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暁の約束4

「うわ!これどうしたん?」
「ちょっと運動がてら…」
「あんた、強いんやねえ…驚いたわ」



…それから二時間ほどして。
日が昇るまで村の外で魔物を倒しつづけた乱馬は、日が昇ると同時に村の換金所や宿屋を回り、倒した魔物の肉を換金して歩いた。
もちろん自分達が食べる分は十分に残しているので、その分は安心である。
肉を換金した乱馬は、自分達の宿屋に戻る前に少し村の中で寄り道をした。
寄り道を終えてから、乱馬はようやく宿屋へと戻ったのだった。
乱馬は、宿屋の入口で出くわした右京に肉を渡すと、朝食まで休む、と部屋へと戻った。
商売人でもあり料理人でもある右京は、その肉を受け取ると食堂へと向かった。
そして、ありあわせの少ない食料で朝食を作ろうとしていたシャンプー、そして皿を並べていたあかねに受け取った肉を見せ、
「なあなあ、乱ちゃんてすごいなあ」
「え?」
「こんな風に肉、集められるほど腕も立つし、それによく見たらめっちゃええ男やん…うちのタイプやわ」
と、夢見ごこちでそんなことを呟いた。
それに対し、
「乱馬は私の婿になる運命ね!」
ちょっかい出す、許さない!…勿論それに対しすかさずシャンプーが反論するが、
「うち、運命とかそういうのあまり信じてないねんや。だから、こう、と思ったらうちは曲げへんよ」
「乱馬は、私と結ばれるある!邪魔をする、おまえを殺すある!」
「売られた喧嘩は買わなあかんな…やるか!?」
「望むところある!」
乱馬に惚れているシャンプーと、そして新たに乱馬に惹かれはじめた右京が、台所で闘志剥き出しでにらみ合っていたのだが、
「…」
本当は彼の許婚であり、「彼は私の許婚よ!」と一番に叫ばなければいけないあかねは、そんな二人のいがみ合いに参加はせず、乱馬が右京に渡したという肉を見つめ黙っていた。



…乱馬がこんな風に魔物の肉を大量に持ってくるなど珍しい。
確かに乱馬は腕も立つし、食料を調達する事にもなれている。
でも、無駄な殺生はしない。
例えそれが魔物であろうとも、殺す必要が無い時には魔物のいる場所には赴かない。
朝食の前に、散歩で村の中を歩くならばともかく、
わざわざ魔物がいるような地帯に自分から赴いていき大量にその肉を手に入れるなんて…自分達が食べる分は、昨晩良牙がそれなりに調達してきたので事足りている事ぐらい、乱馬も知っているはずだ。
なのに…



