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アクシデント!(前)

『カグラ!』
ヒカリがそう言って、カグラに手を伸ばした。カグラは咄嗟にその手を取った。

…ところまでは、覚えている。
が、次に目を覚ました時には、カグラはバスタオルを身体に巻いた状態で自室のベッドに横になっていた。
傍には、心配そうな表情をしたヒカリがいる。

「…?」

何で自分はここに?
カグラがヒカリにボンヤリと目を遣ると、ヒカリは安堵の表情を見せつつも、「カグラ、シャワー室で倒れたんだよ」とカグラに説明をした。

倒れた?シャワー室で?
・・・なんで?

「…」
カグラはぼんやりする頭を何とか回転させて、それまでのことを思い出そうとする。
そして漸く・・・自分に何が起こったのかを思い出したのだった。


*****


久しぶりの烈車の停車時間、カグラは新しい洋服を買うため買い物に出たいと思っていた。
だが、なんとなく蒸した陽気だったこともあり、試着するなら汗を流しておこうと考え、シャワー室でシャワーを浴びることにした。
ところが、システムの調子が悪いのかそれとも外気温の上昇のせいか、普段よりお湯が熱めだった。
こういうのはいつもワゴンに調整を頼んでいた為、カグラはワゴンを浴室から呼んだ。
しかし、ワゴンもどこかに出掛けてしまった後のようで・・・仕方がないのでそのままシャワーを浴び続けることにしたカグラだったのだが、
熱気で逆上せてしまい、これは危険と判断して何とか脱衣場へ出て身体にタオルを巻いた…ところまでは、覚えている。






ということは、そこでヒカリの手を取ったのだろうか。
というよりも、そもそもどうしてそこにヒカリが・・・?
カグラが首をかしげていると、

「俺は共有スペースで座ってたんだけど、ワゴンさんを呼ぶカグラの声が聞こえて・・・その後しばらくしたら、何かシャワー室からガタガタってすごい物音がするし、何事かと思って様子を見に行ったら…」
バスタオルを身体に巻き、今にも床に倒れそうなカグラを見かけたヒカリは、慌てて手を伸ばしたという。

・・・ああ、それが覚えていた映像だったのか。カグラは全ての状況が繋がり、ようやく納得をした。
とはいえ、

「カグラ、具合悪い時は誰かがちゃんと居る時にシャワー浴びたほうがいいよ」
「う、うん。今日は逆上せちゃって・・・」
「倒れた時に頭とか打って怪我したら大変だよ」
「う、うん…」

時間が経つにつれ、
助けてくれたのは有難いし、注意をされるのは当然だと思えども・・・冷静にそうカグラにアドバイスをしてくれるヒカリの顔を見るのも、カグラは徐々に恥ずかしく思えてきた。

よくよく考えてみると、バスタオルを巻いていたとはいえ、ほぼ全裸に近い格好で倒れたカグラ。
更にそこから自室に移動している・・・ということは、ヒカリがカグラをここまで運んだことになる。
「あっ・・・あのね、ヒカリ。その・・・」
意識をなくしていたから、自分がどのような表情でどんな様子で彼の腕に抱かれていたかは分からない。
あられもない姿の挙句、万が一、口でも開けて間抜けな表情とかしていたら・・・それを思うと、カグラは急激な羞恥心に襲われたのだった。
が、

「とりあえず、早く服を着なよ。風邪引くよ?」
そんなカグラの様子に、ヒカリは普段同様の態度を崩すことはない。
その上、カグラのこの姿になんの反応を示す素振りもなく・・・むしろ、「いいから早く服を着ろ」と急かす有様だ。

・・・カグラは今になって急に意識してしまったけれど、ヒカリに至っては、そうではないのかもしれない。
というか、別にカグラが服を着ていようがなかろうが、見えそうが見えなさそうが、ヒカリの興味の対象ではないのかもしれない。
そう思ったカグラは、おかしな話だが少しだけ心の片隅が苦しくなった。

