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風の守人<インテリペリガーディアン>

外にいたガーディアンがつけてくれた案内の鳥の合図で良牙が目を開けると、そこには土肌露な地面と、そしてどんよりとした鉛色の空が広がる空間があるのみであった。
草木もなく、案内の鳥以外の生き物もいない。
音もなく、そこにはぞっとするような静寂の空間が存在するのみである。

良牙がこちらへくるために潜り抜けてきたと思われる分厚い岩の扉もなくなっていた。
これでは、良牙が道に迷って迷子になる心配はなくなるが、
それと同時にこの何もない空間で一体どんな鍛錬を受けれるのか・・・若干心配なところだ。

「一体ここで何をすりゃいーんだよ」
ストレッチや走る以外に鍛錬方法はないような?
良牙はそんなことをぼやきながら、ポリポリと頭をかいた。

と、その時だった。

『…我が名はインテリペリガーディアン。我が力を得たいと願うということは、この鍛錬に命を賭す覚悟があるということで良かろうな?』

静寂の空間に、突如低く響き渡る低音が響き渡った。
その瞬間、良牙を案内してくれていた鳥が、ヒュン…とまるで砂埃が一瞬で飛び散るかの如く、良牙の目の前から姿を消した。

「!」

良牙は瞬時に表情を改め、直ぐ戦えるようにと額のバンダナをシュルシュル…と手に巻きつける。

このバンダナ、1枚だけ巻いているような外見に見えるが、実は数枚重ねになっているという・・・優れた代物である。
そのバンダナをブーメランのようにして武器として扱うことも、良牙の戦法の一つ。
良牙は、神経を集中させて攻撃がどこから来るのかを見極めようとした。
が、そんな良牙に対し、

『案ぜよ。鍛錬について話し終えるまでは攻撃はせぬ』

ガーディアンはそう語りかけ、一瞬間をおいた。
そして、

『・・・鍛錬は簡単だ。今からお前の直ぐ傍の地に、硬く厚い岩の塊を置く。それを、どんな手を使っても良いので粉々に砕いてみよ』 「はあ?それだけでいいのか?俺は、物を砕く技を既に身についけているんだぜ?そんなの簡単に・・・」
『・・・お前の目の前に現れる岩の塊は、この世界に存在する岩の塊とは姿は似ていても異なるもの。力だけ、技だけで砕こうとすれば己の身を痛めつけるだけ』
「!」
『岩が砕けたら、鍛錬を受けた証、そして我が風の力を得たという証の腕輪を渡そうぞ・・・』

がーディアンはそれだけ言うとふっ・・・と気配と声を消した。
周囲には再び、静寂が訪れた。

良牙は、ガーディアンが指示をした例の岩の塊をじっと見つめた。
そして歩み寄り・・・その表面を手でペンペン、と叩いてみる。

大きさこそ通常の「岩」よりも大きく、良牙の背丈ほどの高さもあるが、見る限りはそこかしこに存在する岩の塊と変わらない。

「本当にこんなんで鍛錬なんて受けられるのかよ?」
良牙には、「爆砕点穴」という技が既に身についている。
これは、人体には無害だが、対象物のツボをついてそのものを粉々に粉砕する、という技だ。
今回のこの鍛錬にまさにぴったりの業なのであるが・・・果たして、既に身についている業を用いて岩を砕いたところで、それが鍛錬になるのか?
良牙は、それが不思議でならない。
しかし、砕けばパワーアップに繋がるというのであれば、楽であろうが何であろうがやらざるをえない。

「・・・」
良牙は、軽くウォーミングアップをして精神を集中した。
そして、

「爆砕点穴!」


普段自分がそれを行なう時きと同じように、目の前の岩の塊に向かって人差し指を突き出した。
・・・ところが。

「!?」
良牙の指が岩に触れたところで、信じられないことが起こった。
なんと、まるで液体か何かに指を入れたかのように、ぐにゃり、とした衝撃が良牙の手を包みこんだのだ。
当然のことながらそれでは、砕くことはおろか、割ることさえもできない。

「どういうことだ!?確かに触ると…」
良牙は指を一旦岩から引き抜き、その表面を触った。
表面は、相変わらずペタペタと触れることが可能な感触があり、硬度がある。
これは、気のせいだろうか?
良牙は、気を取り直して再度意識を指に集中、そして再び岩に向かって突き出した。
が、やはり指は柔らかな感触に包まれながら、岩の中に吸い込まれてしまう。

