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暁の約束6

「あいつに対して魔法が使えない・・・苦しいあるな」
「攻撃補助も防御補助も出来ないだか・・・!」



リエンによって描かれた特殊魔法陣の中で、シャンプーとムースが苦しそうな表情をした。
そう、リエンの持っている『隠者』のカード属性である地属性の攻撃・・・それを和らげる風属性の攻撃と、物理攻撃でこの戦いを乗り切ろうと考えていた乱馬達であったが、


魔法陣の中では魔法は使えない
魔道具も使えない


・・・という予想外のことで、立てていた作戦がパアになってしまったのだ。
しかも、攻撃魔法が使えないということはイコール自分達が防御する魔法も使えないということ。
魔法陣から出れば、魔法は使えるようになる。
しかし、魔法を使うには「詠唱」が必要であり、「詠唱」をするには「詠唱時間」を稼ぐ必要がある。
攻撃補助も防御補助も詠唱するには詠唱時間が必要だ。
かろうじて魔法陣からシャンプーとムースが出たとしても、魔法を詠唱する前にリエンによってその身を拘束されることは目に見えている。
魔道具を使おうとしても、同じだ。
こちらが魔法は使えなくても、リエンは使える。
たとえ乱馬と良牙がリエンを攻撃しているとはいえ、目を光らせてこちらに魔法攻撃をかける事は目に見えている。となれば、シャンプーとムースも魔法詠唱を妨害されたり拘束されることは、必須。
よって、戦力である二人が拘束されてしまうくらいならば、二人には純粋に物理攻撃の補助に入ってもらった方が効果だ。
ゆえに、乱馬達の攻撃手段はカードの「特殊」能力・・・ただし、魔法自体を操る「魔術師」のカードと、カードの魔法属性攻撃は使えない。あとは純粋に「物理攻撃」のみなのだ。
ただ、物理攻撃をするために魔法陣を出ても、自由にあたりのものを金属化・武器化して攻撃をするリエンに苦しめられるのは言うまでも無い。
とどのつまり、かなり窮地的な状況に陥っている事は言うまでもないのである。
・・・
「今まで集めたカードの中で、この戦いに使えそうなカードは・・・」
「物理攻撃で挑むのであれば、『Strength』のカードが良いね。力の象徴のカード、乱馬に通常以上のパワーを与える」
「そうか」
シャンプーにアドバイスをしてもらい、乱馬は腰に刺しているカードフォルダから『Strength』のカードを取り出した。
そして、
「正位置、正位置・・・」
スロットに差し込む方向を間違えると、大変なことになる。
こと、『Strength』のカードに関しては、パワーアップどころかパワーが激減してしまうので大事だ。
乱馬は何とか正しい方向にカードを差し込むと、魔方陣の向こう側にいるリエンに向かって構えた。
ヴォン・・・
剣を握る乱馬の手が、そして剣先が微かに光を帯びている。
ただ、光は七色で美しいが、光の輪は剣先をわずかに包む程度。決して大きいとはいえない。
この光が、そのカード所持者の実力を現す目安になるので、この大きさだと大して期待できるものではない。
「光、まだ小さいあるな・・・」
「カードに精神を支配された奴らみたいに、俺にも加減知らずの力は生まれないのか?」
「今の乱馬は、強い精神を持ち自分でそのカードを使っている状態ね。だからカードの力も、自分の精神力で引き出すような形。乱馬の精神を意図的にカードに支配させれば、力を暴走させることは可能あるが、支配させる時には意図的に出来たとしても、支配を解除させる時に意図的に出来るかどうかは・・・乱馬の精神力の強さに駆けるしかないある」
「そ、そうか」
「乱馬の精神状態が元に戻るか分からないそんなこと、させるわけには行かないね。きっとひいばあちゃんでも、反対するある」
「・・・」
「とにかく乱馬と良牙は、物理攻撃でリエンを倒すある。私とムースも、乱馬達を援護するように戦うある」
「分かった」
乱馬はしっかりと頷くと、
「行くぞ、良牙!」
「おう!」
「うおおお!」
・・・良牙と合図を交わすと、魔方陣の向こう側で不気味な笑顔を見せてたっているリエンの元へと駆けていった。
そして、
「そりゃ!」
「たー!」
ヒュンヒュンッ・・・
シュッ・・・
良牙は、頭に巻いているトレードマークのバンダナを取り「ブーメラン」として投げていく。
その隙間を縫うように、乱馬は小さな光の宿った剣を、リエンに向かって振り落としていった。
が、