普段から、まるで兄妹のように接している二人だ。浴室で倒れたので部屋まで運んだ・・・今回はただそれだけのこと。
それだけのはずなのに・・・この心の違和感はなんなのだろう?
自分が女性として思われていないということが、カグラ的にはショックなのだろうか。
もしかしたら、ミオが同じ状況だったらまた違ったのか・・・そんなことまで考えてしまう始末だ。

「・・・うん」
内心そんなことを考えているということをヒカリに悟られまいとしつつ、カグラはそう言って、服を着替えるべくベッドから身体を起こした。
が、急に身体を起こした為に再びふらり、と眩暈を覚える。
そんなカグラを、再びヒカリが支えた。カグラは「大丈夫」とそんなヒカリの手をそっと戻すと、

「・・・ヒカリは、平気なんだね」
「平気って?」
「あ、いや、ううん・・・もう大丈夫!二度もごめんね。私、着替える。ヒカリ、運んでくれてありがとう」

思わず思っていたことを口に出してしまったが、慌ててそれを飲み込んだ。
カグラはヒカリから顔をそらして、部屋の隅においてあるクローゼットの前に立った。

「・・・」
ヒカリはそれに対して何も返さなかったが、ふわり、と部屋の空気が動いたような気がしたので、きっと部屋を出て行くのだろう。
直後、カチャン、とドアのほうから音が聞こえた。
カグラはその音を聞きつつ、クローゼットの前で大きなため息をついた。


・・・浴室で倒れた自分を助けて運んでくれたのに、お礼もそこそこ。
あげく、余計なことまで聞きそうになってしまった。
例え普段は仲良く接していたからといって、だからといってどうだ、ということにはならない場合だってある。
今回のことで、それが良く分かった。
カグラがいくらバスタオル一枚の姿で居ても、気を失っていても・・・ヒカリはなんら反応もしないし普段と何も変わらない、ということ。
それはイコール、ヒカリがカグラを「そういう対象で見ていない」ということにも繋がる。
ヒカリも若い男性だし、相手に恋愛感情はなくとも少しぐらいは興奮しても良さそうものだが、それがないというのは余程興味がないか眼中にないか。
・・・

分かってはいたはずなのに、それを改めて思い知ったこと。
そして、ちゃんと顔を見てお礼も言わない自分の無礼さ。
きっとそういうところが、ミオや他の女性との大きな違いなのだ。
その足りない部分が、女性としての魅力も欠けている部分。
カグラはそんな自分に対して再び、ため息をついた。




その時だった。


・・・ドン!

クローゼットを向いてため息をついたカグラの顔の両サイド何かが通り過ぎたかと思うと、物音がしてそこで止まった。
「!?」
突然の出来事に驚いたカグラは、びくっと身を竦ませ慌てて振り返る。
すると、

「・・・あのさ、本気で言ってんの?」
そこには何故かヒカリが立っていた。
どうやらカグラの顔の両サイドを通り過ぎたのはヒカリの両手のようで、カグラはクローゼットの扉に手を突いたヒカリの、両腕の間に立っていることになる。

「ヒカリ!?え?何で・・・さっき出て行ったんじゃ・・・?」
ただ・・・先程、ヒカリはこの部屋から出て行ったのではなかったか?ドアの方で確かに「カチャン」と音がしたはずだと、カグラはすかさず思い返す。
カグラは、ドアのほうへと目をやった。すると、ドアは閉まったままだったが、何故か・・・開いていたはずの内側の鍵が、しっかりとしめられていた。

もしかして、鍵だけ閉めて戻ってきた?
…何で?

