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登場

「お前が、ラビィ・・・!」

乱馬は、改めて名乗った男・魔導士ラビィと向かい合った。
予想外の彼の登場に、乱馬は驚きを隠せなかった。
・・・コロンや、ミコトから聞いていた残虐非道な魔導士・ラビィ。
この男は、「奇跡の魔法」といわれる「クロノス」を手に入れるべく、その魔法を作り出す媒体「クロノスソード」を作るのに必要な例のカードを、乱馬とは別に集め世界を駆け回っているという。
それに加え、彼は希少な出生確率の元習得できるといわれている二大属性魔法の一つ「闇属性」の魔法の使い手。
・・・
「・・・」
乱馬は、目の前にいるそんなラビィをじっと見つめる。
黒く厚ぼったいローブを頭から被り、目の部分だけしかこちらからは伺う事が出来ないので、彼の体型も顔もハッキリとは分からない。
ただ、ほんの一部しか彼の姿は見ていなく声だけしか聞いていない状態だが、実は彼は若いのではないかと、乱馬は感じていた。
コロンやミコトの話を聞いていた段階では、ラビィはそれなりに歳を重ねている人物だと、勝手に思っていた乱馬。
しかし彼の声を聞く限りだと、自分達と同じもしくは少し上くらいの人間ではないかとも、感じる事はできる。
目の部分と一緒に少しだけ覗く肌も、皺があるようには思えなかった。
だが、
年齢が若かろうがそうでなかろうが、山賊の経験があり街中の人々を平気で皆殺しをする残虐さ。
それは、どうにも否めない。
「・・・」
目の前に突如現れた男と、そして自分が知っている限りの彼の残虐非道な振る舞い。
それを容易に結びつけることが出来なくて、乱馬は戸惑っていた。
「・・・」
そんな乱馬に対して、ラビィは声のトーンを変えるわけではなく静かに、呟く。
「改めて問う。お前達は、先ほどの疑問の答えを知りたいのであろう?」
「・・・それがどうした」
乱馬は、そんなラビィの問いに答えつつ、ギュ・・・と剣を自分の前で構え握り締めた。
カチャカチャカチャ・・・
乱馬が握る剣の鞘が、小刻みに震え刃がシルバーの小さな波を作り出し揺れて見えた。
これは、剣を握る乱馬の手が震えているのではなく、剣自身が震えているのだ。
「・・・」
今まで、カードに携わるどんなに強力な魔法や魔導士に関わってもこのようなことがなかった、剣。
それが、ラビィに対してあからさまに反応をしている。
勇者の剣が、乱馬に言葉なくして伝えているのだ。「この男は危険だ」と。
「・・・」
乱馬は本能でそれを察知すると、ゴクリ、と喉を鳴らしながらしっかりと震える剣を握り締めた。
ラビィは、そんな乱馬を見て再び声のトーンを変えずに語りかける。
「お前達が知りたい事を、私が答えてやろう」
「・・・」
「どうした、知りたくはないのか。わざわざ私の口から話してやるべく、あの女も始末してやったというのに・・・最もあの女、一瞬で身体がばらばらに飛び散ってしまったから始末、するほど労力も惜しまなかったがな」
「!」
どうやら、ミコトを殺害したのはこのラビィらしい。
自分達のせいで、ミコトは命を落としてしまったのか・・・それを思うと胸が締め付けられ申し訳ない気持ちが一杯になる乱馬であったが、その弱みの部分をラビィに見せるのは絶対に嫌だった。
「・・・なら早く答えてくれないか。俺達も暇ではないのでね」
乱馬はラビィに自分が動揺しているすべを悟られないようにわざと挑発的な口調で、そう答えた。
するとラビィは、ローブの隙間から覗いていた瞳をカッと大きく見開く。
そして、
「ならば、教えてやろう」
「ああ」
「まずは・・・死ね」
「なっ・・・!?」
「それが、全てを語る初めになる」
やはり声のトーンを変えずにそう言うと、先程と同じように乱馬に向かって左手の掌を向けた。
ラビィの手には、再び黒い光が集まり始めた。
「!」
乱馬がはっと息を呑むと、ラビィはそんな乱馬に向かって、容赦なく黒い光の魔法を放ち始めた。
しかも、先ほどよりも短いスパンで何発も何発も、彼に向かって放出する。
「乱馬!」
「乱ちゃん!」
ドオン!
・・・石畳をめくり地に穴を開けるような強力な魔法を、何とか剣を使って避けたり交わしたりしている乱馬を心配し、良牙や右京が叫ぶ。
「乱馬っ・・・」
あかねも乱馬を気遣って彼の名を呼ぶが、魔法と地との激しい衝動のせいでその声はかき消されてしまった。
「くっ・・・くっ・・・」
キィィンッ・・・!
