【らんま1/2の二次創作小説サイト】| INFORMATION | NOVELS |BOOKMARKS |CONTACTS | HOME |web拍手

23時の敵を撃て7

アルファードはまず、今おかれている状況を頭の中で整理をする。
●漆黒の騎士は、帯刀・小太刀兄妹の持つカード(皇帝・女帝)から生まれた魔物。
●漆黒の騎士を生んだカードは、四大属性の内「風」の属性に所属している。
●漆黒の騎士は、呪った相手を閉じ込める魔法陣を作成し、十二体に分裂して襲い掛かる。
●魔法を使って騎士をやっつけるにも、十二体相手では、時間も体力も、消耗が激しすぎる。
・・・現在乱馬がおかれているのこんな状況であろうか。

十二体に分裂をした漆黒の騎士。しかし、先ほど乱馬が感じたように、騎士達の攻撃スピードは劣らずとも、一体一体の攻撃力が若干劣っている。アル ファードにもそう見えていた。
という事は、だ。
十二体は分裂をしているけれど、攻撃力は十二体あわせて元々の攻撃力と等しくなるという事ではないか。
それはつまり、十二体のどれかが「本体」であり、あとはその本体が「分身」しているに過ぎないのだろう。アルファードはそう考えていた。
乱馬が陥っているこの危機的状況を脱する為には、まず、その本体を見つけなければならない。
「・・・」
魔法陣の上を、円を描くように浮遊している、十二体の漆黒の騎士。
アルファードは、騎士達の動きをじっと見つめる。
「・・・」
・・・十二体の騎士は、魔法陣上の十二の点をそれぞれ起点に、乱馬を攻撃している。
起点から乱馬の元へとかけてはいくが、それぞれがその起点から別の起点へと移動する事はないようだった。
「・・・」
何故、動かないのか。アルファードにはそれが不思議だった。
もしも自分がこの状況で乱馬を攻撃するのなら、十二体でグルグルと乱馬の周りを回って、ランダムに攻撃をするだろうに・・・。
「・・・」
そう考えた時。
「あ!?」
アルファードの頭の中に、光るものがあった。
「な、何あるか急に」
アルファードのその声に、シャンプーは驚いた表情を見せた。
「そうか、もしかしたら・・・!」
アルファードは再びそう叫びパラパラと魔法書を捲ると、一瞬だけ考え、そして・・・乱馬の背中に向かって声をかけた。
「乱馬!とりあえず、ザコの兵士をふっ飛ばす!」
「え!?」
「まずは、右を向け!」
「え、み、右だな・・・」
乱馬は、アルファードの声を頼りに右を向いた。
乱馬が右を向いたその方向・・・それは、魔法陣を正面から見た時に正しく見える向きである。
「その方向を向いたまま、まずは左右の魔物に魔法を放て!」
「左右・・・よし!」
乱馬はアルファードの指示に従い、防御壁の中で剣へと念じた。
剣は、乱馬の意を感じ取り、防御壁をすり抜け、炎の竜を左右の場所に浮かんでいる騎士へと飛び出した。
ゴオッ・・・
剣先から飛び出した深紅の炎は、一瞬で乱馬の左右に浮遊していた騎士を二体、吹き飛ばす。
騎士が二体消えたのを確認し、続いてアルファードが乱馬に指示を与える。
「間髪入れるな!次は、今消えた奴の左右に浮かんでいるものに放て!」
「わ、わかった!」
乱馬は、アルファードに言われたとおりに今度は二体づつ四体、騎士を吹き飛ばす。
「何か法則があるのか?」
その様子を横で見ていたシャンプーがアルファードに尋ねると、
「皇帝はカード番号四、女帝は三。だから、十二の点がある魔法陣を、四角形と三角形で囲んでみたんだ」
「!」
「円の十二点の中で、四角形と三角形の頂点から外れる物を今、吹き飛ばした。最後に、四角形の対角線上の二点づつを吹き飛ばしてやると・・・」
アルファードはそう言って、乱馬に、
「乱馬、今度は今吹き飛ばした騎士の両脇にいる奴に魔法を!」
「わ、分かった!」
・・・とアドバイスをした。
乱馬はアルファードに言われたとおりに、更に左右の魔物を吹き飛ばしてやった。
と。
「・・・二体、残ったある!」
そう。円形の魔法陣から余分な点を取り除き、四角形と三角形の頂点を排除した所、たった二点・・・二体の魔物しか残らなかった。
「!」
今まで吹き飛んだ魔物は、恐らく「本体」に吸収されているのだろう。
十二の標的が、一気に二まで減った。選択肢を、極力力を使わずに減らす事に成功したのだ。
だが、二点のうちどちらにいるのが本物かはわからない。
攻撃を仕掛けてくれば分りそうな物だが、それでどちらが本物かわかってしまうと魔物側が不利。してくるはずがなかった。
二体だけ残った漆黒の騎士は、わざと攻撃を仕掛けないで乱馬を見つめている。
おそらく、魔法を使い切って乱馬が体力を消耗するのを狙っているのではないか。アルファードはそう感じた。
「・・・」
だとしたら、乱馬が魔法を放つ回数を少なくさせるのが一番の策。
次に放つ魔法攻撃で、全てを決めるのが妥当だろう。
「二体残ったある・・・どちらが本物あるか?」
事の成り行きを、シャンプーも真剣な表情で見守っていた。
「・・・」
アルファードも、、必死に状況を踏まえながらそれを推理していた。
乱馬も一応騎士の動向を覗うが、ちょうど対称の位置に浮遊しているのもあり、なかなか両方を観察する事が出来ない。
「・・・」
剣を握る乱馬の額から、ぽたぽたと、嫌な汗が零れ落ちていった。
一瞬たりとも気を抜けない。気を抜いた瞬間、攻撃をされたら大変だ。
どちらが、本体か。
正面か背後の騎士か。
乱馬は、慣れない頭を回転させ、色々と考えをめぐらせていた。

