【らんま1/2の二次創作小説サイト】| INFORMATION | NOVELS |BOOKMARKS |CONTACTS | HOME |web拍手

海賊キリトの秘宝5

「・・・あら?」




二階の、壁にずらりと並んでいる窓に手をつき、何気なくそこから窓の下へと目をやったあか ねは、「とあること」に気がついたのだ。
・・・あかねが、覗いている窓は「二階の廊下」にある。
もちろん窓の外に広がる光景は、地上よりも少し高い場所から地上までの景色・・・のはず。
しかし、
「?」
その場所からあかねが目にしたのは、地上よりももっと・・・「低い」場所から伸びている「木」。
もともと切り立った丘の上に立っているこの洋館、あかね達が入ってきた玄関口や、そのすぐ 周り辺りまでは何の事ない「屋敷周り」であったのだけれど、 館の中からその「裏手」を望んでみると、外側からは見えないような部分を目にすることができ るようだ。
外から見ることができる場所までは、上手い具合に草木が生い茂って裏手が見えないようにな っているらしいが、こうして屋敷の内部から下を見ると・・・地上と同じ高さと思われる一階部分 よりもはるか「下」まで眺める事ができる。
館の壁自体も下に向かって伸びつづけているところを見ると、
「・・・そうか。隠し階段は、上へ伸びる物だけとは限らないんだわ。下の階へ降りる為に作られ る場合だって・・・」
・・・隠し部屋は、地上たかくに作られたのでは無い。地上から見えない、地下に作られていた。
あかねは、ようやくその事に気が付いた。
「っ・・・」
それらを踏まえ、あかねはもう一度、窓の外を覗いた。
あかねの低い背だと、背伸びをしても、それがどのくらい下のほうまで続いているか、そしてそ の下方遥かに続く壁の終点がどうなっているかまでは眺める事が出来ない。
と、その時。
「なあ、さっきから何やってんだ?」
ようやくシャンプーに介抱されたのか、乱馬がひょこひょこと階段を昇ってあかねの元までやっ て来た。
「乱馬っ」
「窓なんて覗いて、何してんだよ。なんか珍しい魔物でも・・・」
乱馬が暢気にそんな事を言ってあかねの背後にたつので、
「乱馬、私を抱いてっ」
「はあ!?」
「いいからっ早く!」
乱馬に体を持ち上げてもらえば、もう少し高い位置からこの窓を覗ける。
そう思ってあかねが背後に立っている乱馬の服の袖を引っ張ると、
「え、お、お前がそんなに積極的に・・・っい、いいのか!?」
「いいもなにも、早くっ。時間もそんなにないしっ・・・お願いっ」
と、必死の形相で乱馬にそうねだった。
すると乱馬は、妙に顔を赤くして何度か咳払いをすると、
「そ、そうか・・・もっと落ち着ける場所でって俺なりに考えていたが、おめーがそうまで言うのな らっ・・・」
「は?」
「それじゃ、そっちのベッドのある部屋に行こうか・・・・」
とか何とか、訳の分からない事を言いながらあかねの手をしっかりと掴み、部屋のある通路へ と引っ張っていこうとする。
「バカっ。違うわよっ」
あかねはそんな乱馬の頭をバシっとひっぱたくと、
「この窓の外を覗きたいのよっ。お願い、私の身体を抱き上げてっ。あのね、この館はきっ と・・・」
と、勘違いをしている乱馬にも分かるように、あかねの考えていた事をきちんと説明をした。
「な、何だ、抱いてってそういう意味かよ。ちぇっ・・・俺はもっと違うことかと・・・」
「あ、当たり前でしょっ。あんた何考えてんのっ。もー、いいから早くっ」
だいたい、なんでこんな魔物のいる洋館でっ・・・とあかねがぼやくと、
「はいはい」
乱馬は、何だか妙にがっかりした表情であかねの身体をひょいと抱き上げた。
抱き上げられたあかねは、再び窓の外を眺める。
「・・・」
・・・先程よりも高い位置から外を眺めてみると、随分と下の方までその壁が続いているのが見 えた。
遥か下の、その終着点近くには何やら大きな窓が見えた。
それもただの窓ではなく、たまに差し込む光によって違う色に発色して見えるところをみると、
ステンドガラスなのだろう。
「きっと、あのステンドガラスのあるあたりに財宝が眠ってるんだわ・・・」
あかねがそう呟くと、
「地下に建物が続いているのは分かったけど。でも、地下に伸びている階段なんてなかったよなあ・・・それらしき扉とかも」
「そうよね、壁だって叩いて回ったでしょ?一部屋一部屋調べて・・・」
「ああ。一階の部屋は全部・・・」
乱馬もあかねの意見に同調していたが、ふとそこまで口にしてはたと、黙り込んだ。
「ら、乱馬?」
「・・・部屋は、見たよな。俺たち」
「ええ、皆でくまなく回ったわ」
「でも・・・そこのフロアは調べてねえよな?」
「あ!そ、そういえば・・・」
「とはいえ、そのフロアをちょっと調べたくらいじゃすぐに隠し階段が見つかるとは思えねえけ ど、あるとしたらそのフロアだろ」
乱馬はそう呟きながらあかねの身体をそっと床に下ろすと、
「とにかくこの事を皆に伝えよう」
「そうね」
と、あかねと二人、駆け足で階段を降りて下のフロアへと向かった。


