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暁の約束5

パーティー会場へ向かった一同は、屋敷よりも少し手前の森の小道で二手に分かれることにした。
まずは、右京とシャンプーだ。
二人は厨房に忍び込んで、料理に薬を混ぜる係。
屋敷中の従業員、そして主賓たちに薬入りの食べ物を食べさせる事で屋敷の警備を手薄にし外で待機している乱馬達を中へ呼び入れる役目を担う。
「とりあえずは、支度をしているメイド達の服を調達するあるな」
森の小道から屋敷を覗いていたシャンプーがそう言って、外に使いに出されたらしきメイドを二人まんまと捕まえると、洋服を奪って叢に二人の姿を隠してしまった。
数時間は眠り込む魔法もご丁寧に掛けたようで、衣服を奪われたにも関わらずメイドたちはしっかりと眠っている。
「風邪引いたらかわいそうやな」
メイドの服を着込みながら右京がぼそっとそう呟いた。
「作戦のため、仕方ないある」
「せやけど・・・」
そんな右京の言葉を受けて、あかねが自分が背中につけていた旅人用のマントを外し、二人の身体を包んでやった。
「さすがあかねちゃんは優しいなあ」
右京はあかねのその行動に感謝の意を示すが、
「マントを外すという事、あかねの防御力が少し落ちるということね。強い人間がそれをするのはいいあるが、あかねみたいな弱い人間がそれをする、回りの人間がサポート大変になるある」
シャンプーはそんなあかねにあくまでも厳しい態度だ。
多少は気が強いところもあり、あかねのことをライバル視していることもあるが、別にあかねのことが憎くてシャンプーはコレを言っているわけではない。
良く言えば素直、悪く言えば柔らかい言い方を知らないだけ。
要は、「自分の身も自分で守れない弱い人間が他人に気を使い他の人に負担をさせるくらいならば、まずは自分の身を守って余裕を作ってからにしろ」と言いたいのだ。
「ご、ごめん・・・でも・・・」
あかねは、シャンプーの本意は分かっているとはいえ内心少し傷つきつつ、それでもメイド達の体を心配してそう呟いた。
「仕方ないあるな。ではマントの代わりに何かムースに見繕ってもらうよろし。わかったあるな?」
「う、うん・・・」
「私や乱馬に迷惑かける、とんでもないことね」
シャンプーはそんなあかねに対してため息をつきながらそう言うと、メイド服に着替え終わった右京と供に、一足先に屋敷へと向っていった。
「・・・二人は?」
「今屋敷に・・・」
「そうか。じゃあ俺たちはここでしばらく待機だな」
シャンプーたちが屋敷に向かった後、二人の着替えの為に所払いをしていた男性陣の元へあかねは向かった。
「乱馬、二人からの合図はどうやって受けるんだ?」
あかねが合流したと同時に、良牙が乱馬に尋ねた。
乱馬はそんな良牙に、自分の懐から何かを取り出して見せた。
深いコバルトブルーの色をした、小さな宝玉のようだった。
なんだか見つめているだけで吸い込まれてしまいそうな不思議な色合いに、ただならぬ代物だという事はわかるのだが・・・。
・・・
「これは?」
「シャンプーが、合図にって渡してきた玉。シャンプーが俺たちに合流の合図を出すと、この玉が灰色に変わるらしい」
渡されて入るものの、必要最低限の事以外は聞かされていないのか・・・それとも聞いてはいるけれど忘れてしまったのか。
なんとも頼りないティルトン国の皇子は、しどろもどろだ。
と、それを見かねたムースが、
「それは・・・ラピスラズリ。遥か昔より、人々の願いをかなえる、玉」
「ラピスラズリ・・・?」
「おら達魔導士達が使う、まじないの石じゃ。石の所有者は石と契約をまず交わす。そうすることで石は主の願いを叶えるじゃよ。そして願いが叶った瞬間に、紺碧から灰色に色あせる神秘の石。その理由は未だ解明はされておらん」
「へえ・・・」
ムースの説明に、良牙とあかねは思わずそのラピスラズリの宝玉を覗き込む。乱馬はその説明を不機嫌そうな顔で聞いている。
「この場合、石の所有者である乱馬の願いは『屋敷への侵入許可を得る』ということじゃから・・・」