「ふっ・・・二人かかりで来るからどんなものかと思いましたが、その程度ですか」
「何を!?」
「私にたて突くくらいですから、もう少し骨のある方々と思いましたが・・・非常に残念です」
リエンは二人の攻撃をいとも簡単に避けてしまうと、地面に生えている芝を無造作に引きちぎった。
そして、その芝を握る手の上で、反対側の手をかざし広げた。
するとそこには、
「なっ・・・」
「!?」
リエンの広げられた手のひらの上には、もう芝など一本もなかった。
その代わりそこにあったのは・・・白く鈍く光る無数の長針。
そう、それはリエンの持っている『隠者』のカードの特殊能力である「錬金術」の賜物。
金属でないものを金属に変えることが出来るその特殊能力は、見事にここでも活用されていた。
当然のことながら、草だろうが芝だろうが、武器に変えることなど容易なこと。
ヒュンヒュンッ・・・と、目にも止まらぬ速さで、その長針が乱馬達の足元へと突き刺さった。
「・・・」
乱馬達がその針に進路を妨害され、黙り込んでいると、
「偶然手に入れたカードが、まさかこんな富を私にもたらすとは・・・人生というのは面白いですね」
「何?」
「何でも金属に変えてくれるこの能力ですよ。武器や防具を作るもの金はかからない。それに、金貨も・・・人類の夢、人類の希望です」
「・・・」
「無ければ適当に作ればいい・・・散財したって、すぐに補う事が出来る。ありがたみも薄れるってものです。金がない人々が苦しもうがなんだろうが、私には痛くも痒くもない」
リエンはそう言って、不気味な笑みを浮かべた。
唇の先がきゅっと両サイドに上がり、まるで悪魔のようなその冷たい微笑・・・乱馬と良牙の背筋に冷たいものが走り抜ける。
とそこに、
「何ぬかしとんねん、このアホー!」
「・・・はい?」
「金が無い人々が苦しもうが痛くも痒くもない、やと?寝言は寝てから言い晒せや、このあほんだらー!」
なんと、乱馬達とリエンのやり取りを後方の魔法陣の中で聞いていた右京が、そんなことを叫びながら魔法陣の外へと飛び出してきた。
「危ねえ、戻るんだうっちゃん!」
「おい、戻ってろ!殺されてえのか!」
命知らずというか、血の気が多いというか何というか。
リエンの言動にカッとなった事は分かるけれど、どう考えても危険なこの状況下敵前に飛び出してきた右京に、乱馬も良牙もぎょっとする。
しかも、
「右京!」
隣にいた右京が突然走り出した事に驚いたあかねも、慌てて右京の後を追ってきたため、
「あかね!」
乱馬は戦いうんぬんではなく気が気でない。すぐに盾になれない場所にいる自分がもどかしくて仕方がなかった。
右京と、そして右京を追ってきたあかねは、乱馬達とは少し離れた場所でリエンと向かい合っていた。
「・・・聞き捨てなりませんね」
そんな右京とあかねに対し、リエンがギロリと目玉を向けた。
「何が、聞き捨てなりませんねや、偉そうに!あんたなんか、その特殊な力がなければただの商人やろ!商人が、富を生み出す人々をないがしろにするとは何事や!」
右京はリエンの威嚇にもろともせず、大声でそう叫んだ。
そして、自分の背中に元々さしてあった大型の・・・料理に使う道具だろうか?
その大型のヘラのようなものを抜き出し、ぎゅっと両手で握り締め構えると、
「市場の秩序を守るのは、商人の役目・・・それを乱すものがあるのなら、うちは許さへん!はよ、みんなの生活を元にもどし!」
そう叫びながら、リエンに向かって走り出した。
「ヤキ入れたるー!」
リエンの目の前に走っていった右京は、勢いよく飛び上がり思い切りその大型のヘラをリエンに向かって振り下ろした。
もちろんそんな攻撃はいとも簡単に交わされてしまうのだが、それでもめげない右京は懐から小型のヘラを取り出しリエンに向かって必死に投げては切りかかっていく。
「・・・」
リエンはそんな右京に向かって、静かに左手を差し出した。
・・・乱馬達は魔法は使えなくても、リエンは自由に使える。
しかも、カードの力のせいでかなり強力な魔力を得ての魔法を、だ。
「うっとおしいですね、貴方・・・それに私に暴言を吐いたこと、死に値する」
リエンは自分に向かってくる右京に向かい、そう叫んだ。そして、何やら奇妙な呪文をブツブツと呟いている。
リエンの手には、赤い不気味な光が集まっていた。
ジリジリ・・・と音を立てて徐々に大きくなるその赤い光は、すぐにでもリエンの手を離れて右京へと向かっていきそうだ。
「危ねえ!逃げろ、うっちゃん!」
「おい、逃げろ!」