カグラはドアの鍵から目線をヒカリの顔に戻す。
目の前に居るヒカリの顔は、決して笑顔ではなかった。いやどちらかというと、少し・・・怒っている?
でも、どうして怒っているのだろう。カグラはそんなヒカリの顔をじっと見つめた。
ヒカリはしばしじっとカグラを見つめた後、ゆっくりと口を開いた。

「ねえ、カグラ・・さっきのは本気で言ったわけ?」
「ほ、本気って・・・?」
「・・・」
ヒカリは、カグラのその問いに一瞬口を閉ざす。
だが・・・次の瞬間。ヒカリはカグラに答える代わりに、クローゼットに突いていた手をどかし、無防備になっていたカグラの二の腕を物凄い強い力で両腕掴んだ。
そして、そのまま強く自分の方へと引き寄せたかと思うと、まるで噛み付くかのような勢いで・・・カグラの唇を自分の唇で塞いだのだった。

「んんっ・・・」

それは、驚くぐらい乱暴で、そして・・・熱い熱い感覚。
唇から伝わる柔らかさと、熱い吐息にカグラの身体がビクン、と震えた。
慌ててカグラが彼の身体を押し戻そうとするが、力で適うはずがない。
それでも一瞬だけ唇が離れるも、再びまた押し付けられ・・・少しだけ開いた唇の隙間から手繰るように割りいれられた舌が、まるで媚薬のようにカグラの中で絡まりあっては解けていく。
時々苦しくなって、息をしたくて何とか離れるけれど、それでもまた強引に奪われて・・・ぞくぞくする様な感覚で身体を支配される。

「・・・」
その熱くて蕩けそうな感覚に、カグラは徐々に立っていることも出来なくなりその場にへたり込んでしまった。
それにあわせてヒカリも身を屈めるも、
完全にカグラが床に座り込んでしまったのを見届けると、そんなカグラの身体を軽々と腕に抱き上げ、先程まで横たわっていたベッドへと運ぶ。
そしてベッドの腕に据わらせたカグラの、真正面にヒカリも腰掛けた。

「…」
ヒカリが、先程の感覚が未だに身体から抜けないでポーっとしているカグラの、頬にそっと指で触れた。
カグラは、ビクンと身を竦める。
ヒカリはそんなカグラの反応を見つつも、頬と髪を指で弄びながら呟いた。

「・・・これでもさ、俺は必死で考えないようにしていたんだけど」
ヒカリはそう言って、バスタオルから出ているカグラの鎖骨の辺りを人差し指でスッ・・・と触れてちょっとだけ横に滑らせる。

「ひゃっ・・・」
ビクン、と身を竦ませながらカグラが小さく叫ぶと、ヒカリはそんなカグラの身体を、今度は優しく引き寄せてそっと抱き留める。
バスタオルで覆い切れていない部分にヒカリの指が当たり、カグラはそのくすぐったさに少し身を震わせると、

「…さっきはごめん」
カグラの首筋に頭を擡げるようにカグラを抱きながら、ヒカリがそう呟いた。

「ごめん」というのは、勿論先程の…強引なキスの事だろう。

「あ…う、うん…」

…ヒカリにキスされること自体は、勿論嫌ではない。ただ、突然だったのと、まさかあんな形で唇を奪われるなんて、とその両方で驚いてしまい萎縮してしまった。
それだけだった。

カグラは、「びっくりしちゃったよ」と、ヒカリに答える。
ヒカリはそんなカグラに「ごめん」と再度謝ると、何故か…そんなカグラの額を、軽くビシッとはじいた。
いわゆる、デコピンである。

「あいた!な、何よう!」
当然、この話の流れで何故自分がヒカリにこうされなくてはいけないのか理解できないカグラは、ヒカリに抵抗するが、

「…でもさ、カグラがあまりにもその、デリカシーが無いというか」
「デリカ、シー?」
「あのさ、平気な訳ないと思わないの?相手が俺じゃなかったら、間違いなくタオル剥ぎ取られてたかもしれないんだよ?」
「え…?」
「俺だって、その…力づくでどうにかするのは嫌だから、何とか自分を誤魔化して気にならないふりしていたのに、あんなこと言われたら、我慢出来なくなる」

ヒカリはそう言って、深いため息をついていた。
どうやらヒカリは、カグラが「ヒカリは平気なんだね」と呟いたことに怒っているようだ。
それを聞いて、カグラはカアッ…と頬を紅潮させる。

…ヒカリの話を自分なりに解釈すれば、先程カグラが思っていたのとは真逆であるということになる。
あの時はクールに普段通りにカグラに接していたヒカリであったけれど、それは彼なりに精いっぱいの努力をして気持ちを抑えていたということであり…?