「その願いが叶った瞬間に、この石に異変がおきるということか」
「そういう事じゃ」
ムースがそこまで石の説明をすると、
「・・・でも俺、別に石と契約なんてしてねえけど?」
誰がどう聞いても突っかかるような言いかたで、乱馬がムースにそう尋ねた。
「・・・」
いつもの乱馬らしくない、その口調。
それがやけに耳に残り、あかねは思わず表情を少し曇らせてしまった。
が、
「シャンプーがその石を渡す前に前もって、おぬしと石を結びつけるよう下準備をしているはずじゃ。シャンプーほどの魔力がある者なら、それくらいは可能じゃし」
そんな乱馬の様子にカチンともしないのか、依然として表情を変えぬまま、ムースは受け答えをしていた。
「ふーん・・・」
乱馬は気の無いような返事でそう呟くと、それっきりムースに石の事は聞きかえさなかった。
「おい、他に説明を聞いておく事はねえのか?」
「別に」
「ほんとかよ?」
さすがの良牙も、乱馬のこの態度には気がついたようで気を使って声をかけるも、乱馬は気のない素振で石を懐にしまってしまった。
「なんだよ、お前は・・・機嫌が悪いのか何か分からねえが、本番はヘマすんなよ」
良牙はそんな乱馬に対して「ったく、これだから王族の人間は・・・」とため息をついていた。
そして、
「それよりムース、俺に何か合いそうな武器とか防具はすぐに出来ねえか?」
「おぬし、武器なんか使うのか?」
「普段は素手か、頭に巻いているバンダナをな、こうブーメランみたいに・・・」
様子がおかしい乱馬はほったらかしで、ムースにそんな事を尋ねてはあれこれと武器や防具の話を詰めていた。
「乱馬・・・」
・・・あかねは、話をしている良牙達の横をすり抜け、朝から依然として様子のおかしい乱馬の元へと駆け寄った。
「・・・」
乱馬は始め、傍によってきたあかねの存在を気がつかないフリをしていた。
でも、
「・・・何で怒ってるの?」
「・・・」
「分からなくちゃ・・・謝るにしても謝れないよ・・・」
・・・反応を示さない自分に対して話しかけるあかねの声がドンドンと小さく、そして曇ってくるのを感じ、大きなため息をついた。
乱馬にしてみれば「昨晩の事」を、そして「左手の指輪」の事が気にいらない。
ただそれをいつまでもグジグジと、本人にも確かめられずにただ「気にいらない」、そして不安に苛まれている自分が情けなくて仕方がなかった。
あかねにしてみれば、昨日の夕方は半分プロポーズともとれる言葉を掛けてくれた彼が、翌朝になったらつれない態度で自分ともろくに話をしてくれない。まるで避けるような態度に、傷ついていた。
自分に悪い所があるのなら、謝る事が出来る。でも、まさか昨日の夜のムースとのやり取りを見られていたことや、それについて誤解されている事を知らないあかねには、どうすることも出来ないのだ。
・・・
「・・・別に怒ってねえよ」
「うそ」
「ホントだよ。それより・・・」
「え?」
「・・・今日の作戦が終ったら、二人で会いたい」
「乱馬・・・」
「夜・・・そうだな、空の月が西の山の端にかかりそうな頃、宿の裏で待ってるから」
・・・乱馬は、あかねにそう言って彼女の頭をぽんと軽く叩いた。
空の月が西の山の端にかかりそうな頃というのは、昨日あかねとムースが話をしていたのと同じ時刻。
そして、宿の裏というのはもちろん二人が昨日話していた場所。
こんなことにまで拘ろうとしている自分にほとほと嫌気が刺しつつも、それでも乱馬はそこに拘っていた。
「乱馬・・・」
そんな乱馬に対し、あかねは一気に不安そうな表情を浮かべ乱馬を見た。
夜、コソコソと二人で会って一体何を話すのだろう・・・しかも乱馬の様子がおかしいというのに。
あかねがそんな事を思っていると、
「・・・そんな顔するなよ」
「でも・・・」
「ちょっと渡したい物があるだけ」
「渡す物?」
「その時に渡すから。それより・・・」
乱馬はそれ以上は詳しく教えてはくれなかった。
そして、まだ不安そうな表情をしているあかねの頭をもう一度ぽんぽんと叩くと、
「・・・少し長めの分、防御力上がるから」
「!乱馬・・・」