・・・と、その時だった。
ヒュンッ・・・
乱馬の背後に浮遊していた騎士が、不意に乱馬の背後を左右にフラフラ、動き始めた。
「こいつが本体か!」
乱馬は瞬時にそう悟り、渾身の力を込めて火の魔法を放とうと構える。
「動いた!」
離れた場所動向を覗っていたシャンプーとアルファードも、その騎士の動きに息を飲んだ。
「向うが待ちきれずに動いてくれたね!」
シャンプーは先に動いてくれた敵に安堵の表所を見せるが、
「いや・・・」
あくまでもそれに対し、アルファードは慎重だった。
彼だけは、動いた方の騎士ではなく、動かなかった方の騎士を観察した。
すると、
ギロッ・・・
「!?」
・・・どこからどう見ても真っ黒。ゆえに「漆黒の騎士」と命名した敵。
もちろん顔などついていないはずなのに、動いた騎士に魔法を放とうと準備している乱馬に対し、
動かなかった方の騎士は、不気味な光・・・いやあれは、「人の目玉」のような、奇妙な形をした光を、その何もないはずの漆黒の身体へと一つ、浮かび 上がらせた。
目玉のような物を浮かび上がらせたその騎士は、自分に背を向けてもう一体へと攻撃をしている乱馬に向かい、なにやら仕掛けよと剣を振り回してい る。
「乱馬!」
アルファードは慌てて、乱馬に向かって叫んだ。
「背後の敵はフェイクだ!正面の敵が本体だぞ!」
「な、何だと!?」
今、まさに背後の騎士へと渾身の魔法を放とうとしていた乱馬は、慌ててその魔法を思いとどまり、え?と背後を振り返る。
そして、
「!?」
振り返った場所にいた騎士に、不気味な黄色い目玉のような物が浮かび上がっているのに言葉を失う。
「グアアアア!」
乱馬達に本体の居場所を感づかれた騎士は、乱馬の視線から逃れるべく、魔法陣の上を移動し攻撃を逃れようとしていた。
が、ここで逃がしてしまっては、どうしようもない。
騎士は、乱馬の正面から左側へと移動しようとしていた。大分ダメージを受けているのか、動きも少し鈍くなっているような気がした。
「乱馬!二十三時の方向だ!そこから二十三時の方向に向かって魔法を!」
「ああ!」
アルファードは、すかさず敵の動きを捉えて乱馬に向かい叫んだ。
乱馬はそんなアルファードに力強く答えると、
「これで最後だ・・・!火の竜よ、アイツを焼き尽くせ!」
ゴオオオッ・・・
乱馬は心の中に火竜を思い浮かべ、騎士に向かって剣先を向けた。
乱馬のイメージが込められた剣は、天かけるかのような火竜を生み出した。 炎の牙を蠢かせ剣から飛び出した火竜は、浮遊していた騎士をすっぽりと包み込むような炎を吐き・・・その姿を消し去ってしまった。
本体が消えた瞬間、もう一体浮かんでいた騎士も、まるで霞の如く消え去った。
そしてその最後の騎士が消えた瞬間、パアアッ・・・と虹色の光が辺り一体に広がった。
「!?なんだこの光は・・・!」
騎士を倒す事が出来、ようやく魔法陣から解放された乱馬が、フラフラとその魔法陣から出ながら叫ぶ。
「乱馬!」
「やったな!」
シャンプーとアルファードも、流水壁の中から飛び出してきて乱馬に駆け寄ってきた。
「この光、なんだろうな?」
乱馬が駆け寄ってきた二人に尋ねてみると、
「カードの悪しき力が、無くなったあるか?今まで帯刀達を支配していた魔力が解放された証なのかもしれないね」
「ああ、そうか・・・」
シャンプーがそう言った瞬間、乱馬の頭上にひらり、ひらりと何かが舞い落ちてきた。
「何だ?」
乱馬がそれを手にとると、それは・・・帯刀たちが所持していた二枚のカードだった。
「皇帝」と「女帝」・・・悪しき力を失ったカードが、乱馬の元へとやって来たのだ。
そう、カードは持ち主を選ぶ。
二枚のカードは、新たなる主人を自らの意思で決めてこうして乱馬の元へとやって来たのだ。
「・・・」
乱馬はそのカードをそっと、自分の腰に巻いているカードフォルダに入れた。
ヴォン・・・二枚のカードはカードフォルダに収まった後、一度だけ虹色の光を放った。そしてその後は何事も無かったかのように、そのフォルダの中に収 まったのだった。
