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Sweet Tea Time

久しぶりの停車時間に買い物をした帰り。
偶然にも同じタイミングで烈車に戻ろうとしていたミオと出会ったので、僕達は近くのカフェへと立ち寄った。

本当はお洒落なカフェよりも、ゆっくり本を読める自分のレッシャーの中でコーヒーでも飲む方が落ち着くのだけれど、
せっかくミオが付き合ってくれるわけだし、ここで断るのは勿体無い。

ショッピングの帰りに、気になる女の子とお茶を飲めるなんて。今日は何て良い日なんだ。
気を緩めると、気持ち同様緩んでしまう顔を必死で平常に保ちつつ、僕とミオはカフェの扉を押し中に入った。
そして、空いている席はないかと店内を見回した。

と。

所々座席が埋まる店内の窓際、外の街路樹と異国風の建物に似せた街並みが絶妙に美しく映える席に、自分たちと同年代頃のカップルが座っているのが見えた。

カップルの男性は、首にふんわりとストールを巻きカジュアルな服装をしている。
この時代に…といっても僕もそうだけれど、珍しい艶やかな黒髪で、涼しげな表情をしているその横顔は、男性の僕から見ても割と端正に見える。

カップルの女性の方は、長い髪の毛を頭の両サイドで結っている。結った髪の先はくるん、とカールしていて女性らしさを感じる。
白系のブラウスの襟元には、ガーリーなリボンがきゅっと結ばれている。
タータンチェックのスカートとのバランスもとれており、まるで「女の子」を絵に描いたような印象を受けた。

向かい側に座る男性にしきりになにか話しかけては愛らしく微笑む姿は、何だか見ているこっちまで心が弾んでしまう。

さすがお洒落なカフェ。来る客もレベルが高いぜ…僕はそんなことを考えていたが、

「決まった?」
「まだ!だって、こんなにあるんだもん」

ふとしたタイミングで二人の声をはっきりと聞いた時、僕は気が付いた。
この二人組は、ヒカリとカグラだった。

「あっあれっ…確か出て行くときは別々だった様な…?」

もしかして、最初だけ別に出て後で合流したとか?それとも、僕とミオみたいに偶然外で会ったのかなあ?
どちらにせよ、せっかくだから一緒にお茶でも。
僕がそんなことを思って二人の席の方に近づこうとすると、

「ほら、トカッチ。あっち座ろうよ」
ミオはそういって、二人の邪魔にならないような距離・・・ではあるけれど、一応は二人の様子が伺える場所に席を取った。
「野暮なことしないの」と言わずもがなの表情をしているが、二人が見える席に座るってことは、一応ミオも気になっているようでは、ある。



「あ、あの二人って、そういうことなのかなっ?」
僕が席に座りつつ、意味はないかもしれないがメニューで顔を隠し姿勢を低くしながらミオにそう尋ねると、

「そういうことも何も、お茶しているだけじゃないの?」
「でも、二人っきりでカフェでだよ!?」
「それを言ったら、私とトカッチもそうじゃないの」
「あ」
「…でもまあ、違うでしょうけどね」

ミオはそう言って小さく笑っていた。

ミオは僕のように不用意に詮索するような素振りはなく、
どちらかというと優しく見守っている立場のように思われた。

カグラから何か聞いているのだろうか…いや、そうじゃない。
普段から皆の様子を見ては気を遣ったり、世話を焼いてくれる彼女故に、
二人が醸し出す雰囲気を敏感に感じ取っていたのかもしれない。

どちらにせよ、ミオの言うとおり野暮なことはやめなくちゃ。僕は「そうだね」とミオに返事をしつつ…それでも耳だけは二人の会話を拾うべくそちらへと向けていた。


…そうこうしていると、そんな二人の所に店員がやって来た。
「ご注文はお決まりですか?」
店員がそう尋ねると、
「ヒカリはもう決まった?」
カグラが、そんなことをヒカリに尋ねていた。

僕たちが店に来る前から座っていたはずなのに、どうやらカグラはまだ注文が決まっていないようだ。

確かにお洒落なカフェだし色々なメニューがあるから目移りはしてしまうだろうけど、いつまでたっても決めることが出来ない所は何だかカグラらしい。

そんなカグラに対し、ヒカリは「決まった。チーズタルトセット」とさっくりと答えている。こちらは、いつも通りクールだ。
カグラは「ええ〜」とか何とか言いつつ、それでもまだメニューを見て唸っている。
これにはさすがの店員さんも苦笑いだった。
と、

「カグラは何で迷っているの?」
見かねたヒカリがカグラにそう尋ねた。

「ショートケーキとモンブランで迷って…」
カグラはそう言って、メニューを広げてしゅん、としている。

…どうやら、メニューの写真がどっちも美味しそうに見えて選びかねているようだ。いかにも、カグラらしい。
するとそれを聞いたヒカリが、「わかった」と一言カグラに言った後、オーダーを待っている店員に向かってこういった。

「じゃあチーズタルトセットやめて、ショートケーキとモンブランのセット二つ」
「かしこまりました」

オーダーを受けた店員はテーブルを離れ、奥へと引っ込んだ。
それと同時に、「ヒカリ、チーズタルトは?」とカグラがヒカリに尋ねていた。

それは、僕もこっそり耳を立てていてそう思った。
最初、即答で「チーズタルト」と答えたヒカリ。数あるメニューの中からそれをすぐに選んだということは、食べたかったんじゃないのかな?

