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FEELING DESTINY

「あー、びっくりした!明君、花火をあんなに間近で打つんだもん!」


ピンスポットシャドーとの戦いも終わり、夜に一時の休息がてら皆で花火を楽しんでいる最中のこと。
明の筒型花火発射で一時は大騒ぎしつつ皆で大笑いしたものの、時間が経てばそれも落ち着き、それぞれのんびりとその時を楽しむようになっていた。

ライトと明は、未だに筒型花火について何やら熱い討論をしているようだし、ミオとトカッチはワゴンと車掌・チケットと一緒に線香花火を楽しんでいる。
ヒカリとカグラはと言うと…花火をしている面々から少し離れた、近くの川を望める場所の手すりに寄りかかりながら、ゆったりとした時間を過ごしていた。
辺りには、夏だというのにひんやりとした風が珍しく吹いている。
夜の闇にするりと溶け込むその風は、手すりに寄りかかるカグラのクセのあるツインテールと、闇に映える白いブラウスの襟元に結ばれている赤いリボンも緩やかに揺らしていた。


シャドータウンと化してしまった街があれば救い、また自分たちの街へ戻る為にも前に進んでいく。
勿論シャドーライン側がそれを快く思っていないのは明白であり、故にこちら側とは完全に対峙している。
それ故、そんないつどのタイミングで敵が襲ってくるか分からないような状況の中、
今こうして過ごしているこの時間は、奇跡的とも思えるほど穏やかなのである。


そんな中、
先程の明が発射した筒型花火の事を思い出したのか、カグラが顔は笑っているけれど、未だに少し鼓動しているらしき胸を抑えるような素振りをしながら、そう言った。


「トカッチは眼鏡も吹っ飛んでいたし…」
そんなカグラの横で、ヒカリはその時のことを思い出しながらそう呟く。カグラは「そうだったよね!」とそんなヒカリの言葉に笑顔で頷いた。
そして、


「あの時、確かトカッチとミオちゃん、何かお話していたみたいだったんだけど…それで中断しちゃったんだよね」
そう言って、ワゴンたちと楽しそうに線香花火に興じているミオ達へ視線を向けた。




…そう。あの時確か二人は、皆からちょっと離れて二人で何やら話していた。
それは気軽に割り込んで行けるような雰囲気ではなく、いやもちろんそんな野暮なことは流石にしないけれど、
でもきっと、トカッチが最後にミオに大事な何か言いかけていたのではないか…そんな感じを、ヒカリも、そしてそういう恋愛ごとに疎いと思われるカグラでさえも気が付いていたようだ。


「トカッチ、ミオちゃんに何を話していたのかなあ?」
「…さあ。でもその内わかるんじゃない?」
「えー、何だろう。あ、でも…」

カグラは少し考えるような素振りをしつつ、その後そう呟いて一旦口を噤んだ。
一体どうしたのだろう。ヒカリがそんなカグラの様子を窺っていると、


「難しいことは判らないけれど、私ね、二人の間にあの時、ちょっと見えたような気がするんだ」
カグラはそう言って、ヒカリに微笑んだ。
「見えたって、何が?」
ヒカリがそんなカグラにそう尋ねると、カグラはヒカリに対し自分の左小指と、右小指を立てて並べて見せながら、「…赤い、糸」と答えた。


「赤い、糸?」
洋服でもほつれてる?それが絡まってでも…?
いやそもそもあの二人、赤い服着ていたっけ?
…ヒカリが両手の小指を立てて自分に見せるカグラにそう返すと、


「そうじゃなくて!ほら、昔から言うでしょ、将来結ばれる二人の間には赤い糸が繋がっているって」
「ああ、そっちの事…」
「あの時ね、なんか二人の間に赤い糸が見えたような気がしたんだ。はっきりとじゃないし、何だかものすごーく長くぐるぐると色んなところを経由して存在していたような気もするんだけど、結果的に先端は二人を結んでいたのかなって、そんな気がしたの」