皆の声を聞く余裕もなく、剣を使いラビィの魔法を何とか交わしていく乱馬。
そんな乱馬に対してラビィは手を休めることはない。その上、
「おとなしく死ね。さすればお前が知りたい事が分かる」
「っ・・・」
・・・あくまでもデフォルトは、乱馬に死を与える事。
ラビィは、容赦ない言葉と冷ややかな瞳で乱馬と対峙していた。
「・・・」
この男は、正気でない。
ラビィの魔法から逃れながら、乱馬はそう感じていた。
勿論、魔力の強さもこれまで出会った者達とは桁外れだ。
乱馬は、コロンとは戦った事はないので彼女の本当の魔力の強さは分からないが、
恐らくこのラビィ、大魔導士といわれるコロンと同等くらいの魔力の持ち主なのではないか・・・闇属性魔法も使えることを思うと、そう考えてもおかしくはない。
だが・・・彼の魔力を色々と考えるよりも、乱馬は彼の言動を理解することに対して、苦労をしていた。
…何故、乱馬が死ねばムースの質問の答えがわかるのか。
確かに乱馬が死ねば、自分が集めたいと願う残りのカードもほぼ、自分の手には入って得だということは、ある。
が、先ほど怪我を負わせたムースに対してもラビィは、語った。「生きていては意味がない」と。
ということは、乱馬でもムースでも、あの時命を落としていればすぐに何かが分かったというのか。
人が命を落として意味が分かることなど、あるのか?
「・・・」
ムースがミコトに質問をしたかった内容を先ほど聞いて知っている乱馬であるが故に、余計にラビィが何故、こんな事をするのかが、乱馬には理解しかねたのだ。
そんな乱馬に対しラビィは、容赦無く魔法攻撃を続けていた。
身に纏っている黒いローブが、激しい攻撃とは正反対に憎たらしい程風に靡かない。つまり、乱馬を翻弄する激しい攻撃をしているにも拘らず、彼はあくまで冷静であり、そして余裕があるということだ。
目の部分だけしか露出はしていないが、唯一伺えるラビィの瞳は、冷めた光を帯びて乱馬を見つめている。
まるで、ブリザード。
冷ややかな視線は、ブリザードに出会った時のような冷気を乱馬に感じさせる。
しかし、自分達のせいで命をとられてしまったミコトの為にも、絶対にラビィに屈する訳には行かない。
「くっ・・・くっ・・・」
キィィンッ・・・!キィィンッ・・・!
容赦なく放たれる黒い光の魔法を剣で何とか交わしながら、乱馬はラビィに反撃をする手立てを探っていた。
とその内、
「乱馬、俺も加勢するぜ!」
魔法を交わすのが精一杯でなかなか反撃が出来ない乱馬を助っ人すべく、良牙が後方の防御魔法フィールドから飛び出し、乱馬のサポートに入った。
額に巻いていたバンダナをシュルシュルッ・・・と素早くほどき、まるでブーメランのように、ラビィへと飛ばす。
良牙のバンダナは、簡易的な飛び道具にもなるのである。
コレまでと違って、ラビィはそのバンダナを避けつつ、尚且つ乱馬だけではなく良牙の攻撃にも注意をしなくてはならなくなるので、きっとこれで乱馬にとっては好展開になるはずだ。
乱馬も良牙もそう考えたのだが、
「・・・」
ラビィは、チラリとそのバンダナへと目をやるも、全く動じる事はなく良牙のバンダナを一瞬にして放つ魔法の力で消滅させてしまった。
そして、乱馬に加えそれに加わり攻撃を仕掛け始めた良牙に対しても、冷静に魔法を放ち始めた。
しかも、攻撃が二人体勢になったからなのかその分ラビィが放つ魔力も強くなった気がする。
どうやら、乱馬一人の時はそれなりにセーブをしていたのかもしれない。
「くっ・・・バカにしやがって!くらえ!」
「せやあ!」
二人はそんなラビィに屈することなく魔法を避けながら彼に反撃を試みるが、全くダメージを与える事ができずに苦戦を強いられていた。
と、
・・・ガキン!
ラビィが放った魔法が、良牙が再び飛ばしたバンダナを弾いた。
そしてそれが運悪く、乱馬の構えていた剣の剣先へとぶつかってしまった。
「あっ・・・!」
その衝撃で、乱馬は剣を手放してしまった。
ガシャン・・・!