 

…この岩、やはり普通ではない。
『・・・お前の目の前に現れる岩の塊は、この世界に存在する岩の塊とは姿は似ていても異なるもの。力だけ、技だけで砕こうとすれば己の身を痛めつけるだけ』
それと同時に、良牙の頭の中に、先程のガーディアンの言葉が蘇った。
先程は、「岩を砕くなど安易」と考えていたが…これは非常に厄介だ。良牙はこの状況にしばし戸惑った。
しかし、岩が簡単に砕けないのは判ったが、「己の身を痛めつける」とはどういうことだろうか?
少なくとも、指が岩に触れただけでは、良牙の身体にはダメージはないのだが…

良牙は戸惑いながらも岩と対峙し、次なる手に頭を巡らせた。

 

と、その時だった。

 

ヒュンッ…

 

不意に、良牙の耳に風を切る音が飛び込んできた。
最初は、一回。続けざまに…五回。
それも、一回良牙の傍を通り過ぎて…旋回した後、徐々に良牙へ再び近づいてくる。

「!?」

そのスピードと、そして…緩むことのない気配。
良牙は咄嗟にその音から身をかわす。

ヒュンッ…
その途端、良牙のすぐ傍を「「空気の刃」」のようなものが通り過ぎた。
「「空気の刃」」は良牙の傍を一旦通り過ぎるも、また猛スピードで向かってくる。しかも、ありとあらゆる方向からだ。
これでは、考えを纏めることもままならないし、何より策が見つかったとしても、それを行う間に身体を切り刻まれてしまう。
ガーディアンが言っていた「己の身を痛めつける」とは、このことだったのである。

「くっ…」

良牙は、シュルシュル…と額に巻いたバンダナを取り、向かってくる「「空気の刃」」を相殺するべく投げつけた。
が、

「うわっ」

ザシュッ…
投げつけたバンダナが「「空気の刃」」に当たったのは良いのだが、双方の勢いが強すぎて、跳ね返ってきたバンダナが今度は良牙を襲う。
一瞬の隙を突かれ、良牙は腕をそのバンダナで深く切りつけられてしまった。
出血は辛うじて少量で済んだが、良牙の腕には鈍痛が走り自由を奪われる。
ただ、その痛みに気を奪われている場合ではない。次々と「「空気の刃」」は良牙に襲いかかってくるのだ。

「くっ…」

次々と襲いかかる「空気の刃」の攻撃を何とかしのぎながら、良牙は岩に近づいてはそれを砕こうと指を立てる。
が、先程同様、指を立てようとするとその指はぐにゃり、と岩の中に取り込まれてしまう。

…掌を当てると硬度を感じられるのに、指だと取り込まれる。
もしかして、「掌を使って岩を砕け」ということか?

何とか「空気の刃」を凌ぎつつ、良牙はようやくそのことに気が付いた。
そう。
元々「爆砕点欠」という技を習得している良牙に、それを使った鍛錬などを行うはずがないのだ。それでは全く意味がない。
それを使わずとも、何らかの形で「岩を砕く」。
…この鍛錬にはきっと、そういう意義があるということなのだろう。
良牙は、ようやくこの鍛錬の意義を悟ることが出来た。
ただ…

…一体、どうすりゃいいんだ?

近づこうにも、「空気の刃」は襲いかかる。
掌で強く岩の表面を叩くだけでは、勿論砕くことなどできない。
もしも砕くというのならば…相当強い力で表面を叩かなくてはいけないだろうが、この状況では力を込める時間すらも作ることは出来ないだろう。
しかも、ただ力を込めるだけでは、砕け無い筈だ。
良牙の力をもっともっと倍増させた強大な力でないと…

ザシュッ…
ヒュンッ…

服を切り刻む、刃。
そして…良牙を同じ場所へは留まらせない、攻撃。
しかも、辺りには刃が生み出した強い風が、漂っている。
立っていることもままならない強さにまで成長した風は、良牙の思考を固めるのも妨害する手伝いをしていた。