「地下に隠し部屋、ね。それは大いにありえるある」
「外側から見えない部分が、館の中から見えたとは・・・・さすがあかねさん!」
「でも、一体どこに・・・」
「こ、このフロアに何かあるのか・・・?」
・・・良牙が屋敷の中へと戻ってくるのを待って、あかねは先ほど乱馬と話ていた事を皆に告げ た。
「でも、調べてないのはこのフロアだけだ。なんかちょっとした事でもいい。今からこのフロアを 調べよう。骨董品も、絨毯も、壁にかかっている絵画も、挿してある花も。隅々まで調べるんだ」
乱馬は、とりあえずみんなに指示を出して六人をちりばめる。
「じゃあ、俺は玄関近くを調べる」
「あたしとキリトは、奥の暖炉の辺りを調べるよ」
まずは、良牙とランゼ、キリトが散らばった。
「あたしは右の階段付近を調べるわ」
乱馬にべったりとしているシャンプーを横目に、あかねはそう言って階段の辺りに四つん這い になる。
「ならば私と乱馬は、左の階段を調べるね!」
シャンプーはもちろん、乱馬の腕を引っ張りながらそんな事を言っているが、
「い、いや俺は二階の廊下から下を見回して、皆が調べきれていない部分がないか見ようと思 うから」
乱馬は適当な事を言ってシャンプーから逃れると、駆け足で階段を昇りきってしまった。
「何照れているか、乱馬」
シャンプーは少し不服そうな顔をしているが、
「ほら、俺の事よりも調べる事が先だぞ、シャンプー」
「あいやー、分かったある」
乱馬に上手くなだめられ、しぶしぶと階段を調べ始める。
あかねもその反対側の階段を四つん這いになって調べて始めたが、
「乱馬、ちょっと手元が暗いの。二階の窓のカーテン、開けてくれない?」
階段の半分まで来た頃だろうか。階段の赤絨毯を這うようにして見ていたあかねは、少し手元 を照らしてもらおうと、二階の廊下で下を見下ろしていた乱馬に向かってそう叫んだ。
「乱馬、私の手元も暗いある」
すると、やはりそう思っていたのかシャンプーもそう叫ぶ。
「カーテン、全部あいてるぞ」
「え?だって下のフロアは窓からの光が眩しいくらい入ってるじゃない。階段をあがりきった所にも窓、あるでしょ?そこのカーテンを開ければ同じように光、入るでし ょ?」
「開いてるよ、でも窓の前の銅像が光を遮っているんだよ」
「えー?どれどれ・・・」
そんなことあるわけないじゃないの・・・と、半信半疑であかねが二階のフロアへと上っていくと、
「あら?本当だわ」
「な?言ったとおりだろ?」
「何でこんな所に銅像なんて立てたのかしら。これじゃあ、階段に光が届かないじゃないの」
・・・なるほど、乱馬が言ったとおりに、階段を上りきったところの窓の下に設置されている、悪 趣味なあの魔物の銅像が、階段に差し込むはずの日の光を遮断していた。
「この銅像、邪魔あるな」
その内、シャンプーも二階のフロアへと上がってきて乱馬とあかねの横でそうぼやく。
「銅像だもん、そう簡単に動くわけもないしねえ」