「こっちは解決あるな」
「ああ」
「あ。あれを見るよろし」
シャンプーはそう言って、ある方向を指差した。
乱馬がそちらを見ると、
「う・・・」
「あら、私はどうしてこんな所に・・・?」
それまで床に倒れていた帯刀と小太刀が、ちょうど目を覚まし体を起こしているのが見えた。
二人の姿からは、先ほどまで感じていたさっきというか異常な雰囲気はもう、感じられない。
「・・・」
二人には、シャンプーが用意してきたダミーのカードを渡す事にして丸く治めよう。
とりあえずこちらは、一段落・・・乱馬はホッと一息をついた。
しかし、
「・・・そうだ、俺、こうしちゃいられねえ!」
・・・そう。
帯刀達とカードの問題はこれでようやく落ち着いたが、もう一つ乱馬には、かたずけなければならない問題があるのだ。
戦いを終えた乱馬はそれを思い出し、はっと息を飲んだ。
そして、
「あかねの居場所を!あいつらにあかねの居場所を聞かないと・・・!」
目を覚ましてすぐで申しわけないが・・・と、乱馬は帯刀達にあかねの居場所を聞くべく、側によろうとした。
と、その時だった。
ヴォン・・・
「!?」
不意に、先ほどフォルダに収めた「女帝」のカードが、振動した。
そして、
ヒュッ・・・
「これは・・・!」
カードフォルダの中から、ある方向に一筋の光を放った。
真っ直ぐに、地下方向へと伸びる虹色の光。
「女帝」は恐らく小太刀が持っていたカード。そのカードが、地下方向に何かを見出すべく、乱馬を誘っている。
「あかねか!?あかねの居場所なんだな!?」
乱馬は瞬時にそれを悟ると、
「シャンプー、アルファード!お前ら先に外へ出ろ!俺は、あかねを助けに行くから・・・」
「仕方ないあるな」
「わ、分かった」
カードフォルダから放たれた光を頼りに、乱馬はシャンプーたちと別れて地下へと急いだ。
「!?」
が、地下は瓦礫の山。何らかの爆発でもあったのか・・・それに加え、階上での乱馬達の戦いのせいで、前に進むのもままならなかった。
「くっ・・・」
こんな状況下、通常の人間なら勿論無事でいられるわけが無い。 焦りと不安を抱えながら、乱馬は地下を光が導く方向へと進んでいく。
そして、
「・・・!?」
瓦礫の道を進んでたどり着いた、その場所。
瓦礫の山の中、楕円形の白い光があるのを、乱馬は確認した。
不思議な事に、白い光の周囲は瓦礫の山。あまつさえ建物の柱まで倒れているというのに、その楕円形の光のエリアにはひとかけらも瓦礫が無い。
ヒュッ・・・カードフォルダの光は、その楕円の光を一度だけ照らし、そこで消えた。
「・・・」
乱馬は、瓦礫を避けながらその白い光に近づく。
・・・光の中央には、メイド姿のあかねが倒れていた。
「・・・」
白い光の中に倒れているからだろうか。いつも以上に顔色が白いのを見て、乱馬はゾクっと身を強張らせる。
おまけに、唇を切ったのか唇の端から少量の血も流れている。
「あかね!おい!あかねってば!」
乱馬は震える声で、倒れているあかねを抱き起こして揺さぶった。
あかねからは、何の反応も無い。
「あかね!起きろ、あかね!」
乱馬は、更に震える声で・・・しかし、あかねにも聞こえるようにと、大きな声を張り上げて彼女の名まえを呼んだ。
すると、
「・・・」
何度目かの呼びかけで、それまで倒れていたあかねがうっすらと、目を開けた。
「あ、あかね!」
起きた。
その事実に乱馬が表情を明るくすると、
「・・・乱馬」
あかねは乱馬の名前を一度だけ呼び、再び目を閉じてしまった。
がくん、と乱馬の腕があかねの身体の重みで満たされる。
「あかね!?」
乱馬はそんなあかねの様子に慌てるが、目を閉じたあかねからは、きちんと呼吸だけは聞こえる。
どうやら、気を失ってしまっただけのようだ。
「良かった・・・」
乱馬はぐったりとしているあかねを一度ぎゅっと抱きしめると、彼女の身体を腕に抱えて、もと来た道を引き返し仲間達の元へと戻っていった。

