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Bright or Black5

「改めてまして、私の名はミコト。アンティークショップの店主でもありますが、恋占いを得意とする占い師でもございます」

ゆらゆらとランプのオレンジ炎が揺れるアンティークショップの中は、まるで乱馬達を別世界に誘うかのような雰囲気を醸し出していた。
錆びたかっちゅうに、新品ならば需要のありそうな刀。
動物の剥製に、奇怪な紋様をあしらったツボ。
夜明けの風景を描いた、幻想的な絵画・・・明るい所で見るならばともかく、ダークオレンジの室内でそれらをみるといかんせん、不気味である。
加えて、魔法エッセンスの甘ったるい香りが鼻をつき、乱馬は若干頭痛を覚えていた。
そんな中、占い師ミコトがローブをずらし顔をハッキリと見せながら挨拶をした。
改めてみると、年齢はともかく随分と気丈な顔立ちをしている。
乱馬達も一応はそんなミコトへ頭を下げると、
「…貴方達が私を尋ねてくることは、だいぶ前から分かっておりました。勿論、来訪の目的がただの恋占いではなく…それは建前で、本当は伝説のカードのことと私を調べにきたということも」
ミコトは静かな口調でそう切り出した。
「!」
まるで、全てを予測していたようなミコトの言葉に、乱馬達は背筋に嫌な汗を掻いていた。
先程出会った時にあかねのことを言い当てたことも考えると、
「…あんた、ただの占い師じゃないな」
何者なんだ?
明らかに警戒心を抱いた目で、乱馬はミコトをみつめ呟いた。
いや、乱馬だけではない。
乱馬の後ろに控えている面々も、ミコトに対し疑念を抱いていた。
良牙とムースに至っては、もしものことを考え暗器や身に着けている武器替わりのバンダナをキュッと握っていた。
すると、
「私が不気味に感じますか?」
「あ、当たり前だろ。初対面なのにこんなこと言われたら、誰だって預言されてるみたいだと思うのが当然だ」
「預言…良い言い方をすればそうなるのかもしれませんね…」
「は?」
「ふっ・・・」
ミコトはそう言って、乱馬達に自嘲ぎみな笑みを浮かべた。
良い言い方をすれば預言
それはどう言う意味なのか。
「…あんた、一体何者なんだ?」
乱馬が改めてミコトにそう尋ねると、
「…私が生まれ育った街は、とても魔法研究がさかんな街でした。各家庭は子供の能力の有無に限らず魔法学校へと通わせました」
・・・相手に自分を信用させるには、まず自らの身の上話をするのが一番である。
ミコトはゆっくりとした口調で自らのことを話始めた。
「…」
乱馬達は静かにミコトの話を聞く。
「中でも我が家は、代々とある魔法の研究に熱心でした。私は子供の頃からよくその研究の実験台にされました」
「何の魔法を研究していたんだ?」
「…クロノス」
「なっ…!」
「時を司る禁断の魔法…おかげで、その魔法自体を習得しているわけではありませんが、まあおこぼれ程度に少しだけ先の未来が見える能力を身に着けてしまったのです」
ミコトの言葉に、一同は息を飲んだ。
…クロノスという魔法は、シャンプー達の話によると随分と稀少なものではなかっただろうか。
あのコロンでさえも知る必要がない魔法だとしたようなものだったはずだ。
案の定、
「クロノスは、研究したところで習得できる魔法、違う」
「あれはこの世に生をうけた時点で才能があるかどうか決まっている奇跡の魔法じゃ。それも、天文学的な確率の…一介の人間が研究をしたところで、簡単に使えるわけがない」
シャンプーとムースが、ミコトの言葉に反応する。
ミコトはそんな二人の言葉に特に反論する訳ではなく、静かに頷いた。
分かっている、とでもいいたいのだろうか?