カグラが迷っている内に気が変わったのかな。僕はそんなことを考えていた。
ところが、ヒカリは質問したカグラに対して、笑顔でこう言った。

「半分こしよ。ショートケーキとモンブラン」

「…うん!」
そんなヒカリに対し、ぱああ…と表情明るく、そして嬉しそうな笑みを浮かべてカグラが頷いていた。
僕は思わず、二人の方へと目をやる。
…どうやらヒカリは、自分のオーダーよりも迷っているカグラを想ってそちらを頼んであげたようで、

「ほら来たよ。どっちから食べるの?」
「えーとね、じゃあショートケーキ!」
「じゃ俺はモンブラン」
「ヒカリ!イチゴあげるねっ」
「ショートケーキからイチゴとったら、ただの生クリームのスポンジケーキになるよ?」
「いいの!はい、あーんして」

満面の笑みでフォークにイチゴを刺し、自分に差し出すカグラに最初は照れたような表情をしていたけど、
その内クールだけれどもでも、柔らかい表情で…素直に口を開けてイチゴを受け取っていた。
そんなヒカリも、モンブランに乗っていた甘露のクリをカグラにあげていた。
「ほら、口についてるよ」とか何とか、その後カグラの口の周りに付いた生クリームを、ちょっと指で掬ってあげたりもして。


見ているこっちも、何か幸せな気分になる。
それにしても、ヒカリはカグラに対してすごく柔らかい表情で微笑みかけるし、声をかけるんだなあ。

…楽しそうに時を過ごしている二人の様子を、いつの間にか耳だけではなくそちらに目もやって窺っていた僕は、そんなことを思った。
カグラ、ヒカリのあの選択をすごく喜んでいたな。
もしかしてあれは、女子にとっては好感度を上げるのに非常に有効な技なのか?!
上手くいけば、さっきの二人のように僕とミオも。
な、なら、僕も試してみようかな…

「ミ、ミオ。決まった?」
先程のヒカリとカグラのやりとりを思い浮かべながら、僕は、先程のヒカリと同じようにミオに尋ねた。
するとミオは、
「そうね…ミルフィーユか、チーズケーキかな」
先程のカグラ同様、メニューの写真を見て迷っているのかそう答えた。

…これは、先程の二人と同じ展開だ!

「そ、それじゃあさ、ミルフィーユとチーズケーキを頼もうよ!そ、それでは、は…」

半分こに…僕は若干どもりながらも、ミオにそう提案する。
ところがミオはそんな僕に対し、

「そんなのだめだよ!トカッチはトカッチの食べたいものを食べなきゃ!…決めた。ミルフィーユにする」
「うっ…」
「ほら、トカッチは何にするの?あ、今日のおすすめはフルーツロールケーキのセットですって。美味しそうだね、これも」
「じゃ、じゃあそれで…」
「決まりね。あ、すみません!」

さっくりとそう言い切ると、てきぱきと店員さんを呼び、「ミルフィーユとフルーツロールケーキのセットを」と、注文していた。

…どうやらミオには、カグラと同じ作戦は通用しないみたいだ。
僕がミオには気付かれないように心の中でため息をついていると、

「…トカッチはトカッチでしょ。誰かの真似してどうするのよ」
そんな僕を見ながら、ミオが困ったように笑っていた。

「えっ?」
もしや、僕が考えていたこと、ばれている?…僕が驚いた表情をすると、
「相手によって関係性なんて変わるものじゃない?ヒカリとカグラだから、あんな風にできるのかなって、思う」
「あの二人だから、かあ…」
「そうだよ。あれがトカッチとカグラだったら、多分未だに二人とも迷っているだろうし、私とヒカリだったら直ぐにオーダーしているだろうし」
「ま、まあ…」
「私とトカッチなら、さっきみたいにオーダーして…」

と、ミオがそう言ったところで、僕たちが頼んだものがテーブルに届いた。
ミオはそれを受け取った後、さっと自分のミルフィーユをフォークで切り取り、一口大の大きさにした。
そして、
「はい、あげる」
そう言って、僕の目の前に笑顔でそれを差し出した。
僕がそれに戸惑っていると、
「美味しいものは皆で食べればもっと美味しいじゃない?だからはい、おすそ分け」
ミオはそう言って、僕に差し出したそれを軽く揺らしながら微笑んだ。

「…」
…そうだ。ミオはいつだって、そうやって自分が食べているものをおすそ分けしてくれる。
それに対して、僕も、ミオにお返ししたり。
結果的には同じかもしれないけど、そこに至るまでが、それぞれの組み合わせでこんなに違うものなんだな。
でも、確かに誰かの真似して慣れないことをするよりも、こんな風に自然に事が流れていく方が楽だし何だか心地いい。

「あ、ありがとう…」
「トカッチのロールケーキも美味しそうだね」
「あ、あげるよ!ミオに全部あげる!」
「それじゃあ、頼んだ意味ないでしょ…ていうか、女の子に二つもケーキを食べさせる気?」

僕たちはそんな会話を交わしながら、笑った。
そして、しばしの間緩やかで、そして少しだけ甘い時間を過ごしたのだった。
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