「・・・」

とりあえず、カードの事はかたずいてあかねもこうして元に戻ってきた。
それは嬉しい事だ。でも・・・
「・・・」
・・・周りは瓦礫の山。倒れていた場所は、殆ど壊滅的に破壊されていたというのに、なぜ、あかねの周りだけ瓦礫が無かったのか。
そして、何故妙な白い光に守られていたのか。
あかねは、魔法など全く使えないはずだ。それなのに、何故・・・?
あかねが無事であった事は嬉しいが、 最後に一つ、不思議な問題が残ったな。
「・・・起きたら、聞いてみるか」
乱馬は、自分の腕の中にある確かな感触をしっかりと感じながら、小さな声でそう呟いた。

ゴーン・・・ゴーン・・・
町の教会から、祝福の鐘の音が鳴り響いていた。
真っ青な空の下、純白のドレスを着た少し腹の出た花嫁と、 その花嫁よりも若干体は華奢な、タキシード姿の花婿。
色鮮やかな紙ふぶきと、人々の割れんばかりの歓声が二人の未来を祝福する。
数ヶ月にわたる独裁自治から解放された町人達の英雄の一人の結婚式は、久し振りに皆が心から楽しみそして祝福できる一番初めの、行事であった。
結婚式列席者の中には、あの領主兄妹もいる。
最もこの二人、
「僕の花嫁には、あかねくんのような可憐な女性が相応しい」
「ああ、乱馬様・・・まさか本物にこんな近くでお会いできるだなんて・・・」
結婚式もそこそこ、同じように列席している乱馬とあかねの両サイドでぴったりと、くっついてはなれないのだけれど。
その横ではさらに、
「離れるよろし!乱馬は私の婿になる運命ね!」
「あかねさんに触るな!」
シャンプーと良牙が、帯刀・小太刀といがみ合ったりもしている。
「・・・」
平和になったのはいいが、これはこれで厄介だな。
乱馬も、そしてようやく意識を取り戻して元気になったあかねも、苦笑いをしながらそんな事を思っていた。
・・・捕らえられていた男達は皆、その日の晩にそれぞれの自宅へと戻った。
もちろんそれはアルファードも一緒で、
「アルファ!」
「ベッキー!」
乱馬達と一緒に宿屋へと戻ったアルファードは、ようやくベッキーと出会うことが出来た。
「良かった・・・良かったアルファ!」
「ベッキー!」
ベッキーとアルファードは、乱馬達が見ているのもお構いなしに固く抱き合い、キスをしている。
「はは・・・ベッキーもこれで安心じゃな」
ハミルトは、二人のそんな姿に目を細めて笑っている。
「これでもう、死ぬとか言い出さねえよな」
良牙がそんな二人を見つめながらぼそっと呟くと、
「当たり前だ!なあ?ベッキー」
「ええ!アルファのためにも、元気な赤ちゃん、生まないと!」
出会ったときの落ち込みはどこへやら。ベッキーは元気にそう叫んで、笑って見せた。
「良かった・・・」
乱馬は二人とハミルトの様子を見つめながらそう呟くと、
「あ、悪いんだけどさ・・・あかねをまず、休ましてやりてえんだ。部屋、連れてっても良いかな?」
「ああ、そうだったな。あんた達の部屋はそのままにしてあるから、すぐに寝かせてやってくれ」
「ああ。ありがとう」
まずは、あかねを用意してもらってある部屋のベッドへと寝かせてやった。
そしてすぐに部屋を出る。
「乱馬、あかねさんの具合はどうだ?」
部屋を出たところで、良牙とシャンプーが乱馬を待っていた。