乱馬と良牙が慌てて右京を助けようと傍に寄ろうとするも、とてもじゃないがリエンが魔法を発動するまでに間に合いそうも無い。
呪文はすでに詠唱を終っているし、それに足元に突き刺さる無数の長針が進路を邪魔し、リエンの元へ走ることもままならない。
もちろん、シャンプーやムースがリエンの魔法を無効にする魔法を詠唱するにも時間が足りない。
それでも右京はリエンに向かっていた。
冷たい微笑を浮かべながら不気味な赤い光を発しているリエンは、そんな右京に対し何の躊躇もなくその赤い光を放った。
「うっちゃん!」
「右京!」
リエンの手から放たれた赤い光は、まるで紅龍のごとくうねりながら右京めがけて飛んでいく。
ゴオオッ・・・と空気を切る音が、遠く離れた乱馬達の耳にもしっかりと飛び込んでいた。
「あ!」
ようやく、右京も自分がどれほど危険な状況に陥っているのか気がついたのか、自分めがけて飛んでくる赤い光にハッと顔を強張らせていた。
直撃すれば、死ぬかもしれない。もう、助からない・・・
乱馬も良牙も、そしてシャンプーとムースも。絶望的な思いで思わず顔を伏せた。
が。


ビシュッ・・・


赤い光が右京目掛けて突き進み、その身体を飲み込もうとした瞬間だった。
突然空気を切るような音がして、赤い光は一瞬で分散してしまった。
もちろん、右京も無傷である。
「なっ・・・」
赤い光が分散した事で、リエンは驚き言葉を失っている。
いや、リエンだけではない。乱馬も良牙も・・・その場にいた殆どの者が、同じようなリアクションをしていた。
唯一、少し離れた魔法陣の部分でその光景を見ていたシャンプーだけは、
「・・・?」
飛び散った赤い魔法の光に紛れている「別の光」の存在に気がつき、複雑な表情をしていたのだが。
・・・赤い光が右京を包み込む寸前、危険な状況の右京に一番近い位置にいた仲間はあかねだった。
あかねは、皆が顔を伏せたのと同時に右京の元へと全力で走り・・・そして彼女の盾となった。
もちろんただ盾になるだけでなく、腰から自分の唯一の武器である「鞭」を取り出して、だ。
昨晩、ムースがあかねのこの武器につけてくれた「パワーツール」という、力の変換補助道具を利用しようと考えたのだ。
通常は、「鞭」となって敵に向かっていく武器。
しかし、不器用なあかねにはその「鞭」を使いこなすのがいささか難しい部分がある。
使用者の潜在能力を百二十パーセント引き出すこの鞭に「パワーツール」をつけることで、必ず相手にその力を使った攻撃があたるように出来る・・・と、昨夜ムースは言っていた。
と、言う事はだ。
鞭として出力した力が確実に相手にあたるというのなら、出力している力を自ら攻撃として相手にぶつけるだけでなく、向かってきた相手の力もその出力した力で殺す事が出来るのではないか。
あかねはそう考えたのだ。
魔法陣の外にいるから、魔法自体は使うことが出来る。
もちろんあかねは魔導士ではないので、魔法そのものは使うことは出来ない。
シャンプー達が用意してきた魔道具も手元にはないから使えないが、自分の持っている魔道具・・・つまり「パワーツール」は使うことが出来るはずだ。
魔道具ならば、詠唱時間は関係ない。
それに、魔導士ではないあかねに関して、リエンは完全にノーマークだ。
反撃の力を出力する事も出来るが、今のこの状況ならばそれをリエンに向かって振りかざしていくよりも、リエンの放った魔法を中和する為に使えないだろうか・・・あかねは咄嗟にそう考えた。
パワーツールのおかげで、この鞭はあかね本来の力の、十二分の力を放出する事が出来る。
あかねの力が残っている限り、その力よりももっと強力な力で、リエンの魔法攻撃を中和させることが出来るはずなのだ。
それに・・・
「・・・」
あかねは、リエンの攻撃を防ぎ若干震えている自分の左手へ視線を走らせた。
左手の薬指に光る、シンプルなリング・・・「カイルリング」。
魔力を持っていないものには見えないけれど、リングは今、白い光を放ちあかねと、そしてあかねに守られた右京を包んでいた。
魔力を持っていないあかねにどうしてその光が見えるのかという事は、昨晩ムースも不思議がっていた。
が、その理由を追及している暇は、残念ながら今は無い。
ともかく、ムースによって改良されたこの「カイルリング」も、魔法の攻撃からあかねを守ってくれる手助けをしてくれる。
このリングに守られる力と、鞭の力、そして・・・乱馬が貸してくれた王家のマントの防御力。