「…じゃあ、じゃあ…ヒカリも、私を女の子に見てくれているってこと?」
「なっ…あのさ、カグラ。当たり前のこと聞かないでくれる?」

ヒカリはそう言って、そっとカグラから離れた。
心なしか、ヒカリの頬も少し紅潮している様な気がした。そして、いつもに比べて呼吸もちょっと、早い気がする。


…何だ。
声には出さないけれど、カグラは心の中で少しだけ安堵していた。
ここで「いや、悪いけどそういう気持ち全くないし」とか言われたら、多分確実にショックを受けていた。
それがカグラの思い違いだと分かった今は、その部分は安堵したし解決した。
だが同時に…別の問題も発生したことに、カグラは気が付いた。
今となっては、そちらの方が大問題である。

ヒカリがカグラを女の子として見てくれているということは、分かった。
カグラの気持ちを考えて…うっかりキスはしてしまったが、それ以上は留まっていてくれたことも、理解した。
でも。先ほどヒカリは、言った。…「我慢できなくなる」と。

「…ヒカリ」
カグラは、ヒカリの名を呼んだ。
ヒカリはそれに対して何も答えないが、怒ったような…いや、少し困惑しているかのような表情でカグラを見ていた。
それはきっと、この先どうしたら良いのかをカグラに委ねているのだ。
ヒカリはカグラに言った。「力づくでどうにかするのは嫌だから」と。
ということは、ヒカリはカグラの言葉を待っているのだ。力づくで先に進まなくても良い、魔法の一言を。

「…」

それに気が付いた瞬間、カグラの胸も大きく、そして早く鼓動を始めた。
自分の鼓動の大きさで、眩暈がしそうな感覚さえもある。

…自分の中の気持ちと、この状況と。相手の気持ちと…そして、この先どうしたいのかという願う気持ち。
幾つもの複雑な思いが、カグラの頭の中で交差する。

ヒカリの事は、好きだ。
最初は、ヒカリはいつも優しいし、兄のように温かい存在だと思ってた。
でも今日の出来事があった時、カグラは「ヒカリが自分の事を女性として見ていないのでは」と思いショックを受けた。
そう思うということは、カグラの中にはヒカリの事を「兄のように思っている」という気持ちとはまた別の感情がある、ということだ。


「…」
カグラは、ヒカリに向かって小さく一度頷いた。
その瞬間ヒカリの表情がはっと変わったが、カグラはヒカリが自分に腕を伸ばそうとするのを咄嗟に咎め、

「で、でも待って!」
「えっ…な、何」
「あの…あのねっ、ヒカリの事大好きだし、こういうことされるのも嫌じゃないのっ…でも」
「…でも?」
「…き、緊張しちゃってっ…その、こ、怖い」

そう言って、自分の胸元に巻いてあるバスタオルをきゅっ…と握りしめた。

…色々な漫画や、テレビや映画で、告白した瞬間いきなりその先に難なく進むような話はあるけれど、
実際はそれほど流暢に進むものではない。
それに、仮に「いいよ」と返事をしたところで、
どうやって、どんなふうに、どんな顔でヒカリとそうすれば良いのか、カグラには全くイメージが出来ないのだ。
イマジネーションガールではあるけれど、これに関しては全く生かし切れていないカグラである。

「…」
そんなカグラの胸中を察したのか、ヒカリは暫くの間カグラの姿をじっと見つめていた。
が、その内考えがあるのか、ふっとカグラの前から動き窓際へと移動した。
そして、シャッ…とカーテンを引く。室内は、カーテンの間から洩れる日の光のみで照らされ薄暗くなる。

