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覚悟

各ガーディアンの鍛錬も終わり、乱馬達一行はガーディアンたちと別れ、再び街に向かっていた。
とりあえずは命を落とすものもなく、またルキアとエレーナが残した伝説の剣「エクスカリバー」も手に入れることが出来た一行であるが、道を進むそれぞれの表情は何故か明るいものではない。
というよりも、明るくないのは乱馬だけであり、その他の面々はそんな彼を気遣ってか自然と無口になっているという状況であろうか。

ゆっくりと先を歩く彼の指には、「エクスカリバー」が収まっているというシルバーの指輪が見える。
乱馬が強く祈ったときに、この指輪から剣が出てくるという。指輪の形をした鞘……伝説の宝剣ゆえに、それを収めるものも普通ではない。

命を賭した鍛錬も乗り越え、伝説の宝剣も手に入れたとなれば、本来は心強いことこの上ない。
それなのに、何故かその後姿が少し小さく見えるのは不思議なところである。
それは、彼が乗り越えた鍛錬と抱える苦しみを思えば仕方がないことなのかもしれないが……。
……

「……乱馬、大丈夫あるか」
そんな中、前を歩く乱馬から、後ろに少し距離をとって歩いているシャンプーが誰にともなくポツリと呟く。

「さあ。……だが、あかねさんのことで頭が一杯なのは確かだな」
そんなシャンプーに、良牙が答えた。恐らくそれは正解である。だが、完全正解というわけではない。
彼があかねのことを考えているのは誰でもわかることで、それ故、どうなのか。何を思っていて何を考えているのか。
シャンプーをはじめとした皆が知りたいのは、そこである。

勿論全てではないが、彼の気持ちは仲間も皆わかっている。
だからこそ、リーダーである乱馬には元気でいてほしい。
でないと、これから命を賭した戦いに身を委ねる皆にも迷いが生じる。
彼らはコロンには誓ったのだ。これからの戦いでは自分たちの命を賭して乱馬を助けるという時が来るかもしれない。それが出来るかどうかということを。
皆は、「出来る」とコロンに応えた。だからこそ、自分たちが命を賭す相手である乱馬には、前を向いてほしいのだ。
だが、

「よし、とりあえず景気づけに一発殴って……」
「助太刀するある」
「シャンプーがやるならおらもやるだ」

時に、やりすぎは良くない。当然である。
「……おい」
彼を元気付ける為とはいえ、今にも乱馬に殴りかかりそうな面々を一応はタクトが戒めつつ、

「それより街に着いたらいよいよ出発だろ。鍛錬は乗り越えたとはいえ、お前ら全員大丈夫なのかよ」
「失礼な子供あるな。見た目は変わらないかもしれないが、私はかなりパワーアップしているはずね」
「誰が子供だ!」
タクトは声を荒げて叫ぶも、大きなため息をつくと、

「……普通の人間なら、こんな状況で心が折れるなって方が無理な話だ。アイツはあいつなりに、冷静さとかを取り戻そうとしているんじゃないか。時の鍛錬は、他の鍛錬とだいぶ異なる鍛錬だったようだしな」
ガーディアンからあの時聞いたことを呟きながら、タクトは再びため息をつく。

そう、乱馬の鍛錬が終わるまでの間、祠を守るガーディアンと話をしたタクトたちは、そんな話を聞いていた。
四大要素を司るガーディアンの鍛錬と、時のガーディアンによる鍛錬は少し趣向が異なると。
その内容までは詳しく教えてもらえなかったが、精神的に酷く揺さぶられる何かを、彼は乗り越えたはずなのだ。
それ故、たとえ「うつけ」だの「バカ王子」だの言われてはいても、それなりに思うことはあるのだろう。
それに……今までタクトが「兄」だと思っていた男と、自分の婚約者が共に姿を消したのだ。本当ならば発狂しそうな状況であるだろうに。
冷静に自分を保とうとしているだけ、随分と人間として大きいと思うタクトである。

そんなタクトの気持ちが通じたのか、他のメンバーもそれ以上は余計なことはせずに乱馬を見守っているようだった。
一向は言葉少ないまま、一日かけてようやく、街へと戻ったのであった。

 

 

 