それらのおかげで、あかねは何とか不気味な赤い光より右京を守る事が出来たのだった。
・・・
「あ、あかねちゃん!大丈夫なん!?」
・・・右京を庇うように前に立ったあかねに、右京が驚いたような声で叫んだ。
右京にしてみれば、現在いるメンバーの中一番弱いと見られるあかねに助けられた事が、信じられないのかもしれない。
「だ、大丈夫・・・あたしだって、これくらい」
あかねは、無理やり右京に笑って見せた。が、実際リエンの魔法を受けたその鞭を持つ手は、ビリビリと震えていた。
しかも、鞭の柄にはめ込んでいる「パワーツール」の色は、たった一発リエンの魔法を受けただけにも関わらず、本来のルビーのような紅い色から薄いブルーへと変化している。
パワーツールは、赤、青、白の順に変化するわけだから、青を通り越して淡いブルーという事は、今の一撃であかねの力は大分消耗した事になる。
同じ攻撃をもう一度防ぐ事は、恐らく難しい。
が、それを口にしてはダメだ・・・あかねは、震える手に力を込め気を奮い立たせる。
「あかね!」
「あかねさん!」
と、その内。
リエンの攻撃を何とか跳ね返したあかねと、無事だった右京の元へと乱馬と良牙が走ってきた。
「あかね!お前大丈夫なのか!?」
乱馬は右京の盾になるように立っていたあかねの肩を掴み、心配そうに叫ぶが、
「だ、大丈夫よこのくらい!おばあさんに貰った鞭、このくらいの魔法攻撃は跳ね返せるのよ」
あかねは、本当はビリビリと震える手を隠し、思い切り鞭を握りなおしながら笑顔を見せると、
「それよりも・・・一旦魔法陣まで戻りましょう。このまま戦ってもラチがあかない気がするの」
笑顔を見ても尚、心配そうな乱馬と、良牙、そして地面に座り込んでいる右京を立たせると、
「くっ・・・」
あかねに魔法を防御され悔しそうにこちらを睨んでいるリエンから急いで遠ざかり、シャンプーとムースがいる魔法陣の傍まで駆け戻った。




一方、
「・・・ムース」
あかね達が魔法陣の傍にいた自分達の元へと駆け寄ってくる姿を見つめながら、シャンプーがムースにそっと呟いた。
「なんじゃ?シャンプー」
「・・・何故、あかねにカイルリングを渡したあるか?あかね、指に指輪をしていたある。赤い魔法に紛れて、別の魔法の波動を感じたある・・・あれは、カイルリングの光あるな?私の目、誤魔化せない」
「・・・」
「それにあの鞭・・・明らかに、今までのあかねのパワーとは違うね。あれは、パワーツールで一時的に力が増強されていると見た」
シャンプーは、先ほど自分が目の当たりにした事を冷静に分析し、ムースに伝えた。
シャンプーは若くとも、腕の良い魔導士だ。あかねのパワーの変化について気が付かないはずもない。
赤い魔法が飛び散った時に混じっていた「別の光」の正体に、気がついてしまったのである。
「・・・さすがはシャンプーじゃな。旅の魔導士ではなく、早く宮廷魔導士として修行をさせたいくらいの腕前じゃ」
・・・自分がこの旅に出された本当の理由や、あかねにそれらの道具を渡した本来の訳を話すわけには行かないが、ある程度はシャンプーにも気付かれる事は必須。
その部分は一応覚悟していたムースは、とぼけるような口調でそう返した。
が、
「ムース!パワーツールは確かに一時的に力を増強させ、不器用なあかねでも鞭の攻撃を無駄なく敵に出来るかもしれない。さっきみたいに敵の攻撃を中和させるべく力をぶつける事が出来るかもしれない!でも・・・裏を返せば、それだけ強力な力を使わせることになるあるぞ!?カイルリングで守られているのもあって、あかね、力の消耗感覚が麻痺する危険があるね!」
「・・・そうじゃな」
「分かっているなら、何故そんなものを渡したあるか!?あかねは、乱馬や良牙と違って元々体力がない・・・加減を知らずに力を長時間使わせたら、確実に身が持たないある!」
・・・決して、あかねの味方をするわけではない。しいていえば、乱馬を廻る恋のライバルだと勝手に思っている相手だ。
でも、魔導士として・・・一人の人間がみすみす危険に晒されるのを、見てはいられない。
「お前だって、武器屋ではあるが魔導士のはしくれね!決してそんなこと、してはいけないことあるぞ!なのに何故っ・・・」
シャンプーは、ムースの胸倉を掴みながらそう叫んだ。
が、ムースはそんなシャンプーの手を優しく自分から外させると、真っ直ぐにシャンプーを見つめた。
「っ・・・」
その真剣な眼差しに、シャンプーが一瞬ビクリと身を竦める。
ムースは少し躊躇いながらもゆっくりと、そんなシャンプーに答えた。