「…」
何だか少し気になったあかねは、こっそりと朝食の準備をする台所を抜け、乱馬の部屋へと向かった。
コン、コン…
周囲に気付かれないように、あかねは部屋のドアをノックした。
「はい…?」
程なくして、中から乱馬の低い声がした。
「あ、あの…あたし」
あかねがドアの中に向かってそう声をかけると、
「…」
ガチャ…と、すぐにドアが開いた。
「…何だよ」
そこには、少し機嫌の悪そうな…表情の険しい乱馬が立っている。
「あ、あの…」
あかねは先ほどの大量の肉の事を乱馬に尋ねようとするも、自分を見つめる乱馬の険しい表情に圧倒されて何もいえない。
「…俺、ちょっと疲れてるから」
そんなあかねに対し、昨晩とは打って変わったような冷たい態度でそう呟いた乱馬は、そのまま部屋の中に入ってドアを閉めようとした。
「待って!…ねえ、どうしたの?」
あかねは慌てて乱馬の服の袖を掴み、乱馬にそう声をかけた。
「…別にどうもしないけど」
「うそ。何を怒ってるの?何か今日の乱馬、変だよ。さっきのあの魔物の肉も…」
「…」
…まさか、昨日のあかねとムースのやり取りをこっそり覗かれていたなどと知らないあかねは、乱馬にそう尋ねるも、乱馬にしてみればそれは更に神経を逆なですることを思い出させる布石他ならない。
「…」
乱馬は、自分の袖を掴んでいるあかねの左手にチラリと視線を落とした。
左手の薬指にはめられている、綺麗な石のついたリング。
それが更に、乱馬の神経を逆なでる。
そして、それを装着しているあかねの心が理解できず、困惑してしまう。
「…今日の作戦の前に、ちょっと休みたいんだ」
「ら、乱馬…」
「朝ご飯まで、ちょっと寝たいから。ごめん…」
「乱馬っ…ねえっ…」
「…」
バタン。
乱馬はそのまま、部屋のドアを閉めた。
そして、ドサリと部屋のベッドに身を投げる。
…自分の様子がおかしいと言うのに、あかねは気が付いた。それは凄く嬉しい事だと思った。
それだけあかねが、自分の事を普段からよく見てくれているのだと思うと、胸が弾む。
でも…
「…」
そんなあかねの指に、他の男から貰った指輪があるのは何故だ?
何故、それをずっと身につけている?しかも、薬指に?
「…」
聞きたい。あかねの口からちゃんと。
でも、半分プロポーズとも言える言葉を贈ったその後に、別の男の指輪をはめるってことは…それが答えという事か?
…ああ、何かわかんねえよ。
「…」
乱馬は、ベッドの上で何度も寝返りを打ちながらため息をついた。
まるで、先の見えぬトンネルにでも迷い込んでしまったかのような感覚に陥り、朝食までの時間を悶々とそこで過ごしていた。
その一方で。
「乱馬…」
乱馬にドアを閉められ廊下へと押し戻されてしまったあかねは、彼の意図が分からず動揺していた。
話をした乱馬は、明らかに様子がおかしかった。
でも、まさか昨晩の事を見られていたなんて思いもしないあかねにとっては、彼の態度がおかしい理由が全く分からない。
指にはめられた指輪が、乱馬が考えているようなものではなく単なるあかねの身を守る為の指輪だという事も、
右手よりも左手にはめた方が魔術的に効果があがるだけということ、
そしてたまたま指輪のサイズが薬指が丁度良かっただけというその偶然も…それについて乱馬が誤解しているとは夢にも思わないあかねは、思わず頭を抱えてしまう。
昨日優しい言葉を掛けてくれた乱馬と、今のそっけない乱馬と。
こんなにそっけない態度の乱馬は、今まで見た事が無かった。
「…乱馬」
一体、どうしちゃったの?
…バタンと締められたドアの向うにいる、乱馬。
たった一枚のドアしか隔てていないはずなのに、なんだかとてつもない距離ができてしまったような気がする。
「…」
少し時間を置けば、またいつもどおりの乱馬に戻るのかな?
旅の疲れとか、急に出ちゃっただけなのかな。
朝ご飯の時までにはいつもの乱馬に戻るよね?

