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Bright or Black4

・・・その一方で。
乱馬達がリエンの屋敷へと向かって程なくした頃。
乱馬たちとは別行動で一人東風の医院に残っていたあかねは、診療室の中で東風と、物も言わぬまま見つめあっていた。
久しぶりに会ってから数時間しか経っていない、
しかもほんの少し一緒にいて見せた仕草で、絶対に隠しておかなければならなかった事を、あかねは東風に見破られてしまったのである。
あかねが、「絶対に隠しておかなければならなかった事」・・・そう、それはあかねの視力が急激に低下しているという事である。

否定をしたい、誤魔化したい。
出来る事なら、「そんなことありません」と平静を装って言ってしまいたい。それが、あかねの本心だった。
ただ、こんな風に真っ直ぐ自分を瞳に捕らえる東風を納得させる程の嘘を、突き通せる自信などあかねには全くなかった。
・・・

「・・・」
でも、自分からはまだ話す訳にはいかない。あかねがそんな事を思っていると、
「・・・何か事情があるんだね、その様子だと」
東風が、そんなあかねの心情を察しでもしたかのように語りかけてきた。
「・・・」
あかねは、思わず東風から目をそらす。すると、
「視力を失う程の病気の原因を隠しておきたいなんて、よっぽどの事だね。もしかして・・・王子に暴力でも振るわれて怪我でもしたのかい?」
「ちっ・・・違います!」
「僕が見た限りじゃ、王子は間違いなくあかねちゃんの事を好きみたいだ」
「そ、そんなこと・・・」
「あかねちゃんも、そうなんじゃないのかな?それも、分かるよ」
「わ、私は・・・」
「・・・でも、それなのに君達はまだ深い関係を持っているというわけではなさそうだ。許婚同士の、しかもお互い好き合っている二人が関係を進めないのには、きっと原因があるんだろう?それが王子の暴力というのなら・・・」
「違う!乱馬は、乱馬はそんな事しない!私がそうしないのはっ・・・」

