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Bright or Black1

「カード」に精神をのっとられ市場を独占し民を困らせていた大商人・リエンとの戦いを終え、

武器屋でもあり、戦闘の腕は勿論防御魔法にも長けるムース
そして、料理の腕と商売根性は天下一品。普通の街娘よりも力はあると思われる料理人・右京

・・・カードも手に入れ、そしてそんな新たな仲間を二人増やした乱馬たちは、山村にある宿から次の旅の舞台へと出発をした。
とはいえ、山村から次の目的地・ヒルダまではもうそんなに遠くは無い。
半日程山道を進むと、それまで緑に覆われていた景色が急に開け、途端に海が広がった。
そう、目的地のレイディア大陸でも三本の指に入る商業都市ヒルダに、一向は到着したのである。
ウォータークールがセルラ大陸の玄関口なら、ヒルダはレイディア大陸の玄関口。
港には所狭しと大陸間を行き来している船が寄せられ、広い道には商売を営む人々が溢れていた。
ぼやぼやしていると、行き交う人々の邪魔になってしまいそうだ。
・・・

「えーと…宿はどこにしようか」
ヒルダの町に入った一行は、まずレストランに入り食事をとったあと、今夜の宿について相談をした。
ヒルダの町では、リエンの屋敷に再び赴き、
彼がカードに精神を乗っとられた行きさつ、そして乱馬たち以外にカードを集めているという「ラビィ」という魔導師について聞いてみるつもりだった。
そのアポイントは夕方からなので、宿はそれまでに探して置かなくては行けない。
リエンは自らの屋敷に宿泊しても構わないといってはくれていたが、
流石に仕方が無かったとは言え、乱馬たちは仮死状態になるほどリエンを怪我させてしまったわけで・・・その日の夕食だけご馳走になることにし、宿は自分達で取る事にしたのだ。
とはいえ、ヒルダの町は広い。
町の入口にあるモンスター換金所に置いてあったパンフレットを広げてみたものの、ホテルだけでも二十近くあった。
しかも、どれも値段が良心的ではない。
パーティの人数が多い乱馬達には非常に苦しいものがあった。
最悪、町の中でも野営は出来るが、男の乱馬ならともかく、女の子のあかねを始めとする面々にはせめて町にいるとき位はきちんと宿で寝かせてやりたいと乱馬は思っていた。勿論、願わくばあかねの横に寝れるのならば申し分ないのだが。