「心配ないね。少し身体に打撲の後があったけれど、切り傷も唇だけあるし。少し休めば元に戻るね」
とりあえず、シャンプーたちと合流した後乱馬はあかねをシャンプーに見せた。
そこである程度治癒魔法を施してもらったおかげで、あかねは大事に至らなかった。
「全く、世話を焼かせるあるな」
そうぼやくシャンプーに、
「しょうがねえだろ!あかねさんはなあ、俺たちと違って頑丈に出来てねえんだぞ!か弱い可憐な女性なんだ!」
良牙がそんなフォローであかねを守る。
「私だって可憐な女性ね!乱馬に守ってもらわなければ、危ないある!」
シャンプーはそんな事を叫びながら良牙に舌を出した。
「まあまあ。それよりも、あかねを休ませている間にもう一回俺たちは、あいつらの屋敷に戻るぞ」
「何でだ?」
「何でって・・・一応、町の奴らを苦しめていた事実は、きちんと教えないとダメだろ。カードのせい、で済む問題じゃねえよ」
乱馬はそんな二人を上手くなだめると、そう言って二人を連れて再び、帯刀たちの屋敷へと戻ったのだった。
・・・屋敷に再度赴いた乱馬達は、同じく意識を取り戻して本来の姿に戻った帯刀と小太刀に事の成り行きを説明した。
「何!?僕らがそんな事をしたというのか?でたらめに決まっている!」
当初は乱馬の話を全く信じなかった帯刀も、
「帯刀様、申し上げます!」
・・・屋敷の兵たちが乱馬達の話を裏づけしてくれたのと、あとは、
「あ、あ、貴方は!セルラ大陸の・・・!」
ようやく正気に戻った小太刀が、かねてよりの意中の人・・・乱馬の姿に気がついたことにより、
「お兄様、乱馬様が嘘など言うわけがありませんわ!乱馬様は、そんなお方ではないのです!」
乱馬を全面的に擁護する立場へと回った事から、ようやく帯刀も乱馬の話を信じたのだった。
「ああ、乱馬様・・・まさかこのようなところでお会いできるだなんて・・・」
部屋にパネルを飾るほどの思い人に会えた小太刀は、乱馬が旅の途中であることを聞くと、
「私もお供します!」
・・・とんでもない事を言い出すが、
「あ、いや、その、間に合ってるから・・・」
乱馬は丁重にその申し出を断り、
「・・・とにかく、町の人を苦しめた分、町の人が喜ぶような自治をするようにこれからは心がけるんだな」
乱馬は、帯刀に向かってそう言った。
「ふん、お前に言われなくても分かっている」
帯刀は、口では乱馬にそんな悪態をついたが、
「そうか、僕は皆に大変な迷惑をかけたのだな・・・」
そんな事を何度も呟いていた。
「・・・」
・・・カードの力が無くなった今の帯刀が、本来の彼の姿。
根は、きっと独裁者などではないんだろうなと乱馬は感じた。
少しだけひねくれている事と、そしてあかねを気にいったことは何とも気にいらない所だけれど。
・・・
「・・・とにかく、そう言うことだから」
その後、乱馬達は伝えるべき事だけは全て伝えてすぐに屋敷を出た。
そして、翌朝。あかねの体力の回復を待って宿を出ようとしたのだが、
「ねえ、見てこれ!」
「え?」
乱馬達の部屋にベッキーがとある一枚の手紙を持ってきた。
みるとそれは帯刀の字で、延期させてしまったベッキーとアルファードの結婚式を、全て費用やドレスも用意するので皆の前で挙げないか?というもの だった。
せめてもの罪滅ぼしと、そして町の皆を明るい気分にさせるための行動だろう。