乱馬の手元から離れた剣は、石畳に叩き付けられガガガガッ…と音を立てながら、あかねと右京のいる辺りへと飛ばされてきた。
「大変!早く拾って乱馬に…!」
勿論、早く剣を拾い、再び乱馬の手に戻してやらないと彼には不利だ。
あかねは防御魔法フィールドから慌てて飛び出し、彼が落としてしまった剣を慌てて拾おうとした。
ところが、
「っ…!」
…グラリ。
この、急を要する状況で大きくあかねの視界が一瞬揺らいだ。
「っ…」
こんな時に…こんな時に!
あかねは、この状況でも体調の異変を訴える自分の身体を、激しく呪った。
先程、ムースに防御魔法フィールドの中へ突き飛ばされた時、地面に身体をたたきつけた。体調がおかしいのは、それが影響があったのかもしれない。
でも、あの時はああされなければあかねはおろか乱馬の身も守ることが出来なかった。
ムースが悪いわけではないのだ。
そうではなく、身体にほんの少し負荷がかかるだけで皺寄せがきてしまう、自分のやわな身体が悪いのだ。
しかし、今はそれについて落ち込んだり腹を立てたりしている暇はない。
それよりも、乱馬に剣を届ける方が先だ。
あかねは、揺らいだ視界を振り払うようにして急いで剣に手を伸ばし拾おうとしたのだが、
「!」
スカ・・・
あかねの手は、何もない空間を掴んでしまったようだ。剣を掴み損ねてしまった。
と、そんなあかねを見つめていた右京が、
「どき!ぐずぐずしてたら乱ちゃん、危ないやん!」
「あ・・・」
「うちが拾う!」
ドン!
あかねの様子を見かねた右京は、あかねと同様防御魔法フィールドから飛び出してきて、剣を掴み損ねたあかねを突き飛ばすようにしてその場から退けると、自分が乱馬の剣を手に取った。
そして、
「乱ちゃん!」
ヒュン…
右京は大きく振りかぶった後、乱馬に向かってその剣を投げつけた。
剣は、まるで吸い寄せられるかのように一直線に乱馬の元へと飛んで行き、彼の手の中に再び納まる。
「うっちゃん、ありがてえ!」
乱馬は、剣を投げ返してくれた右京に笑顔で礼を叫んだ。
そして、
「おおお・・・!」
改めて手元に戻った剣を握り締めると、再びラビィに反撃をするべく魔法を避けながら立ち回り始めた。
「良かった・・・」
そんな乱馬の姿を、右京はほっと胸をなでおろして見つめていた。
が、
「・・・うちも加勢するわ」
「え?」
「乱ちゃんのピンチに、うち黙っとれへんし!それに、ミコトはうちらのせいで殺されてしまったのかもしれへんみたいやし・・・良牙かて、助っ人に入ったしね」
右京は、戦う乱馬達の姿を見つめながら意を決したようにそう呟いた。
右京は懐から小さなヘラ、そして自分の背中にくくりつけていた大き目のヘラを抜き取り握り締めると、
「いくでえ!」
自分も乱馬と良牙が戦っている場へと飛び込んでいこうとしていた。
「あ、あたしも…!」
あかねも、そんな右京と共に乱馬達の元へと向かおうと、腰に差していた鞭を抜き取った。
右京が乱馬に加勢したいと願うように、あかねだって皆が戦っている時に何もしないのは嫌だ。
そう思って自分も戦いに出て行こうとするが、
「あかねちゃんはええよ」
そんなあかねに対し、右京は真剣な表情でそう呟いた。そして、あかねが手にしている鞭を腰へと戻すように指示をする。
「え、でも・・・!」
ええよ、というのは「あかねは来なくていい」という意味合いだろう。
何故、あかねの事を右京が止めるのか。
あかねが、右京の顔をじっと見つめると、
「・・・あかねちゃんは、あれが見えへんの?」
右京はそういって、とある方向を指差した。
右京が指差した先には、シャンプーがムースに治癒魔法を施している姿が、あった。
「・・・」
自分と乱馬を守るのと引き換えに、魔法攻撃を受けてしまったムース。
いまだ意識を取り戻していないと思われるその姿にあかねが胸を痛ませると、
「誰のせいで、ムースはああなってしまったん?あかねちゃんがあの時飛び出さなければ、ムースはあんな怪我をせえへんで済んだんちゃうの?」
「そ、それは・・・」
「乱ちゃんの助太刀せなあかん肝心な時に、あかねちゃん、大事な剣も拾うことが出来へんかったやん。そんなあかねちゃんに、乱ちゃんを助けながら戦えるようにはうち、思えへん」
右京は、あかねに向かって厳しい口調で先ほどのことを責める。