「あいつが調達する防具よりもきっと、防御力が強いはずだから」
気持ちが篭っている分・・・最後の部分は心の中に留めつつ、乱馬はそう言って、自分が背中に纏っていた王族専用のマントを外すと、ふんわりとあかねの背中に羽織らせた。
・・・どうやら乱馬は、あかねが先ほどメイドたちの為にマントを外していたことに気がついていたようだ。
「乱馬・・・」
ごめんなさい・・・あかねがそう呟こうとすると、
「・・・こういう時はありがとう、だろ。おめーに怪我されちゃ、俺が困るんだよ」
乱馬はあかねの言葉を塞き止め代わりにそう呟くと、顔を真っ赤にしながらあかねから顔を背けてしまった。
「ありがとう・・・乱馬」
あかねが自分からムースに頼む前に、そして自己申告する前にこんなことにも気がついてくれた彼に、あかねは心から礼を言った。
乱馬は少し嬉しそうな表情を一瞬見せつつも、
「さ、俺も武器の手入れを・・・」
嬉しさと恥かしさを紛らわせる為なのか、そんな事を言いながらドカリとその場に腰を下ろし剣の手入れを始めてしまった。
「・・・」
少しだけ、機嫌が治ったのか。それとも乱馬の優しさにまた触れることが出来たからなのか。
先程よりも少しだけ心が軽くなったあかねは、武器の手入れをしている乱馬のすぐ傍に腰を下ろし、手入れをしている彼の姿をじっと見つめていた。
・・・誰よりも、あかねに足りないものに真っ先に気がつく乱馬。
そういえば前も、モンスターが落としていった盾を真っ先にあかねに渡してくれたっけ。疲れているときも、さりげなく声をかけてくれたり。
見てないようで、見ている乱馬。誰よりも自分に気に掛けてくれる事がどれだけありがたくて幸せか、あかねは実感していた。
でも・・・
「・・・」
よく見ている、ということは・・・あかねの身体に起こり始めている異変にも、もしかしたらその内気がついてしまうかもしれないという事だ。
例えムースから力や戦闘補助ツールを貰い受けたとしても、もしかしたら乱馬なら・・・
「・・・」
・・・見ていてくれる事は嬉しい。でも、見て欲しくない事まで見られてしまうと・・・悲しい。
「・・・」
あたし、何てワガママで酷い女なんだろう。
「乱馬があたしに相応しいかどうか」だなんて、旅の始めに言っていたくせに、もしかしたら本当は、「あたしが乱馬に相応しいかどうか」を問われる旅なのかもしれないな・・・。
きっと、答えは・・・
「・・・」
複雑な思いを胸に、あかねは乱馬の隣に腰を下ろしじっと、彼の姿を見つめていた。

「か、体が・・・」
「嫌ですわ、なんだか急に眠く・・・」
・・・パーティーが始まり料理が出席者に振舞われたのと同時に、それを口にした出席者達はバタバタと床に倒れていった。
給仕している使用人たちも、「差し入れ」と称して呑まされたワインのせいで次々と倒れていた。
屋敷を警備している兵も、差し入れされた食料を口にしたとたん意識を失い、厨房にいる料理人達も、賄いを口にしてすでに眠りに落ちている。
勿論こんな異常な自体は偶然引き起こされたのではなく、先に忍び込んでいたシャンプーと右京のせいである。
おかげで、パーティーが始まり五分もしないうちに屋敷の中の殆どの人間が眠りについていた。
「・・・一体何混ぜたんだ?アイツら・・・」
「どんだけ強力な眠り薬なんだよ」
乱馬が持っていた合図のためのラピスラズリの石が灰色になったこともあり、外で待機していた四人は急いで屋敷にやって来たわけだが、そこかしこに倒れこみ眠り込んでいる人々を目にして、思わずそんな事を呟いてしまったのだ。
「あ、乱馬ー!」
「乱ちゃーん!」
屋敷に四人が足を踏み入れ、倒れている人々を避けながら歩いていると、シャンプー達の呼ぶ声がした。
「シャンプー、うっちゃん」
「私、乱馬の言うとおりにしたあるぞ!ご褒美欲しいある!」
乱馬達がシャンプーたちと合流したと同時に、シャンプーがそんな事を言いながら乱馬の首っ玉にかじりついた。
「は、離れろって!」
乱馬が慌ててシャンプーを引き剥がそうとするも、シャンプーは「嫌ある!」と離れる気は無いらしい。
「こら、離れえっ。乱ちゃん困ってるやろ!それにそんなことしてる暇ないやろ!」