「・・・だから、渡したんじゃ」
「!」
「あのパワーツールは、おばばの特別な仕掛けが施してある。自分自身で、体力の残りゲージを確かめる事が出来るようになっておるものじゃ。パワーツールは確かに、使い方を誤ると危険なものじゃ。じゃが、裏を返せば体力のゲージを目で見ることで、力の配分もペースも、限界も、自分で知ることが出来る」
「ひいばあちゃんが、それを指示したあるか・・・?」
「・・・。それに・・・あのカイルリングも、おらが特別に加工を施した、世界で一つだけのリングじゃ。他のどんな魔法アクセサリーよりも、強力な力を持っておる。自分の体力ゲージも自分で管理でき、尚且つそのリングで身を守れるのじゃ・・・それならば体力の無いあかねでも、問題はなかろう」
「でも・・・!」
「・・・体力も魔力も無い者に、この旅は過酷じゃ。本来なら、まだ引き返せる今の段階で国に返した方が良い」
「だったら何故・・・!」
「でも・・・本人が選んだ道じゃ。例え結果がどうなったとしても、本人が望むというのなら、それを尊重してやるのが一番良い事なのではないか?」
「・・・」
「じゃから、その時が来るまで・・・我らはできる限りしてやろうではないか」
「その時・・・?ムース、お前一体何を・・・」
「それが、おらとおばばの考えじゃ。この件に関しては、もうこれ以上話し合う事は無い」
ムースはそこまで言って一旦口を閉ざすと、目線を不意にシャンプーから反らした。
「・・・」
シャンプーにしてみれば、そこで話を終わらせるつもりも無いし、聞きたいことがまだある。
が、何となくムースの視線が気になり、ムースと同じ場所へと視線を移した。
そこには、一旦魔法陣の中へと戻る為に駆けて来る乱馬達の姿があった。
どうやら、どちらにしろムースとの話し合いはタイムリミットを向かえたようだ。
「・・・」
ムースの、言葉の意味。
一つ一つの言葉や、微妙な言い回し・・・シャンプーの胸に妙に引っ掛かったのだが、今はそれを追及している場合ではない。
今が大切な戦いの最中であるということを、シャンプーも忘れてはいなかった。
「・・・とにかく、私はお前のやり方、まだ賛成は出来ない」
シャンプーはムースにボソッとそう呟くと、戻ってくる乱馬達を待ち構えた。
「・・・やれやれ、こっちも厄介じゃ」
乱馬があかねを、そしてあかねが乱馬を大切に思うように、ムースもシャンプーを誰よりも大切に思っている。
その相手に、どうしても隠し事をしなくてはいけない。例え、どんな誤解を受けてもだ。
苦しい胸の内だが、時が来るまでは絶対に口を割るわけにはいかない。それが、ムースの使命でもある。
ただ・・・分かってはいても、身には堪えるものだ。ムースは複雑な胸の内に大きなさなため息をついた。







「魔法も使えない、魔道具もだめ、近づこうとすればヤツの刃物の餌食・・・一体どうすればいいんだ?」
一旦リエンの元から安全な魔法陣の中へ戻ってきた乱馬達は、魔法陣の外でこちらの動向をじっと伺っているリエンをリエンを気にしながら作戦を立て直していた。
恐らく、再び乱馬たちが魔法陣の外へ出た段階でこの勝負は決まる。
リエンとて、先ほどあかねに魔法を交わされたことに警戒心を抱いているだろう。
乱馬達がこれから起こすアクション、一つ一つに細心の注意を払うはずだ。
よって、これから先は不用意に、魔法陣の外へは出るわけには行かないのだ。
・・・
「触れるものを何でも武器にしてしまう、厄介な能力あるな」
シャンプーが、魔法陣の外のリエンをちらちらと見つめながら、ぼそっと呟く。
「本来の錬金術を、かなり卑屈に身につけているあるから、余計に厄介ね」
「え?あの力って本来のものじゃないのか?」
錬金術、という言葉自体あまり聞きなれない乱馬がシャンプーにそう尋ねると、
「本来の錬金術というのは、化学的な手法を用いて貴金属なんかを作り出す物ある。もう少し広い範囲で錬金術を語るならば、人間の魂とか体とかをより完全な物へと変化させる技術という意味合いもあるね」
「人の魂?」
「要は、不老不死にする能力ある」
「!」
「カードを手に入れたのが商人だったから、そっちまでは考えずに単純に「金」に拘ったあるな。だから、触れたものを金属にするという程度の発想しかなかったある。カードも、本人が考えたその力に限り力を増幅させたあるよ」
「はー・・・」
「持つ相手によって、恐ろしい事になるあるな。今回は本当に、手にしたのが商人で助かったある」