一同がミコトの次の言葉を待っていると、
「…勿論、それを承知の上で研究をしてきたのです」
「どういうことだ?」
「クロノスという魔法は、生まれ持った奇跡的な出生確率で二大属性魔法を両方習得して、尚且つ四大属性魔法も習得。更に魔法発動に耐えられる肉体がなければ起こり得ない魔法…そうですね?」
「あ、ああ…」
「残念ながら我が一族には、四大属性魔法を修得すること以外は、クロノスとは全く縁が無かったのです」
「大体は皆、そうだろうな」
「そこで…私の父は考えました。自分達に足りない部分を、何か別のもので補えないかと。そうすれば、もっと簡単にこのクロノスを扱えるのではないかと。そして長年研究を重ねた結果、あるものを利用し媒体をつくることで…クロノスを修得することが可能なのではないか、という結論に辿り着いたのです」
「媒体…?」
「そう、媒体です。魔法自体をその媒体が発動すれば、魔導士自体の肉体負担は軽減されます」
「でも、クロノスって何かすげえ魔法なんだろ?媒体を作るったって、そう簡単には…」
素晴らしい家を作るのには腕の良い大工が必要なように、奇跡と呼ばれる魔法を扱う為の媒体を用意するのなら、魔法と見合うだけのものが必要なはずである。
乱馬がそうミコトに伝えると、
「…王子はご存じのはずですよ」
「え?ご存知って?」
「王子の身近にあるもので、奇跡の魔法と同じように、奇跡を起こすことができる物があることを…」
「おい、まさか…」
「その、まさかです。王子が集めてらっしゃるそのカード…それを全て集め、願うのです。カードの力で、クロノスという二十二枚目のカードを作るのです。そして、王子がお持ちのその剣もしくは同じ能力をもつ剣を作る」
「!」
「カードスロットに作り出したクロノスのカードを差し、最後に光と闇の二大属性の魔法を剣に注げば…」
「注げば…?」
「一振りで歴史を変えることが出来る魔法を放つ、魔剣・クロノスソードが完成する」
ミコトはそう言って、ため息をついた。
乱馬達は、あまりの衝撃的な話の内容に、声を出すことが出来なかった。
ミコトは再び話を進める。
「・・・父は、この研究の成果をノートに書き記しておりました。ところがある日、ふらりと街へやってきた山賊に、父のその研究ノートを盗まれてしまったのです」
「!何だって?」
「山賊は研究ノートを奪っただけでなく、父や母…そして街の人々を殺して行った。そう、私以外の者を全て・・・」
「…」
「研究なんてしたところで、魔法なんて人の欲望の前では無力」
ミコトは、そっと目を伏せながらそう呟いた。
と、
「せやけど…何かおかしない?」
それまでじっとミコトの話を聞いていた右京が口を挟んだ。
「あんた、少し先の未来が見えるようになってたんやろ?せやったら、押し入られたのが夜、云々じゃなく、そのこと、予測できたんちゃうの?」
「…」
「それに、街の人は皆、魔法に長けてたんやろ?一人くらいは魔法でその山賊に応戦できへんかってん?それとも、街の人が皆殺されたのにあんただけ生き残ったってことは…」
「…私だけ未来を垣間見て、その場から事前に逃げ出していた。もしくは私が、嘘をついている・・・そう言いたいのかしら?」
「そうとしか考えられへん」
右京は一見無茶な推理に思えるが、実は抱いて当然の疑問をミコトに伝える。
そう、よく考えてみると不思議な事だ。
魔法の研究が盛んな街ならば、攻撃系の魔法を研究していた者達だって多かったはずだ。
それが、いくら夜に山賊の急襲を受けたからといって、むざむざと殺されてしまうというのは妙だ。
ミコトの嘘か、それとも彼女が山賊と通じていて街の皆にあらかじめ何かをしたのか・・・そう考えても不思議ではない。