勿論右京は、あかねが実は視力がかすんだ為に剣を取り損ねたという事は知らない。そそっかしくて注意散漫が故にそんな事をしでかしたと思っているのだ。
あかねもそうだが、右京も乱馬が危険な目にあうのは避けさせたいと思っている。
だから、先ほどのように少し対応が遅れただけで乱馬が危険な目に遭いそうなことがあれば、気が気でないのだ。
「・・・」
あかねが右京の言葉にキュッ・・・と唇を噛み締め黙り込んでいると、
「それに、あかねちゃんがヘタに戦いに混じってきたら、乱ちゃんは弱いあかねちゃんを守る為に気を使わなければいけへんやん。それが、乱ちゃんの足ひっぱることになるって、あかねちゃんは考えられへんのん?」
「・・・」
「何もしないで、ここで防御魔法に守られている事が、あかねちゃんが今すべきことや。誰にも迷惑かけへんようにすることが、あかねちゃんの今、一番しなくてはいけない事。分かるな?」
「・・・ごめん」
「ええから、ここで大人しく待っとき。ええね?」
右京はそんなあかねに強い口調でそう言い切ると、ラビィと戦っている乱馬達の下へと駆け寄っていった。
そして、
「乱ちゃん!うちも加勢したる!」
「うっちゃん!」
「右京!てめえ足ひっぱるんじゃねえぞ!」
「誰かと一緒にせんといて!いくでえ!」
乱馬達に混じり、ラビィと戦いを始めた。
右京自身は、多少は格闘技の心得はあるも、それほど強いわけではない。
だが、大きなへらのような武器を必死で振り回しちょこまかと動き回る右京は、微力ながらもラビィの魔法を跳ね返したり死角を作ったりして、良牙と共に乱馬をサポートしている。
「せやあ!」
何とかして、ラビィに反撃をする乱馬と、その乱馬をサポートしながらもラビィに攻撃を仕掛ける良牙と右京。
三人は、お互い助け合いながら必死にラビィと戦っていた。

「・・・」

・・・そんな三人の姿を、あかねはただその場に佇み見つめていた。
右京が今いるポジション。乱馬を必死でサポートしながら戦っていくあのポジション。
あそこは、あかねが「そうでありたい」「そうしたい」と思っていたポジションだった。
「来るべき時が来るまで、迷惑をかけず乱馬の為にできる限りのことをしよう」
あかねは、そう思って今まで色々と頑張ってきたはずだった。
ところが・・・今の自分は、どうだ?
自分の浅はかな行動で仲間に深手を負わせ、乱馬のサポートをするどころか足を引っ張る存在。
その上、皆が必死で戦っている時に、「何もしないで大人しくしていること」が、一番皆の為になるなんて。
「・・・」
・・・自分は、何て無力なのだろう。
これでは、ここにいる意味などないではないか。乱馬の傍にいる意味など、ないではないか。
いるだけで皆に迷惑をかける人間が、乱馬の傍にいたところで何も出来るはずが、無い・・・それどころか、足をひっぱてしまうなんて。
「・・・」
あかねはキュッと唇を噛み締め、三人から視線をそらした。
そして今度は、遥か後方で治癒魔法を施しているシャンプーと、いまだ意識を取り戻さないムースへと目をやる。
シャンプーは、ものも言わず必死に、ムースへと治癒魔法を施していた。
そんなシャンプーの腕の中にはムースがぐったりと倒れている・・・はずなのだが、始めはシャンプーの腕の中でグッタリと目を閉じていたムースの姿が、何だか洋服だけ、のようになっているかのよう見えた。
不思議に思ったあかねがよく目を凝らすと、シャンプーの腕の中にいたムースは、何とアヒルの姿になっていた。
・・・そう。
一番初め、皆で旅を始める前にコロンやシャンプーから聞いていたのだが、セルラ大陸ティルトン国の住人の中には、得意な体質を持つものがいる。
例えばシャンプーもその体質を持つ一人であって、シャンプーは魔力を使い果たし激しく体力を消耗すすると、猫に変身してしまうのだ。
シャンプーは、猫嫌いの乱馬に嫌われ旅に連れて行ってもらえないのは困る、と、旅に出る直前までこの事実を乱馬に隠していたのだ。
もちろん乱馬は顔を引きつらせていたが、旅に出る直前にそれを話されたが故にどうにもならなかったわけで。
・・・そんなシャンプーと同じように、ムースも特異体質を持っている人物だったようだ。しかも彼の場合、それが猫ではなくアヒルであったらしい。
・・・
「・・・」
あかねたちを守る代償に、意識を失うほどの怪我をしてしまったムース。
乱馬達の助太刀も出来ない上に、そのムースにも・・・あかねは何もしてやることが出来ない。