「この町、商業都市。旅人の数も多いね。値段高いのは分かるが、早く決めないと、この人数で泊まることも難しくなるある。パーティが分散する、あまり良くない」
パンフレットとにらめっこをしている乱馬にシャンプーが呟いた。
「それに、ぐずぐずしていると、アポイントの時間になるだ」
ムースも、乱馬をせかせるかの様に追い討ちをかける。
「わ、分かってるけど・・・」
頭では勿論二人の言う事も分かっているつもりではあるが、元々決断力が抜群にあるわけではない。
それに急かされればせかされるほど、人間は慌てて通常通りの力を発揮できないものだ。
「おい、バカ王子早くどうにか決めろって」
「う、うるせえなっもうちょっと待ってろ!」
更に良牙にも急かされながら、乱馬はパンフレットとにらめっこをして宿の見当をつけるのに必死になっていた。
・・・そんな乱馬の姿を他所に、あかねは一人みんなの会話には加わらずに考え事をしていた。
別に体調が思わしくないというわけではなかった。今日は比較的体調も安定していた。
そうではなく、皆で探している「宿」の心当たりが、あかねにはあったのだ。
ただ、確実にそこに泊めてもらえるというわけではないし、安易に口に出して皆を期待させ、でも泊まる事ができなくてがっかりさせるのは嫌だった。
それゆえ、中々皆に言い出せずにいた。
が、乱馬が皆に言い寄られて困っている時に、自分が心当たりがあれど黙っていると言うのは、流石のあかねでも気が引けた。
「ん?あかねちゃんどうしたん?」
「あの・・・私ちょっと・・・」
「トイレ?」
「あ、まあうん、そんな所・・・すぐ戻るから、ちょっと待ってて・・・」
「それはええけど・・・?」
あかねは、ガタンと椅子を後ろに引き立ち上がった。
そして、不思議そうに自分を見る右京に適当に断った後店から出た。
幸い、乱馬を含む他のメンバーは宿決めに夢中で、あかねが席を立った事は分かったが店の外に飛び出した事は気がついていないようだった。
「・・・」
・・・あかねは、レストランを出てヒルダの街の中心部に向かって歩き出していた。
あかねは、勿論この街出身ではない。皆と一緒の、セルラ大陸にあるティルトン国出身である。
ティルトンを出たことも、そしてヒルダに来た事も、この旅が初めてだった。
そのあかねが、何故宿の心当たりがあるのか・・・それは、彼女の家族構成に端を発する。
あかねには、すでに嫁に行っている二人の姉がいる。
一人は、もっと別の大陸に住む商人と結婚しそちらで商売を営んでいるのだが、もう一人の姉は、ティルトンの街郊外に新居を構えていた。
彼女の夫は、宮廷医師・・・つまり、乱馬が居た城に使える専門の医師。
名は、東風という。
その腕は確かで、城での勤務が無いときは、色々な大陸を渡り歩いてはその医術を恵まれない人々に施していると、あかねは聞いていた。
その活動の為に勿論彼はこのレイディア大陸にも来る事があるわけだが、
確かレイディアでの拠点をこのヒルダに置いていると、あかねは聞いた事を思い出したのだ。
「東風先生・・・こちらに来ているときならばいいんだけど・・・」
あかねと東風は勿論、顔見知りであった。
初めて出会ったのは、あかねの姉・かすみと東風が婚約したと、知らされた時。
男嫌いで負けず嫌いだったあかねではあったけれど、
「君があかねちゃんかい?かすみさんからお話は良く聞いているよ・・・よろしくね」
・・・そんな風に優しく話しかけられ、握手をするためにそっと手を差し伸べられたあの時のことを、あかねは良く覚えていた。
男の人の中にも、こんなに礼儀正しくて穏やかで、そして大人がいるのだと。あかねは不思議な気持ちになった事をふと、思い出した。
二人が結婚をしても、あかねは良く二人の下へ遊びに行っていた。
特に用が無くても、何故か二人に会いたくて・・・何度も何度も、足を運んだ。
時々胸が苦しくなって、少し寂しくなった不思議な感じがあったけれど、特にその気持ちの正体は考えずにあかねは二人の下へと通っていた。
でも、乱馬が道場にやってくるようになってからはそういえば、一度も会っていない。
あの時に味わっていた苦しさとか寂しさとかも、なくなっているような・・・何とも不思議だ。
・・・
「ええと・・・病院ぽい所に入って聞けば分かるかしら・・・」
あかねは町の中心部・・・石畳に噴水が設置されている三百六十度見渡しの良い広場までやってきて、とりあえず「病院」という看板を探した。
東風は医師だし、その同業者ならば彼のことを知っていると、考えたのだ。
案の定、見つけた小さな病院の中で東風の事を聞いてみると、
「ああ、若先生ならさっきの船でこちらに到着したはずだよ。今日からしばらく、ヒルダの漁業組合の健康診断があるから、その手伝いに来てくれたのさ」
「本当!?」
「ここから少し行った所に、レストランがあるんだけど・・・そのレストランの二軒隣が彼のこの街での家さ。治療もそこでやってくれるよ」
「ありがとう!」
・・・なんと、東風がこの街で医院を構えている場所は、乱馬たちが宿の打ち合わせをしているレストランのすぐ傍だった。
あかねは教えてくれた病院のスタッフへお礼をいい、再びレストランまで駆け戻った。
そして、教えられた建物へと入ってみる。
ヒンヤリとした空気に、ツン、と時折薬品の香りがする。
もしかしたら、こちらに到着早々薬の調合でもしているのかもしれない。
ティルトン郊外にある自宅兼診療所ならば色々と器具はそろっているし薬も多いけれど、時々しか来ないこの街では、同じようにそろえるのはきっと時間もかかり大変なのだろう。
・・・
「あのー・・・」
自分達が頼る事で東風の仕事を邪魔してしまうのは申し訳ないが、でも頼る人は今、彼しかいない。
玄関のすぐ脇にあった小さなベルをチリンチリンと鳴らし、あかねは申し訳ない気持ちを抑え早速中へと呼びかけてみる。
すると、
「はいはーい、どうしましたか?」
明るいけれど柔らかい、男性の声が中から返ってきた。
聞き覚えのある、温かい声だった。
「あ、あのっ・・・先生っ・・・」
・・・ドクン。
何故だか分からないが、あかねの胸が急に鼓動をし、身体中に熱い電流のようなものが流れた。何だか上手く声も出てくれない。
あかねがそんな状態のままその場所に立っていると、
「はい、どうしました・・・あれ!?あかねちゃんじゃないか!久しぶりだね、どうしたの?旅行かい?」
中から白衣姿の東風がやってきて、玄関に立っているあかねを見つけるや否や笑顔を見せた。
少し前に船旅でこのヒルダに着いたのだから、本当は少し休みたいと思うほど疲れているはずだ。
それに、仕事でココに来たのだから準備だって忙しい。なのに、突然訪ねてきたあかねにそんな姿を微塵も見せない彼。
その温かくて優しくて、そして懐かしい笑顔にあかねの胸が異常に高鳴る。
「あ、あの私・・・」
「どうしたの?どこか具合が悪いのかい?」
東風が、少し背をかがめてあかねの顔を心配そうに覗き込む。
「・・・っ」
ドクン
再び、あかねの胸が大きく鼓動をした。
もちろん、異性に・・・そう、乱馬に顔を近づけられたときももちろん胸は早鐘のように鼓動をした。
でも、東風にこんな風に、しかも業務的にだと分かっているのに顔を近づけられただけでこんなに胸が鼓動するのはどうしてなのか。
「ち、違うんです、実は・・・」
「ん?何だい?」
「実は・・・」
あかねは胸の鼓動を誤魔化すように東風から顔を背けた。そして自分達を取り巻いている現在の事情を話し、ようやく宿についての相談を持ちかける事が出来たのだった。