「・・・」
一体、どちらなのか。乱馬達がミコトの次の言葉を待っていると、ミコトは静かに首を左右に振った。
「・・・あの日私は、体調を崩し寝込んでいたのです。ですから、未来を垣間見る能力が鈍っていた。それに…」
「それに?」
「あの日、あの時は夜だった・・・でも、普段とは違う夜だったと、今は感じている」
「普段とは違う・・・?」
「街はあの夜、異常なまでに『闇』に包まれていた。星も月もない闇…家の灯を灯したとはいえ、充分な明るさを得られない暗さだった。そう、その闇はまるで、街の人々の魔力を・・・吸い取り生気を殺ぐかのように」
「!」
「我が家が山賊に押し入られたのは、私が家の地下にある倉庫へ、寝床で使う為の暖かい毛布を探しに降りていた時でした…戻った時には、家族は・・・」
「・・・」
「私は地下倉庫にいた為に、助かってしまった・・・私だけが、助かってしまったのです」
ミコトがそう呟き、キュッと唇を噛んだ。
「…」
何と言葉をかけて良いのか、乱馬達には分からなかった。
未来を垣間見る能力があったのに、自分の大切な人々をすぐ近くにいて救うことが出来なかった…その心痛、計り知れない。
・・・
「…それから私は、皆を殺し父の研究ノートを盗んだ山賊の正体を調べ突き止めたのです」
「もしかしてそれが…」
「そう…今は魔導士ラビィと呼ばれている男」
ミコトはそう言ってため息をついた。
「でも、ラビィの奴、研究ノートを盗んだところで何か得したのか?言い方は悪いかもしれないけど、山賊だったら金でも盗んだ方が…」
乱馬はそんなミコトに対し質問すると、
「…」
ミコトは「ええ」と小さく呟いた後、
「私も初めはそれが分からなかった。我が家にはそらなりに金銭も骨董品もあったのに…後日私が調べたら、我が家から盗まれたのはあのノートだけでした」
「…」
「ですが…」
ミコトがそこまで言うと、
「『闇』…」
「え?」
「事件が起きた夜街を覆っていた『闇』、あるな?」
それまで話を聞いていたシャンプーがそう呟いた。
その言葉にミコトは静かに頷く。
「おい…」
話の先が見えない乱馬がミコトとシャンプーに尋ねると、
「あの夜の『闇』…まるで私達の魔力を殺ぎ生気を奪っていたようなあの『闇』が、私にはどうしても気になったのです。たとえ夜押し入りがあったとはいえ、先ほど皆さんが思われたように、街中の魔導士をなんなく大量に殺戮するのは異常です。だとしたら…」
「あの『闇』自体に、強力に魔力を封じこめる力があった…」
「そう考えるのが妥当です。魔力を無効化し相手の能力や魔力を殺ぐ魔法など、たった一つしかありません」
「ま、まさか…」
「あの夜、街には強力な闇属性の魔法が掛かっていた。かけたのは紛れも無く、ラビィ…それが分かった時に、全てが繋がったのです」
ミコトはそう言って一息ついた。
「元々、奇跡的な出生確率の下で生まれ闇属性魔法を使えたラビィは、普段から闇属性魔法を用いて山賊行為を繰り返していた。そして偶然、私達が住んでいた街に立ち寄り、いつものように魔法を使い盗みを・・・」
「・・・」
「ところが、押し入った我が家で父のノートを目にしたラビィは、元々自分が持つ能力に幾つかのものが加えただけで・・・巨万の富どころか歴史を覆すことも可能な奇跡の魔法が手に入ることが判明した」
「…だからラビィは、世界中に散らばった伝説のカードを、今更集めているのか」
「既に闇属性魔法を使えるラビィにあと必要なのものは、王子が持っている分のカードと、全てのカードが一つになった後、スロットに差し込む為の剣…そして、光属性魔法を使える者」
「…」