シャンプーのように治癒魔法を使えるわけでもなく、東風のように医術を持っているわけではない。
「・・・」
・・・自分は、ここにいてもいいのだろうか。
自分がいる意味を全く見出すことが出来なくなったあかねは、そっと目を閉じその意味をゆっくりと考え始めた。

「・・・」
・・・そんなあかねの様子の変化を。
ただ一人、この状況下で気づいているものがいた。
それは乱馬・・・ではなく、実はラビィである。
彼は、乱馬を殺すつもりで彼に向かって魔法攻撃をしていたわけであるが、三人がかりで何とか防御・反撃をしている乱馬たちとは違い、まだまだ彼には余裕があった。
故に、周りを見るくらい訳がないのだ。
「・・・」
彼の目的は、まずは乱馬・・・もしくは他の誰かを殺す事。
そして、その次に、殺した相手へ「あること」を・・・「ある人物」にさせる必要があった。
それは決して、乱馬達に疑問の答えを明らかにさせるためだけにそうするのではなく、ラビィ自身もその目で「あること」を確かめ、ラビィの立てた推測が合っているということを確信したいが為でもあった。
そんな「あること」を「ある人物」がする為には、ラビィには無縁の「慈悲」や「人を思う気持ち」などが必要なのである。
そしてその気持ちや心を持つだけではなく、それらを強く思う強い「意志」が、「ある人物」には必要であった。
闇属性の魔法の使い手であるラビィが、闇属性の魔法を使うのと同じように、だ。
・・・
だが・・・迷いや弱さ、戸惑いなどがあれば、それは決して上手く発動する事はない。相手が元々魔導士でないのならば尚更だ。
以前、一度だけ命を失った人間を蘇生させたようにはいかないだろう。そう想像する事ができる。
となれば、ラビィが自らこのようにして出向いてやったことも、無駄になる恐れがあった。
「・・・」
元々、その「ある人物」は自分の手元に置いておこうと考えていた人物だ。
せっかく出向いてやったのに今日が無駄足になるというのなら、日を改めてその「ある人物」が一人になった時にでも先に攫ってしまった方がラビィにしてみれば都合がいい。
そうすれば、乱馬達に優位な情報をわざわざ与えなくても済む。
唯一、それを特殊能力で垣間見て知っていたと思われるミコトももうこの世にはいないわけだし、それに気がつきそうだった魔導士も、怪我をして暫くは動けないだろう。
「・・・」
そのように考えたラビィは、それまで激しく攻撃をしていた乱馬たちへのその手を、ふっと止めた。
「な、何だ・・・?」
「・・・」
急にラビィが攻撃をやめたので、乱馬達は警戒をしながら武器を構え対峙する。
攻撃をやめたのは、気まぐれかそれとも新たなる攻撃を仕掛ける布石か・・・ラビィの本当の考えを知らない乱馬達が、じっとラビィの姿を見つめると、
「・・・貴様がさっさと死ねば、すぐに何もかも答えが出たというのに。自らの関わる事でその機会を棒に振るとは、愚かなり」
「何!?」
「宝をゴミの山に混じらせておけば、いくら宝とは言えどもくすんで同化をしていく。つまらぬ事で宝をくすませるくらいなら、輝かせる場所に私が誘おうというのだ」
「・・・?何を言ってるんだ?」
「・・・次に貴様らと会うときは、私が言っていることの意味も理解できるだろう。ただし・・・その時にはきっと、宝は私の手元にあるだろうがな」
ラビィはそう言って、自分が身に纏っていた黒いローブをひらり、と翻した。それと同時にラビィは消えてしまった。が、
「!」
ローブを翻しラビィが消えるまでの一瞬、ラビィの瞳以外の肌・・・彼の上腕部が乱馬の目に入った。
右腕の上部に、なにやら不気味な花の刺青が施されていた。乱馬は、それを見逃さなかった。
「・・・消えた」
「な、何やったんや、今の・・・」
そんな乱馬の横では、良牙と右京が、そんな事を言いながら地面にペタン、と座り込んだ。
二人とも、ラビィが消えたことでそれまでの戦いでの疲労が身体に一気に押し寄せてきたらしい。
地面に座り込みながら、ラビィが消えた場所を見つそう呟く。
「・・・」
勿論、乱馬もラビィの言葉の意味を理解することは出来なかった。
一行は、暫くラビィの消えた場所を見つめながら呆然と時を過ごしていた。


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