「くっ…」

このままでは、らちがあかない。流石の良牙も、思わず天を仰いだ。
…と。

そんな良牙の目に、先程良牙が飛ばしたバンダナが一枚、ふわふわと宙に浮いていた。
どうやら、「空気の刃」に別方向に弾き飛ばされてしまっていたのか、それがゆっくりと風の流れに乗って戻ってきたようだった。
そのバンダナ、偶然「空気の刃」に当たらなかったせいもあるが、何故か…中々落ちない。
というのも、上手く風の流れに乗って空気の中を移動しているので、損傷を受けることもなく、いつまでもその流れに乗っているのだ。

 

「…」
…そうか。
そのバンダナの動きを見て、良牙はとある方法を思いついた。
その方法を使えば、恐らく苦労することなく…痛みは伴うかもしれないが…岩には最終的に近づくことが出来る。
ただし、岩を砕くほどのパワーを手に入れるには、近づくだけではまだ、何かが足りない。

 

良牙は再び、考えた。
そんな良牙の脳裏に…何故か乱馬の姿が過る。

別に、彼の事を思っての事ではない。
正確に言うと、彼が操る「飛龍昇天破」という技のことが浮かんだのである。

あれは、大気の熱と上昇気流を上手く操る技だ。
熱の中に低温のスクリューアッパーを加えることで竜巻が生じる技。
この状況では、飛龍昇天破だけでは乗り切ることは出来ない。それに、良牙はその技を試したことが無い。
しかし、何か応用は出来るかもしれない。
風を起こし、無風の上空まで上がって、そこから勢いをつけて岩を叩けば…

「…待てよ、確か昔、城の外で…」
良牙は、以前に自分が見かけた「あること」を思い出した。
記憶はうろ覚えだが、迷っている暇はない。
思いついたことは試してみないと、この鍛錬を突破する手立てはないのだ。
このままでは、ただこの身を切り裂かれるだけ。

「…!」
良牙は、「空気の刃」の攻撃の間を縫い、シュルリ…と額に巻いているバンダナを解いた。
そして、風の抵抗を受けない細い形状にそれを形成させると…そのバンダナを、手首をスナップさせ力いっぱい遠くへと投げた。
そして自らは、わざと周囲の風に身を任せるように飛び込み…闘気を溜める。

ザシュッ!
ザシュッ!

「空気の刃」は、良牙の手も足も容赦なく切り刻んでは、縦横無尽に辺りを飛び交う。
良牙はその痛みに何とか耐えながらも、ただただ闘気を溜めることに集中した。
やがてそうすることで、良牙の闘気を帯びた熱風が、風を巻き込み辺り一面に漂うことになった。
「空気の刃」で掻き混ぜられる熱気は、やがて辺りに漂う風を伴い、やがて強大な上昇気流を伴う風を生み出していた。
とそこに、良牙が先ほど放ったバンダナが猛スピードで戻ってきた。
手首をスナップさせて飛ばせることで、引き起こった現象。いわゆる、ブーメランの原理である。
戻ってきたバンダナは、辺りに渦巻く上昇気流に真っ直ぐ…垂直に勢いを増し飛び込んできた。

 

と、その瞬間だった。

 

ブオオオオオ!!

上昇気流と垂直方向の風が交わった瞬間、強大な力を帯びた風の柱が天に向かって発生した。
いわゆる、「旋風」の発生である。
良牙は以前、城の外方向で「旋風」が発生する現場を目撃したことがあったのだ。
その時は、そうそう大きな旋風でもなかったので、辺りにも被害はなかった。
近くを歩いていた人々に退避するように誘導した程度だった。
まさか、あの時のことが役立つとは…城の騎士をやっていてこれほど良かったと思えたのは正直言って初めてだった。
経験は宝。まさにそのとおりである。

 

良牙は、その旋風に身を任せて空間の上部まで身体を移動させていった。
その後旋風から更に上部に身体が弾き出され、その身体が上空で一旦停止した瞬間を狙い、良牙は自分の体制を立て直す。
そして、旋風がフワ…と収まる瞬間を見計らい…一気に地上に向かって掌を突出し、下降した。
かなりの高度から、一気に落下する。
良牙の体格からしてそうすることでスピードをまし、自らの力にプラスされればかなりの力が掌にかかると、考えたのである。

 

「おおおおお!!」

 