「…ラビィにとって、王子はかなりの脅威でしょうね」
ミコトがぼそりと呟く。
「ああ、もうカードも九枚もってるし、カード専用の剣も持ってるわけだしなあ」
乱馬がそう答えると、ミコトはそれに対して明確な返事はせず、乱馬に小さく微笑んだ。
「ラビィは、父の研究ノートを手に入れた後、ありとあらゆる闇、暗黒系の魔法を習得し、その力を増幅させていると聞きます」
「・・・生まれ持って闇属性魔法が使える人物が、自らの意思で暗黒系の魔法を習得すれば、そちらも脅威じゃ」
「魔法同士の相性も良いし、危険あるな・・・」
ミコトの言葉に、ムースとシャンプーも呟く。
「・・・ただ。私はそれを知ったところで、自分にはラビィを止める力が無い事を知っている。だから毎日を失意の中で過ごしていました。そんなある日・・・突然、見えたのです」
「見えた?」
「王子が、カードを集める旅に出たことを。そして、王子が伝説のカードに精神を蝕まれず、魅入られない強い意志を持つ人間だと言う事も・・・」
「・・・」
「私は、それを希望の光だと感じた。ラビィの野望を打ち砕くのは王子しかいないと、思ったのです・・・だから、占った」
「・・・それで、俺達と今日、この街で自分が出会うと?」
「ええ。この街に王子達がやってくることは見えていました。だから私は、それをここで待てばよい・・・」
「・・・」
「リエン様には申し訳ないですが、彼にカードを手渡し何かが起こっても、王子がここへとやってくる運命ならば、『必ずリエン様は助かる』と分かっていました。ですから危険だとは思いましたがカードを手渡したのです」
「何でリエンが必ず助かるって分かるんだよ?」
ミコトの言葉に、乱馬は素直に尋ねる。
未来を垣間見る力の一環でそれが見えたといわれてしまえばそれまでだが、でも乱馬達がヒルダにやってくる運命ならばリエンが必ず助かる、というのは何だかそれとは別の話のような気がする。
乱馬が首をかしげていると、
「・・・それより王子、ラビィの恐ろしい野望を打ち砕きこの世界を救えるのは王子しかいないのです」
ミコトは、首をかしげていた乱馬に対して、明確に質問には答えない代わりに、そう呟いた。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。俺には、いきなりそんな事を言われても困るんだけど・・・そりゃ、子供の頃から勇者には憧れていたし、同じような旅ができるってのは喜んだよ。でも・・・」
「・・・」
「それに、そのラビィが探している光属性の魔法の使い手だって、何百年に一度生まれるか生まれないかの確率で現れるんだろ?俺も、それにラビィもお互いが生きているうちに出会えるかどうかだって怪しいし・・・」
それに対し、乱馬は慌ててミコトに弁解をし自分の率直な思いを告げる。
・・・そう。
以前から何度も言ってはいるが、乱馬がこの「伝説のカード」を集める旅に出たそもそものキッカケは、「彼が時期王位継承者としてふさわしい人物である」ということを、自国の国民に形として示して見せる為だった。
そういう心積もりでこの旅に出ているのに、急にその目的に「世界を救う」「奇跡の魔法を求める相手の野望を打ち砕く」を加えろといわれても、困惑してしまうだけだ。
しかもその倒すべき相手は、何百年に一度の確率で生まれ習得することが出来る魔法の使い手で、それに加えてもう一人、この世界のどこかにいるか居ないか分からない相手も探さなくてはいけないという。
ココまで来ると、もはや一国の王子である乱馬ではなく、もっともっと大きな国の王や、コロン級の実力のある魔導士、学者などに相談した方がよいのではないか?