「いいじゃないか。よかったな」
「ええ!」
ベッキーは明るい笑顔で乱馬達を見ると、
「あんた達も絶対に、列席してってよ?あと一日くらいここでのんびりしても大丈夫でしょ?」
「え、でも・・・」
「それに、昨日の今日じゃ、皆疲れてるだろうしさ。ね?アルファードもそう言ってるのよ」
あんた達の分も、もう今日の分の食料、調達しちゃったからさ。ベッキーはそう言って部屋を出て行った。
「・・・どうする?」
「どうするったって・・・ああいっているんだ、仕方がないだろ」
「どうせタダだし、一日くらいはのんびりするある」
それに、あかねもまだ完全に元気、とは言えないだろうから。乱馬達は簡単にそう話し合うと、もう一日この町に滞在して、ベッキー達の結婚式に参加す ることになったのだった。
・・・
幸せそうに微笑む新郎新婦が、皆の投げるカラフルな紙ふぶきで彩られる。
そんな光景を、
「・・・」
とりあえず普通に出歩いたりは出来るものの、まだ完全な調子ではないあかねは、ぼーっと眺めていた。
シャンプーのおかげでとりあえず怪我や打撲はなくなったものの、何だか頭がボーっとしているのだ。
しかも、痣とか出来てはいないけれど、首のあたりに時折激痛が走る。
恐らくそれは、地下の宝物庫で壁に叩きつけたのが原因だとは思うけれど、
「・・・」
その激痛もさることながら、
・・・あの時「何で」体が吹き飛ばされたのか。
そのことのほうが、あかねは気になった。
それに、
「お前さ、何か白い光の中に倒れてたんだよな」
「光・・・?」
目が覚めた後、乱馬から聞いたその話。それも妙に引っ掛かった。
あかねがカードに触れた瞬間、何やら見えた光も白かった。
カードに魅入られた小太刀と触れた瞬間、発した光も白かった。
そして、今度は瓦礫から身を守った光も白かった・・・魔法など使ったことも無いし使えないはずなのに、一体なんだというのか。
「・・・」
あかねはそれが気になって仕方がなかった。
と、その時だった。
「ブーケ、投げるよー!」
そんな声が、前方から聞こえた。
あかねがふっと顔をあげると、花嫁姿のベッキーが、教会の階段を数段のぼり、手にしていた美しい花のブーケを、投げようとしている所だった。
「あれを取った物が、次の花嫁ね!」
「乱馬様との結婚式を挙げるのは、私ですわ!」
・・・古来より、万国共通で「花嫁のブーケ」は幸せの証。
手にしたものに次の婚姻を誘うということもあり、シャンプーや小太刀も勿論の事、独身女性たちが一斉に前へと歩み寄るも、
「・・・」
心中複雑なあかねは、特に前に出ることも無くその様子をじっと見つめていた。
「・・・行かないのか?」
そんなあかねに、乱馬が声をかける。
「あ、うん・・・」
「具合、まだ悪いのか?」
「そ、そうじゃないんだけど・・・」
「・・・」
そうじゃないけど、なんだよ。結婚・・・したいとかそう言う気持ち、まだないのか?
「そ、そうか・・・」
乱馬は、言いたい言葉をグッと堪えて思わず口をつぐんだ。
乱馬にしてみれば、そんなあかねの態度は不安この上ない。
「・・・」
もちろんあかねにだって、今乱馬が何を言いたかったかぐらいは分かっていた。
しかし、それでもあかねには、自らそのブーケを取りに行く気にはなれなかったし、そう見せかける事も出来なかった