「この首の部分だけでも回ればな、少しは光が届くとは思うんだけど」
「首って・・・乱馬、銅像の首だけ回るなんてこと、あるわけないね」
そして、ぽんぽん、とその銅像の頭部分を二回、叩いた。
カン、カン。
シャンプーが銅像を叩いた音が二階のフロアに響く。
「・・・何か、銅像の割りには軽い音のような感じあるな」
「そうね」
シャンプーの疑問に同感のあかねは、反対側の銅像の元まで走っていくと、先ほどのシャンプ ーと同じように銅像の頭を二度、叩いた。
カン、カン。
するとやはり、銅が流し込んであるとは思えないような軽めの金属音が、する。
悪趣味な魔物を形どった銅像の中身は空洞・・・そんなことがあるのだろうか。
銅像の中身をけちけちするほどお金がなかったとは思えない。
だとすれば、わざと銅像の中を空洞にした、と考えるのが筋であろう。
と、言う事は、だ。
「ねえ、乱馬。この銅像、もしかして・・・動くんじゃない?こんな軽い音がしてるんですもの、見 かけよりも簡単に動かせそうだわ」
「そうだな・・・」
乱馬は、少し考えた後、
「二人とも、一度銅像から離れろ」
あかねとシャンプーを銅像から離れさせると、
「良牙!ちょっと手伝え!」
「ああ?」
玄関付近を捜索していた良牙に、二階のフロアから声をかけた。
「何だよ、急に」
「ちょっとこの銅像、動くかどうか調べたいんだ。手伝ってくれ」
乱馬は階段を昇ってきた良牙にそう声をかけると、
「いいか、せーのでまずは右側に動かしてみるぞ」
「おお」
「・・・せーの!」
・・・ゴリっ・・ゴリっ・・・
二人の気合と共に、銅像が徐々に右側へと回転していく。
すると、今まで階段の方を向いて座していた銅像が、90度回転をして横向きに角度を変えた。
その途端、今まで銅像の頭部で遮られていた日の光が、サー・・・っと階段を下のほうへと伸び ていく。
まっすぐに伸びた光は。階段の一番下の手すりの上にある丸型の球体に辺り、カクッと屈折し ていた。
「ねえ、反対側もやって見ましょう」
「ああ」
四人は、今度は反対側の銅像の元まで走り、
「せーの!」
先ほどと同じように、乱馬と良牙が銅像を動かすべくしがみついた。
先ほどは右側に動かしたので、今度は左側に動かすように、だ。
・・・ゴリっ・・ゴリっ・・・
二人の気合と共に、銅像が徐々に今度は左側へと回転していく。
銅像は、反対側の銅像と同じように、垂直方向へと回転した。そして、反対側の銅像と向かい 合うように見つめあう。
それまで銅像が遮っていた日の光も、反対側と同じように、サー・・・っと階段を下に向かって走 っていった。
そして、やはり階段の一番下の手すりの上にある丸型の球体に辺り、カクッと屈折する。
「・・・」
四人は、階段を駆け下りて下のフロアへと降りた。
そして、左右からの光が屈折し、ちょうどその光が折り合う場所へと目を向ける。
すると・・・