カーテンを引いたヒカリは、再びカグラの前に戻ってきた。
そしてカグラと向かい合って座ると…今度は、自分が首に巻いていたストールをそっと外した。

「ヒカリ?」
カグラは、ヒカリに声をかける。
がヒカリはそれに答えずに…今度は、何と着ていたトップスを一気に脱いだ。
途端に、ヒカリの細いのにしっかりと引き締まった身体がそこに現れる。

「ちょっ…な、何でヒカリが脱ぐの!?」
突然露わになったその姿に、カグラが思わずヒカリの外したストールで顔を覆うと、

「だって…緊張するっていうから」
同じ恰好すれば、緊張とけるかもしれないし。ヒカリはそう言って、カグラが顔を覆っているストールをひょいっと取り上げた。

「そ、それはそうだけど」
確かに今は、緊張とか不安というよりも…目のやり場に困る。カグラが頬を一気に紅潮させながらヒカリを見つめると、


「それに大丈夫、俺しか見てないから」
「ヒ、ヒカリに見られるから恥ずかしいんだってばっ」
「俺だって、カグラに見られるんだけどね」


ヒカリはそう言って、恥ずかしそうに顔を覆っているカグラのその手を、そっと顔から外した。
そしてきゅっ…と優しくその手を握る。

「…」
多分これが、最終確認。触れている手から、カグラはそれを感じた。
正直、一瞬迷う。でも…答えは、自分の中では決まっている。

「…あ、あのね。わ、私こういうの初めてだから、上手く出来ないかもしれなくて…」
「俺も初めてだから、いいよそんなの、気にしなくて…それよりもさ、その…」
「う、うん…」
「これから、カグラにとってすごく痛くて辛い事、するかもしれないけど…」
「うん…私も、大丈夫…」
「…」
「…」

二人は、少しの間黙り込む。
その代り自然とお互いの距離が縮まり、やがて額と額を触れ合わせてお互いの呼吸を感じる距離となった。

二人は、視線を絡ませながら…小さく笑い合った。それが、お互いの意思確認を終了した合図となった。

次の瞬間、二人の唇がフッ…と吸い寄せられるように重なった。そしてヒカリがカグラの身体に腕を回しながらゆっくりとベッドへと押し倒す。

ゆっくりと、でもまるでお互いの呼吸を奪い合うかのように唇を重ねる。
その内に、カグラはいつの間にか、自分に身体を重ねているヒカリの首筋に腕を回していた。

ヒカリはそんなカグラの頭を一度優しく撫でると、片手はカグラの傍に置いて身体を支えつつ、もう片方の手をスッ…と移動させた。

移動した手は、カグラが身体に巻いているバスタオルの結い目へと向かっていたようだ。
ヒカリはその結い目を器用な指付きで解く。その瞬間、カグラの身体を締め付けていた唯一のものが無くなった。

薄暗い室内に、仄かな明かりと共に浮かび上がる、白い身体。
まだ幼さが残る彼女と同じように未成熟ではあるけれど…張りつめた肌と、真逆のしなやかな身体のライン。直視するのが眩いくらいだ。

ヒカリはその白く柔らかな身体のラインに指をゆっくりと這わせた。
首筋から鎖骨へ、そして…少し身体を捩るだけで、小刻みに揺れる白く柔らかい胸の膨らみに。

その瞬間、カグラの身体がびくん、と小さく撓った。そして、塞がれた唇の間から「ん…」と小さく息を洩らす。

ヒカリは再び、その柔らかな膨らみに指を這わせた。今度は、まだ硬度を帯びていないその膨らみの先端部分にわざと指で少し触れるように、してみる。
すると先程よりも大きくカグラの身体が撓り、

「や…」
本気で「嫌だ」という表情では勿論、無い。カグラが、先程よりもずっと悩ましげで甘い吐息を洩らした。
そのカグラの反応で、ヒカリの頭に一瞬でカアッ…と血が上っていく。