一方。
「あれ?そういえばあかねは・・・?」
宿の相談に必死になっていた乱馬は、しばらくしてから、先ほど席を立ったまま空席になっているあかねの席を見てそう呟いた。
「さあ・・・トイレちゃうの?すぐ戻るって言ってたけど」
それに対して、席を立つ前のあかねと会話を交わした右京が答えるも、
「すぐって・・・でも遅くないか?」
「女の子には色々とあるんやって」
「そりゃそうだけどでも・・・」
乱馬とて、先ほどあかねが席を立ったときには、トイレにでも行ったのかと思っていた。
でも、それももう三十分ほど経つ。
いくらなんでも長すぎるし、もしトイレであったにしろ、倒れていたりする可能性だって捨てきれない。
「・・・」
最近のあかねは、何だか体調が悪いのではないかと思うような時もある。
まさか・・・と、乱馬が宿のパンフレットをテーブルに置き、レストランの奥にあるトイレのほうをちらちらと覗き込んでいると、
「あ、あれ・・・あかねちゃんやん」
「ホントある」
そんな乱馬とは逆に窓の外へと視線をやった右京とシャンプーが、そう呟いた。
乱馬もその声に従い窓の外へと目をやると、そこには確かにあかねがいた。
でも・・・一人ではなかった。
すらりと背の高い、見たことも無い男性と一緒であった。
眼鏡をかけ、端正でかつ知的な横顔。肩より少し長めの髪は、後ろで一つに束ねていた。
明らかに、自分よりも年上であった。
白衣を身に纏っている所を見ると、医者であろうか・・・そんな男性と、あかねは楽しそうに談笑をしながらこのレストランの入り口へと歩いていた。
東風はティルトンの宮廷医師な訳だから乱馬とは顔見知りであるはずだ・・・と通常は思うかもしれないが、彼は病気をするようなタイプの人間ではないので、医者である東風とは顔を合わす機会など無かったのである。
「あいやあ、あれは怪しいあるな」
「随分親密じゃのう」
「あかねちゃん、意外にやるんやなあ」
突然席を立っていなくなったかと思いきや、再度現れたときには男性と一緒。
そんなあかねの様子を他の面々は面白そうに見るも、
「な、何だアイツは!あかねさんに馴れ馴れしく・・・って、おい、乱馬!」
あかねに気がある良牙だけは、あかねではなくその横にいる東風に不快感を表していた。
そして、きっと自分と同じ反応をするであろう乱馬にも同意を求めようと横を見るも、乱馬は既に無言で席を立ち上がっていた。
そして、あかねたちがやってくるだろう方向へと早足で歩き・・・一足先に店を出ていた。
「・・・」
店の外で歩いてくるあかねを待ちかねる乱馬の胸は、何故か異常にドキドキとしていた。
・・・何かが、違う。
そう感じていた。
今まで自分達の周りに居た男達と、自分と・・・この東風は何かが違う。直感的にそう感じたのかもしれない。
例えそれが気のせいであっても、それでもあかねが他の男と楽しそうに談笑しているのを眺めて待っているのなんて嫌だ。
乱馬はそう思っていた。
「あかね」
乱馬は、レストランの入り口へ東風と共に戻ってきたあかねへ声をかけた。
「乱馬」
あかねは、そんな乱馬に気づき笑顔を見せる。
「・・・」
・・・なんだ?何で笑う?そいつ、誰なんだよ。
笑顔のあかねとは逆に、それまでよりも表情を険しくしてあかねに望む乱馬に対し、
「王子、お元気そうで何よりです」
あかねの横に立っていた東風が、あかねよりも先に乱馬へと頭を下げた。
「え・・・?」
「私は、ティルトン国の宮廷医師をしております東風と申します」
「え、うちの医者・・・?」
「はい。王子は、お体が健康なだけあり私と顔を合わせることもありませんが・・・王や后様は往診しておりますよ」
「その医者が何であかねと・・・?」
「彼女の姉君が私の妻なのです」
「!」
「私は宮廷医師の仕事の傍ら、世界中に医療の手伝いや治療を施す事もしております。レイディア大陸ではヒルダを基点に活動しているわけですが、それを彼女・・・あかねちゃんが思い出してくれましてね」
東風はそう言うと、「ね?あかねちゃん」とあかねに笑いかけた。