「・・・」
乱馬がそうミコトに伝えようと彼女を見つめると、
「王子」
それよりも一瞬早く、ミコトが乱馬に対して口を開いた。乱馬は、ビクリ、と身を竦める。
「・・・王子。私が今王子にした話、きっと今の段階では想像も出来ないし先も見えないし、ご自分の手には負えない出来事だとお思いになられているでしょう?」
ミコトは、乱馬の心中を察してなのか、静かな口調でそう呟く。
「ま、まあな」
当然、そう思っている乱馬はそんなミコトに対して素直に答えるが、
「ですが・・・貴方はやがて、『ご自分の意思』で、このことに関わりそして動き出すでしょう」
ミコトは、それまでとはワントーン下げた低い声で、乱馬に対して呟いた。
「俺の・・・意思?それはどういう・・・」
今は何も想像できなくて、自分には関係がないのではないかと思っている乱馬が、何故自らの意思でこの件に関わりを持つようになるのか。
乱馬が不思議に思ってミコトに聞き返すが、ミコトはその答えを決して、乱馬には告げようとしなかった。
その代わり、
「・・・自ら関わりを持つ貴方には、やがて大きな苦しみや、焦りがもたらされるでしょう。それを乗り越え、ラビィの野望を打ち砕けるかまでは、残念ながら私の能力では見ることが出来なかった」
「・・・」
「ですが・・・」
「な、何だよ」
「Bright or Black」
「ブライト オア ブラック?」
「世界を救い、貴方が『本当に手に入れたい』と願うものを手に入れるには、どんなことがあってもそれを信じる力が必要です。未来を信じて前に進む力が、必要になるのです」
「俺が・・・本当に手に入れたいもの?」
「苦しくても辛くても、それでも未来を信じ続ける強い心があれば、王子・・・貴方が進む未来には、必ず光がさすでしょう」
ミコトはそういって、突然、話を真剣に聞いていた乱馬の頬へそっと、手を添えた。
「!?」
何の脈略もなく突然ミコトに触れられた乱馬は、びくっと身を竦めるが、
「Bright or Black・・・この言葉を、絶対に忘れてはいけませんよ」
ミコトが、そんな乱馬に対して再び低い声でそう呟いたので、乱馬は無条件にそれに対して頷いていた。
真っ直ぐに、ミコトの瞳は乱馬を捉えていた。何だか、瞳のその奥にあるものまで見透かされているかのような力のある、ミコトの瞳。
乱馬は、背中にゾワゾワとした悪寒を走らせていた。
「わ、わかったよ・・・」
乱馬は、ミコトから目をそらし、そして彼女の手から逃れる。
そんな乱馬の胸は、異常にドキドキと鼓動をしていた。
もちろん、あかねに対して感じるトキメキの鼓動とは異なり、恐怖から起こった鼓動だ。
「・・・」
・・・何だか、ただ話を聞いていただけなのにも関わらず、途中から占いというか預言をされていたかのような感覚だった。
ミコトの言葉は、正直言って乱馬には全て理解することは出来なかった。
でもほんの少し先の未来を垣間見ることが出来る彼女が言う事だ、きっと彼女には「何か」が見えているのだろう。
ゆえに乱馬にこう、告げているのだ。
それが何かは分からないが、内容が内容だけに、乱馬は急激に不安を覚えていた。
「・・・」
乱馬は、ドキドキと鼓動する胸を押さえ、再びミコトへと目線をやる。
本当は、今の言葉について、もっとミコトから色々と聞いておきたい。
でも、もしも他に・・・ミコトから聞きだすことが出来る情報があるのならば、先にそちらを聞いておいた方が良いのか。
それを聞いているうちに、この胸の鼓動も少し収まるかもしれない。
・・・
「あんた、他に何か俺達に話すこと、あるか?俺達、あんたが知っていることを全部聞きたいと思って、今日ココへ来たんだ。それはあんたも分かってるよな?だったら今の話の続きよりも先にそっちを・・・」
乱馬は、ミコトに再び話しかけた。すると、
「・・・これ以上、王子にお話しすることは何もございません」
「・・・」
全部か、と聞いているのに、ミコトの答えは少しぶれている気がした。