閉じられたドアにぺたんと手をつきながら、あかねは大きなため息をついた。






「で?いよいよ作戦決行はきょうなわけやけどー…もう一回綿密に打ち合わせした方がええよな?」
それから、三十分くらいして。
用意が出来た食卓を囲み、皆で少し豪華な朝食を取っている最中に右京がそう切りだした。
「ああ・・・綿密に打ち合わせをしておかないとな」
例えあかねとの間がギクシャクしているとはいえ、それは個人的な事情。
今日は昨日の右京と約束した作戦を遂行する日なのだ。
「シャンプー、魔法道具の準備は?」
「完璧ある。あとは、作戦の指示を待つのみね」
「良がは・・・聞くまでもねえな」
「当たり前だ」
乱馬はシャンプーと良牙にそう尋ねると、ふいっと視線を右京に戻す。
その場にはもちろんあかねも、そしてムースもいたわけだが、彼は二人に特に何も尋ねる訳でもなく、そのまま右京に情報の確認を始めていた。
「・・・」
乱馬の態度は、朝とまったく変わっていない。頭を冷やしてもあの態度とはいったいどういうことなのか。
まさかその原因が昨夜のことだとは思いもしないあかねは乱馬の態度の豹変振りに苦しむが、
「・・・」
鈍いあかねと違って、そういう人の気持ちに対し鋭い感や経験を持つムースにとっては、自分にはともかくあかねに対して乱馬がとった態度で何かを感じたのかもしれない。
ムースは何も言わず、あかねを無視する乱馬の顔を見つめている。
・・・
「作戦開始は、パーティが始まる午後一時。多分午前中からパーティ用の食事は準備をするはずだからシャンプーとうっちゃんは忍び込んで従業員たちを眠らせる。うまくいったら魔法道具で俺たちに合図をして、俺たちが屋敷に忍び込みカードを盗む。そして商人と取引をする・・・と」
乱馬は、ムースとあかねを無視したまま本日の作戦を話し始めた。
そんな乱馬の腕にべっとりとくっつきながら、
「恐らくこの商人は、カードの魔力に取り付かれているある」
「そうだな」
「隠者のカード、錬金術の魔力も持つね。属性は土・・・大地の加護を受けた魔法攻撃を仕掛けてくる可能性を考えて、対土属性用の魔法道具を色々と私、準備してきた!」
シャンプーがそういって、朝食の並んでいるテーブルになにやら並べた。
それは、札のような薄っぺらい紙。でもその表面には読解不能な呪文がびっしりと書かれている。
「大地の加護を受ける魔法、大地そのものを操るね。たとえば地割れ、粉塵・・・でも忘れてはいけない。大地の恵み、それは水、ある」
「ってことは、水属性の攻撃をすれば・・・?」
「・・・基本的に水属性というのは、相手に攻撃を仕掛けるものではないある。水は大地の恵みというのと同じように、人の命の恵み。術者を守る役割をする。でも今回はそれだけでは済まないね。水属性の魔法は私達を防御もしてくれるけれど、それと同時に土属性の力を増幅してしまう。水は大地を守るある」
「なるほど・・・」
「だから・・・水を含んだ大地に、火属性は相性が悪いある。なので攻撃するとしたら風属性か・・・もしくは魔法を使わない物理攻撃あるな。魔法防御も、魔法陣などの魔導具を使って行った方が得策ある。乱馬が持っているカードの中で風属性のカードは・・・」
「魔術師と・・・この間手に入れた女帝、皇帝だ」
乱馬は、腰に挿しているカードフォルダの中からカードを取り出し、シャンプーに見せた。
シャンプーはそのカードを指でとんとん、と触れると、
「魔術師は全ての要素に対して万能あるが、物理攻撃は心もとないね。商人と戦いになった時、乱馬は女帝と皇帝のカードを使って戦うよろし。良牙はいわずと知れた物理攻撃しかできないだろうが・・・」
「まあな」
「うちはどうするん?」
「お前は、乱馬と私たちの邪魔にならないように、あかねと部屋の隅にでも寄っているね。乱馬と良牙のサポートは、私とムースでするね」
そういって、「良いな?ムース」といった。
そう、シャンプーは攻撃補助系魔法も使うことができ、ムースは防御補助魔法を使うことができる。
もちろん二人は腕もたつので、前線で戦う乱馬と良牙のサポートをするには非常に心強いのだ。
これまでは、防御も攻撃補助もシャンプーが魔法を使っていたが、防御補助魔法の手だれであるムースがパーティに加わったことで、知らないうちに乱馬たちパーティは非常にバランスが取れた集まりになっていたのだ。
「・・・本当に大丈夫なんだろうな?」
・・・そんなシャンプーに対して、乱馬がボソッとそう呟いた。
もちろん「大丈夫なのか」と尋ねたのは、ムースのことだ。
ムースは良牙いわく傭兵にも参加していて腕もたち、コロンやシャンプーが言うように魔法も長けているわけであるが、乱馬としてはあかねのことがあるがゆえに、敵意むき出しなのだ。
「シャンプーやばあさんも信用しているし、俺もコイツの話は聞いている。お前よりポカはねえよ」
良牙は、やけにムースにつっかかる乱馬を軽くそうさとすと、「それよりも・・・」と、細かい話を乱馬に振った。