シャンプーはそう言ってため息をついた。
「・・・」
金、は金でもGoldではなくMoneyの金。今回はとりあえずその部分だけ救われたのか。
乱馬達も、とりあえずほっと胸を撫で下ろす。
が、そうものんびりとはしていられない。
「話を戻すあるが、先程のリエンの赤い魔法・・・かなり強力と見た。こちらが防御魔法を使えないのにあの能力を受けるのは危険ね」
「どうしたらいいんだ?」
「今、考えるある」
シャンプーと、そして第一線で戦う乱馬、良牙の三人は、現状況ととりまく諸事情を踏まえつつ作戦を練り直しはじめた。
そこから少し離れたところではでは、
「・・・パワーツールを見せてみよ」
「えっ・・・」
「先程の攻撃回避で、ノーダメージなはずなかろう?おらにパワーツールを見せるんじゃ」
「あっ・・・」
視線はシャンプーたちのほうに向けたまま、ムースがあかねそう尋ねた。
そして、素早くあかねが手にしていた鞭を取り上げた。
もちろん、不意に取り上げられてはあかねに小細工は出来ない。
本来は真っ赤なはずのパワーツールが、青を通り越して白に近い淡いブルーになっているそれを、あかねはムースに見られてしまった。
「・・・」
ムースは、パワーツールの色を確認してから、無言であかねを見る。
「・・・で、でも平気だからっ」
あかねは慌てて鞭をムースからひった繰り返すと、腰に挿した。
そして、
「さ、あたし達も作戦に参加しなくちゃ・・・」
よそよそしく微笑み、作戦会議に夢中なシャンプーたちに加わろうとしたが、ムースはそんなあかねの腕を掴み元の位置に引き戻すと、
「・・・おらに、考えがある」
「かんが、え?」
「じゃから、お主はここから動くな。あの女子と一緒に、おとなしくここにおれ」
ムースはあかねに真剣な面持ちでそう命じた。
あの女子、というのは勿論右京のことだ。
ムースはあかねに命じる際にチラリと右京の方を見ていたので、あかねにもそれはすぐ理解できた。
「・・・」
・・・そんな二人を。
右京も、自分がムースに見られた事に気が付いてはいたのだが、自分も実はチラチラと、二人を少し離れていたところで見ていた。
右京には、二人が何を話しているかまでは分からない。
でも、あかねの武器を取り上げて心配そうな顔をしているムースを見る限り、「愛しい者を戦いに巻き込みたくない」みたいな感じではないか。そんな事を思いながら、二人を見つめていたのだ。
右京にしてみると、「二人はただならぬ関係」だと、勝手に想像できる。
二人が「ただならぬ関係」であれば、あかねと乱馬がくっつくことはない。
ということは、自分は心置きなく乱馬にモーションを掛けることができる・・・この戦いの場の緊迫した状況ではあるが、右京は二人を見つめながらそんな事を考えていたのだ。
・・・
まさか右京がそんな事を思っているとは知らないあかねは、再びムースと話を続ける。
「で、でも・・・」
「パワーツールを渡したときの約束じゃろ?そのツールは、無理をさせるために手渡したのではない。自分の限界を知るために渡したのじゃ。おばばの、その心遣いを無視するつもりか?」
「・・・」
「やっかいな相手と我らは戦っておるんじゃ。それなのに、第一線で戦っている乱馬に、戦い以外のことで気を使わせたくなかろう?それがお主の望む事か?」
「・・・」
ムースのその言葉が、酷くあかねの胸に刺さった。
そう、それが一番あかねにとって嫌なことだ。
一緒にいたい、そばにいたいという気持ちはあるが、自分に関する余計なことで乱馬に気を使わせたくはなかった。
もしも、今自分がおとなしくしていることが乱馬にとって一番良いのならば、そうすることがあかねの、最善策。
「・・・」
あかねは、俯きながら小さく、頷いた。
「・・・おぬしのことは、おばばの命うけておるし、乱馬が出来ない時は、おらがおぬしを守る」
「ムース・・・」
「ま、乱馬には気に食わないことかもしれんがな・・・おらだって、シャンプーのことを乱馬が命がけで守る姿など、見たくない」
「・・・」
「損な役回りじゃ」
ムースはため息をつきながらそう呟き、「まあ心配するな」とあかねに小さく笑って見せると、
「おい、おぬし達」
あかねの元から離れ、作戦会議中のシャンプーたちの輪に加わっていった。
「・・・」
・・・あかねに気を使ったり、色々と声を掛けたりするだけでシャンプーからはあらぬ誤解を受けるかもしれないのに。
ムースが誰よりも大事なのは、シャンプーだ。