「ねえ!見て!」
「こ・・・これは・・・」


・・・階段の手すりにより屈折した左右の光が、ちょうど折り合った場所。
赤い絨毯が敷かれたフロアの一角だったが、その場所だけなんと、数センチ四方、その赤い 絨毯がスルスルと溶け始めた。
そして、その溶けて露わになった床の部分に、奇妙な「穴」がひょっこりと現れたのだ。
「ねえ、どうしたんだい!?」
「あれ?こ、この穴は・・・?」
それまで、フロアの奥の暖炉を調べていたランゼとキリトも、炭で汚れた顔をこすりながらあか ね達の元へと駆け寄ってくる。
「二階のフロアにあった銅像の角度を変えたら、これが・・・」
あかねはそう言って、簡単だがランゼとキリトにそう説明をする。
「左右の光が折り合ったら絨毯が溶けた・・・どうやら、この部分だけ特殊な繊維を使って作っ ていたのかもな」
良牙が、穴が現れた辺りの絨毯をしゃがみこんで調べる。
「でも・・・一体この穴、何あるか?そんなに大きくもないし、深くもない。・・・」
シャンプーも、良牙の隣に座り込んでその現れた穴を指でなぞる。
「まるで何かをはめ込むような感じだよな・・・あ、館中を捜索した時に、何かそれっぽいアイテ ムはなかったか?」
「調べてみるある」
「あ、あたしも手伝うよ」
そして、シャンプーはランゼと共に先ほど館中から集めたアイテムを入れた小袋、あさり始め た。
「良牙、おめーなんか思いつかねえのか」
「知るか。おめーこそどうだ、バカ王子。おめーが集めているカードにはなんか関係がねーの か?」
「どれどれ・・・」
その横では、乱馬と良牙がそんな事を言いながらカードや拳を穴にねじ込んだりしている。
あかねはその様子にしばし呆れながらも、みなの様子をぼーっと眺めながら突っ立っているキ リトへと目をやった。
キリトは、いささかもどかしそうな表情をしていた。
・・・それはそうだ。ようやく「隠し部屋」の存在もわかり、その手掛かりとなる奇妙な「穴」の存在 もわかった。
なのに、その穴をどうするか・・・それがわからないので先に勧めない。
ほんの、ニセンチほどの小さな穴だ。
その穴が今、あかね達を苦しめているとは・・・屈強な魔物と戦うよりもずっと、身に堪える。
「キリトくん・・・」
「・・・俺の先祖は、一体あそこに何を入れるつもりだったんだ?」
「キリトくん・・・」
「俺、子孫なのに・・・何か、重要な所じゃなんにも・・・」
キリトは、小さな声でそんな事をぼやいた。
「こんな時、俺がバシっと何か手掛かりを提示できればきっと・・・」
「・・・」
あかねは、そんなキリトのボヤキを聞きながらも、でもどうにもできないこの状況をに溜め息を つくしかなかった。
・・・きっと、特別な繊維の下に隠されたこの穴には、何やら秘密があるはずだ。
でも、それを突破する為の手段が、どうしても分からない。
何かその部分にはめるにしても、館中からかき集めたアイテムではそれを補う事が出来ない。
・・・
「・・・」
・・・もしも。
もしもあかねが財宝を隠す「海賊キリト」だったら、どういう風に考えるだろうか。
あかねは、がっかりと肩を落としているキリトの姿を眺めながらそんな事を考えていた。
自分の死後、自分の子孫だ、と言い張るものが複数出てくる可能性だって考えられる。
しかし、自分の残した財宝は、自分の正式な子孫にのみ渡したい。
だったら・・・どうする?
複雑な仕掛けを作って、簡単に財宝が隠してある部屋にたどり着けないようにするのは必然だ ろう。
きっと、正式な子孫にだけそこを突破できるカギを託して。
「・・・」
もしも、キリトが本当に「海賊キリト」の正式な子孫であるならば。
この状況を突破できるカギを、絶対になにか託されているはずだ。
「俺、何も心当たりなんてねえよ・・・」
・・・そんな事をぼやいている、キリトににも、きっと。
「・・・」
何か、彼自身が忘れている事があるのでは無いか?
あかねはそんな事を思いながら、じっとキリトを見つめる。
「ランゼ、どうだ?」
「だめだね・・・あたし達が集めたアイテムの中には何も・・・」
キリトはランゼとそんな会話を交わしながら、集めてきたアイテムが入れられている袋を覗き込 んでいた。
そんなキリトとランゼの姿を、二階の窓から差し込んでくる日の光が照らした。
キラっ・・・キラリ・・・
その日の光は、ランゼのつけている髪飾りや、なぜかキリトの首筋に反射して、
「ん・・・まぶし・・・」
二人の姿を見つめていた、あかねの瞳に飛び込んでくる。
髪飾りはともかく、何で首筋が光って・・・?あかねはそれが不思議でならなかったが、
「あ、そうか・・・確かキリト君はペンダントを・・・」
昨日、キリト本人から見せてもらった、あのペンダントのチェーンか。
すぐにそれを思い出したあかねは、一度は納得してくらまされた目をパチパチと瞬きさせてい ただが、
「あ・・・」
すぐさま、はっと・・・息を飲んだ。



