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迷い

その場所は、闇の魔法を司る主の居城ゆえ、天から降り注ぐ日の光さえもそこを照らすのを許さないかのような、雰囲気を醸し出していた。
城を囲む瘴気の海は不容易に近寄るものを容赦なく焼き爛れさせ、その命を奪う。
城の周りの森には血に飢えた魔物たちが巣食い、足を踏み入れたものを根こそぎ食い荒らす。
城内もそこかしこに獰猛な魔物が巣食っているので、
始めは興味本位で城を目指し名を上げようとしていた無謀な冒険者達も、時間が経つに連れてその姿を消していった。

その闇に祝福された城の、地下。
がらんと静まり返った闇の空間の中央には、二つの「棺」が置かれていた。
双方の棺の蓋は開けられ、中身は空だが今にもその中へ主を誘うかのような雰囲気を醸し出している。
棺の周りには、一つの台座。それは、剣を収めるのにちょうど良い大きさのものである。
闇の中目を凝らしてよく見ると、棺の周りや台座の下、床や天井にもびっしりと呪文のようなものが記されていた。
まるでそこは、地下空間に作られた巨大な墓場。
地下に流れる冷たい空気と完全に遮断された闇も手伝い、そこは禍々しくも息苦しい、闇の炎で身を焦がしてしまうかの錯覚を受けるような空間に相成っていた。

そんな空間に、中央に置かれた棺を見つめ、佇むものがいた。
端正な顔立ちに、青い瞳。そして・・・黒に彩られた服。
古の王族が身にまとっていたであろうかのごとし召し物に身を包み、ただ一点を見つめるその男。
それはこの城の主であるラヴィ・・・ではなく、「もう一人のラヴィ」こと、真之介であった。

真之介は、空間の中央に置かれた棺の元へ歩み寄り、その縁をそっと撫でた。
その瞬間、ブワ・・・と瘴気のようなものが辺りに立ち上り、真之介の手をも駆け上ってくる。
真之介はその瘴気を反対の手で払いのけると、そっと小さくため息をつく。

ラヴィの当初の目的どおり、「癒しの里」からあかねを連れ去ることに成功した。
そして、ラヴィも又、「鍛錬の庵」にいた古代魔法の研究者でもあり現世でも偉大な魔導師の一人として名を馳せるタームを連れ去ることに成功していた。
二人を手に入れたラヴィは、本格的に己の「最終目的」に向けて準備を進めていた。
その最終目的への準備が、ここにあるこの棺の設置を持って、完成したのである。

 

ラヴィの「最終目的」・・・それは、時の魔法「クロノス」を発動する力を得る、すなわち「クロノスソード」を得ること。

 

伝説のカードをすべて集め、「二十三枚目のカード」として「クロノス」というカードを作る。
それを伝説の剣のカードスロットに差込み、そこに・・・「光」と「闇」の強大な魔力を注ぎ込むことで、禁断の魔剣「クロノスソード」が完成する。
その「クロノスソード」を使いこなす為には、自らが闇の魔法を注ぎ込んでしまうと絶命する恐れもあり、それは避けたい。
そこで・・・自分への保険、いわば「フィルタ」として、ラヴィは真之介を作り出したのだ。
姿かたちは、殆ど変わらない二人。勿論、絶対的な魔力の強さ、業の深さはラヴィの方がはるかに強い。
剣に注ぎ込む魔力の強さも、その分を削ったとしても恐らくラヴィのほうが真之介より強い。
そして、ラヴィはある程度傍にいれば真之介の意思をも自由に操ることが出来るのだ。

・・・ラヴィに「創り出された」当初より、真之介は自分が存在する「意味」を知らされていた。
だから特に与えられた「生」に対して執着することもなく、残虐な事も指示通りに行なってきた。
だが・・・

「・・・」
真之介は、ふと自らの両手へと視線を落とす。

 

・・・癒しの里で「偽りの仮面」を被り生活をしているうちに、自分でも良く分からないが何かの「感情」に身を焦がされるようになった。
たとえ偽者でも、レプリカでも、やがて消えうせる存在のものであっても・・・「自分は自分」だと。
結果的にはラヴィに支配される宿命を持ってはいたとしても、完全にそうなるその瞬間までは、「自分は自分」であると。
そう主張するようになった。
それは、偽りの自分を家族として慕ってくれたタクトや神楽、「昔から居た子供」として暖かく接してくれていた里人達と出会い、人間的な感情が生まれたからだろうか。
それとも・・・

・・・たとえ偽りであったとしても、短い時間だが共に生活をしてきた、あの女のせいなのか。

いずれは、もう一人の自分であるラヴィが、彼女をもこの棺に入れて彼女の光の力を根こそぎ奪い去るであろう。
そうなれば彼女の身体は衰弱し・・・最悪の場合絶命する事もあるかもしれない。
ラヴィは時の魔法を使って、彼女の中の「時間」だけを取り戻して傍においておくつもりだろうが、そうなって戻ってきた彼女は今までの彼女とは明らかに違う。
ラヴィにしてみれば、そのような「くだらないもの」は不必要なのかもしれないが、
記憶を失った彼女を短い期間だが支え続けた真之介にとっては、複雑な思いが芽生えていたのも事実である。
情でも移ったのか。それとも・・・

『真之介、いつもありがとう』

そう言って微笑む彼女の、その笑顔を守りたかった。
ラヴィに渡したくない。そうとさえ、思った。連れ去りはしたが、ラヴィが来る前に里に戻って仲間に守ってもらえと…そう彼女に言い放ったほどだ。
捉えられ食事もとろうとしない彼女を何とか少しでも励ましたくて、そしてそのようなことをしたことを償いたくて、タームと話をさせて気分転換が出来るようにとも取り計らった。勿論、ラヴィには適当な理由を話して、それを許可させたのだが。

自分の宿命は変えられずとも、彼女だけは何とか救える手立てはないのか?本当に、何もできないままなのか…。

仄暗い闇の空間に設置された棺の縁に触れながら、真之介は静かに、そして何度もため息をついたのだった。


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