それが分かっているのに、こうして誰に何を思われようとあかねに気を掛けてくれるムースの心労を思うと、あかねは胸が苦しい。
自分さえ一言、「国に帰る」「旅をやめる」といえば、ムースも、そしてムース以上に気を掛けてくれる乱馬も、旅に集中できるのではないか。
それを考えると、あかねの心の中にある思いが、ぐらぐらと揺れる。
邪魔にならないように頑張りたいはずなのに、これでは逆効果だ。
旅を共にするならば、今よりももっと、自分で自分を守れるようにしなければ。迷惑をかけないようにしなければ。
あかねは大きなため息をつきながら、ムースから奪い返した鞭を静かに腰にさした。





「はあ?魔道具を使って炎の壁を?」
「そうじゃ」
「魔道具で作る炎の壁なんて、たかが知れているあるぞ。元々魔道具の炎は、攻撃用のものあるぞ?防御壁にはならないね」
・・・作戦会議中の輪から、そんな声が漏れていた。
どうやら、ムースが口にした作戦を、シャンプーが否定しているようだ。
一向に良い作戦が浮かばなかったシャンプーと、そして乱馬たち。
ムースが「いい考えがある」と提案してきたことに対しては喜んだが、その内容を聞くなり、その無謀さに思わずため息だ。
「一体、さっきの戦いで何を見ていたあるか?リエンの力、強いある。中途半端なものじゃ、すぐ突破されるあるぞ」
シャンプーが、少々むっとしたような口調でムースに呟く。
が、ムースはそんなシャンプーを「まあまあ」と笑顔でなだめ、
「魔道具の炎・・・火と風の壁は、魔法詠唱の時間稼ぎじゃ」
「時間稼ぎ?」
「炎の壁、それを煽る風。そして乱馬と良牙の攻撃でまずはリエンの目をそらさせる。その間にシャンプー・・・おぬし、雷を放電する魔法を詠唱するんじゃ」
そう、シャンプーに提案をした。
「放電魔法・・・?」
「そうじゃ。水属性の魔法を少し応用させれば、それなりに強力な魔法を詠唱できるじゃろ」
「それは出来るあるが・・・」
「魔法を詠唱したら、炎の壁の向こう側にいるリエンに向かってではなく、空に向かって放つんじゃ」
「!?」
「それで、この勝負は決まる」
「おい、本当にそれで大丈夫なのか?」
何故、時間稼ぎまでして詠唱した魔法を、戦う相手ではなく空に向かって放つのか。
ムースの無謀と思われるその作戦を、更に不安を感じた良牙が躊躇するも、
「・・・なるほど、そういうことあるか」
「おい、何がなるほどなんだ?」
「わかたある。ムース、今回はお前の作戦で行く」
最初はムースに否定的だったはずのシャンプーが、急にムースの作戦に賛成したので、乱馬も、良牙も混乱してしまう。
「おい、シャンプー。説明してくれよ」
乱馬がシャンプーにそう頼むも、今はそれを詳しく説明している時間も無い。なので、
「この作戦は、目隠しの炎の壁、それを煽る風、そして乱馬と良牙が一心不乱でリエンに攻撃を仕掛けることが鍵ね」
「・・・?」
「良牙は素手とバンダナを使って攻撃する、そして乱馬は・・・乱馬、さっきは『Strength』のカードを使うように指示したあるが、それ、やめるある」
「え!?」
「今回の戦いではその勇者の剣、使わないほうが良い」
「な、なんでそんな急に・・・」
「大きな理由は他にあるあるが、それは今は省くある。それに、今回の戦い、リエンの気を紛らわせることが重要。乱馬は、攻撃にスピードがあるね。剣を使うよりも直接打撃攻撃をしたほうが今回は良い。乱馬も、本来はそれが得意あるな?」
「そ、そうだけど・・・カードの力を使って攻撃力を高めるよりもそのほうがいいのか?」
「今回に限っては、それがベストある」
「わ、わかった」
勇者の剣を使うことよりも、効果的な作戦が今回の作戦だというのか。
若干不安があるも、ムースはともかくシャンプーが言うのなら仕方がない。
シャンプーに詳細は教えてもらえなかったが、攻撃の仕方は教授されたので、乱馬はそっちに対して頷いた。
「乱馬よ、勇者の剣はあの娘に預けておけ」
そんな乱馬に、ムースがそう別のアドバイスをした。
「あの娘?」
相変わらずどことなく突っかかる言いかたで乱馬がそう返すと、
「あの娘じゃ」
ムースはそう言って、ある方向を指差した。ムースが指差した方角にいたのは右京・・・ではなく、あかね。
「それはいいけど・・・」
乱馬は、シャンプーたちから離れた所に立っていたあかねの元へと歩み寄り、ムースの指示通り、あかねに勇者の剣を鞘ごと渡した。
「これ、預かってもらっていいか?」
「う、うん・・・」