素直に「幸せになりたい!」・・・そんな風に未来を望めるような余裕が、あかねにはないからだ。
それに色々な事が気になって、ブーケを取りに行く心の余裕が無いのも確かだった。
・・・そうこうしている内に、ブーケはベッキーの手からほおり投げられた。
美しい色とりどりの花で作られたブーケは、青い空の下、放物線を描くように宙を舞う。
ゆるやかに、なだらかに。
弧を描くように宙を舞ったそのブーケは、
「私ですわ!」
「私ね!」
ブーケを手に入れようと手を伸ばしていた女性達の遥か後方へと伸びていく。
そして、
「えっ・・・!?」
フワっ・・・
何とブーケは、後方で一人、ぽつんとそれを眺めていたあかねの頭上にやって来た。
「あっ・・・」
前へは行かなかったけれど、すぐ目の前にブーケは飛んできてしまった。
そうなると必然的に取らないといけないな・・・いや、別に取ること自体が嫌ではないんだけれど。
思いもよらぬ展開に、あかねは驚きつつも頭上のブーケへと手を伸ばした
・・・・・・・・・・つもりだった。
「!?」
・・・あかねがブーケへ手を伸ばした瞬間、グラッ、とあかねの視界が揺れた。
クリアだったはずのブーケの輪郭が、不意にぼんやりと広がる。
幾つものブーケ。目の前でぼやけてしまって、どこがブーケの本体なのか分らない。
・・・ポトン。
そうこうしている内に、ブーケはあかねの手の内ではなく、あかねの顔面へと落ちてきた。
「・・・」
あかねはそのブーケをゆっくりと手で取り、改めて自分の目の前へと持ってくる。
何度か瞬きをしてもう一度ブーケを見ると、先程よりもくっきりと、ブーケはあかねの瞳に映った。
「・・・」
ぼやけたのは、気のせいか。それとも・・・
「・・・」
・・・底知れぬ不安が、あかねの胸を過る。
「お前、ホント不器用だな。花嫁のブーケを顔面キャッチする女なんて、はじめてみたぜ」
と。
あかねがブーケを受け取ってじっとそれを見つめているところに、乱馬が話し掛けてきた。
「わ、悪かったわね!どうやって取ろうと、あたしの勝手でしょ!」
あかねはその不安の心を乱馬に悟られまいとわざと強気で振舞うと、
「それにしても綺麗ねー・・・ポプリにして持ち歩こうっと。きっと最高のお守りね」
そんな事を言いながら、ブーケの匂いを嗅いで見せた。
「それ、受け取ったんだからな。受け取ったからにはお前、花嫁にならないといけないんだぞ」
そんなあかねに、乱馬はぼそぼそとそう呟く。
「貰ってくれる人がいればなるわよ」
「ほ、ホントだな!?女に二言はねえな!?」
「何よ。疑い深いわね」
あかねの言葉に、乱馬は何だか嬉しそうな顔をしていたが、
「・・・貰ってくれる人がいればね」
あかねも笑顔でそうは呟くも、心中は全くクリアではなかった。
それは、
「あーあ、ブーケはあかねのものあるか。残念ある」
結婚式後、宿へ荷物を取りに戻るべく道々を歩きながら、ブーケを取れなかったことをまだ根に持っているシャンプーや、
「あかねさんの花嫁姿、きっとすげえ綺麗なんだろうな・・・」
勝手にあかねの花嫁姿を想像してニヤニヤしている良牙と、
「勝手に想像するな!」
その想像までも独占しようとしている乱馬。
この三人の後ろを歩きながらも、あかねの心が晴れる事は無かった。