街に戻り例の宿屋へと着いた一行は、翌朝にやってくるはずのキリト達と合流する前に、それぞれが自由に時間を過ごすことにした。
シャンプーはコロンに連絡を取り、みなが無事鍛錬を乗り越えたことを報告した。ムースは武器や魔道具の手入れをし、良牙は宿の裏庭で(外に出てしまうと迷う為)身体を動かしている。
キリトは街の図書館などに行き、何か書物を調べたいといっていた。
乱馬は……というと、良牙と少しだけ手合わせした後、早々に部屋に戻ってきてベッドに横になっていた。

天井を仰ぎ、指にはめられた指輪をじっとみあげる乱馬の口からは、自然にため息が漏れている。
その脳裏には時の鍛錬の最中のことが浮かでいるのだが、どちらかといえばその時に聞こえた彼女の声が耳から離れず、抑えていたものが色々と沸きあがって葛藤しているというところだろうか。
うじうじとわれながら情けないとは思う乱馬ではあるが、それは都市相応の青年ではあるので仕方がないところである。

とそんな中、部屋にシャンプーがやってきた。彼女はいつもの儀式よろしく乱馬に勢いよく抱きついてきたものの「ひいばあちゃんが呼んでいるある」と本題を彼に伝えた。
どうやらシャンプーの用事は終わったようだが、その後コロンが、乱馬に用があるらしい。
乱馬は素直にそれに従うと、シャンプーの部屋へと向かった。そして扉を閉める。
シャンプーは気を使って外に出たようなので、乱馬はゆっくりとコロンと向き合った。
そんな乱馬に対しコロンは皺くちゃな顔に笑みを浮かべると、

『時の鍛錬を乗り越えたようじゃな』
「ああ。おかげさまでな。よくわからない、たいそうな剣も手に入れたぜ」
『エクスカリバーか……。王子を取り巻く環境はだいぶ変わったようじゃな』
「そうだな。それより……なんだよ、話って」
『……』

一旦口を噤み、乱馬をじっと見詰めた。そして、

『……最後の戦いに挑む前に、おぬしには話しておきたいと思ってな』
「話す?何を」
『あかねも、そしてシャンプーたちも。皆が今必死に前へ進んでいこうとしている。稀有することはあるかも知れぬが、何よりもおぬしが前に歩を進めねば、ラヴィに打ち勝つことはおろか、光を取り戻すことは出来ぬ』
「……。ああ、そうだな。それに、こんな風にぐじぐじ考えているのは何だか俺らしくねえ」
「そういうことじゃ。がんばれよ、王子』
「ああ」
『あとは……王子よ』
「なんだよ」
『……宝剣・エクスカリバーを扱うには強い意志と覚悟が必要じゃ。そして、恐らく王子一人の力ではそれを扱いきれんかも知れぬ』
「……」
『もしも、あまたの力を得た上でそれを使うことになった時、王子はただその剣をふるうことだけ考えよ。さもないと、すべてが無駄になる』
「無駄?」
『……願わくばそうならないことを祈るが、可能性は高い。良いな、王子。剣を手にしたら、おぬしはそれだけに集中せよ。そうすればその宝剣、きっと他の何にも負けぬ力を与えてくれる』
なんせ、ルキアとエレーナの剣だからな。コロンはそう言ってフッ……と姿を消した。

「……」

コロンの最後の言葉は、乱馬の胸に大きく引っかかった。あまたの力が無駄になるとは一体どういうことなのだろう。だが、考えたところでよくわからない。
乱馬は大きく深呼吸をすると、自分の指にしっかりと納まっているシルバーのリングへと目を落とした。

ラヴィとの戦いで、きっと必要となる剣が収まる鞘。これを使う状況というのは、一体どういう状況か。
まだまだ不安や気になることは多いけれど、コロンが言ったとおりに今は前に進むしかない。

大丈夫、あなたはきっと負けないわ

時の鍛錬を課されている時、自分を救ってくれたあかねの言葉が不意に耳の中に響く。

……そうだ、俺は絶対に負けない。負けるはずがないし、負けてたまるか。だって俺は……

「絶対に、取り戻してやる」
あの日あの時心の決めた思いは、もう何をしても変わらないのだ。乱馬は再び自分に言い聞かせるようにそう呟くと、ゆっくりと自分の部屋へと戻っていった。


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