『Strength』のカードが正位置でスロットに差し込まれたままの剣を、あかねが大事そうに抱きかかえる。
一瞬、カードスロットに刺さっているカードが、あかねの小指に触れた。
瞬間、ポウ・・・と微かな光が起こり、白い光があかねの指を包む。
「っ・・・」
その事に驚いたあかねが慌ててカードから指を離し剣を抱きかかえなおすと、その光はすぐに消えた。
その現象について、その場にいた乱馬もムースも、気が付かなかったようだ。
唯一気が付いた右京が、
「なんや、この剣・・・光るんか?おもろいなあ」
そんな事を言いながら近寄ってきて、あかねと同様カードに触れてみたが、特に何も起こらなかった。
「あれ?光らへんやん」
「そうね・・・」
「うちの見間違い?」
「さあ・・・」
何故、右京が触れても光らないのにあかねが触れたら光るのか。
奇妙なその出来事を本当はもっとちゃんと考えたいのだが、今はそうもしていられない。
あかねは、複雑な表情のまま乱馬の剣をしっかりと胸に抱えその場に立ち尽くしていた。
・・・
一方の乱馬は、ムースと共にシャンプーと良牙の元へと戻った。
そして、
「あかねに剣を渡すのはいいけど・・・万が一、リエンがこの剣を狙ってあかねの所にきたら危険じゃねえか」
あかねには聞こえないように背を向けながら、乱馬はムースにそう言った。
・・・そう、別にあかねへ自分の大切なものを預けるのは全く構わないのだが、それによってあかねが危険な目に遭うというのなら話は別だ。
しかもそれがムースの指示、ということもあり、乱馬にはそれが気に食わない。
そんな乱馬に対し、
「安心せい。魔道具を使うおらは、戦いの前線におらんでもこの魔法陣の近くにおる。じゃから、この魔法陣にいるものに危険が迫る場合は、おらが守ってみせる」
「・・・」
「あの娘のことも、おらが命に代えてでも守るから安心せい」
ムースはそういって、乱馬をじっと見つめた。
「・・・」
乱馬はそれに対してまっすぐな瞳をムースへ返した。
それは、真剣な眼差し・・・というよりも、攻撃的で鋭い目つき。
なぜ、お前があかねを命がけで守る?
そりゃ、冒険の仲間が危険な目にあわないように守るのは必至。
それは、分かっている。でも・・・
「・・・」
指輪のこともあり、深夜にこっそりと会っていたということも、ある。
乱馬にしてみれば、諸々の理由が重なり、本来ならば軽く流せるようなこと、お願いをするべきことでも何故か、気に食わない。
何で、こんなヤツにあかねを、しかも命懸けで守らせる?
仕方がない事だってことくらい、本当は分かっている。でも・・・!
「・・・」
割り切れない思いが、乱馬の胸にあふれる。
しかし、作戦が作戦なだけに自分ひとりのわがままを通すわけには行かない。
「・・・」
乱馬はギリ、と歯を食いしばりその矛盾した思いを何とか収めようとすると、
「・・・あかねが、ちょっとでも怪我したり苦しい思いをするようなことがあったら、ただじゃおかねえからな」
たった一言ムースにそういい捨てて、ムースから顔を背けた。
「当然じゃ」
ムースはさらりとそういうと、「・・・おらの作戦は以上じゃ」とシャンプーに声を掛けた。
「・・・わかたある」
・・・本当はシャンプーも、少し思うところがあった。
ムースは、絶対に「何か」を知っている。
ひいばあちゃんと、ムースと、そしてあかねと。何かが、ある。
パワーツールにカイルリング、そんな二つの、しかもそれぞれのものがオリジナルでパワーを加えたような特別なものを、いくらパーティの中で力が弱いあかねのためとはいえ、無条件に渡すとは思えない。
それに、何となくムースが、あかねをカバーしようとしているのは気のせいだろうか?
いや、作戦の配置上、ムースがあかね達を守るというのは分かる。
でも、何かこうしっくり来ないというか・・・。
・・・
「・・・」
元々気が強い、そしてムースが自分に首っ丈だったことを昔からよく知っているはずのシャンプーも、ムースがあかねに対して接するその態度を見て何だか胸に引っかかるものはあるが、乱馬と同様、それを今、前面に押し出すわけには行かない。
「・・・とにかく、皆、ムースの立てた作戦でいくある」
「おう」
シャンプーは気を取り直してそう皆に声を掛けると、それぞれの配置につくよう、さっそく声を掛けた。
皆は思うところがそれぞれあるも、今は作戦に集中すべく、それぞれの場所へとついたのだった。


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