・・・そうだ。
確か昨日の夕方、キリト自身があかねにその「ペンダント」を見せて話をしてくれた。
あの時彼は、なんと言っていたか。
確か、『孤児院引き取られる時、唯一手にしていたものだ』
・・・そう言っていなかったか?
たしかそのペンダントヘッド、裏側に、
『It entrusts to my whole family.From kirit=Jackcal』
−我一族へ託す−
そう書かれていたはずだ。
だとしたら・・・



「キリト君!」
「わっ・・・な、何だよ急に大声出して・・・」
「ペンダント!」
「え?」
「貴方が昔から持っているペンダント!ねえ、ランゼさんも見た事があるでしょう?」
「ああ、あれか・・・あれ?そういえばあれ、ちょうどこの穴と同じくらいの大きさじゃなかったっ け・・・?」
ランゼは、あかねの声を受けて、
「わ!な、何すんだよランゼっ」
「いいから、黙ってな!ほら、これだよ、これ」
と、キリトの着ているワイシャツを強引にはだくと、彼が首から下げていたペンダントを取り出し た。
・・・日の光に照らされて、きらりと光る球状の石。
銀色のネックレスチェーンが、眩しいくらいに光を放つ。
「ちょっと、そのペンダント見せるよろし」
と。
ペンダントをキリトから取り上げたランゼに、シャンプーが近寄ってそのペンダントに触れた。
そして、石と、チェーン部分をゆっくりと指で触れ、
「・・・石についてはよく分からないけれど、このネックレスチェーン。これは特別な合成金属で 出来ているあるな」
「え?ま、マジか?」
「普通の人間が見ても分からないのは仕方ないある。でも、魔力を持つ人間ならすぐに気が付 くね」
ほら、と、自分が腕にはめている「魔力探知機」をキリトとランゼに見せた。
その時計をよく見ると、魔力の反応を示す「針」がぴくぴくと微々ながら動いている。
「そんな、俺・・・全然魔力なんてないし・・・気が付かなかった・・・」
「持っているだけでは別になにも変らないね。ただ、よく魔法の道具を作るための素材にこの 金属をつかうあるぞ。この金属自体にほんの少しだけ魔力が篭っているという珍しい金属あ る」
「そうだったのか・・・」
「この金属でネックレスチェーンを作るなんて、普通の人間はしないね。となると、このペンダン ト自体、何か秘密がある、間違いないね」
「・・・」
シャンプーのその言葉を聞いていたランゼが、黙ってキリトにペンダントを渡した。
「キリト君・・・」
あかねは、ペンダントを握り締めているキリトの背中をそっと押した。
キリトは、フラフラと例の穴の傍まで進んでいき、その脇へとしゃがみこんだ。
そして、
ゴクリ、と一度ツバを飲み込んでから、ゆっくりとペンダントヘッド・・・球体部分の石を、その穴 へとはめ込んだ。