あかねは「はい」と笑顔で返事をすると、
「東風先生は、この街に医療所を設けてらっしゃるのよ・・・だから、そこに泊めてもらえないかと思って・・・ヒルダは宿代も高いでしょう?」
東風の下から離れ、ゆっくりと乱馬の下へと歩み寄った。
「それはありがたいけど・・・」
乱馬は、自分の下へと歩み寄ってきたあかねの腕をグイッと掴み引き寄せながら、言葉を濁す。
・・・乱馬にしてみれば、お金を使わずに宿を取れることはありがたい。
が、それがこの東風の力添えのせいだと言うのが、どうしてもこう、しっくりとこない。
いや別に、東風の事が嫌いなわけではない。
聞けば自分の国の宮廷医師だし、両親も世話になっている。あかねの姉の旦那と言う事は将来的には自分の義理の兄になる人物だとも、思いたい。
でも・・・
「・・・」
・・・彼があかねのことを「あかねちゃん」と呼び、あかねがそれに嬉しそうに答える。
笑顔で会話を交わす二人、それも、乱馬と接しているときには見せないようなあかねの、穏やかな表情が妙に気になる乱馬は、すんなりとそれを受け入れる事が出来なかった。
と、
「何事か?」
「何じゃ、いったい・・・」
「どうしたん?」
「おい、乱馬!・・・あれ?あんたは確か・・・」
レストランに居た他の面々が外へと出てきて、乱馬たちと合流した。
「あ、皆・・・実は・・・」
あかねは渋る乱馬からスッと離れ、他の面々にも事情を話す。
「ああ、どこかで見た事があると思ったら、医者の先生か」
「あかねちゃんの義理のお兄さんなんかー・・・じゃあ安心やん」
「病院ならば、ベッドも多いし綺麗ね」
「これで宿は確保じゃの」
乱馬とは違いほかの面々はすんなりと東風の世話になる事を快諾した。お金を使わず、しかも安全な所に大人数で泊まれるのだから文句などないのだ。
「乱馬もいいよね?」
あかねは再度、乱馬にもそう尋ねた。
「あ、ああ・・・」
乱馬にしてみれば、出来れば・・・そう、この東風の世話にはなりたくないとは思えども金銭的事情を考えると仕方が無い。
「それじゃあ、レストランから出て荷物だけ先にまず、置かしてもらおうか」
「そうするある」
「それにそろそろリエンの屋敷に行かねばいかぬ時間じゃしの」
「良かったわ、とりあえず宿が確保できて・・・安心やね。もう、あかねちゃん最初からいうてくれればよかったのに」
「ごめんね、期待させてお願いできなかったら嫌だったから・・・でも良かったわ」
「部屋は病室を含めてきちんと人数分あるから、安心してね」
が、そんな彼の気持ちなど感じる事も無く、あかねを初め皆は荷物をレストランから持ち、二軒隣の東風の医院へと向かってしまったのだった。

「・・・」

乱馬は一人、皆から離れて歩きながら妙にドキドキしている胸を感じていた。
・・・この間、初めてムースがパーティに参加してあかねと距離が近いように感じたときも、確かにこう胸がモヤモヤしていたし何もかもが気に入らなかった。
東風とて、そうだ。でも、彼の場合はあかねの姉の旦那だ。どう転んでも、あかねに気があるわけではないはずだ。
それなのに、こんなに胸がモヤモヤしたり何かが納得行かないと思ったりするのは何故なのか・・・。
「・・・」
それは、誰かがあかねに気がある、というケースではなく・・・あかねが東風に気があるのではないかと、そんな風にでも自分は思っているのだろうか。
・・・
そんな事あるわけが無い。
あかねは、自分の許婚だ。これまでのあかねの態度や、行動や、気持ちを・・・総合して考えても、そんなはずは無い。
遠く離れた場所にいる姉の旦那を好きだったなどと、そんなわけは無いはずだ。
そう、そんなわけ。でも・・・
「・・・」
・・・本当は、これから向かうリエンの屋敷で話す「カード」の事についてをきちんと考えておかなければならないのに、乱馬の胸の中は何故か、妙な黒いモヤとそして言い知れぬ不安で満たされたいた。


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