・・・もしかしたら、ずっと一緒にいてあげることが出来ないかもしれないから。

「・・・」
喉のすぐそこまでこみ上げていた言葉を、あかねは慌てて我に返って再び心の奥底へと飲み込んだ。
そして、首を左右に振り、唇をきゅっと噛み締めて俯く。
・・・嫌いだから、問題があるから、彼との関係を進めようとしないのではない。
好きだからこそ・・・心から彼を大事に思うからこそ、少し先の未来を知っているあかねは立ち止まり戸惑っているのだ。
確かに乱馬は、難しい事は苦手だし、時々子供みたいに負けず嫌いだし妙に自信過剰だし、駄々っ子でバカ扱いされる事も多いけれど、
でも乱馬のそんな部分よりももっと、もっと多くの良い部分を、あかねは知っている。
きっと乱馬は、今あかねを襲っている事実と事情を話せば、この旅を中止にして一緒に国へ帰ると言い出すに決まっている。
そう、彼は優しいのだ。あかねに対しては本当に優しいのだ。
それも、分かっていた。
でも・・・だからこそそれに甘えてはいけないと、あかねは思っていた。
彼は、あかねの許婚だ。でも、一国の王子でもある。
彼の下には、将来多くの民がつく。民が、彼を王として必要とする日が必ずやってくるのだ。
その為に必要なこの「カードを集める旅」を、あかねの事情などで取りやめにさせるわけにはいかない。それが、あかねの思いだ。
彼は、旅を続ける。あかねは、旅の初めの占いでは途中光を失い、彼とは行動を別にし一人、国へ帰る。そしてその途中・・・
・・・
それが変えられない運命というのなら、少しでも長く一緒にいて、彼にできる限りのことをしてあげたい。
この先、もう一緒にいることが二度と出来ないというのなら、尚更だ。
だからこそ、今東風の質問に答えるわけにはいかなかった。
あかねは、何があっても「その時」が来るまで旅を続けたいと、思っているのだ。
・・・
「自分には何の異常も無い。だから、このまま旅を続けるのには何の支障も無い」
そう、思いたかった。東風に対し嘘を突き通す自信が無くても、そう思っていたかったのだ。
「・・・」
あかねがそんな事を思いながら唇を噛み黙り込んでいると、
「・・・そうかい。じゃあ本当のことを話してくれないのなら仕方がないかな」
東風が、そんなあかねに穏やかな口調でそう呟いた。
あかねの口に出せない事情を穏便に、そして再び気づかないでいてくれるというのだろうか?
あかねが顔をゆっくりと上げると、東風はそんなあかねの肩をぽん、と叩きゆっくりと椅子から立ち上がった。
そして、黙り込んでいるあかねの傍から一旦離れ、窓際のブラインドをシャッ・・・と閉めた。しかも、部屋にあった二つの窓のもの、両方だ。
夕刻でまだ明かりをつけていなかった診療室内が、一気に暗くなった。
東風は次に、診療室の入り口に歩きドアノブのあたりをいじっていた。
カチャン、と乾いた音が室内に響く。どうやら、内側から鍵をかけたようだ。
「先生・・・?」
話の途中に、一体どうしたのだろうか?
あかねがそんな東風の姿に首をかしげていると、東風は診療室の隅・・・ベッドを目隠ししていた薄いカーテンをシャッ、と引きあかねの目にベッドを見せた。
「先生?」
シーツでも、敷き直せとでもいうのだろうか?
でも、確かそのベッドはシャンプー達が綺麗にしていたはずじゃ・・・あかねがそう思いながら再び東風に呼びかける。
東風はそんなあかねの傍に、ゆっくりと歩み寄ってきた。そして、穏やかだけどハッキリとした口調で一言、言った。
「・・・服を脱ぐんだ、あかねちゃん」
「なっ・・・」
「今なら、皆いない」
東風はそう言って、じっとあかねを見つめる。
「先生、どうしたの?何で急にそんな・・・」
・・・服を脱ぐ、ということは身体を見られるということ。裸になるということだ。
一体急に、どうしたのというか・・・あかねの胸が急激に何度も鼓動した。
「いいから、脱いで。そしてそのベッドに横になるんだ」
「先生!ちょっと待って・・・どうして急にこんなっ・・・」
「王子と君が深い関係であるならば王子に気を使うところだけど、そうでないのなら遠慮することはないかなと思ってね」
「!」
「早く。人が来たら困る」