カチっ・・・

その瞬間、まるで何かカタにはまるような音があたりに響いた。
「あ!」
・・・キリトが、その音に反応して思わずペンダントから手を離す。
穴には、キリトがはめたペンダントに石がぴったりと入り込んでいた。
が、
「・・・?」
・・・だからと言って、それ以上何が起こるというわけでもなかった。
穴の中には、石がぴったりとはまり込んでいる。
しかし、それらが光を発することもなく、隠し部屋への階段が現れるわけでもない。
「・・・何もおこらねえじゃねえか」
「あ、あれ・・・?」
「でも、カチって言ったわ」
あかねがしゃがみこんで、キリトがはめ込んだ石を取り出そうとするも、
石はぴったりとその穴にはまり込んで抜けてくれはしない。
はまり込んだ石の上に飛び出た、合成金属のチェーンを引っ張っても、その石は穴から抜け はしなかった。
「何だよ、抜けねえのか?
「うん・・・」
「女の力じゃ無理なのかな。どれ、交代する」
チェーンを引っ張っているあかねをそっと横にずらすと、今度は乱馬がそのペンダントのチェー ンを掴んだ。
そして、
「それっ・・・」
そんな掛け声をかけながら、思いっきりペンダントチェーンを引っ張り上げた。
すると、
ゴゴ・・・ゴゴゴ・・・
「へ!?」
「え!?」
なんと、乱馬がペンダントチェーンを引っ張れば引っ張るほど、妙な地響きがあたりに響きわ たる。
「何あるか、この音?」
「何か、動いている音・・・ああ!?」
音の出所を調べようと、辺りを見回していた良牙が、不意に大きな声を上げた。
そして、
「おい、乱馬っ。お前・・・」
と、乱馬の手元を指差す。
「え・・・?」
乱馬も、そしてあかねやシャンプーもその良牙が指差した手元を見つめると・・・
「あ!」
「あいやー!」
「わっ・・・」
・・・なんと。
思いっきりチェーンを引っ張り上げた乱馬は、穴にはまり込んだ石だけではなくて、その穴の 周囲の床までも持ち上げていたのだ。
それも引っ張れば引っ張るほど徐々に床は持ち上がり、しまいには、
ブチっ・・・ブチブチブチっ・・・
床に敷き詰められていた赤い絨毯が、引きちぎられるかのように音をたててはがれたかと思う と、
・・・なんと、乱馬は1メートル四方の床を、ネックレスチェーンと共に持ち上げてしまったよう だ。
そしてその持ち上げた床の下には・・・薄暗い地下へと続く階段が、ひっそりと控えていたのだ った。
「やった!地下への階段よ!」
「でかした、乱馬っ」
「そ、それよりこの持ち上げたチェーンの先を、どうにかして固定しておかないとっ・・・」
「あ、乱馬、ちょっと待つね」
チェーンを引っ張り、床を持ち上げている乱馬に対し、シャンプーが何やら呪文を唱えた。
すると、ポンっ・・・という音と共に何やら太い木の杭が現れ、乱馬が掴んでいたペンダントチェ ーンを上から引っ掛けて床へとめり込んだ。
そのおかげで、ギシっ・・・と音をたてて持ち上げられた床の部分が固定される。
「・・・地下への、階段だ。きっとこの階段の先に財宝が」
「この階段の幅だと、一人一人しか降りることが出来ないね。とりあえず乱馬、キリト、私、ラン ゼ、あかね、良牙の順に下に下りるある」
階段を上から覗き込みながら、乱馬やシャンプーがそんな会話を交わしている横で、
「・・・胸、張って歩けるじゃない」
「え?」
「証明、されたじゃない。貴方が持っていたペンダントの石が、財宝の隠された部屋への階段 を導いたのよ。
  貴方が、正式な『海賊キリト』の子孫だった、てことでしょ?」
「!」
「・・・いいの?貴方が、先頭を歩かなくて。正式な子孫の貴方が、いつまでもみんなの後ろで隠 れながら歩いていて、いいの?」
あかねは、キリトにそう話し掛けた。
「俺は・・・」
キリトは、あかねの言葉を受けてぎゅっと唇をかみ締めている。
「ランゼさんまで、他の人に守らせていて、いいの?」
「・・・」
ランゼ、という単語に、キリトはぴくっと眉を動かした。
あかねは、そんなキリトの表情の変化を決して見逃さなかった。
なので、
「乱馬」
「ん?」
「・・・ここから先は、キリト君が」
「・・・」
と、下に下りる相談をしていた乱馬を呼び寄せ、そう伝えた。
「・・・」
乱馬は一瞬何かを考えたようだったが、あかねの言いたい事を全て悟ったようで、
「・・・そうだな」
ボソッとそう呟くと、
「シャンプー、灯りをキリトに渡せ。ここから先は、キリト一人で行かせる」
・・・と、地下室への入り口から中をのぞきこんでいたシャンプーへ、そう言った。
「乱馬、何言っているあるか?廊下を歩くだけでもビクビクとしている男に、一人で地下まで降りる勇気などあるわけがないね」
シャンプーは先ほどまでのキリトの様子を知っているので、鼻で笑うようにそう呟くも、