そんなシャンプーを右京が無理やり乱馬から引き剥がすと、
「うちらの薬のせいで、屋敷の殆どの人はもう眠っているはずや。今のうちに・・・乱ちゃん」
「そ、そうだな」
・・・本当は右京も乱馬に思い切り抱きついてみたいと思ってはいるが、今はそれどころではない。
そう、一緒に旅についていくようになればいくらでも・・・あかねには「まだ分からないけど」とはいいつつ、実はもうすっかりと乱馬について旅に出ると決めている右京は、自分にそんな事を言い聞かせながら皆を次なる作戦へと誘った。
そんな右京の本心は知らないにしろ、やはりそうもゆっくりとしていられないとは思う乱馬達は、右京の言うとおりにまずは作戦実行とすべく屋敷内を移動することにした。
「・・・大商人のお宝は、多分寝室あたりにあるんちゃうかな?」
「何か適当だなー・・・」
「商人っちゅーのはがめついから、わざわざ宝物庫みたいな部屋は作らへんだろうし」
「そうか?」
「そんな部屋作ったら、『ここに宝物を置いていますからどうぞ盗んでいってください』って言ってるのと同じやん」
「あ、そっか」
「せやったら、肌身はなさず置いておける寝室にあると、うちは踏んでるんよ」
「なあ、そういえばカード持っている大商人て、名前なんてんだ?」
「へ?あー・・・よくはしらんけど、皆はリエン様とかリノエ様とか呼んでいたような」
・・・赤い絨毯が敷いてある廊下を一応は警戒しながら進む一向は、そんな会話を交わしながら進路を商人の寝室へと決めた。
そして程なくして誰もいないことを確認して誰もいない寝室に忍び込んだ一同は、タンスや机、ベッドの下などもゴソゴソと漁った。
が、中々金庫らしき物は見つけることが出来ない。
部屋に敷いてある高そうなふかふかの絨毯をも引き剥がしながら床を覗いてみるも、金庫らしき物はない。
「おい、本当にこの部屋にあるのかよ?」
すでに三十分くらいは探しただろうか。
しかしいっこうにそれらしきものが出てこないのを受けて、良牙がぼそっと右京に呟く。
「うーん、うちの読みではここにあるはずなんやけど・・・」
それまでは自信を持っていたはずの右京も、だんだん不安そうな感じになってきていた。
「でもうっちゃん、見つからないとなると、他の部屋を探すしか・・・」
「せやなあ・・・でも寝室以外は検討つかんよ。一体どこから探せばいいか・・・」
寝室に見つからない以上は、屋敷の他の部屋を探さなければならないが、なにぶん広い屋敷のどこから手をつけてよいのか分からない。それに、そんな事をしている内に、せっかく眠らせた人々が起きてしまう可能性もある。
「・・・とにかく手分けして探すしかねえな」
「せやな」
「どうやって分かれる?」
「そうだな・・・それじゃあ、ペアは・・・」
とりあえずは六人いるので三手に分かれられる。
そのペアを決めるべく、乱馬がまずはあかねをちらりと見つめた・・・丁度その時だった。

「お探しの物は見つかりましたかな?」

背筋がゾクリとするような冷たい声が、不意に乱馬達の頭上からした。
「!」
・・・それまで何の気配も無かったのに、乱馬達の行動を見据えているかのようなその声に、その場の空気が一瞬で凍りついた。
「どこだ!?」
「気配がしないね、きっとどこかに私達を監視するツールがあるはずね!」
「なんということじゃ」
良牙、シャンプー、ムースがそれぞれ構えながら神経を尖らしあたりをキョロキョロとする。
乱馬は素早くあかねを背中で庇いながら、腰の剣に手をかける。
「こそこそ隠れとらんで姿みせえ!この卑怯者が!」
右京は、姿なき相手に向かって、気丈にも叫び声をあげていた。
すると、
「卑怯者ですか・・・人の屋敷に忍び込み楽しいパーティを潰したあげく、盗みも働こうとしている貴方達と私、一体どちらが卑怯者かな?」
「なんやて!?」
「ご安心を・・・焦らなくても、すぐにお目にかかれますよ。人の寝室を荒らしたお礼もたっぷりしなくてはいけませんしね」
頭上の声はそう乱馬達に話し掛けると一旦途切れた。
しかし次の瞬間、
「うわー!?」
「きゃー!」
・・・ビュオッ!