かなりの高さから落下しているので、辺りに漂う風の影響を受けることが無い。
しかも、落下速度が早ければ早いほど、良牙の手にかかる力は強大なもの。

…もしかするとこのまま岩に掌を叩きつければ、良牙の手の方が砕けるかもしれない。
だが、今はそれに臆している場合ではない。

どうせこのまま何もしなければ命はないのだ。
それに、この命は既に、他人に託している。
良牙は改めて自分自身そう確認すると、地上にある件の岩の表面を思い切り…掌で叩きつけた。

 

 

…と。

 

パアン!
…何かが弾ける音がして、その瞬間、良牙の視界がホワイトアウトした。

骨が砕けたのか、それとも岩が砕けたのか…一応手はジンジンとした感覚に見舞われているが、その辺りが良く分からない。
もしやこれが、死の瞬間…?
白い、ということは、一応地獄に落ちたわけではなさそうだが。
手の骨だけでなく、体中の骨が砕けたのかもしれないな。
良牙はそんなことを考えた。

すると。

『…鍛錬は終わりだ』

鍛錬を始める際に良牙に語りかけてきたあの声が、再び聞こえた。
ガーディアンの声である。
しかも、最初に良牙をこの場所に導いてくれ、鍛錬開始時に消滅した例の鳥も…再び良牙の目の前に現れる。

「おい!結局岩は砕けたのか!?それに俺の手は…あれ?」
良牙は、ガーディアンに向かってそう問いかけた。
そして、岩を思い切り掌で叩きつけたことで相当のダメージを受けたであろう自身の手を見るも…何ともない。
それに、腕や足を切り刻まれて出血さえもしていたはずなのに、それさえも元通りに戻っている。
どうやら、鍛錬を無事に終えると怪我なども治癒される仕組みなのかもしれない。

「…」
良牙は、自身の手をじっと見つめながら、その仕組みに驚きを隠せないでいた。
と、そんな良牙に対し、ガーディアンが再び語りかけてきた。

『忘れるな…。力だけでも、技だけでも乗り越えられないものがあるということを。風を知り、風を操り、そして…風に委ねることでその双方を手に入れることが出来るということを…』

そしてガーディアンがそう良牙に語りかけた次の瞬間、

「!?」

それまで何もない、ただただ静寂の広がる無機質な空間だったその場所が、急に岩壁のある薄暗い空間の風景へと姿を変えた。
しかも、

「これは…何だ?」

良牙の左腕に、見知らぬ腕飾りが嵌められていた。
外そうとするが、何故かジャストフィットしていて動かない。
それは、シンプルな腕飾りだった。
腕飾りの中央に、緑色の美しい宝玉。シルバーの飾り本体には、ルーン文字のような模様も刻まれている。
突然の場所移動、そして見慣れぬ腕飾りの存在に良牙が困惑していると、

『それが、我が鍛錬を受けた証。お前は、これまでとは比べ物にならない力を得ることが出来、そして風の操り手となった』

我が力と共に戦いたいときは、強く念じよ。さすれば、無限の可能性がお前の宿命を変える。
ガーディアンの声は最後にそう良牙に語りかけ…そして気配を消した。
その代り、良牙を導いてきた例の鳥が、「キイ、キイ」と鳴いた。
どうやら、鍛錬場所から早く出るように促しているかのようだ。

「…」
良牙は、そっと腕飾りに触れてみた。
…触った感じはただの腕飾りのようにも感じるが、
ガーディアンの言うことを信じるのであれば、きっとこの腕飾りがこの先の良牙の心強い相棒になるのだろう。

これから先、恐らく楽な戦いなどは待っていない。
倒すか、倒されるか。取り戻すか、失うか。残酷かつ過酷な戦いが待っている。
乱馬の為、というよりもあかねの為に戦う感は否めないものの、
それでもその為にも、乱馬にこの命を預けることをもう決めたのだ。
せっかくパワーアップしたのだ。ならば、やれることはやらないと後悔するだけ。

良牙は左腕の腕飾りの存在を感じながら、鳥に導かれ再び洞穴の外へと歩いて行った。
そして…

 

「あいやあ、良牙が戻ってきたある」
「無事で何よりじゃ」
「…何だ、俺は三番手か」

鳥は、良牙を仲間の元へと導いた後、いつのまにか姿を消していた。
良牙は、既に鍛錬を終え、そして自分同様左腕に飾りをつけた仲間の元へ戻れたことにどこか安堵感を感じつつ、これから自分たちを待ち受ける運命について思いを馳せたのだった。


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