「大丈夫だ。行けるよな?キリト」
乱馬は真剣な表情でそう言ってキリトを見つめた。
「・・・」
キリトも覚悟を決めたのか、黙って大きく頷いた。
「本当に大丈夫あるか?命落としても、私は知らないあるぞ」
シャンプーはいささか不満そうだが、それでも乱馬のいう事に反抗する訳にはいかないのかし ぶしぶ返事をすると、
「・・・」
何やら口の中でモゴモゴと呪文を呟きながら、地下室の入り口へと左人差し指を振り下ろし た。
ヒュンっ・・・
振り下ろしたシャンプーの指から、何やら青い光が地下室の奥へと続いている暗闇の中へと 走り出した。
光は、三十秒ほどして再びシャンプーの指へと戻ってきて、そして消えた。
「・・・」
シャンプーは、何やらじっと目を閉じてブツブツと呟く。
そして、
「・・・今、この地下の距離を調べてみたね」
「ほう」
「私の指から離れた光、三十秒ほどで戻ってきたある。振り下ろした指の速度と、光が戻ってき た時間から換算すると、この地下の距離・・・そうね、だいたい五百mくらいあるよ。きっと、階段 を降りきったところに部屋が一つあって、そこに宝が眠っている、あるな」
と、乱馬の指示どおりにキリトのほうを見つめながらそう答えた。
「距離はわかったあるが、そこに魔物がいるかどうか・・・そして、先にある部屋にどんな仕掛け があるかまでは、私にもわからないある。
  命を落とす可能性も捨てきれないね。お前、それでも行くのだな?」
「!」
『命を落とす』というシャンプーの表現に、キリトは一瞬ぎくり、という表情を見せたが、
「そ、それでもこれは、俺の先祖の秘宝だからっ・・・」
・・・先ほどまでの脅えていた少年とは思えないようなしっかりとした口調で、キリトはシャンプー に断言した。
「・・・」
シャンプーは大きく頷くと、パチン、とキリトの目の前で指を鳴らした。
ポンっ
すると、シャンプーの目の前に小さな小瓶が現れた。
透明な小瓶の中には、アクアブルーの液体が見える。
「これは、短い間だけあるが魔物から身を守る・・・聖水ね。念のためにこれ、体にかけていくよ ろし。この水が身体を守っている間は、魔物はおまえに触れる事、出来ない」
「あ、ありがとう・・・」
「それじゃあ、俺はこれを貸してやる。さっきその辺の部屋のロッカーから見つけた、斧。とりあ えず武器でも持たないと危ないだろ」
「す、すまねえな」
そんなシャンプーの姿を見て、それまで黙って事の成り行きをみていた良牙も、キリトに武 器・・・世間一般的にいう「バイキングアクス」といわれる海賊達が好んで使用するような大ぶり の斧を渡した。
「・・・」
キリトは、かすかに震える自分を振り立たせるが如く、受け取った斧の柄を握り締めた。
「がんばれよ。俺たちは、屋敷の外で待っているからな」
「がんばって」
乱馬もあかねも、斧を握り締めているキリトに声をかけた。
「あ、ああ」
キリトはしっかりと頷きながらさっそく地下室へと続く階段へと降り立とうとするが、その前にふと、乱馬やあかね達の横でじっと自分の姿を見つめていたランゼを振り返った。
・・・たとえ気持ちを改めたとはいえ、それまでのキリトの事を一番良く知っているのはランゼ だ。
「ホントに・・・一人で大丈夫なのか?」
あたしも、着いていこうか?ランゼがそう呟こうとすると、
「・・・今まで、色々と悪かったな」
「え?」
「でも、これは・・・これだけは、どうしても俺がしなくちゃいけないことなんだって、思うんだ。だ からランゼも、屋敷の外で待っていてくれ」
「!」
キリトはその言葉をわざと言わせないようにと、言葉を被せた。
「キリト・・・」
「・・・先祖の秘宝を手に入れて、俺たちで船会社、作るんだ。行き場のない親なし子を、救って やるんだ。そうだろ?」
キリトは最後に、ランゼに力いっぱい笑って見せた。
その笑顔は、想像もできない恐怖に歪んではいるものの・・・「意志の強さ」だけは感じ取る事 が出来た。
ランゼは、そんなキリトに大きく一度だけ頷くと、
「・・・早く帰ってこないと、承知しないからねっ」
キリトに表情を見せないようにそう履き捨てると、あかね達の横をすり抜けて外へと走り去って いった。
「・・・それじゃ、行ってくる」
キリトも、そうあかね達に呟いて地下室へと降りていった。
あかね達も、地下室への入り口からキリトの姿が見えなくなるまで見送ると、その場を離れて 屋敷の外へと出た。

RUMIC'S NOVELS LINK

パラレル
糖度2
糖度3
糖度4
糖度5
企画

OTHER CONTENTS

■オリジナル作品(外部サイト)
お仕事情報

THANKS!

TOTAL: HITS(Y:)