一瞬、息も出来なくなるような突風が乱馬達の間を通り抜けた。
その風の風圧に乱馬達はたまらず目を閉じるが、次に目を開けると・・・それまでは確実に屋敷内、それも大商人の寝室にいたはずなのに、乱馬達は何故か外に立っていた。
しかも、辺り一面草っぱら・・・屋敷の影があとかたもない。
その代り、白く長方形の石が少し離れた所に並んでいるのが見えた。
「ここは・・・」
見覚えの無い場所だった。
乱馬達がじりじりと六人で身を寄せ合うようにしてそう呟くと、
「ここは、ヒルダの町外れにある墓地ですよ」
そんな乱馬達の今度はすぐ近くで、低くて太いそんな声が聞こえた。
声のした方を見ると、一人の中年男性が立っていた。
見るからに高級そうなシルクの布を羽織り、だぶっとした釣鐘型の白いズボンをはいている。
首からはキラキラと光る大粒のダイヤを惜しげも無く垂らし、靴や指には所狭しと同じくダイヤがちりばめられていた。
少し色黒でガタイもよいその男性は、戸惑っている乱馬達を見て笑みを浮かべていた。
しかしその笑みは背筋にゾクリとくるほど冷たい。
それに乱馬達を見つめ笑うその目が・・・尋常ではない光をともしていた。
白目が黄色く光っているような、そして目玉が若干赤みを帯びている。
どう考えても通常の人間の宿す物ではないその色彩は、明らかにカードの影響を受けてカードに精神を則られかけているといっても過言ではないだろう。
・・・
「何で墓地なんかに・・・!」
そんな男に対して、まずは乱馬がそう問い掛けると、
「盗人を六人も始末するには、後かたづけも考えると墓場で行うのが都合がいいからですよ」
「何を!?」
「楽しいパーティをめちゃくちゃにした挙げ句、盗みを働こうとする盗賊たちに同情などしませんよ」
「!」
「この、ヒルダの大商人:リエンの名に掛けてあなた達皆、息の根を止めてさしあげます」
恐ろしい台詞を、にこやかに穏かに言うのが余計に不気味さを増す。
男・大商人リエンはそう言って懐に手を入れた。
そして何かを取り出し・・・頬擦りをしている。
よく見るとそれは、カードだった。絵柄は良く見えないが、カードの上部に「\」と数字がかかれているのは良く見えた。
「乱馬、あれは間違いなく隠者のカードある!」
シャンプーが乱馬に近寄りながらこっそりとそう呟いた。
「よ、よし!じゃあ、ちょっと予定は狂っちまったけど俺たちは予定通りに・・・」
突然街外れの墓地まで飛ばされてしまったことは想定外だったが、リエンとの戦いになった際の作戦は一応立ててはいる。
とりあえずそのとおり戦おうと、乱馬、良牙、シャンプー、ムースがそれぞれの武器を手にリエンと向かい合い構えた。
ところが、
「・・・あ、そうそう。言い忘れていましたけど」
乱馬達が戦闘準備を完了しリエンと改めて向かい合った瞬間、先程よりもにこやかに、しかし目だけは笑いもせずにリエンが呟いた。
「なんだよ!命乞いなら受け付けないぜ!」
そんなリエンに、血の気が多い良牙がそう叫ぶと、
「この場所・・・あなた達をここに召還させる前にね、魔法陣を描いておいたんです」
「!?」
「残念ですが、あなた達はそこにいる限り魔法を使うことは出来ない」
「何だと!?」
「魔導士が魔法を使えないのと同時に、私に対しては魔導具も使うことが出来ないようにしておきました」
「!」
「それに・・・魔法が使えないからといって、その場所から動き私に物理攻撃を仕掛けるのは簡単ですが、私を傷つけるのは多分難しいと思いますよ・・・なぜなら」
リエンはそう言って、自分の足元に落ちている木の枝を拾い上げた。
そして、フ・・・とその枝に息をかける。
すると次の瞬間、
「なっ・・・!」
ヒュッ・・・
リエンが息を吹きかけた枝が、なんと一振りの剣へと姿を変えたのだ。
息を吹きかける前は明らかに木の枝だった。しかし今リエンの手の内にあるのは紛れも無く白く、鈍く光を放つ剣だ。
「一体どういうことだ!?」
「あんな魔法、見たこと無いある!」
魔法でもそのような技術は無いのか、シャンプーやムースもそれには驚いているようだった。
乱馬も、そしてあかねも思わず呆然とその様を見ていると、
「私は魔術の他に、錬金術も使えるのですよ。草も、土も石も木も・・・息を吹きかけるだけで何でも金属化することが出来るという事です」
そんな乱馬達に、リエンはそう言ってにやりと笑っていた。
『隠者』のカードは地属性。大地の加護を受けるカード。それに加え、錬金術師を表すカードゆえに、錬金術の力も秘めていたのだ。
カードの特殊能力の恐ろしさである。

・・・せっかく対地属性用に作戦や道具も用意してきたのに、これではまったく意味がない。
しかし、敵は目の前で待っている。乱馬達は絶体絶命の危機に陥っていた。


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