なんだか釈然としない乱馬だったが、それでも刻一刻と作戦実行の時間は迫っている。
乱馬はため息をつきながら、良牙と作戦に関する細かい話をつめていった。
その一方で。
「なあなあ、あかねちゃん」
「何?右京」
「あかねちゃんはー、何でこの旅に参加しておるん?」
・・・商人との特殊な戦いの打ち合わせに入った乱馬たちから離れ、「戦いのときは部屋の隅にいるように」と指示されている右京と、そしてあかねは、部屋の隅でそんな会話を交わしていた。
「何でって・・・」
あかねが右京の言葉にどのように返答しようか迷っていると、
「まあ旅に出る目的なんていろいろあるから細かいことはきかへんけどやなあ、この旅のパーティの中であかねちゃんの役割って、何かな思って」
「役割・・・」
「乱ちゃんはリーダーやろな。強いし格好いいし。良牙は腕力ありそうやし。シャンプーは小生意気で気の強う女やけど魔法が使えるんやろ?ムースはもそう。それに武器や防具の手配もできて器用やってな。じゃあ・・・あかねちゃんは?」
「・・・」
「戦いの時には、うちと一緒に怪我しないように端にいよるなんてさ、パーティにいる意味ないやん。あ、別に嫌味とかでいっとるんやないで?ふと思ったこと」
右京はそういってあかねに微笑む。でも、その質問がたとえ嫌味ではないにしろ今のあかねには非常に堪えていた。
本当に結婚しても良い相手か見極めるため、が当初の理由だった。
でも今は違う。
もうじき訪れるある「瞬間」まで、乱馬のそばにいたい為。
そばにいて、その姿を可能な限り目に焼き付けておきたい為。
だからその為だったら、例え疎まれてでも乱馬のそばにいたいと思った。でも・・・
・・・他の第三者からこんな風に、「あなたはパーティにいる意味があるのか」と尋ねられたら胸が痛くなる。
・・・
「あかねちゃん、料理もヘタなんやろ?食事係にもならないやん。せやったら、うちが旅についていったほうが役に立ちそうやなあ・・・」
「え?」
「何かあんたらと一緒にいると、面白い旅ができそうかな思って」
「でも右京、お店は・・・セルラの城下にあるお店は?」
「そっちはもう一人の従業員に任せておけばええし。それに世界中旅して回ったら料理の修業にもなるし、料理人とか商人のツテもできるし一石二鳥やな。うちにしかできへんこと、もしかしたら他にも旅の間で見つかるかもしれへんし?」
「自分にしかできないこと・・・」
「そ。それにその間に乱ちゃんも落とせばええし」
「・・・右京、乱馬のこと好きなの?」
「顔も好みやし、強いし、めっちゃええ男やん。一緒に旅をしていて好きにならないほうがおかしいで?あかねちゃん。一目ぼれしてもうた」
あ、でも旅にくっついていこうかって考えていることは乱ちゃんには秘密な?・・・右京はあかねにそんなことを囁いて笑っていた。
「・・・」
あかねは小さくうなずきながらも、右京の言葉を頭の中で何でも繰り返していた。
・・・一緒にいても何の役にも立たない、そしてもうすぐ消えてなくなる自分よりも、
こんな風に乱馬のことを好きになって一緒に旅をしたいと願う子がそばにいたほうが、乱馬にとって良いような気がする。
人は死んだら・・・物理的にそばにはいられない。
二度と会えない誰かを一生思い続けるだなんて、一国の王子が許されるはずがない。
だったら早めに彼にその準備をさせてあげたほうがいいのでは?
自分のエゴのために彼のそばにいて気持ちを持たせるよりも、右京なりシャンプーなり・・・乱馬のことを本当に思う誰かが彼の支えになってあげたほうがいいのではないだろうか・・・。
「・・・」
そんなことを考えていたら、あかねの胸がぎゅっと締め付けられるように軋んだ。
いつか、誰かと乱馬が結ばれることなんて、自分が死ぬとわかったその瞬間から覚悟していたことなのに。
それでも、それでも胸が苦しい・・・
「・・・」
あかねがそんなことを考えていると、
「あかねちゃん、どうしたん?何か顔色悪いけど・・・」
「え?」
黙ってうつむいていたあかねに、右京が心配そうに声をかけた。
「な、なんでもないよ」
あかねは慌ててかぶりを振ると、
「それにしても乱馬も幸せものよね!右京やシャンプーに追いかけられちゃうなんて」
「あんなにカッコいいんやし、仕方ない。あー、でもこれから旅を共にすることになったら、苦労が耐えんなあ・・・」
右京はそんなことを言いながら、「あかねちゃん、応援してや?」にっこりと笑った。
「・・・」
あかねはそんな右京に笑顔を返しつつも、内心複雑な胸の内にため息をついていた。





朝食が終わった一同は、最後にもう一度だけ軽く打ち合わせをして、作戦を実行するべく宿を出た。
それぞれの思惑や気持ちが揺れ動く中、いよいよ7枚目のカード取得のための作戦開始である。


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