を負い喋ることすらできない。
東風が言うように、乱馬に今の自分のことを話せば、何かが変わるのだろうか。
でも、そんな事をしたら彼の旅は中途半端のまま終わってしまうかもしれない。
時期国王になるような輝かしい未来が待つ彼の為にも、自分の為にそれを遂げさせないことだけはしたくなかった。
「・・・」
乱馬には、絶対に言えない。でも、だからといってまだ、旅を終えて一人帰りたくは無い。
だったらどうすればそうせずに済む・・・?
皆にこれ以上迷惑をかけず、ここに居させてもらう為にはどうすればいい・・・?
「・・・」
あかねは、熱い雫を次々にこぼれださせる瞳をそっと閉じ、そればかりをずっと、考えていた。


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