東風はそう言って、動揺し身を竦めていたあかねの手首を強引に掴み、ベッドへ引っ張った。
あかねの身体は、いとも簡単にベッドへと押し倒され、東風に押さえつけられてしまった。
「先生っ・・・」
薄暗い診療室の中、ベッドの上で東風に押し倒されたような形になったあかねには、言いようのない恐怖が襲いかかっていた。
・・・初めて出会った時から、他の男性とは違う優しさや男らしさを感じていた、東風。
姉のかすみが彼と結婚をすると聞いた時、嬉しい反面言い知れぬ寂しさも感じた事があった。
それでも、これからは「義兄」として慕っていけるのだと、東風の事を心から慕い頼りにしていたあかね。
だからこそ、この旅で宿に困った時彼のことを思い出し、きっと力を貸してくれるだろうと、頼ったのだ。
それなのに、これは何だ?
たった今、「あかねちゃんも王子の事が好きなんじゃないのかな」と、あかねに聞いたあれは何だったのか?
・・・
「やだっ・・・やだっ・・・」
ベッドから逃れられないように手首を掴まれ、そして服を脱がされそうになっているあかね。
あかねは必死に身体を捩り抵抗をしながら、怯えた表情で東風を見る。
それでも全く変わらない彼の態度に、
「や・・・乱馬っ・・・乱馬ー!」
あかねは、無意識の内に乱馬の名を、叫んでいた。
助けに来てくれるはずが無い事は分かっているのに、それでもあかねは必死で叫んでいた。
すると、
「・・・大丈夫、落ち着いて」
怯えきって身体を震わせ、そしてボロボロと涙を流しているあかねに対し、東風が強引に押さえつけている力とは対照的な柔らかく優しい口調でそう、呟いた。
「僕は医者だ。それに君は義妹であり、国王のご子息の婚約者でもある。しかも君達がお互い好きあっているのを知っているのに、妙なことなんてしない。僕だって、妻をとても愛しているしね」
「先生・・・」
「そうではなくて、皆がいない内に、診療した方があかねちゃんにとってもいいだろう?だから、服を脱いで欲しいと言ったんだ。王子と『そういう関係』にあるというのなら、一応は王子に断った方がいいかなと思っただけだよ。大丈夫、神に誓って・・・君が思ったような妙な事はしない」
東風はそう言って、押さえつけているあかねの手を離した。
あかねは東風の手から逃れ、首を左右に振りながら背を向ける。
東風はそんなあかねをじっと見つめた。
ただ目線は、自分の手から逃れ少し乱れた服をかき合わせながらカタカタと震えるあかね・・・自身ではなく、
彼女が服をかき合わせ自分に背中を向けた為に少しだけ顕になった彼女の「肩」と「腕」に注がれていた。
・・・白くて細くて、とても華奢な腕だった。
だが・・・少し見ただけなのに、随分とキズや痣があった。
恐らく、知らず知らずして旅での戦いをこなしている内に、ついてしまったものだろう。
女性は、気づかないうちに痣などを作りやすい。
だから、あかねだけでなく旅を共にしている他の二人も、それなりに痣はあるだろう。
だが・・・視力が衰え、人よりも転んだりぶつかったりする回数が、あかねには多いはずだ。
それに、もしかしたらそのせいで体力だって落ちているかもしれない。だから、あかねのキズや痣は二人よりも多いはずだ。
そしてそれは同時に、 彼女の状態があまり良くないと言うことを物語っているという事。
この腕を、肩を王子が見たらきっと放っておかないだろうに。東風は感じていた。
「・・・」
その一方で、あかねは東風にただ背を向け震えていた。
涙も、次から次へと流れ出てくる。
・・・東風が自分を押し倒したのには驚いたが、その真意を聞いて安心をした。
だが・・・その真意を知ったところで自分は、その東風の優しさや好意を素直に受ける事ができない、ということも感じざる得なかった。
あかねにだって、分かるのだ。
東風が言ってくれたとおり、ここで東風にきちんと診療してもらえば、きっとあかねの身体が今、どうなっているのか分かるだろう。
彼は名医だ。きっとあかねに最高の治療を施してくれるに違いない。
でも治療となれば、絶対にあかねは乱馬の側から離れなくてはならないだろう。
だが…忘れてはいけないのだ。
あかねがこの旅で、乱馬の元から離れ一人になった時…あかねの時間はそこで止まるということを。