もっと、聞きたい。

ヒカリの中に、そんな感情が急激に湧き上がっていた。
ヒカリはいつもの冷静さを忘れて、優しくも執拗に何度もカグラが反応するその部分に指を這わせる。

時折掌を大きく開いて柔らかい膨らみの弾力を感じ、そうかと思えば、徐々に先程よりも硬度を増してきたその先端の小さな芯芽を指先できゅと刺激する。

その度にカグラはビクン、と身体を撓らせて小さな唇から吐息を洩らしていた。
カグラは恥ずかしいのか、塞がれていない唇から洩れる吐息を隠すため、ヒカリの首に回していた腕を外し、外したその手の甲で必死に抑えている。
それでも、声が抑えきれなくて…徐々に汗ばみ、うっすらとピンク色に色を変えるしなやかな身体を小さく捩っていた。

「…」

カグラ。ヒカリは乱れる息と共にカグラの名を呼んだ。
カグラはそんなヒカリに、真っ赤な顔で涙ぐみながら小さく頷く。

恥ずかしいけれど、でもどうにも自分でも止まらない。カグラのそんな気持ちが、その様子に見てとれる。

ヒカリもカグラに頷いて見せると、そんなカグラの気持ちを優しく包み込むようにそっと、カグラの唇に自分のを重ねた。
そして、先程結い目を解いたバスタオルを完全に取り去り、改めてカグラの身体に腕を回し抱きしめた…その瞬間だった。







「カグラ―!居るー!?」
ドンドン!
…なんと。そのタイミングで、ピンクレッシャーのドアを派手に叩く音がした。
しかもこの声は、トカッチ。どうやら、外出先から早めに戻ってきたようだ。

「カグラが欲しがってた、限定品のクマのぬいぐるみが売ってたんだよ!…あれ?鍵がかかってる。あ、もしかして寝てる?」

レッシャ―の扉は外側からは鍵をかけることが出来ない。
ということは、部屋の主は中にいるということだ。それを皆が知っている故に、トカッチには一応中にカグラがいる、ということは伝わってしまった。
…勿論、まさかヒカリも一緒に居るとは思っていないようだけれど。


「なっ…」
「きゃっ…」

勿論その声に、二人は慌てて離れる。そして思わずベッドの上で顔を見合わせるも…このままトカッチを無視するわけにも行かないので、

「あ、あ、トカッチ、その、ありがとう!」
「すごいんだよ!何かシリアルナンバーとか売ってあってさ、しかもナンバーごとに着ている衣装が全部違っててね…」
「う、うん!あ、じゃあ共有スペースで待ってて!私、お昼寝してて、その、着替えてからすぐに行くね…」
「わかった!待ってるね!」

素直なトカッチは、カグラのその言葉を信じて早々にドアの前から退散していった。
二人はとりあえずほっと息をつくも…それまで起きていたことを思うと、何だか急激に恥ずかしさと気まずさが増す。
だがとりあえずは、本日はここまで、ということになりそうだ。


「くっ…」
トカッチを怒ってもしょうがないけれど、それでもヒカリは中途半端かつやりきれない思いを抱きつつ、脱いだトップスに再び手を通した。

カグラも、まずはベッドの脇に落ちたバスタオルをサッと羽織った。

「…」
二人はもう一度、顔を合わせる。

…言いたいこととか、話したいことはまだまだ、たくさんあった。
でも、とりあえず今日はここまで。


「…あのさ」
「…う、うん」
「その…今度は、邪魔が入んないように、考える」
「!…うん」


二人はそんな会話を交わし…小さく笑い合った。そして額をくっつけるようにして一度だけ短くキスをすると、
まずはヒカリが周りを気にして部屋から出て行き、そして、タオルから服に着替えたカグラが、トカッチの待つ共有スペースへと向かったのだった。






…勿論この後。

「ね、ねえミオ。何かさ、ヒカリから僕に対してただならぬオーラを感じるんだけど…」
「え?気のせいじゃないの?」
「そ、そうかな…う、何か汗が…」

その日、自分に対するヒカリの意味不明な威圧的オーラに怯えるトカッチが、ミオとそんな会話を交わしていたことは、カグラの知るところではない。

 


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