「それじゃあ、気をつけて!」
「また、この町に立ち寄った時はうちに来いよ!」
「世話になったのう・・・元気でな」
「あかねくん、僕の力が必要になった時はいつでも呼ぶのだ!」
「乱馬様、私はいつでも、必要とあらば乱馬様の下へ駆けつけますわ!」

・・・こうして。
結婚式も無事終わり、ようやく町にも平和が戻った事を確認した一行は、
ハミルト・ベッキー・アルファード、そして帯刀兄妹に見送られて、「T&Kアイランド」を後にしたのだった。
次に目指すは、アルファードも修行をしていたという、商業の町・ヒルダ。
新しいカードも増えたし、いろいろな経験もした。
報告がてらに、とりあえずそこでもう一度、コロンに連絡を取るという事だけ決めて、一向は道を進んでいた。

・・・ところで。

「なあ、そういえばさー・・・T&KアイランドのT&Kって何の略なんだ?」
「ああ、なんかな、牢屋の中で俺が聞いた話によると、『タッチー&コッチー』の略で、あの兄妹の昔からのニックネームらしい。あいつらの親父・先代領主が、子ども可愛さにそんな名前に改名したらしぞ。死ぬ前に」
「・・・恐ろしいくらいネーミングセンス、ないあるな」
「まあなあ・・・」

・・・
不安を抱えていたり、無駄口を叩いたり。 それぞれが思惑を抱えつつ、次なる町への道を進んでいくのであった。


RUMIC'S NOVELS LINK

パラレル
糖度2
糖度3
糖度4
糖度5
企画

OTHER CONTENTS

■オリジナル作品(外部サイト)
お仕事情報

THANKS!

TOTAL: HITS(Y:)