それが若干気になりつつも、乱馬が再び黙ってしまうと、
「それよりも、未来を垣間見る能力があるのに、何故恋占いを専門としているあるか?」
そんな風に黙り込んでしまった乱馬の横から、それまで大人しく話を聞いていたシャンプーが、急に口を挟んだ。
シャンプーにしてみれば、きっかけはどうであれ自分達にはない特殊な能力を持つミコトが、何故恋占いだけでその能力を他に発揮しないのかが気になったのだろう。
すると、
「・・・恋占いで良い結果を見ることが出来た時ほど、喜ばしいことはない。女ならば、分かるでしょう?」
「それはそうあるが・・・」
「人は、欲深いものです。時には強引にその未来を変えさせるように願う者もいるでしょう。他の占いに比べれば、恋占いならばそれほどその要請も多くない。最も・・・変えられるような未来ならば初めから、見えるけれど」
ミコトはそういって、そっとため息をついた。
子供の頃からの親の研究の影響で、はからずしも身につけてしまった能力。
時には驚異的に思える能力も、大切な人々を守ることが出来なかったことで、ミコトにとっては重荷でしかなかったのかもしれない。
それでも、その能力と向き合って自分が生きていかなければならないとしたら、せめて明るい未来を見ることが出来ることを・・・それが、彼女にとっては「恋占い」だったのかもしれない。
人にはそれぞれ、事情があるものだ。一同は、ミコトの話を聞きながらそんな事を感じていた。
と。
「・・・最後に一つ、質問があるのじゃが」
それまではシャンプーが、ミコトに質問をしていた。が、そんなシャンプーの質問に対してミコトが回答したのを受け、今度はムースが、ミコトに質問をするべく口を挟んだ。
ところが、
「・・・その答えは、明日、分るでしょう」
ミコトは、ムースが質問を口にする前にはっきりとそう答えた。
「!?」
ムースは今、「質問がある」としか言わなかった。それなのに、この回答は一体、どういうことなのか。
まるで事前に、ムースが今、何を質問しようとしたのかを知っていたかのような口ぶりだ。
いや、今の質問が分かっているのなら、シャンプーの質問だって分かっていたはずだ。なんせ彼女は今日ココで乱馬たちと自分が話しをするということが見えているくらいなのだから。
それなのに、ムースの質問だけはこのような形で回答をした。
・・・これには何か意味があるのだろうか?
ムースは勿論のこと、乱馬達も不思議で仕方がない。
「未来を見る力ってえのはすげえもんだな」
「不思議だな」
「いやー、何か怖いなあ。でも便利っちゃあ便利やね」
乱馬、右京、良牙はそれに対して特に深くは考えずに、そんな事を言いながらお互いの顔を見合っているが、
「・・・それはどういう意味じゃ」
ムースに至っては、明らかに表情を強張らせミコトをじっと見据えていた。
シャンプーも、その様子を見守っている。
ミコトは、そんなムースの瞳をまっすぐ、見つめ返した。
ムースがその瞳に怯むことなくミコトを睨み付けると、
「・・・明日、正午にここに来なさい。そうすれば全てが明らかになる」
「明日の正午?それはどういう意味じゃ。明日の正午に、おぬしに会いに来いということか?」
「・・・来れば分る」
ミコトはそういって、口を閉ざしてしまった。
それ以降は、ムースが何を聞いてもミコトは語ろうとはしなかった。
どうやら、「これ以上はもう本当に話すつもりはない」という、彼女の無言の主張のようだ。
「・・・」
ミコトがそうする以上、これ以上は何かを聞き出すのは難しいだろう。
取り合えず、明日の正午にココに来れば全てが分かるというのなら、それに従うのが一番だ。
乱馬たちもそれ以上はミコトに何も聞かず、すっきりとしない部分もあるにはあるが、アンティークショップを後にした。
そして、あかねが待つ東風の医院へと戻っていった。


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