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Sour‐sweet!(1)

「…だから!勝手に決めちゃってどうするのよ!先生たちに、一体どうやって説明すれば…!」
「だーいじょうぶだって!」
「大丈夫じゃないから、言ってるんでしょ!とにかく、言った人たちに撤回してまわること!いい?撤回するまでこの件は進めないからね!」
「な、何か良く分からないけど分かった!」

…昴が浜高校の放課後は、こんなやりとりがないと始まらない。
声には出さずとも、実は皆が思っていることでもあった。

 

 

ここは、昴が浜高校生徒会執行部室内。
先ほどから声を荒げているのは生徒会副会長の夏目美緒。皆からはミオと呼ばれている。
面倒見も良く、責任感も強い。
昴が浜という街自体がそう大きな町ではないので、子供の数も少ない。
故に、生徒会のこの執行部も、幼馴染メンバーで偶然構成されているわけなのだが、
ミオはその中でも一番世話焼きが好きであり、そしてまるで姉、いや母親のように皆を見守ってはこうして指導もするのである。

…それも踏まえ、会話だけ聞くとミオが神経質そうにも思えるが、実の所はそうではない。

ミオが話していた相手は、昴が浜高校生徒会会長の鈴樹来斗。
皆からライトと呼ばれ慕われているこの会長、人気もあるし行動力もあるし頼りにもなるのだが…いかんせん、単純。直感で行動するタイプの為、本来ならば会議をして通さなければならない事項を勝手に決めてきてしまうことも多々あるのだ。
副会長であるミオは、ライトのお目付け役というか、世話役というか…そう言う事情もあり、毎日苦労しているのである。
そんなミオに、

「ま、まあまあ…ライトも反省していることだし、とりあえずは落ち着こう?ね?」
「どこが反省してるのよっ…ああ、もう頭が痛い」
「ミ、ミオ、大丈夫…?」

彼女を宥めるべく、優しく声をかける青年。
彼は、渡嘉敷 晴。皆にはトカッチと呼ばれており、生徒会では会計を担当している。
心優しいトカッチは、何かと皆に声をかけては気を配るのが上手な青年である。
背も高く、かけている黒縁眼鏡を外せば結構端正な顔立ちをしているわけだが、いかんせんそそっかしく、そしてどことなく頼りない感が漂っている。
しかも、副会長であるミオに片思いをしているのだが全く気付いてもらえておらず、日々一喜一憂している悩める青年でもある。

そんな三人を、少し離れたところで傍観している…というか、全く気にも留めず、話している人物が二人。
一人は、見るからに容姿端麗なその姿に、何事にも動じなさそうなクールな表情がマッチしている青年。

彼は、野々村洸。皆からはヒカリと呼ばれていて、生徒会では書記を担当している。
端麗な容姿だけではなく明晰な頭脳も手伝ってか、
表には出ないにしろ、実は生徒会は彼の意向で動いていることも多いと言われており…生徒会執行部の中では、実はヒカリが影の生徒会長だともささやかれている。
が、本人に至っては、そういった肩書や噂に全く執着はない。

そして、そんなヒカリと机を挟んで座りながら笑顔で話す女生徒。
くるんとした巻き髪をツインテールにし、そして明るい笑顔。
愛らしいその笑顔は、時折クールなヒカリの表情も柔らかく絆す。
雰囲気からして正反対の二人だというのに、何故か…調和されて温かい空気がそこには流れている。

彼女の名前は、泉神楽。皆からはカグラと呼ばれている。
生徒会では、主に副書記としてヒカリの補佐をしており、また、生徒会が全校生徒に何かを発表する際は、彼女が表立った「広報」的な役割を担っている。
明るく、そして皆から好かれる彼女には、非常に妥当と思われるポジションであった。

ちなみに、ヒカリとカグラは、一部の生徒たちからは「付き合っている」のではないか…と噂もあるのだが、
その真相は今の所「ノーコメント」らしい。
ただし、毎日二人一緒に帰っているので、
実際は違ったとしても早々遠からずそうなるのではないかと思われるのは、仕方がないのかもしれない。

そんな五人を中心に構成されている生徒会執行部であるが、今は来月行われる近隣高校とのスポーツ交流会の運営で忙しかった。
そんな最中、次から次へと無計画にトラブルを呼び込むライトに、ミオが頭を痛めているのである。

とはいえ、この後ライトがなんだかんだ言ってこのトラブルを解決へ導き、ミオの頭痛の種も解消されたため、また何事もなく穏やかな雰囲気へと変わるのであるが。

トラブル発生から何となく解決、そして結果オーライ。
綱渡り的ではあるけれど、この昴が浜高校生徒会はそんな感じで緩やかに、いつも運営されているのである。

 

その日の帰り道。
既に他の執行部メンバーは帰宅しており、五人が最後に部屋を出てきたわけであるが、
「さあ、明日は相手高校の生徒会側との打ち合わせかー!何かワクワクするな!」
帰り道を歩きながら、ライトが相変わらずの口調で楽しそうにしていた。
勿論、

「ライト、楽しんでばかりいられないんだからね。いい?明日は打ち合わせなんだよ、打ち合わせ。主張することは主張しないとね」ライトと共にその打ち合わせに同席するミオは、そんなライトを戒める。

明日は、ライト、ミオ、そして会計面での話もあるのでトカッチがその打ち合わせに参加するのだ。
ミオとしては、冷静に状況を見回し的確な発言が出来るヒカリに同席させたいとは思っているのだが、

「俺、書記だから」

…今回の打ち合わせは、書記は相手側の高校が行うためヒカリは不参加。
昴が浜高校側としては、若干頭が痛いところである。
それでもミオが何だかんだ理由をつけて、ヒカリを連れて行こうと最後のお願いをしようとタイミングを狙っていたのだが、

「あれ?ヒカリは?」
「え?ああ、カグラと一緒に帰ったけど」
「お、遅かった…」

部屋を出て校門を出た時には一緒だったのに、既に、ヒカリはカグラと帰った後。
本来ならヒカリは、ミオやライト、トカッチ達と同じ方角に帰るはずなのだ。
が、ヒカリは「本屋に寄る」「図書館に行く」とかなんだかんだ理由を付けて、途中から一人別方向に帰るカグラを、家まで送っているのである。
そのヒカリの優しさにカグラが気付いているのかいないのかは分からないが、ヒカリが他人にはあまり見せない一面をカグラに対しては見せている、というのは明らかであった。
それにしても、素早いというか。こっちの行動を見越しているのかどうなのか、ミオはある意味感心する。

「…まあ、僕もサポートするから、頑張ろうよ」

…そんなミオに対して、トカッチが優しく声をかけた。
内容だけ聞くと非常に頼りになるようにも聞こえるが、

「…」
「え、なにその顔。ミオ、そんなに不安!?」

何故か苦笑いのミオに、トカッチが逆に不安そうな表情をした。
ミオはそれをやんわりと否定しつつ、

「そ、そうじゃないけど…。でも、悩んでたってしょうがないわよね。ライト、トカッチ、明日は頑張るわよ!」

相変わらずのマイペースなライト、そして気を使ってくれるもどことなく不安なトカッチ。
そんな二人の背中をバシンと強く叩きながら、自分にもまるで言い聞かせるかのように、ミオはそう叫んだ。

 

…こうして、明日の近隣高校との打ち合わせに臨む三人であったが、
実はこの打ち合わせが一筋縄ではいかないもので後々まで尾を引くことになることを、今の三人は知る由もない。

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