「あたし…」
「ん?」
「あたし…まだ…」
「まだ?」
「乱馬の側にいたい…だから、まだ・・・」
あかねは、長くてくるんとした睫毛を伏せ、閉じた瞳から涙を溢れさせそう呟いた。
薄暗い室内でもボウッと光るあかねの白い肌が、カタカタと小刻みに揺れながら、彼女のその主張を強調する。
「あかねちゃん…」
東風はそんなあかねをじっと見つめていた。
彼には、何故あかねが治療に対しここまで頑固に拒むのか、そして怯えた様な態度をとるのか全く理解が出来なかった。
詳しくは診療してみないと分からないけれど、彼女はまだ若い。
先程も言ったとおり、若さゆえに治りも早いが進行も早い。
成人ならば何年もかかることが半年や一年でそれを迎える事もあるだろう。
ただ、完全に失明しているわけではないわけだし、場合によっては国へ戻りきちんと治療すれば、すぐに良くなる可能性は高いのだ。
特に、あかねは一国の王子の許婚だ。
彼に事情を話せば、きっと出来る限り最高の手段を使ってでも彼女に光を・・・大きな光を再び与えてくれるように尽力をするはずだ。
それなのに、何故それを拒むのか?
そんなに、王子と離れ離れになり治療を受けるのが嫌なのか?
好きだから、相手と一時も離れたくないその気持ちは分かるが、何かが変だ。
それに、あかねらしくない。
「…」
昔からあかねを知っているが故に、東風にはあかねのこの涙の意味や様子が分からなかった。
だが、彼女の真意は今理解する事は出来なくても、彼女が今流しているこの涙が本物だということは・・・分かる。
・・・
「…」
東風は、自分に背を向けて泣きながら震えているあかねの頭を優しくポン、と叩いた。
「…」
あかねが涙でぐちゃぐちゃな顔で東風をゆっくりと振り返ると、
「分かったよ、あかねちゃん・・・強引な事をして、悪かった。驚かせてしまったね」
「・・・」
「でも、これだけは言わせて貰うよ、あかねちゃん。僕が見る限りだと、あかねちゃんの目はこのままだと確実に失明してしまうだろうね。君はまだ若い、きちんと治療を施せば直るのも早いけど、裏返せばその分、進行も早いんだ」
「・・・」
「だけど僕が知らない何かをきっと、あかねちゃんはまだたくさん抱えているんだね・・・だったら、治療を受ける気持ちになるまで、出来るだけ僕は待つよ」
「先生・・・」
「その方が、あかねちゃんにも良さそうだ。ただし・・・もしも僕が見ている範囲内で、僕が危険だと判断した場合は状況いかんせん、治療を始めさせてもらう。王子にも、話す。いいね?」
東風はそう言って、自分はベッドから離れ目隠しカーテンをシャッ・・・と閉めた。
あかねが乱れた服を自分に見られることなく直せるよう、気を使ってくれたのだ。
「ありがとう・・・先生」
あかねは、東風に小さな声でお礼を言うと、ノロノロと乱れた服を直し、カーテンを開けた。
東風は姿を見せたあかねの頭を優しくポン、と叩いた。そして、
「…さ、ボチボチ支度をしようか。そろそろ、健康診断を受けに皆がやってくる」
「はい…」
「宜しくね。今日は忙しくなりそうだ」
東風はそう言って、先ほど閉めたブラインドを再び開けて、室内に電気を灯した。
診療室入り口にかけた鍵も開けて、ドアを開放する。
・・・そう、本来今夜ここでは健康診断が行われる予定があり、あかねはその手伝いの為に残ったのだ。
当初ここに残った理由を、コレまでの出来事に頭を支配されて危うく、あかねは忘れそうになっていた。
「・・・頑張ります」
あかねは袖で涙を拭い、東風に頷いてみせる。
東風は、そんなあかねに対し先ほどの話をすることはもう、無かった。
そして、
「医者先生ー、よろしく頼むよ」
「おっ、可愛い看護婦さんだね!新人さんかい?!」
「いや、こりゃべっぴんさんだねえ・・・お姉さん、恋人はいるの?俺、立候補しちゃおうかな」
程なくして。予定していた以上の人数でドヤドヤと漁師連中が医院へとやってきた。
海の男は、言葉も仕草も豪快だ。それに加え、やってきた途端に、中で待機していたあかねを見つけてはそんな事を叫んでいる。
「あ、あの・・・」
あっという間に若い漁師連中に囲まれてしまったあかねは、オロオロとしてしまった。
「あはは、ダメですよ。彼女は僕の妹なんですからね。それにちゃーんと決まった相手もいますから」
そんなあかねを、さりげなく笑顔でそう言いながら東風が漁師連中から守る。
「なんだー、残念だなー・・・」
「ねえねえ、でも名前は教えてくれてもいいだろ?」
「あ、あかねです・・・」
「あかねちゃんて言うの?かっわいーなあ、オイ!いやあ、相手の男が羨ましい限りだよ!」
「はいはい、皆さんおしゃべりはそれくらいにして。健康診断を始めますからね」
「ちぇーっ、医者先生のガード、厳しいなあ。あかねちゃん、また後で話そうね」
漁師連中は、東風の指示に従って服を脱いだり診療を受けたりし始めた。
身体も大きく豪快ではあるが、根は素直のようだ。
あかねは、さりげなく助けてくれた東風に感謝をしつつ、
とりあえず今は余計なことを考えずに手伝いに集中しよう
「・・・」
この手伝いで妙なへまをしでかしたら、それこそ噂になりかねない。変な形で自分のことが乱馬の耳に入るのは嫌だった。
頑張ろう。自分に与えられた仕事をまずは、こなそう。
あかねはそう心に決めて、医院の中を動き回ることにした。


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