勿論、実際に「運命の赤い糸」など物質として存在しているものではないので、「見えた」というのはどうやら、カグラのイマジネーションの中の話らしい。
でも、イマジネーションの中でも、
例えその糸が長くてお互いの所までたどり着くまで時間がかかったとしても…それが「見えた」っていうのは、少なからずその二人には何かにしろ「縁」があるということになるのだろうか。


「へえ…」
それは少しだけ、羨ましい。
ヒカリはカグラのその話を受けて、思わず自分の小指を見つめた。


…当然のことながら、そこには物理的に糸など纏わりついてはいない。
勿論それは、自分に両手の小指を見せてくれたカグラも同じだった。

「カグラの赤い糸は、もうどこかに繋がってるの?」
ヒカリは、カグラにそう尋ねてみた。

ここで即答で、「うん、ほらあっち」…とか何とかでライトを見つめられたらと思うと少し胸が早鳴りをしたが、
幸いなのか、それとも「誰とも繋がっていない」の意味を考えると少し残念となるのだろうか。

「うーん、自分のは良く分からないなあ」

カグラはさほどその言葉の意味を考えていない様子で、ヒカリの問いにそう答えた。
流石のカグラでも、何か余程のきっかけでもなければ、早々イマジネーションだけで他人の赤い糸の到達先を垣間見ることは不可能の様だ。
ヒカリは複雑だけれども少しだけ安堵の表情を見せつつも、


「じゃあ俺のも見えない?」
ヒカリがカグラにそう尋ねると、「うん」とカグラが答えた。
ただそれは、ヒカリだけではなく、明もライトも、同じ様だ。


「きっと、来たるべき時が来たら見えるようになるのかな?さっきのミオちゃんとトカッチみたいに」
「そうかもしれないね」
「じゃあ、もしヒカリも誰かと誰かの赤い糸を見つけたら、私に教えてね!私もヒカリに教えてあげる」


カグラはヒカリにそう言って、再び微笑んだ。
…元々見えないものだし、早々他人のそういうものを見つける状況が来るとは思えないが、
せめてカグラからの報告の中に、カグラの赤い糸の先端が別の場所で見えた、というものだけは来ませんように。
ヒカリはそんな事をそっと考えながら、カグラに「ああ」と一応返事をした。





と、その時だった。


ゴオッ…


それまでするすると辺りに溶け込んでいた夜風が、急に強く吹いた。

「わ!」
「あーあ、落ちちゃった…」
「激しく残念〜!」

線香花火組はその風のせいで軒並み最後の火玉を落とされてしまい、シュボッ…と近くのバケツに火の消えた花火を放り込んでいた。
筒型花火討論組に至っては、

「おっとっと…」
「わ!明、危ないって!」

風で筒が煽られ明がよろめき、あわやその筒がライトの頭に直撃しそうになっていた。
相変わらずの二人である。
そして。


「きゃっ…」
予想外の突風に驚いたカグラが、風に煽られたツインテールに手をやった。
その時に襟元の赤いリボンを指でひっかけたのか、襟元で結ばれていたリボンがヒュッ…と解け、夜空に舞い上がった。


「あ!」
カグラのその声で事に気が付いたヒカリは、素早く手を伸ばして舞い上がったリボンを掴んだ。
その直後風も収まり、再び辺りには緩やかな風が夜闇に溶け出していた。

「ありがとう、ヒカリ!」
飛ばされそうになったリボンを掴んでくれたヒカリに、カグラが嬉しそうな笑みを並べた。


「はい、これ」
「ありがとう」

ヒカリはそんなカグラにそのリボンを返そうと彼女の手にそれを乗せた…が、ふと一瞬考え、カグラがリボンを掴んだ後も、そのまま反対側の端を掴んだままでいた。
二人は、一本の赤いリボンの端と端を掴んでいる状態となる。


「…ヒカリ?」
一体、どうしたのだろう?
リボンを返してくれようとしたはずなのに、どうして反対側を掴んだままでいるのか。

この行動を不思議に思ったカグラがヒカリに尋ねると、ヒカリはリボンの端を自分の指にゆっくりと、でもしっかりと巻きつけながら、柔らかい笑みと共にカグラに向かって一言こう言った。




「…見えたよ、俺の赤い糸」
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